• 無し

オートマトンは人じゃない?

マスター:KINUTA

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
魔術師協会広報室

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 3~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
プレイング締切
2017/07/13 19:00
リプレイ完成予定
2017/07/22 19:00

オープニング



 100メートル四方はあろうかという巨大な白亜の建造物。南海の星空の下そびえ立つそれにマゴイは、慈しむような視線を向けた。

『……よかった……どこも壊れていない……』

 そういって彼女は、建造物を撫でた。白い壁がぼんやり緑色に輝く。音も無く建造物が、ゆるゆると、地面の中に沈んでいく。
 ワーカ・コボルドたちがふんふん鼻を鳴らして(コボルド語で)聞いた。

「まごーい、どしてうめるのー」

「どしてー」

『……どうもここは……危ない人が多いようだから……見えないようにしておくの……さあ、もう遅いから皆寝なさい……』





 マゴイによって引き起こされたコボルド集団失踪事件。
 その顛末をハンターオフィスから仕入れた魔術師協会職員タモンは、バシリア刑務所に足を運び、スペットへの面会を申し入れた。
 見慣れた猫顔が面会室に現れ席に着くや否や、最も危惧するところを聞く。

「スペットさん、以前マゴイさんが口にしたことを今一度確認したいのですが――ユニオンはオートマトンを排除しているということで間違いないですね?」

「せや。存在自体が容認されとらんな。どの階級も物心付いたときから教えられるからな。あれは存在するべきもんやないて。まあユニオンにいる限り接触する機会はないねんけど。国内では生産されんし、国外からも持ち込み禁止やし」

「でも、もし万一入ってきたらどうするのです?」

「機能停止させて解体」

「こ、壊すんですか?」

「いや、いきなりぶち壊すとかそういうことやないんや。機能停止の後ナンバリング等色々調べて、外部の所有者に連絡すんのや。で、引き取りに来るなら引き渡す。目ん玉飛び出るほどの罰金払わせて。やけど、ほとんど迎えが来た試しなかったな。罰金取られるより新しく買う方が安上がりやから。もっとも、大事にしとるなら最初からうちの近くには立ち寄らせんと思うけど。オートマトンを禁止してるちゅうことは、ことあるごと外部に向けて広報しとったんやし」

「なかなかひどい話ですね」

「まあ、かわいそうちゅうたらかわいそうやな。使い捨てせえへんと、長々大事に使うてやったらええねんけどな」

 タモンは、スペットもまたオートマトンを――同情する気持ちはあるとしても――『人』として見ていないのだということに気づく。
 こちらの世界に大分馴染んでいるはずの彼でさえこうなのだ。とすれば、馴染んでさえいないマゴイにおいてはその傾向、いかばかりのものか。

「マゴイさんはオートマトンについてどう思っています?」

「そらまあ、当然嫌ってんなあ」

「……スペットさん、ハンターオフィスを筆頭としたクリムゾンの指導者層は、オートマトンの受け入れを推進しています。世界の危機に際し、仲間として戦ってもらいたいという思いのもとに。もうすでに何体かは起動しています。」

「さよか」

「マゴイさんがそういうオートマトンたちに、その、何かするということはありませんか?」

 スペットは髭をひねり言った。

「大丈夫やと思うで。マゴイが気にするのはあくまでも、ユニオン領内に入り込んできたオートマトンについてや。ユニオンは永世中立が国是やからな、自分から外へ出かけて何かしようってこと、ないねん。向こうから攻めて来られたら別やけど。この世界にユニオンはない。領内も無い。従ってどこをどうオートマトンがうろうろしとっても手出しはせえへんで、あいつ」

「……スペットさん。まあこれを読んでください」

 と言ってタモンは、先日起きたコボルド失踪事件報告書の写しを取り出し、スペットに見せた。
 ざっと見したスペットの猫の目が、針のように細くなる。

「1名穴ん中に突き落としか……ガチギレしとんな。まあ死なんように加減はしとるようやけど」

「それがどういう種類の物なのか、心当たりはありますか?」

「……多分、市民生産機関やないかと思う。あいつらそれの近くにおるときは、部外者に対して目茶苦茶ナーバスになんねん。しもたな。この間それ言うとくべきやったな」

「彼女はどこかでコボルドをワーカーとして働かせているようですが――そこをユニオンの領域だと見なすことはあり得ますか?」

「……あー……どやろ……あるかも分からへん……かも……」

「そこにオートマトンがうっかり入ったらまずいことになりそうですよね」

「なりそうやな」

「我々、いち早く彼女がどこにいるのか特定したほうがいいですよね」

「ええな」

「そのために力を貸していただけませんか」

「……貸してと言われてもな……何せえちゅうねん」

「ぴょこさんに、所有しているエバーグリーンのアイテムを一時魔術師協会に預けてくださるよう説得してほしいのです」

 スペットの脳裏に、とあるハンターが撮ってきた写真の映像が浮かび上がった。
 片眼鏡と耳当てが一体化したような銀色の物体――あれは間違いなく、ユニオンのソルジャーが使っていたインカム。

「我々が頼んでも、『やじゃーい。これはわしのじゃーい』の一言で終わってしまうんですよね。仮にも英霊ですから、我々もそれ以上強く言えませんし。でもあなたはあの方に気に入られてます。あなたの言うことなら、あるいは聞いてくださるのではないかと。どうです、行っていただけませんか?」





 シャン郡ペリニョン村へ向かうスペットの手には、道具箱。中に入っているのは板金用具とブリキ板。そして度のないレンズ。
 同行するハンターたちは、何故そんなものを持っているのか尋ねた。すると彼は、こう答えた。

「いや、似たようなもん作ってやれば、今持ってるもん手放しやすうなるんやないかと思ってな」

「そんな子供だましが通用するかな。ブリキ製品とユニオンの遺物じゃ天地の差だろ」

「どっちにしたって作動せえへんのやから、似たようなもんや」

 と言いながら進む彼の胸の内には、以下の思いが渦巻いていた。

(あのウサギは、ほんまにθなんやろか……)

 そうだったらいいのにという期待感とそんなうまい話があるわけないという猜疑心とが、代わる代わるせめぎ合う。




解説

補足説明

これは『コボルドたちがどこかに消えた』に続く話です。
今回依頼主である魔術師協会から頼まれたのは、スペットが道中とんずらしないように見張ってくれということ――と言ってもこれはそう重要視しなくて結構です。本人は最初から逃げる気がありませんので。

PC諸氏へお願いしたいのは『スペットのオートマトンに対する認識を修正すること』。これです。
エバーグリーン人である彼にとってオートマトンはあくまでも『疑似感情を持つ人型機械』。その存在に対しマゴイほどの嫌悪感は示していませんが、人と同格であるとも思っていません。
(念のため申しますと、ユニオンの外においてもオートマトンは、そういった風に見られていました)
オートマトンに関わる依頼に参加された方は、是非実例を示し思いの丈を述べてみてください。

今回ぴょこからインカムを引き渡してもらえれば、いずれこちら側からマゴイへ連絡をつける道が開けます。これまでは彼女の方から出てくるのを待つしかなかっただけに、大変な進歩となります。


※備考

 ぴょことスペットに関する参考シナリオ
「【春郷祭】今日は出店のお手伝い 」「ぴょこ、お使いに行く」

マゴイとスペットに関する参考シナリオ
「マゴイの猫面談」「マゴイと黒い箱」「猫とマゴイと迷宮と」「あの指輪はどこかしら」「呼ばれて飛び出て」

マスターより

KINUTAです。

……オートマトンはいつか秘密を持つ……いつか夢を見る……(マゴイ)


関連NPC

  • 俺は猫ちゃうぞ
    スペット(kz0223
    人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|魔術師(マギステル)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/07/19 01:43

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • 知るは楽しみなり
    ソラス(ka6581
    エルフ|20才|男性|魔術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
マルカ・アニチキン(ka2542
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/07/13 07:52:09
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/07/08 08:18:45