• 戦闘

新人教育スパルタ講習会:実戦編

マスター:T谷

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2014/11/05 07:30
リプレイ完成予定
2014/11/14 07:30

オープニング

「あー、クッソだりいなおい!」
 握っていたペンを投げ出し、張り詰めた糸が切れたように女性が大声を上げた。ドカッと机に足を乗せ、伸びっぱなしの焦げたような赤の髪を掻き上げて、死んだ魚の目で机に山と積まれた書類を睨みつけた。全体重を預けられた椅子が、ミシミシと悲鳴を上げる。
 かなり特徴的な外見の女性だ。女性らしいシルエットを持っているが、その身長は非常に大柄で、並の男をゆうに超えている。赤褐色の肌と全身を覆う鋼のような筋肉は、肉食獣を思わせる迫力を見る者に植えつける。顔立ちは整っているが、それは美しさというよりも勇猛さ、強い意思や野性味を思わせ、並みの心臓の持ち主なら、軽く睨みつけられただけで自ら身包み全てを差し出してしまいそうな風体だ。
 シュターク・シュタークスン。今からおよそ三ヶ月前、ゾンネンシュトラール帝国第二師団の団長に就任した若き管理職だ。そしてここは、第二師団の管理する要塞都市「カールスラーエ要塞」の中にある師団本部の一室、師団長の執務室であった。
「もう少しなのですから、頑張ってくださいな。その程度、私なら半日で終わらせられますわよ? というより、引き継ぎにどれだけ時間をかけているんですの。……おかげで、南の狂気や剣機などという面白そうな事件にも関われず仕舞いですわ」
 そんなシュタークに、副団長であるスザナ・エルマンは嫌味のような口調と裏腹に柔和な笑みを向ける。長い黒髪を左右に分け、スラっとした立ち居振る舞いは優雅さと気品を醸し出す。深窓の令嬢のような雰囲気は、シュタークとは正反対だ。
 陽だまりのようなスザナの笑みを受け、しかしシュタークは大きくため息を付く。
「あたしだって思いっきり暴れたかったっての……ていうか、机に向かってんのも、飽きた」
 思わず口から漏れでたのは、そんな一言だった。
「あら、奇遇ですわね」
 それに対し、スザナは呆れるでも怒るでもなく、聖母のような笑みを絶やさぬまま、
「それでは、気晴らしに殺し合いでも致しませんこと?」
 スラリと、腰に下げた長剣を躊躇なく引き抜いた。
「……いいね、気分転換には良さそうだ」
 陽光に煌めく切っ先を前に、シュタークは牙を見せつける猛獣のような笑みを浮かべた。椅子に座ったままのシュタークから、津波のような殺気が溢れ瞬く前に部屋を埋め尽くす。

 ――そして、一触即発の空気が臨界を迎える寸前、コンコンと控えめなノックがドアを叩いた。
 シュタークが許可を与える間もなくドアが開き、一人の小柄な老人が姿を現す。
「団員が怯えるから、無用に勝負などするなといつも言っておるじゃろう。そもそも次の”協定”は明日の約束じゃ、それくらいは守れ」
 その言葉に、シュタークは露骨な舌打ちと共に殺気を引っ込め、スザナは落胆するでもなく笑みを浮かべたまま剣を収めた。
 もう一人の副団長、ハルクス・クラフトは呆れ気味に白髪を撫で付け、シュタークの眼前に、小脇に抱えた書類を差し出した。
「あん? なんだこりゃ」
「本日付で着任する新人の一覧だ。……シュタークお主、教導隊の人員を勝手に地下の建築に回したじゃろ。おかげで、今日行うはずの新人教練が人手不足で行えん。わしを通さず勝手に人事に手を出すなとあれほどじゃな……」
「あ、それ、私ですわ」
「……スザナよ、わしを通さず人事をじゃな」
「コロシアムの建設は、何を置いても最優先にするべきですわ」
 全く変わらぬ笑みを前に、ハルクスは、肩を落として大きくため息を付いた。



 帝国の北東に位置するカールスラーエ要塞は、ここ十年に起こった様々な動乱の煽りを受けて、その機能を失う寸前まで消耗している時期があった。北の壁、ノアーラ・クンタウの向こうには、信じられないほどに強力な歪虚が潜んでいる可能性があり、また、都市東の辺境地域やその向こうへの玄関口となる要衝にも関わらずだ。
 ヴィルヘルミナが皇帝になったことで、彼女の意向により都市や師団の立て直しは急ピッチで行われるようにはなった。しかし、それでもまだ様々な事柄が未完成なままだ。
 そこで、師団は激減していた団員の頭数を確保するために、他の団が引き取りを嫌がる不良軍人を、積極的に受け入れることにした。結果的に人員不足の解消により、都市の復興は順調に進むことになったが……問題は、受け入れた不良軍人の育成だ。態度は悪く、協調性はなく、しかし自分の実力を信じて疑わない歪んだ正義感を持った若者たち。これをまともな軍人に仕立て上げるには、初手が大事だった。
「全部で十六人か」
 都市内の最北部。都市を囲う堅牢な外壁の左右を繋ぐ広大な練兵場に、新入りたちが並んでいる。
 シュタークは書類片手に、それらを睥睨していた。
「で、あんた誰よ。ゴリラ?」
 半笑いで、新入りの一人がシュタークに向けて軽口を叩く。同調して、周りの新入りもクスクスと下卑た笑いを漏らす。
「……今、ここでぶち殺しちまってもいいんだが」
 ピクリと頬を震わせるシュターク。だが、ここでそうしても意味は無い。今日の目的は別にある。
「てめえらみたいなのは、一回、その鼻をぶち折ってやらねえとな」
 そのために、第二師団はハンターに依頼を出していた。多数対多数の実践訓練。それにより、自分達の無力さと、協調性の大切さを学んでもらおうという魂胆だ。
 不良軍人や心構えのなっていない団員が多くを占める第二師団には、まだまともに実戦を経験した兵士は少ない。その点ハンターならば、実戦経験はもとより、他者と協力する大切さも知っているだろう。教師として、これほど適任者はいないはずだ。
 ……とはいえシュタークには、そんな思惑はない。単に面倒だから、ハンターに任せようと思っただけだった。



 その頃、スザナ・エルマンは師団本部に置かれた自室に篭っていた。
「うう、ハンターが来る……戦いたい……殺したい……殺されたい……いやでも、副団長としてちゃんと責務を果たさないと……」
 自らを手枷足枷と鎖で拘束し、自室に設置された檻に篭もって、スザナは自分の中の衝動と戦っていた。
「……お主も相変わらず、難儀な性格じゃのう」
 それを監視するハルクスの表情には、毎回面倒だなあと分かりやすく書かれていた。

解説

・概要
 帝国第二師団に放り込まれた素行の悪い新兵達に、現実を教えてやって欲しい。
 ハンター達の武器は、訓練用で殺傷能力の少ない木刀と短槍、鏃の付いていないショートボウ、最低限の魔術具、法具の能力を持った短い木の杖に限定されます。

・敵
 コボルドやゴブリン程度の戦闘力を持った、一般人の帝国兵士。十六人全員が言うなればヤンキーのような性格で、ハンターの力も舐め腐っている。また、そのハンターが子供や女性なら、尚更舐めてかかってくるかもしれません。
 全員の武器は、訓練用の木刀。猪突猛進に殴りかかってくるだけの単純な戦法を取り、また互いに協力することもありません。

・場所
 都市最北部に広がる、広大な練兵場。平坦な平地が主で、所々に林や小さな丘などの訓練用の障害物が作られている。

・補足
 新兵たちは捻くれているだけであり、雨の日に捨て猫を見つけると傘を差して上げるような奴らです。認めた人間に対しては、比較的素直になってくれるかもしれません。
 また、団長のシュタークは見ているだけです。

マスターより

帝国第二師団始動! という大きなものを任せていただきましたT谷です。頑張って背負って行きたいと思います。

今回は師団の顔見せということで軽く、命のやりとりのない優しい世界を目指してみました。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/11/09 00:50

参加者一覧

  • アークシューター
    静架(ka0387
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士
  • 金色の影
    Charlotte・V・K(ka0468
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 黒き殲滅者
    姫凪 紫苑(ka0797
    人間(蒼)|13才|女性|疾影士
  • 白煙の狙撃手
    伊勢 渚(ka2038
    人間(紅)|25才|男性|猟撃士
  • 幼き心は折れぬ刃
    切金 凪(ka2321
    人間(蒼)|10才|女性|闘狩人
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師

  • ドライバー(ka3471
    ドワーフ|17才|女性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン Attention!
静架(ka0387
人間(リアルブルー)|19才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/11/04 22:14:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/03 20:31:26