遺跡にわいたもふもふ退治

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/07/25 19:00
完成日
2018/07/26 10:09

みんなの思い出

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オープニング

●でるんですって、もふもふが
 遺跡の近くにある山菜を取りに男が三人森を歩いていた。山菜のほかに薪にする枝もとるためこの辺では男衆も山菜取りに参加する。
「そろそろ釣りもいいころ合いだなぁ」
「あぁ、たしかに。渓流釣りにでも子供たちを誘うかぁ?」
「はは、騒いで魚が取れなくなりそうだな」
 だがろくに娯楽のない場所にある村だ。川遊びは子供たちだけでは禁止しているし、連れて行ってやるのもいいかもしれない。そんな会話に花を咲かせつつふと目前に迫った遺跡に目をやると。
 もふ、もっふん、もふもふころころ。
 謎のもふもふが遺跡の入り口から十体ほど転がってきたのだった。
「な、なんだ!?」
「植物……いや、動いてるから動物か!?」
 もふもふには言葉を操る機能がないのか無言のまま男たちに襲い掛かってくる。
 すこししっとりした感触は喩えるなら苔玉。ただし二メートル前後あるものまでいる。小さいものでも三十センチや五十センチクラス。
 もふもふもふもふ!!!!
「気持ちいいようないやまて痛い痛い痛い!」
 もふもふじたいはすごく弾力があってふかふかで気持ちいいのだが木の根とサンドイッチされ、押しつぶされれば呼吸ができないし肋骨なんかもいたい。
 このもふもふ、少し凶暴なたちのようだった。

●退治しなくちゃいけないんですって、もふもふを
「よく集まってくれた。今日みんなにお願いしたいのは……もふもふ退治だ」
 は? 何言ってるのこの人。そう言いたげなハンターたちの視線を手で払うようにした後ルカ・シュバルツエンドは話を続ける。
「巨大な苔玉に似た謎のもふもふに人々が最近相次いで襲われている。手触りはふかふかで少ししっとり、弾力があって一部の人は熱狂するタイプの生命体なんだけどいかんせん意思の疎通ができないうえに体当たりしてくる。体当たり自体はともかく、木の幹とプレスされた結果骨折者が出たりもしてね。討伐の依頼が出たんだ」
 まぁ討伐する前に思う存分もふもふするのは自由だと思うけれど、野放しにはできないからちゃんと倒してね。どこか疲れた調子出るかは続ける。
「苔玉もどきがでるのは今から配る地図に赤くマーキングしたあたりにある遺跡。人の気配を察知すると向こうから出てくるから探す必要はない。もふもふを倒すなんて、と悲嘆にくれる気持ちはわからないでもないけど……被害が出てるから放っておけないんだ。協力を頼むよ」

リプレイ本文

●もふっと、もふもふ。もっふり。もっふん
 ルカ・シュバルツエンド(kz0073)がややぐったりしながら退治を依頼したもふもふたちは総数は約十体。どいつもこいつも遺跡から出てきてはタックルで人を襲うというやや好戦的な性格らしい。
 もふもふを楽しむのは構わないけれど人的被害が出てるから討伐もちゃんとしてね、と見送られた四人のハンターのうち三人はもふもふと戯れることが目当て。残り一人、唯一の例外となった多由羅(ka6167)がいうには。
「もふもふ……もふらではなく、ですか? 聞いたことのない雑魔ですね。え? 雑魔ではない? まぁなんでもいいでしょう。敵とあらば斬って捨てるだけです」
「それはだめ」
「それはいけない」
「それはちょっとまとう? 大いなる損害だ」
「? そうなのですか? わかりました、調査が必要だとは聞いていませんが……切り倒す番になったら声をかけてください」
 獲物を独り占めするなということでしょうか、と首をかしげながらもうなずきを返して斬魔刀「祢々切丸」を納刀する。黒い刀身に白銀の波紋が浮かぶ怪しい雰囲気の巨大刀にもふもふたちをもふもふする間もなく一刀両断にされる危機が一応去って堪能したい三人はほっと一息。
「ちゃんと倒せば、少しは楽しんでも文句は言われない……よね?」
 いつもまじめに依頼に臨むワーカーホリックも時にはふざけたくなるらしい。
 鞍馬 真(ka5819)は遺跡が近づくにつれ整った顔立ちを緩めていく。イケメン度が減衰する相好の崩れ具合だが誰も気にしていないから良しとしよう。もふもふは魅力的ですからね。わかる。みんなそう思っていたようだ。
「いや、けっしてもふもふしたくて参加したわけではないけども。……ないけども。ですがどの程度のもふもふかはたんの……確認する必要はありますね……。後学のために……。あくまで後学のためです……。決してもふもふしたものをもふもふしたいと思っているわけではないのです……」
 大事なことなので何度ももふもふが目当てではないと繰り返すサクラ・エルフリード(ka2598)だがここまでもふもふを繰り返すともはや言い訳を通り越してもふもふがめあてです! という自白に聞こえていることを彼女はきっと気づいていないのだろう。いいんですよ、もふもふを堪能するのは自由だけど、とお墨付きももらっていますからね。
 レイア・アローネ(ka4082)は真剣なまなざし。もふもふによってけがをさせられた人たちを心配しているのかと思いきや。
「も……もふもふ……意思はないのか……いや、あるのか……? もふもふが人に害をなすなど……信じられない……もふもふは至福なのに」
 彼女も倒す以外に道はないのか悩んでいるだけだった。だってもふもふだもん、仕方ない。大体の人はもふもふに弱い。もふもふは正義。誰かが言ってました。
 そんな四人のハンターの声を聞きつけたのか音を聞きつけたのか、それとも鼻に類する何かがあるのか、散歩の時間なのか。十体ほどのもふもふたちがころころとやってきた。
 事前情報通り大きいものは二メートルを超え、小さいものも三十センチや五十センチクラス。ぱっと見は苔玉のようにも見える。緑色の球体だったので。
 もっふん! 敵と認識した一番でかいやつがレイアにタックルを仕掛けた。ちょっとしっとりしていて、でもふかふか。程よい弾力をした球体がレイアの形にへこみながら元の形を取り戻そうと押し返してくる。
 少し毛の長い毬のような質感でもあって、毛の部分がじつにいいもふもふ。
「……む。なかなかの力……あ、危なくはあるのか……? もふられると闘争心が薄れてしまう……ま、まさかこれがこやつらの能力……!?」
 違うのだがある意味あっているかもしれない。魅力的なものには攻撃意欲がわかないものですし。
「くっついてはくるが、攻撃をよけようという気配はないな……知能はそれほど高くないのか……斬ろうと思えば斬れそうだ……。だが……い、いや待て……!
 まだ我々の知らない未知の能力を隠している可能性も捨てきれん……! このような未知の敵、能力を解明してハンターオフィスに報告しないと後の損害につながる。みんな、もう少し詳しく調べてみるのはどうだろう?」
 これを訳するともうちょっとだけもふらない? になるのだと三人のハンターは即座に把握。彼らにももふもふはとびかかってきていたが各々抱き込んだり顔をうずめたり自分から突っ込んだりともふもふを堪能していたのでその提案は渡りに船だった。
「なるほど……未知の生命体の行動や習性への調査ですか。それならば異存なく。たしかに斬り殺すのは簡単ですが次に同じような、さらに凶悪な個体が出た場合参考にできるデータの採取もハンターの仕事と心得ます」
 一人だけさしてもふもふに興味を示していなかった多由羅もそういうことであれば、と生態系のデータを取るためにもふもふし始める。
 サクラはタックルしてきたもふもふを受け止めた後抱きしめてもふもふ。感触、弾力、大きさなどなどしっかり隅々までチェックする。
 一帯のチェックが終われば名残惜しいながらも一度離れて次のもふもふへ。二体目は一体目より少し小ぶりで枕にするととてもよさそうなお手頃サイズだった。しっとりしているためすこし冷たく、夏場はいつまでも触っていたい手触り。なおかつしっとりしすぎていて衣服がぬれるほど湿り気があるわけではないという気づかいぶり。いや、べつに気づかいではなくそういう植物なのだろうが。
「レイアさんの提案通り一通り調べましょう、そして一番強敵なものは皆で協力してより一層精密な調査です」
 この場合の強敵は戦闘能力の高さではなくどれが一番も降りがいがあるか、という意味での強敵です、あしからず。
(危害を与えるようなことがなければとてもいい癒しになるのにな)
 そこだけがとてもとても残念だと手分けをしながら思うのはサクラだけではないだろう。
「最近はキツい依頼で荒んでいた心が癒されるようだ……」
 グローブで一番小さな個体を受け止め、むぎゅっと抱きしめたり顔をうずめたりしながらデレデレの笑顔を浮かべるワーカーホリックのはずの真。彼は小さいもふもふをターゲットにしている。大きいもふもふの体当たりは痛そうだったので。
 もふっている最中に大きなもふもふがタックルしてくればすかさずマルチステップで回避。
「私のもふもふタイムを邪魔しないでくれるかな?」
「あ、大きいもふもふは上に乗っかるとふっかふかのベッドの上にいるみたいな気分になれますよ、ひんやりしていて気持ちいいです」
「なに、それは聞き捨てならない。次は私にも回してくれ、そのもふもふ」
「はい、もちろん。レイアさんの抱きしめている、中くらいのもふもふはどんな感じですか?」
「これはクッションにするといいかもしれないな。バランスボールといったか、あれのようにエクササイズをしながらもふもふを堪能できそうな気がする」
「で、ではそちらとこのおおきなかた、交換しませんか。バランスボールなもふもふには興味があるのです」
「わかった、暴れださないよう気を付けて。体当たりはそれなりの力だからな」
「毛玉というか毬藻というかなんかそんなもふもふした物体さん、さぁ調査の時間です、私の胸に飛び込んでくるのです……これはなかなかにもふもふしていてくせになるかもですね……。もふもふもふもふ……」
 レイアとサクラは女性同士盛り上がっている。多由羅はそんななか熱心にどの程度殺意を向ければ攻撃してくるのか、あるいは攻撃パターンは、回避するときの癖は、もふもふした毛に防御能力はいかほどか、など戦闘データの解析に余念がない。
「鳴くような器官はないのか……植物なのかな? 苔っぽいし。放置したら増えそうだなぁ……どうやって増えるんだろう」
 株のようなものがあるならこっそり持ち帰って敵対意識を生まないようにうまく育てて家での癒しスポットにできないだろうか、とちょっとよこしまなことを考えつつ真は本来のワーカーホリックぶりを取り戻してまじめに考察。
 骨の髄まで染みついたその根性は簡単には抜けないらしい。
「くっ……な、なんだこの……植物……? は。どんどん闘争心が抜けていく……人をだめにする天才か……」
 ベッドにちょうどいいと聞いた最大のもふもふに横たわったレイアはその心地よさに愕然とする。
 そして三人はしばらく欲望の赴くままにもふもふ、もふもふ。唯一注意するかと思われた多由羅はデータの解析の一環なのだろうと注意しなかったため誰もハンターたちを止める者はいない。午前中から日暮れ近くまで、実に半日以上もふもふを堪能した後そろそろ名残惜しくもお別れの時間。
 足場の悪い森だし、視界が悪い中での戦闘はさすがに避けたかったので。
「あぁ、いいもふもふだった……だがそろそろいい加減に倒さんとな」
 後ろ髪惹かれる思いでハンターたちは楽しい時間を過ごさせてくれたお礼にとせめて一撃でもふもふたちを沈めていく。毛のような苔のような表皮が攻撃を受けて散り、耐久力の限界を迎えたもふもふたちはぱちんと爆ぜていく。
「もう倒してよいのですね? では……抜刀」
 残念そうな仲間たちの顔を不思議そうに思いつつ迷いなく切り伏せる多由羅。そんな様子にもふもふに惹かれないなんて損をしている、でもどんな敵も容赦なく倒せるのはこの断腸の思いを感じずに済んでちょっとうらやましい、と思う他の皆々様。
 後に残ったのは踏み荒らされた苔のような無残な姿のもともふもふたち。
「巣? とか群生地? とか、今後の再発生につながりそうなものがないか探しおておこう。依頼を受けたからにはアフターフォローまでしっかりやらないとね」
 仕事そっちのけでもふもふを楽しんでいたことは棚上げして真が提案し、四人は一通り遺跡やその周辺を探索。
 結局どこからこのもふもふたちが現れたかはわからなかったが討伐はすんだということで帰路につくことになった。
 今は亡きもふもふたちのもふもふ具合やこういうも降り方がよかったというのを飽くことなく話すレイアやサクラ、真のほほは幾分紅潮していて、最後まで天然さゆえにもふもふに魅了されなかった多由羅はそんな仲間たちを不思議そうに眺めているのだった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 秘剣──瞬──
    多由羅(ka6167
    鬼|21才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン もふもふ退治
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/07/25 16:02:27
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/07/25 15:51:16