●予兆
「……っはっ！？」

　マフォジョ族長、ガルヴァン・マフォジョが、ベッドから飛び起きる。
　筋骨隆々のその体には、無数の汗の雫がついており、その表情は、普段の穏やかな物から一変。不安に満ちている。

「……マフォジョ様が直接、夢に出るという事態は……この２０年間ございませんでした。……何か悪い予兆でなければ良いのですが」
　思い浮かべるは、夢の中で浮かんだ、鮮烈な一シーン。
　それは彼が幼き頃より伝え聞いた、『初代マフォジョ』の滅びの情景。
　――三十回目の大マフォジョ祭が、先日執り行われた。それはつまり、マフォジョ族を襲ったあの悪夢……そして、初代マフォジョが滅してから。三十年が経った、という事であった。


●潜入者
「キキッ！？」

　――鎧片が散乱する遺跡の前。
　激戦が繰り広げられ、ハンターたちの力と知恵の前に、液体金属スライムが砕かれたこの場に、新たな『客』が訪れていた。
　周囲を慎重に警戒しながら、後方に居る仲間に命を下す。
　そんなリーダーらしき行動を取ったのは、一体のゴブリン。歪虚である故にサイズで力を図るのはナンセンスとは言え、小柄の彼が、腕が鞭のようになっている大型の仲間に命令する様子は、滑稽ですらある。
　だが、それよりももっと目を引くのは、その仲間が運んでいる物。
　巨大な柱に、無数の刃がついた、拷問、処刑器具のような物体。
「キキキッ！」
　ゴブリンが場所を指差すと、そこへ彼の仲間は歩いて行き、柱のような物をドスン、と音を立てて下ろす。
　直後、ゴン、と言う何かが地面に打ち込まれる音と共に、彼らは一斉にその場を離れる。

　バン。
　一体の大柄な人型歪虚が、その腕で思いっきり柱を引っぱたく。
　すると、不吉かつ耳障りな金属音を上げ、柱についたブレードが、それぞれ違う方向への回転を始める。
即座に人型歪虚はその鞭腕を引き、ブレードによって切断される事を回避する。

　それを確認したゴブリンは、再度扉に向かい、作業を行う。
　この扉は、あの後主によって再度封印がされたようだが…眷属である自分にはその解き方は熟知している。しばしの時間は掛かるだろうが、解けないと言う事はあるまい。

　だが、ゴブリン――『スキレット』には知る由はなかった。
　前回の一戦後、ハンターオフィスがこの遺跡の守護者を打ち倒して再調査するために、改めてチームを編成していたと言う事を。

　――人型歪虚がたちが一斉に警戒態勢に入る。彼らは夜行動物を基しているため、夜はその活動を妨げない。
　『スキレット』はそれを横目で見ると、再度扉の解除作業に取り掛かる。
　彼らの元へは、ハンターたちが迫っていた。





「――あーあ。なんだなんだ。騒がしいな。ゆっくり眠らせてもくれない……ってか？　……ってか、もうどんくらい時間が経ったのかねぇ？」

『スキレットを除く各雑魔の殲滅』が成功度『普通』の条件となります。
この他に隠し条件が『二段階』あり、それを満たす事で『成功』、『大成功』　が発生します。

敵は以下。

『スキレット』×1
ゴブリン型雑魔。知能が高く周りの歪虚を指揮でき、自らは土などの無機物を練って拳のように足元から突き上げ突き飛ばしたり、小さな地割れを発生させて足止めする等が出来ます。
臆病な性格ですが、追い詰められると窮鼠が猫を噛むが如く、強化されます。
今回の依頼では三ターン目で遺跡の扉の封印を解除し、そのあと遺跡内へ逃げ込みます。

『ウィップアーム』×4
腕が鞭になっている人型雑魔。
特徴的な攻撃として、射程8の鞭攻撃があります。これは当たると強制的にウィップアームと同じスクエアに引き寄せられます。また、通常攻撃相当の蹴りは相手を2スクエアノックバックさせます。

『ザ・ソー』×1
雑魔には分類されるが、特殊なユニット。
知性理性をほぼ持たず、ただその場で回転し、敵（歪虚たち）のターンの最後に行動し刃で敵味方含む隣接スクエアにいる全てのユニットを切り刻む。（射程１、自分中心の範囲攻撃扱い）
移動できず（そのため攻撃を回避する事はない）攻撃は無差別だが、その代わり攻撃防御共に極めて高く、バッドステータスにも一定の耐性を持つ（強めの抵抗ボーナスが掛かる）

初期状態では『スキレット』とハンターたちの間に『ザ・ソー』があり、『ウィップアーム』はある程度距離を置いた状態で『ザ・ソー』を囲んでいます。
スキレットとザ・ソーの間の距離は六スクエア、各ウィップアームからザ・ソーまでそれぞれ二スクエアです。


戦場は夜。鎧片が散乱し、足場は悪目となります。

尚、不安を感じたガルヴァンがハンターオフィスを訪れたため、今回は質問卓がありとなっております。
質問卓を立てて頂ければ、ガルヴァンが代理で『ハンターオフィスが把握している情報』からお答えいたします。

どうも、剣崎です。
期待されていた（かどうかは分かりませんが）、剣崎の難関依頼、投入と相成りました。
『Darker than Trickery』と『鋼鉄の身に熱き魂を』から繋がってはおりますが、読まなくても支障は内容に作っております。
戦闘ルールの仕様を利用した、嫌な攻撃が仕掛けられます。相応の計算と計画、そして連携が必要となります。
決して油断はなさらぬよう。