中途半端に悪い奴ら

マスター:白藤

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/05/23 12:00
完成日
2018/05/29 02:08

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●中途半端
「や、やられああぁあ!」
 時刻は昼。人が賑わう商店街の中心で八百屋の店長が悔しげに声を荒らげた。「何だ何だ」と周囲にいた人々が集まれば、店長は半分だけになった林檎を握り潰し、甘い果汁を周囲に飛び散らせる。
「また奴らだ! 『中途半端ヤンキーズ』の仕業だ!! うちの林檎を全部『うさぎさん』にして行きやがった!!」
「うちもやられたわ!」
 八百屋店長の叫びに便乗したのは魚屋店長である。お前のところは何をされたんだ、と八百屋店長は魚屋店長に詰め寄る。
「魚が全部美しいお刺身になっていたわ!! 見て、この魚捌くの難しいのに!!」
「それはありがたいんじゃないか!?」
「そっちだって! うさぎさん可愛いじゃない!!」
 勝手に加工された林檎や魚――迷惑か迷惑じゃないかはさておき、これらは現在、オボロン商店街出店者一同を悩ませている『中途半端ヤンキーズ』の仕業である。

 推定十代の若者達による新手の不良グループ、通称『中途半端ヤンキーズ』。彼らは突如としてオボロン商店街に現れ、悪事を繰り返してきた……が、その名の通り、やる事なす事全てが“中途半端”なのである。
 林檎をうさぎさんカットにしてみたり、魚をお刺身に加工してみたりする他にも、人々を襲う害獣を退治して死骸を商店街の入口に並べてみたり、玩具屋の模型を着色して綺麗にディスプレイしてみたり、収穫時期を迎えた畑の作物を勝手に収穫してその場に陳列してみたり、商店街にやって来た窃盗団を縛り上げて全裸にしてみたりと『残念』な悪事を行っているのだ――時々ありがたい感じになっているのは言うまでもない。

「本当、何なんだろうねぇ、あの子達……」
 一体何がしたいのかは全く分からないが、出店者達は毎度毎度の事ながら中途半端に困らされている。寂れたオボロン商店街に謎の活気をもたらす存在となってくれていることは確かなのだが、一応は迷惑行為であることには変わりない。
 とっ捕まえてしょっ引く……というよりは、話をしてみたいなと店主達は中途半端ヤンキーズの捕獲を試みたこともあった。
 しかし、顔を覚えられているのか目が合えば全速力で逃げられてしまうし、そもそも単純な運動神経で彼らに適う者はいない。罠を作成することも考えたが、素人作成の罠で大怪我をさせてしまったら可哀想だと話が進まない。
「うーん……」
 考えて考えて、店主達は『あるひとつ』の結論に辿り着くのであった。
「まあ、こういう時にはあの人達に頼むしかないよね!」

●便利屋さん?
「何か、勘違いされている気がしなくもないんですが」
 やれやれ、と受付嬢は肩を竦める。カウンターの上には、オボロン商店街の位置に印の付けられた地図が置いてあった。

「背格好から、どう見ても十代の若い三人組だという話です。かなり素早いそうで、追いかけて捕まえたり、多分あると思われるアジトに着いていくことも出来ていないんだとか」
 十代は十代でも、恐らく十代前半の少年達だ。相手がまだまだ子どもで、そこまで重大な事をされていないのだからと、商店街店主達もあまり大事にはしたくないそうだ。
「何というか、商店街を衰退させようとしているわけでは無さそうなんですよね……害獣や窃盗団退治出来ちゃうくらいの腕っ節があるのに、それを利用して家主を恐喝したり店の売り上げ盗んだりなんてことはしてないわけですし」
 本当に、何がしたいのか分からない――商店街の方々も、それ故に頭を抱えているのだ。目的によって成すべき事柄も異なる上、今後彼らの中途半端な迷惑行為が悪化していく可能性があるならば本格的な対応を取らなければならない。
「今回の依頼は『中途半端な迷惑行為の理由を聞く事』と『出来れば中途半端な迷惑行為をもうちょっと自重させる』になります。とにかく、中途半端ヤンキーズに接触出来なければ話にならない奴ですね」
 商店街の方々は中途半端ヤンキーズの撃退を望んではいないそうです、と受付嬢は念押しする。今は回数が多いせいで迷惑な部分が目立つものの、オボロン商店街は元々酷く寂れていた場所だ。そんな場所に現れた奇行を繰り返す若者達の存在は、ある意味良い刺激になるのだそうだ。
「商店街の方々には出来なくても、ハンターの皆様なら何とか接触出来ると思うんです。まあ、真っ向勝負は流石に厳しいかと思いますが、罠仕掛けて捕まえたり中途半端な事仕出かした後を尾行したり……まあ、商店街の皆様が色々失敗しているので、様々な手を試すべきだとは思います。どっかが失敗しても、どっかが成功すればそれで何とかなりますし?」
 受付嬢は別の地図を取り出してカウンターに広げる。それ地図というよりは商店街の案内図といったところだった。
 案内図によると、オボロン商店街の北側には『魚屋』、『八百屋』、八百屋に隣接する『畑』、中央には『服屋』、『武器屋』、『装飾品店』、南に『家具屋』と家具屋が保持する『倉庫』があるらしい。地図と比較して見てみると北・中央・南の各エリア内ならば、どこにいても迅速な対応が出来そうだ。またオボロン商店街は海辺に存在するため、商店街近くには広い海岸や簡易的な港があるようだ。
「罠を用意するにしろ、張り込むにしろ、分散した方が良いかもしれません。商店街の方々は恐らく全面的に協力して下さるので、どうにか彼らの願いを叶えてあげて下さいね」
 かなり面倒な依頼だが、相手もそれは分かっているらしい。困惑するハンター達に向かって、受付嬢は「結構な報酬を頂けるみたいですから」と悪戯めいた笑みを浮かべてみせた。

リプレイ本文

●依頼への思い
 古く、年季の入った建物が立ち並ぶ場所、オボロン商店街。
 訪れたハンター達に笑いかけ、魚屋店主はメモ用紙を差し出した。
「よく来てくれたね。どうか、よろしく頼むよ」
 その名も『中途半端ヤンキーズ:罪状リスト』である。七夜・真夕(ka3977)は呆れたと言わんばかりに、微かに眉間にシワをよせた。
(『中途半端ヤンキーズ』……名前からしてもう……)
「ふふっ、可愛らしい不良さんもいたものですね」
「ふむ……愚連隊というやつですね。骨のある連中であることを期待しております……!」
「ま、まあ、要は子供の悪戯だろう。元気なのはいいが少々灸を据えてやらねばな」
 くすくすと笑うフェリア(ka2870)と、少し楽しそうな多由羅(ka6167)。知人多由羅の横顔を眺めるレイア・アローネ(ka4082)は、彼女に色々な不安を感じつつもメモを覗き込む。
(悪戯……? というより……これは……)
 そして罪状から何かを感じ取った彼女は、多由羅のことは一度置いておいて、そちらに集中し始めるのであった。

「子ども達の特徴は分かるか?」
「お前さんみたいな、金髪のちびっ子三人衆ってのは……すまねぇ、これくらいしか分からん」
「家具屋のケビンは足が速いのに、無理だったしねぇ」
「はあ……それは普通に追いかけるだけでは無理と見た……」
 エメラルド・シルフィユ(ka4678)は情報収集中だ。しかし、家具屋のケビン氏が足速いとかそういうのはどうでも良い。
 どうしたものかと考えていると、件のケビン氏が手をポンと叩いた。
「この辺には小さいガキはいない。だから、ガキを見つけたら十中八九中途半端ヤンキーズだ」
「うふふ、それなら分かりやすくて良いわね。つまり、金髪の小さい子が捕獲対象ね」
 神紅=アルザード(ka6134)は微笑み、商店街の地図を広げる。現場の様子を見つつ、分散して各地に待機する作戦なのである。
「畑は北だったか? なら、北に魔術師が欲しいな。暴れられると厄介だからな。北と中央に魔術師を置いて、迅速な捕獲といこうか」
「そうね……じゃあ、こんな感じ?」
 神紅は地図に名前を書いていく。北にフェリアと多由羅、中央に真夕とエメラルド、南にレイアと神紅、という割り振りだ。
「私は全力で追いかける、エメラルドさんは術を使う。レイアさんや多由羅さんは……脅す?」
「脅す……」
「冗談よ。子ども達を見つけたら、互いにトランシーバーで連絡を取るってことで」
 今回の依頼において、商店街の住民は『平和的解決』を望んでいる。だからこそ、全員がどう動くべきかを考えてきた……筈なのだが。
「……」
 今、複数のハンター達が『多由羅は依頼の意味を理解出来ているか』を心配している。彼女らの眼前で、多由羅は巨大な愛刀を磨いていた。どこで使うんだ。
「多由羅……お前、やること理解してるよな……?」
「それ、必要ですか……?」
 レイアとフェリアが問い掛ければ、多由羅は顔を上げ、キリリとした真っ直ぐな目で二人を見、口を開く。
「貴女達の仰りたい事はよくわかります。年端もいかぬ少年達をその手にかける覚悟は出来ているかという事ですね?」
「えっ」
「不肖多由羅、剣を持つ身として戦場に立った時あらゆる覚悟を決めております。時に悪となる事さえも例外ではありません」
「駄目だこいつ全然わかってない! フェリア! 止めろ!」
――案の定、であった。

 真夕はよく知る人物達を見据え、ため息混じりにこめかみを抑えるのであった。
「まあ、連携は取りやすい、わよね」
 見知った問題児ばかり集まってしまったな、とフェリアに叱られる多由羅を眺める。
「こっちはこっちで、詳細決めましょう?」
 少し時間が掛かりそうだと判断した真夕はエメラルドと神紅を呼び、地図を指差しながら作戦会議だ。BGMは、フェリアのお説教である。
「斬っちゃいけません。斬られる覚悟とかそーゆーのいいですから!」
「相手は悪人でしょう?」
「もう……じゃあアレです、お姫様がお城を黙って抜け出したと思ってください」
 普通に話しても理解してもらえないのなら、とフェリアは例え話を持ち出すことにした。
「貴女はそれを怪我させずに連れ戻さなくてはなりません」
「む、少年達を使える主君と思い……ですか」
「そういうことにしましょう」
「おお……主の乱心を止めるために血を流すことなく……! 厄介な……しかしそれこそが真の達人の歩む道……!」
「そうそう、そういうことにしておきましょうね」
 事が大きくなった気がするが、少年殺傷事件の発生は防ぐことができた。刀を鞘に収め、多由羅は自信満々といった様子で自身の胸に手を当てる。
「ふっ、お任せください。そういう事ならば私をおいて誰に適任がおりましょう!」
 鈍い光を放つ刃物が収められたことで、不安そうな眼差しを多由羅に向けていた商店街の方々もほっと胸を撫で下ろす。レイアはひと仕事終えたばかりのフェリアに「お疲れ様」と視線を向けた。
「なんかわかってくれました……子供達よりめんどくさい子です……」
 なにはともあれ、ここからが本番である。ハンター達はそれぞれの持ち場に分かれ、調査を開始するのであった。


●捕獲大作戦!
「あっ」
 商店街北部、畑内部に三人の子ども達の姿があった。
 せっせとトマトを収穫し、それを隣の畑に持っていき円状に並べている――物陰から彼らを眺めるのはフェリアと多由羅だ。「斬ってはいけない」と念入りに教え込まれた多由羅は、刀ではなくトランシーバーを取り出す。
「多由羅です。畑の作物を勝手に収穫し、円を描く不届き者を発見しました。三人います」
「……ねえ、その三人、何してるの?」
 多由羅の呼びかけに真っ先に反応したのは真夕だ。トランシーバー越しに聞こえる音から、こちらに走って向かっているのだろう。三人全員が北にいるのであれば、中央や南で待機する意味が無いためだ。複数名の靴音を耳にしながら、多由羅は再び子ども達に目を向ける。
「分かりません。何かの儀式でしょうか」
「ミステリーサークル……? ええと、作物は?」
「フェリア様、作物の様子は見えますか?」
「ええ。うーん……全部、真っ赤ですね。収穫が大変だから、三人揃ったのでしょうか」
 彼らは多由羅とフェリアの存在に気付いていないのか、熟れたトマトを選び、作物に付いた虫を除去し、ミステリーサークルを生成している。それを生成しなければ良いのに。
 一体何がしたいのかしら、とトランシーバー越しにくすくす笑っているのは神紅だ。
「どうする? 畑の中にいるなら、下手に驚かすと作物に影響が出てしまうかもしれないわね」
「全く……」
 神紅の言葉に反応したのはエメラルドだ。トランシーバーを手に話しながら、彼女とその横にいた真夕は物音を立てることなくフェリアと多由羅の傍に歩み寄った。そんなに規模の大きな商店街ではないため、合流は特に苦ではない。神紅とレイアも直にやってくるだろう。
「どのみち畑から出すべきだな。私と多由羅で気を引こうか」
「そうね。作物潰して寝ちゃったら困るもの。フェリアと一緒に、もう少し近くまでいっておくわね」
「よろしく頼む」

 自身の得物を手に、エメラルドと多由羅が子ども達の前に姿を現す。彼らは二人の姿及び彼女らが手にする得物を見て顔を引きつらせた。
「ひっ!?」
 怯え、子ども達は互いに視線を交わす。そして――脱兎の如く駆け出した!
「ッ!? うっわ、早っ!!」
 これにはエメラルドも多由羅も仰天してしまった。本人達に自覚があるかどうかはともかく、恐らく覚醒者素質のある子ども達だったのだ。一般人に捕まえられる筈が無い。
 だが、エメラルドも多由羅も、潜んでいるフェリアも真夕も力を持たない一般人ではない。真夕が宙を舞い、商店街の外に飛び出そうとしていた子どもの前に降り立つ。少年はすぐさま踵を返すが、そこには鞘に入ったままの大太刀を手にした多由羅の姿。小さな子どもは怯え、その場に座り込んでしまった。
「逃げるな!」
「ひゃあっ!」
 その間にエメラルドが光の杭で一人の動きを食い止める。最後の一人は酷く狼狽えた様子で、二人を助けに入るべきか否かを悩んでいた。
「ほう、仲間を見捨てて逃げ出さない度量はあるわけか」
「でもまあ、やんちゃのしすぎはよくないわ。鬼ごっこでおねーさん達が勝ったらお店の人達に謝りにいきましょうね」
 現れたのは、商店街南を警備していたレイアと神紅。残された子どもは疾影士・神紅に迫られ走り回る!
「うわぁあああっ」
「待ちなさーい! うふふ、ひばりちゃんとの鬼ごっこ思い出すわ―!」
 疾影士の力をただ『追い掛けること』だけに特化させた神紅はとにかく速い。しかし、子どもの方も本当に速い。疾影士相手に互角に戦えてしまっている。
「うーん……私達も追いかけた方が良いでしょうか。でも……」
 そんな子どもを神紅一人に任せるのは申し訳ない。しかし、既に捕獲した子どもを放置しておくのは一抹の不安がある。悩むフェリアの傍に寄り、多由羅はポンと自身の胸を叩いた。
「見張りが必要ですか? なら、私が」
「えっ、多由羅?」
 任せてしまって良いのだろうかと、フェリアは心配になってしまった。しかし、本人がそれを望むのならば、無碍にする理由はない。
「じゃあ、お願いしますね」
 そして多由羅を除く五人は、最後の一人を捕獲するために各所に散らばったのであった。

●子ども達の想い
「キミ達強いわねー。おねーさん達も六人いなければ負けてたかも」
 神紅に確保された子どもは瞳に涙を浮かべ、ハンター達を見上げている。先程目を覚ました二人は、鬼ごっこを終えた子(『ユイ』というらしい)の話を聞き、目を輝かせている。
「この人、壁走るんだよ……!」
「え、かっけぇ!」
「おれ達も頑張ったら壁走れるかなぁ」
 神紅は自身を憧れの眼差しで見つめる子ども(『カイト』というらしい)の頭を撫でる。
「無理に壁登るのはやめてね、怪我しちゃうから。商店街の人達もそんなこと、望んでないからね」
「……それ、なんだけど」
 おずおずと少年(『ミライ』というらしい)は神紅を見上げ、口を開いた。
「おれ達、迷惑かけてたんだね」
 ハンター達に追い回されたことで、漸く事実に気付いたのだろう。ミライの言葉に、カイトとユイもしょんぼりと項垂れてしまった。
「お前達」
 落ち込む三人を見据え、多由羅は口を開く。
「何故、このような蛮行に及んだのか」
「ば、蛮行は大袈裟過ぎない!?」
 真夕は近くにいたカイトに手を差し伸べ、微笑みを浮かべる。
「悪気があったわけじゃないと思うし、私達に話してみて」
「え……」
「大丈夫、お姉さん達は君達の味方よ。だって真剣勝負したじゃない。勝負の後は握手して仲良くなるものよ、ねっ?」
 真夕の声と表情に安心したのか、カイトは彼女の手に小さな手を乗せ、口を開く。
「ここの商店街の人達、おれ達のこと、助けてくれたんだ……お腹すいて、倒れてたら、拾って、元気になるまで看病してくれたんだ」
 ユイとミライも彼の話に続いた。
「ぼく達、親とか、そういうのいないんだ。だから、嬉しかったの」
「でも、お姉さん達も分かるよね? お客さん来ないんだ、ここの商店街……きっと、無理しておれ達のこと、助けてくれたんだよ。だから……」
 子ども達の話を要約すると、子ども達は皆身寄りがなく、行く宛もなくあちこちを渡り歩いていたそうなのだが数ヶ月前、どうしても食料が確保出来ずに行き倒れてしまったらしい。
 そんな彼らを拾ったのが商店街の人々だったのだが、どう見ても経営が上手く行っていない商店街にそのまま滞在は出来ず、今は海岸近くの岩場に住み着いているそうだ。
 では一体何故奇行に及んだのか。レイアが腰を落とし、ミライに視線を合わせる。彼は恥ずかしそうに両手で顔を覆ってしまった。
「商店街の役に立ちたかったのか? なら、こんな真似をせず堂々とやったらどうだ?」
「そ、その……感謝されるの、恥ずかしい、し……」
「絶妙に難しい問題になっているな」
 年を聞いてみたところ、見た目よりも少しだけ幼かったらしく、全員十才前後だった。多感な時期である。そして中途半端に知識を付けているようだから、こんな面倒な事態になってしまったのだろう。
「ついでに聞くが、何故よく分からないアレンジを加えていたんだ?」
「喜ぶかなーって……あと、時々何かが起こる商店街ってことで、客寄せにならないかなぁって……」
「う、うーん……」
 実際は迷惑行為であったわけだが、やはり善意故の行動だったようだ。なんと声を掛ければ良いだろうかとレイアが首を捻っていると、三人の子ども達を見据え、多由羅が声を上げた。
「なるほど、街の為を思えばという志は立派。しかし、一体何を恥ずかしがっているのですか!」
 確かにその通りである。
 多由羅の正論に子ども達は「うっ」と声を漏らし、身を竦める。
「正義の行いならば胸を張って正面から大人達と渡り合うべし! 違いますか!?」
「ち、違いません」
「志は立派! 何も間違っていない! こそこそするからこうなるのです!」
「はい……」
「多由羅止まれ。まあ……とにかく、だ」
 まだお山の大将のような立場で語りたそうにしていた多由羅を制し、レイアは子ども達に微笑みかける。
「どうすれば役に立てるのか、商店街の人々は何を望んでいるのか……お前達は一度、ちゃんと話をするべきだ。腕っ節が強いことは証明済みなのだから、子どもだからといって侮られることもあるまい」
「大丈夫かな……」
「商店街の者達には私達からも口添えしよう……なに、大人達を翻弄したお前たちほどの腕があればやれないことはないさ」
 何しろ彼らは害獣や盗賊さえも打ち負かす実力者だ。レイアがやる気を出すようにと子ども達を持ち上げてやれば、彼らは目をキラキラと輝かせるのであった。

 そんな彼らの様子を、フェリアと共にトマトを回収しながらエメラルドは不満そうな眼差しで眺めている。
「むう……少し甘いのではないか……?」
「まあまあ、良いではないですか。反省しているみたいですし」
「彼らに悪気がないのは私もわかってはいるが……」
 彼らの行動が迷惑行為であったという事実は変わらない。しかし、彼らの行為に商店街の人々が労力を割かれることはもう無くなるだろう。
「皆がそれで良いというのなら、それで良いことにするか」
 話し合いが終わり、籠いっぱいのトマトを運ぶ子ども達の後ろ姿を見ながら、エメラルドは困ったように微笑み、小さく息を吐いた。

 後日、ハンターズ・ソサエティに商店街から一通の手紙が届いた――そこには、子ども達が商店街の人々に秘密基地を用意してもらったこと、少しだけ商店街が活気を取り戻したこと、そしてハンター達への沢山の「ありがとう」が、たどたどしく綴られていた。

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MVP一覧

  • 乙女の護り
    レイア・アローネka4082

重体一覧

参加者一覧

  • 【Ⅲ】命と愛の重みを知る
    フェリア(ka2870
    人間(紅)|21才|女性|魔術師
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 背後にお姉さん
    神紅=アルザード(ka6134
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • 秘剣──瞬──
    多由羅(ka6167
    鬼|21才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/23 08:31:00
アイコン 更生大作戦
エメラルド・シルフィユ(ka4678
人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/05/23 09:39:40