• 日常

聖人に似た迷子~乾杯のかわりに銃声?~

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在4人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/12/23 15:00
リプレイ完成予定
2018/01/01 15:00

オープニング


●寒空の下で
 冷たい北風が、ぴゅうぴゅうと吹いていた。
「楽しみね、パーティ!」
 しっかり巻きつけたマフラーをなびかせ、ダイヤは寒さに負けず元気にスキップした。
「お嬢さま、袋を振り回さないでくださいよ、破れます」
 使用人のクロスがたしなめる。
 クロスもダイヤも、中身のしっかり詰まった買い物袋をさげていた。ダイヤの父・宝石商モンド氏は「聖輝節は家族で過ごすもの」という考えを持っているため、お屋敷の従業員はこの時期、たっぷりのボーナスと休暇をもらって里帰りする。クロスには実家というものがないため、お屋敷に残るのだが。聖輝節の当日はダイヤも両親とのんびりする予定だが、それよりも前に、友人たちを招いてささやかなパーティをしようとしているのだ。買い出しは、そのためのものだった。
(今年はちょっと仕掛けを用意してるんだから!)
 ダイヤはうきうきしていた。去年の聖輝節、ダイヤは悩み事を抱えていたために、パーティではもてなされるばかりだったのである。今年は、楽しませる側に回りたいと思っていた。
 何を計画しているのかは、クロスにも教えていない。バレることを恐れて、メイドたちにも相談しなかった。ただ飲んで食べるだけのシンプルなパーティを楽しみにしているふりを、続けてきたのだ。
「シェフがシチューを仕込んでいってくれたし、ケーキもあるし、それから……、あら?」
「なんですか。まさか買い忘れを思い出したんですか?」
「違うわ。ねえクロス、あそこ、誰か倒れてるんじゃない?」
 ダイヤが指さしたのは、大きな街路樹の根元。枯れ葉が降り積もる中、幹に寄りかかるような格好でぐったりしている人影があった。ふたりは慌ててその人影に駆け寄った。
「大丈夫ですかー?」
 人影は年若い青年だった。ダイヤが声をかけて肩を揺さぶっても、返事がない。
「ま、まさか死んでる?」
「死んでませんよ、息をしてるでしょう」
 クロスが呆れる。確かに、青年はしっかり呼吸をしていた。それも、すうすうと健やかに。どうやらぐっすり眠っているらしい。
「どうしてこんなところで? それにしてもこの人、綺麗な顔ねえ」
「ええ。役者のように整ったお顔ですね」
 ダイヤが感心すると、滅多に人のことを褒めないクロスも頷く。それほど青年は美しかった。
「こんなところで眠っていたら死んでしまうわ。ひとまず、お屋敷へ運びましょうよ」
「そうですね……」
 ダイヤの提案にクロスは頷きつつも、眠っている青年を一通り調べた。どう考えても、こんなところで眠っているなんて不審すぎる。しかし、身なりはきちんとしているし、持ち物の中にも武器らしいものはなかった。フロックコートの内ポケットに、しっかりした革張りのノートが入っていただけである。ノートの裏表紙に、小さく小さく、名前らしきものが書かれていた。
「セブンス・ユング……、というのが、彼の名前のようですね」
 クロスが名前を読み上げた。ひとまず危険な人物ではなさそうだと判断し、クロスは買い物袋を木の根元に置くと、彼を担ぎ上げようとした。かなり長身であるらしい青年は、ひとりではとても運べそうにない。ダイヤも買い物袋を置き、クロスを助けて青年の体を支えた。
「買い物袋はあとで取りに来ましょ」
 青年を担ぎ上げながらダイヤは、この驚くほど綺麗なこの青年は、もしかしたら聖輝節のために遣わされた「聖人」なんじゃないだろうか、などと思って、こっそりわくわくしていたのだった。


●これは夢
 楽しげな音楽が流れていた。広間だろうか。白いテーブルクロスがかけられた大きなテーブルの上に、美味しそうな料理やスイーツ。笑い声や、キラキラしたオーナメント。
(パーティ?)
 ぼんやりと、青年はそれを見ていた。あたたかな光景の真ん中には、栗色の長い髪をツインテールにした少女がいた。弾けるような笑顔を見せている。その少女に、誰かが手を差し出していた。その人物の顔はわからない。ただ、袖口には洒落たデザインのカフスがつけられていたのが見えた。
 少女が、戸惑ったように、けれどもとてもとても嬉しそうに笑って、差し出された手に自分の手を預けようとした、そのときに。
 青年は、目覚めた。


●知らないお屋敷
 目覚めたとき、肌触りの良い上等なシーツの上にいた。身を起こすと、立派な部屋にいることがわかり、青年は少なからず戸惑った。ここはどこだろう。どうしてこんなところにいるのだろう。
(少しも思い出せない……)
 これだから自分は、と青年は己の記憶力と性格を恨む。覚えているのは、先ほどまでみていた夢の内容だけだった。
(ああそうだ、忘れてしまう前に、それだけは書き留めておかなければ)
 青年は懐を探り、いつものノートを取り出すと、夢の内容を丁寧に書き記す。これが過去の光景なのか未来の光景なのかはわからないが、現実の出来事であることは間違いない。青年のみる夢は必ず、現実となるのだ。彼は、そのみた夢と現実を照らし合わせるために旅をしているのだ。
 青年の名前は、セブンス・ユング。しかし彼は、その名前を名乗ることはない。名前すらも「忘れてしまった」と言っているのだが、それには何か理由がありそうだった。
 夢の内容を、ノートに書き終えたとき。

パァン!!!

 爆発音に似た大きな音が、聞こえた。
「これは……、銃声?」
 青年は、ベッドから出て、部屋の外を覗いた。



 その音は、パーティが始まっていた広間にも聞こえてきた。
「ええっ!? 何!?」
 パーティに招かれていたハンターたちがざわつく。ダイヤも慌てて驚いた声を出した。
「様子を見てきます」
 目元を厳しくして行動に出たのはクロスだった。素早く広間を出て、音のした方へ駆け出す。どこにも異常は見られず、不思議に思いながらも、そういえばあの眠っている客人はどうしているだろうかと部屋を覗いた。
「!? いない……」
 ベッドも部屋ももぬけの殻だった。もしかしたら、あの銃声に驚いて出て行ってしまったのかもしれない、とクロスは思う。ひとまず広間に戻り、そのことを伝えると。
「ええっ」
 顔を青くしたのは、ダイヤだった。
(困ったことになっちゃったわ……)
 実はあの銃声は、ダイヤが仕掛けたいたずらだった。レコーダーにタイマーをセットし、時間になったら流れるようにしていた。自分がその部屋に先導し、死体に見せかけた人形を発見させて、ちょっとした謎解きゲームをするつもりだったのだ。しかし。
「と、とにかくその人を探しましょう。お屋敷は広いからきっと迷っちゃったんだわ」
 ダイヤは、自分の仕業だとは言い出せないままに、最優先事項を提案した。

解説

■成功条件
屋敷内で迷子になった青年を探し出し、その後パーティを楽しむ。

■モンド邸
三階建ての広大な屋敷。東西に長い、一直線の構造。階段は中央にある。
青年が寝かされていた客間は二階の真ん中あたりで、階段のすぐ西隣。パーティをしている広間は一階の真ん中あたりから東端までの大きなもの。

その他屋敷にある部屋は以下の通り。
一階:玄関ホール、大広間、キッチン、ワインセラー等食糧庫、応接室、使用人部屋
二階:客間(多数)、中広間、図書室、音楽室、美術室、衣装倉庫
三階:ダイヤの自室等モンド家プライベートスペース(立ち入り禁止。階段にはロープ)

■ダイヤのいたずら
銃声をレコーダーで流し、該当の部屋(二階の音楽室)に行くと、人形が倒れている仕掛け。
「いったい誰が!?」と騒ぎにして、頃合いを見計らってダイヤがネタばらしをするという予定であった。
クロスも知らされていない。

■登場人物
ダイヤ:宝石商モンド氏の一人娘。おてんばで発想が奇抜。

クロス:モンド家の使用人。冷静で優秀。主人であるダイヤに対して遠慮のない口をきく。

青年:王国内を旅している。夢にみたことが必ず現実となる不思議な力を持つ(ただしみた夢が未来のことなのか過去にすでに起きてしまったことなのかはわからない)
ダイヤ、クロスとの面識はない。
また、夢のこと以外はすべて忘れてしまうため、これまでに出会ってきた人のことも覚えていない。

※青年の名前が明かされたいきさつは『胸騒ぎに似たアルペジオ』を参照。その他、ダイヤやクロスについては過去のシナリオをご参照ください。ただし、まったくご存じなくても今回の依頼は何の問題もなくご参加いただけます。

マスターより

ごきげんいかがでしょうか。紺堂でございます。
ダイヤちゃんシリーズと、夢追いシリーズのコラボにてクリスマスシナリオとさせていただきます。
ダイヤちゃんシリーズ、だいぶ恒例となってきたシリーズですので、付き合いが長い方にはわかることもあっていろいろとアプローチの仕方もバリエーションが出てくるかなー、と思って楽しみにしております。
もちろん、初めましての方大歓迎でございますので是非気軽にパーティを楽しみにいらしてくださいませ!
よろしくお願いいたします。

関連NPC

  • 夢を追う者
    セブンス・ユング(kz0232
    人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/12/30 19:41

参加者一覧

  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/12/21 22:40:21
アイコン 質問卓
大伴 鈴太郎(ka6016
人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2017/12/20 07:17:51
アイコン 相談卓
大伴 鈴太郎(ka6016
人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2017/12/23 12:59:00