• 調査

純白に似た絶望

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 3~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/02/09 12:00
リプレイ完成予定
2018/02/18 12:00

オープニング

●これは夢
 ぐるりと首を巡らせ、視界に入れることのできる範囲はおおよそすべて、白かった。とにかく、真っ白だった。一瞬、目がおかしくなったのかと思って慌てたほどだ。
 しかし次第にその白は、かすかではあるが陰影を持っていることに気がついた。圧倒的な白さに気おされている両目を、ゆっくり瞬きすることで落ち着かせると、白い景色の全体像が見えてきた。そこは随分と広い平原だった。そこを、真っ白な雪が満遍なく覆いつくしている。白さの原因は雪だったのだ。そして、それと同時に気がついた。これは、その平原を「上から」見ているのだということに。
 一本だけ木が立っているのが、かすかに見える。たぶん大木であるのだろうけれど、見慣れぬ俯瞰での姿とこの白さで、どんな種類の木なのか判然としなかった。
 その白い光景の中に、不意に、鮮やかな赤が写りこんだ。赤いコートを着た何者かが、白い平原を歩いているのだ。顔はよく見えなかったが、背格好から、まだうら若い女性であるらしいと想像がついた。雪に足を取られ、歩きにくそうにしつつ、そのひとは大きな木を目指しているようだった。と。
 しゅん、と。
 一瞬ののちに、赤い姿が掻き消えた。
 掻き消えたと思ったら、彼女が立っていた足元に、真っ黒な穴があいていた。
 赤いコートの女性は、雪によって覆い隠されていたらしい地面の穴へ、落ちてしまったのだった。



●これは現実
 青年は、目を覚ましたベッドの上で、身震いをした。ひどく寒い気がした。実際は、寒いわけがないのだ。青年が今横たわっているベッドはずいぶんと上質なものなのだから。
「はー……」
 大きく、ため息をつく。寒々しい夢だった。そして、後味の悪い夢だった。あの雪原の穴へ落ちてしまった女性は、無事に穴から出られたのだろうか。それとも、出られるのだろうか。
 青年は、必ず現実を夢にみる。しかし、それがすでに起こってしまった過去のことなのか、これから起こる未来のことなのかはわからない。十年も前のことかもしれないし、百年後のことかもしれない。
(もしかしたら、昨日のことかもしれない)
 そう、わからない以上、その可能性だってある。
 青年は身を起こすと、みた夢を書き記しておくべく、ノートを開いた。



 朝食のあと、あたたかな紅茶を飲みながら、青年は恰幅の良い紳士と話をしていた。
 紳士は、王国内で手広く宝石を商うモンド氏である。昨年末、モンド邸の近くで倒れていた青年は、このモンド氏の一人娘・ダイヤに助けられた。数日介抱されている間に「夢を追って旅をしている」ことを話したところ、「それなら是非この屋敷を拠点にして旅をしたらいい」と言われ、引き止められた。ダイヤや奥方は単純に親切心からであるようだが、モンド氏は青年に何か深い悩みがあるのではと察しているらしかった。
「なるほど。では、セブンスくんはその緑色の宝石に、何か意味があるのではないかと思っているんだね」
「はい」
 青年──セブンス・ユングは頷いた。
 親身になってくれるモンド氏を、信頼しても良いと思い始め、もっと立ち入った内容まで話すようになったのだ。このところ、夢を追った先で、夢にかかわっていた人が「緑色の宝石」を持っていることが多々あること、その宝石の出どころが「玉虫色の瞳の男」に関係するらしいことなど、である。
「ふーむ。その、玉虫色の瞳の男について、心当たりはないんですね?」
「ありません。でも、向こうは俺のことを知っているようでした。一度だけ、遭遇したことがあります」
 遭遇、というよりはかなり意図的なものだったろうと思っているが。
「ただ、俺は夢以外のことはすぐ忘れてしまいますから、もしかしたら昔、どこかで会っていたのかもしれませんが」
 セブンスがそう言って俯く。モンド氏はなるほど、と頷いて、彼を安心させるような笑顔を浮かべた。
「私の方でも少し調べてみましょう。その男のことはともかく、宝石については専門家ですからね。その緑色の宝石がどういうものなのか、調べておきますよ」
「ありがとうございます」
 セブンスは深々と頭を下げた。この話が一区切りついて、次に、そろそろ旅へ出るつもりだ、という話に入ると、モンド氏は寂しそうな顔をした。
「どうしても、気になる夢がひとつあるものですから」
 セブンスは、真っ白な平原の夢の話をした。すると、モンド氏はその平原に心当たりがあると言う。
「大きな樹が一本だけ立っている平原でしょう? 冬には毎年雪で真っ白になるんですよ。ここからそう遠くはありませんよ。地図を書いてあげましょう」
 そうして、渡された地図は、二枚。
「平原への行き方と……、この屋敷への帰り方です。書いておかないと忘れてしまうでしょう? ちゃんと、帰って来るんですよ」
 にっこり笑うモンド氏に、セブンスは再び頭を下げた。



 平原の白は、夢でみたよりも薄かった。夢にみた光景は、随分と雪の多い年のことだったらしい。
(つまり、あの光景は「今」ではなかったということか)
 セブンスは注意深く地面を眺めながら歩き、夢でみた穴を探した。大きな穴ははたして、その大きさを不思議なほど感じさせない自然さで地面に溶け込んでいた。あやうく自分も転げ落ちそうになりながら、セブンスがその穴を覗き込むと。
「……ああ」
 目の前に広がるモノに、セブンスは顔を手で覆った。
「……ああ。過去、だったんだ。あの夢は」
 穴の中には、赤いコート。そして、白骨と化したひとつの、体。

解説

■成功条件
青年(セブンス)を手伝って遺体を穴から引きあげ、身元を確かめる。

■依頼状況
皆さんは、モンド氏に雇われたハンターです。
セブンスを心配したモンド氏が、何か手伝いになるかもしれないと思い、後を追わせたのが皆さんです。

■穴
直径1メートル、深さ5メートル。
穴の中には、赤いコートの女性の遺体のみ。遺体の調査は済んでいない。

■平原の周辺
平原の南に村がひとつ(人口約300人)、西に牧場がひとつ(住み込み管理人の小屋がひとつ)ある。
村は大きな街道近くにあるため、宿場としての役割を担っており、人の出入りが激しい。小さい村ではあるがいつも賑わっている。
宿屋は10軒以上、雑貨店、酒場、カフェも多い。
村役場の職員は全員五年以上勤続しており、村の住民のことはだいたい把握している。

※夢追いの青年(セブンス・ユング)のこれまでの出来事を知りたい方は過去の依頼をご確認ください。まったく知らなくても本依頼にはご参加いただけますのでお気軽にどうぞ。
※質問はセブンスが可能な範囲で対応いたします。出発の24時間前までにお願い致します。

マスターより

ごきげんいかがでございましょうか。紺堂カヤです。
依頼の成功条件にかかわってはきませんが……、ひとつの命が、目の前でついえていたときの、その悲しみを少し、考えてくださると有難いと思います。
行動としては地味な内容になるかと思いますが、どうぞ、よろしくお願い致します。

関連NPC

  • 夢を追う者
    セブンス・ユング(kz0232
    人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/02/16 18:57

参加者一覧

  • 解を導きし者
    エーミ・エーテルクラフト(ka2225
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

  • ロキ(ka6872
    ドワーフ|12才|男性|聖導士
  • 淡緑の瞳
    巳蔓(ka7122
    人間(蒼)|15才|女性|猟撃士
  • 白き夢路に足跡を
    アユイ(ka7133
    ドラグーン|15才|男性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 身元調査相談卓
ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/02/09 10:23:38
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/02/06 07:15:59