• 落葉

【落葉】End of Calamity4

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/09/21 19:00
完成日
2018/10/02 10:46

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ヒルデブラント・ウランゲル。
 先代皇帝にして、歴代でも最強の騎士皇と呼ばれる男。
 獅子王、革命王の二つ名は帝国内で知らぬ者がいない程高らかに鳴り響いている。
 彼は一度は北伐の最中に失踪し、しかし記憶喪失状態でハンターに発見された。
 そして天誓作戦では帝国に身を寄せ、そして彼らの戦いを影ながら支えたのだった――が。
 なぜか、天誓作戦の最終局面。生涯のライバルと言うべき不破の剣豪ナイトハルトとの決戦には参加せずに姿を消した。
 そしてそのヒルデブラントが再び歴史の表舞台に立った時。彼は何故か、再び“革命王”名乗っていた。

「えー、というわけで、俺が反政府組織ヴルツァライヒの新リーダー、革命王ヒルデブラントである!」
 帝都から遠く離れた帝国領のすみっこにある村で、ヒルデブラントは大きめの木箱の上に立ち、村人に演説していた。
「これから俺たちは帝都に攻め込み、再び革命を起こそうと思います!」
「おじちゃん、革命ってなに?」
 集まった村人の中、小さな子供が手を上げる。ヒルデブラントはニカっと微笑み、台から飛び降りた。
「い~い質問だな、ぼうず! 革命ってのは、だなぁ……あ~……」
『革命とは、被支配者階級が支配者を倒して政治権力を握り、体制をひっくり返すことを指す言葉よん、ヒルちゃん』
 ヒルデブラントの左右には、二人の騎士がついていた。どちらも並の騎士ではない――というか人間ではない。
 英霊。伝説の具象化。それも、どちらも絶火の騎士と呼ばれる一級品の英霊である。
「ありがとよクルヴェナル。だが、お前の説明は若干筋違いだ。革命ってのはなぁ……ロマンなんだよ」
「ろまん?」
「そうだ。革命ってのは、何かを変えようと願う心だ。毎日毎日嫌なことが繰り返される……それを辞めたいって気持ちだ。ぼうず、なんかやめたいことあるか?」
「川に水くみにいくのやめたい。冬とか手がすごく冷たいから」
「じゃあ行かないようにしよう。水道を整備すればいい」
「そんなことできるの?」
「やろうと思えば誰にでもできる!!」
 握り拳で高らかにシャウトする革命王だが……。
「……と言いたいところだが、ぼうずには無理だな。将来的にはさておき、今のこの国には無力な人間が多すぎる。だから、エラい人になんとかしてもらいたいだろ?」
「うん?」
「そこで! 我々ヴルツァライヒは再び一握りの優秀な人間による統治社会! 即ち貴族主義を復活させることをここに宣言する!!」
 微妙な沈黙の中、村人が顔を見合わせる。
「でも、エラそうな連中に支配されるのはもううんざりだよなあ?」
「そうだよ。税金高くなるし」
「ではお前ら、自分の力で水道作れんのか? この村に何かあった時、自分で責任とれんのか? 俺らが急に襲いかかった時、貴族がこの町統治してたら襲われないんだぞ?」
「それは…………」
「そういうことはなぁ……ガキ共を貧乏生活から解放してからほざくんだな、このダメ人間ども!!」
『ヒルちゃんも相当ダメ人間だと思うけどね~』
『クルヴェナル、ヒルデブラント。そろそろ行きましょう。“敵”が来ますよ』
 小柄な少女がそう告げると、ヒルデブラントは腕を組み。
「我らの思想に賛同する、あるいは賛同せずとも事の成り行きを見守るつもりがあるのなら! この町に我が兵力が駐屯することを認めて欲しい! 金は払うから宿と飯頼む! 地方活性化と思えばいいもんだろ?」
「まあそれは構わんけど……」
「いやよくねーだろ反政府組織だぞ。お上に捕まるぜ」
「心配無用! 帝国関係者はここにはこない! なぜなら――」
 ドシンと、大きな拳で己の胸を叩き、男は不敵に笑う。
「――この俺が全員返り討ちにするからだ。いざって時は人質になってたとでも言っとけや!」

 ヴルツァライヒの暴動を阻止しようと、帝国軍はいつものように兵力を送り込んだ。
 ヴルツァライヒという反政府組織はとうにその力を失い、衰えている。その鎮圧は簡単なものであると思われていたからだ。
 しかし蓋を開けてみると……なんと、ヴルツァライヒは次々に快勝を続けた。
 誤報ではないかと疑われもしたが、実際に倒れた兵士たちの報告で夢でも幻でもないと発覚する。
 “あいつら、一人一人の練度が高い。それに、敵には亜人や英霊が合流している”と――。

「つ……強すぎる……いくらなんでも、無理……がく」
「絶火の騎士と元皇帝って……勝てるわけないじゃん……ぐはっ」
 バタバタと平原に倒れた帝国軍先遣隊の皆さんを見下ろし、ヒルデブラントはニヤリと笑う。
「ふはっはっはーーー!! 圧勝!! 安心しろ、命までは取らん」
『退屈ね~。この時代、平和すぎるわぁ。アタシ達の時代みたいに、もっとガッツのあるオトコはいないのかしらん?』
『生きている限り何度でも来る、それが戦争でしょう。とどめを刺すべきでは?』
「そうか? 俺の経験上、結構寝返ってこっちにつくやつとかいるから、殺さない方がお得だったぞ。タングラムとか、ゼナイドとかオズワルドとか」
『それはあるかもね~。アタシも、ナイトハルト様の腕っぷしに惚れちゃったタイプだし♪』
『うんうん。そう言われるとわからなくもないですね』
「だっろォ~~~?」
 三人が余裕しゃくしゃくで構えていると、撤退していく帝国軍と入れ替わり、こちらに向かう人影が見えた。
「そらおいでなすった。すーぐハンターに頼るんだから」
『パーシヴァルを倒したって言う、あの?』
『はい? 私は別に倒されてませんけど???』
「ほどほどに歓迎してやれ。ハンターを撃退すれば、帝国全土がビビりあがるだろうぜ。あいつらは丁度いい当て馬だ」
 白い歯を牙のように剥き出し、ヒルデブラントは帯に下げた南蛮刀を抜く。
「始めようぜ――新たな革命戦争をな!」

リプレイ本文

「ぶわっはっはっは! おいおい、ハンターズ・ソサエティも人材不足だな!」
 ヒルデブラントが膝をバシバシ叩いて豪快に笑う。
 神楽(ka2032)とシガレット=ウナギパイ(ka2884)は直前の作戦で大ダメージを受け負傷中である。
「仕方ないでしょう、RBで大きな作戦こなしたばっかですからね。ソサエティの過剰労働は今に始まったことではありませんが!!」
 ソフィア =リリィホルム(ka2383)が握り拳で力説すると、負傷者二人はウンウンと頷く。
「重傷はリザレクションでも回復できぬしの……一応やってみたけど、すまんのじゃッ!」
 カナタ・ハテナ(ka2130)の回復も虚しく、二人は変わらず戦力に数えられないだろう。
「ふむ。この時点で戦力差は歴然か……」
「「本当にすいませんした~!」」
 神楽とシガレットの謝罪を涼やかに受け流し、ルイトガルト・レーデル(ka6356)は敵将を睨む。
「アレが師子王……一度は帝国を壊した男」
 静かな怒りと憎しみを込めた眼差しを、ヒルデブラントはニヤリと笑い返す。
「そちらさんにも色々と事情はありそうだが……見逃してやるから尻尾巻いて逃げな」
「逃げるわけにはいかない……貴方をこのままにしたら、カッテが困る」
 シェリル・マイヤーズ(ka0509)の言葉は静かな決意を湛えていた。いや――正しくは意地だろうか。
「なんで……貴方がそこにいるの? 先の革命では……何も変わらなかった?」
 剣呑な雰囲気ではあるが、獅子王には圧倒的な余裕がある。だからこそ、会話には応じてくれる確信があった。
 まずは会話で情報を引き出す。この任務の目的には、情報収集も含まれているのだ。
「お嬢ちゃんにはどう見える? 革命でこの国は変わったかい?」
 シェリルは答えられなかった。彼女の頭は正味なところ、別のベクトルに向いている。代わり、シガレットが応じた。
「まァ確かに、村々の貧乏生活は変わらんな。革命があろうが俺らハンターが命懸けで戦おうが、末端には関係ねぇ事だ。村の連中が貧乏を克服しようと頑張るなら、俺だって応援してェ……だがな」
 シガレットは努めて冷静に、しかし確かな怒りを込める。
「手段として人類同士の争いを助長するのはわからん。革命というが、政治的な目的達成のために暴力や恫喝を用いてるだけだろ?」
「アンタが革命を起こして以来、この国は大量の血を流してきたっす。でもやっと天誓で一つの節目を迎えられたっす。革命という手段は否定しないっす。でもアンタは先代皇帝で現皇帝の親っす。アンタの理想は革命でしか叶えられないんす? 他の方法では無理なんす?」
 神楽の問いかけに獅子王はしばし思案し。
「他に道はねェな」
「せめてヴィルヘルミナ様達と一度話し合いの場を持ってくれっす! 解ってるっす? このままだとどっちが勝っても親殺しか子殺しっすよ!」
「そうなるだろうな」
「ヒルどん……本気なのかの? 革命は親子喧嘩のような簡単なものではないのじゃ。革命を成した後のルミナどんやカッテどんの処遇はどうするのじゃ?」
「当然、オレか奴らか、そのどちらかが死ぬことになるだろうな」
 カナタは内心焦っていた。ヒルデブラントの動きは極めて読みづらい。
 確かに革命を起こすなら今しかないだろう。すべてにおいて、まさに「今」という好機にピースをはめ込んでいる。それは理解できる。
 だが――目的がどうにもピンとこない。革命を起こしてその結果、ヴィルヘルミナやカッテを部下として重用する……それで国家の地固めという可能性も考えたが、どうもこの回答を見るに違うらしい。
「貴方は……家族を何だと思ってるの……?」
 唇を噛みしめ、シェリルが問う。
「最初は、貴方が見つかって嬉しいと思った。記憶喪失でもしがらみがあっても……カッテの家族だから。それなのに……貴女は自分の子供を殺すの?」
「オレの生き方に例外はない」
「だったら……例えとーさまでも、カッテには会わせられない。カッテの友として……私が貴方をぶっとばす!」

「やっぱお前ら面白ェな。いいぜ、気が変わった。いっちょ揉んでやる!」
『雑魚の相手ばっかりで飽き飽きしてたし……少しは楽しませてもらうわよん!』
 クルヴェナルが構えた槍が急激にマテリアルの輝きを放つ。
 投擲された槍は閃光となってハンターらに襲い掛かった。それも、軌道は一直線ではない。
 何度も空中で折れ曲がり、捻じれながらほぼ全員に襲い掛かった。
「一度の投擲で敵を全滅って、こういう事ですか!?」
 咄嗟に蒼機剣で受けるソフィアだが、威力はすさまじく大きく体勢がよろける。
「ぬおおッ、こんなの避けられぬのじゃ!?」
 全員が回避できずに各々槍に翻弄されるが、カナタが回復に動けば持ち直せる。
 今の脅威は次弾を阻止できぬこと。ルイトガルトは攻撃に怯まず、真っすぐクルヴェナルへ突撃する。
「精霊ならば、異端審問の力から逃れられまい」
 走りながら軽く剣を振るうと、ルイトガルトの身体を黒いオーラが覆い、影の中で赤い瞳が輝く。
 飛び掛かるように剣で打ち付けると、クルヴェナルは槍をくるりと回して受ける。
「懐に入り込んだ状態で、槍での防御……この技量、流石は英霊か」
『その技……アタシたちの時代のものね? 継承者がいるなんて、嬉しくなっちゃう!』
 一方、パーシヴァルも動き始めている。
 負傷して倒れている神楽とシガレット、そしてメンバーに視線を一巡させ、相手に選んだのはソフィアだ。
『人間とは戦わないという制約ですので』
「そう来ると思ってましたよ!」
 ソフィアの構える星神器「ブリューナク」に赤い稲妻に似たマテリアルの波動が付与される。
「正直勝てる気はしないので……せいぜい凌がせてもらいます!」
 放たれた銃弾、これをパーシヴァルは鞭のようにしなる剣で簡単に打ち払う。しかし――。
「只の銃撃だと思ったか? 伊達に大精霊の力は借りてねーっての!」
 見切るのは容易でもダメージを完全には殺せない。そして雷撃がパーシヴァルの身体へと伝っていく。
「動きが鈍っていては、かわしきれぬじゃろう!」
 そこへカナタがプルガトリオを放つ。地面から突き出す幻影の剣が、次々にパーシヴァルを貫いた。
「よし止まった! けどこれ近づかれたらアウトっぽくないです~!?」
 カナタもソフィアも前衛タイプというわけではない。パーシヴァルが懐に入ってきたら、返す手がなかったりする。
「どうして絶火騎士がヴルツァライヒについてるんすか!? その理想に惹かれたからっす? それともヒルデブラントに惹かれたからっす?」
 時間稼ぎにと、神楽が慌てて声を投げかける。
『まあ……両方ですかね』
『アタシたちにとってはある意味当然のことなのよ』
「どういうことだァ? 絶火騎士にとって、正統性のある戦いだとでもいうのか?」
『正義とは己の信じる真実に向かう行い。私達はただそれに従っているだけのこと』
「……正義か」
 ふっと、ルイトガルトの頬に笑みが浮かぶ。
「貴様らの考えそうなことだな。戦いでしか事を為せない者にとっては、虚しい響きだ」
『あら? アナタにはわかるのかしら?』
「わかるとも。我が騎士道は――殺すこと。ある意味において、貴様ら英霊と同じもの」
 しかし――だからこそ、ここでの敗北は認めがたい。
「悪いが喧伝材料になるのは御免被るのでな。痛み分けは覚悟してもらう」
『あら。目の前の戦いで死んでもいいってその目、アタシ好きよ』
 クルヴェナルが槍を構える。その一撃、正に神槍の域。
 妥当に考えて無効化は不可能。そこでルイトガルトが選んだのは――そもそも防がないことだった。
 腹を槍先が貫通すると同時、渾身の一撃を振り下ろす。
 妖剣の切っ先が背後へ引いた英霊の胴を袈裟に斬りつけると、互いによろけ、構え直す。
『アハッ! 思い切りのいい女の子ねぇ♪』
 攻撃と同時、ブラッドドレインで傷は塞ぐ。それでもクルヴェナルの方がダメージ交換においては有利と知った。
 それでもここでクルヴェナルを抑えることには意味がある。戦闘不能後も、カナタのリザレクションが期待できる。
 一網打尽にされるよりは、ここで根競べを演じた方が有意義だ。

 一方、シェリルはヒルデブラントに戦いを挑み――簡単にあしらわれていた。
「どうした小娘? 偉そうに吼えといてこの程度か!?」
 可能な限り加速し、足を止めずに周囲を駆けながら斬撃を繰り出す。
 それをヒルデブラントは殆ど目で見もせずに、片手の剣で次々に打ち払う。
 背後に飛びながら手裏剣を投げても、距離を取って銃を撃っても、ダメージを与えられる気がしない。
「この人……本当に強い……っ」
「ヒルどん、片目潰れててあの反応速度か……もう滅茶苦茶じゃな……ッ」
『人格的には腐ってますが、正真正銘の英雄ですからね』
 身体を雷撃で痺れさせたまま、気にする様子もなくパーシヴァルは突っ込んでくる。
 結局距離を詰めてしまう事が最適解と理解しているからだ。
 ソフィアは制圧射撃で動きを封じようとするが、パーシヴァルは空を舞い、鞭の斬撃で広範囲を薙ぎ払う。
『お返しです』
「ぐ……っ、こっちも毒か……!?」
 ダメージを潰しきれず、刃を受けたソフィアがガクガクと震えながら膝を着く。
 即座に自らに浄化術を使い解除。続けてカナタがレジストを張る。
『遅い』
 対策している間に次が来る。ソフィアの目の前にまで接近したパーシヴァルとソフィアが刃を交える。
『星神器……大精霊の選んだガーディアンですか』
「絶火の騎士も星の守護者みたいなものでしょう? 同じ守護者同士、刃を納めません……かッ!!」
 至近距離でブリューナクを発砲するも、パーシヴァルは背後に倒れる様にして回避。バック転の爪先で銃口を上に蹴り上げ、第二射も阻止する。
「そちらもただ暴れてるわけじゃあるまいし、何か狙いがあるんですよね?」
 続けカナタがプルガトリオを放つが、パーシヴァルは回避に対応を切り替えたようで命中しない。
「ぬああッ、カナタが忙しすぎるのじゃあああ!!」
 回復も支援も正直追いつかない。そしてこうなってくると、神楽とシガレットは見ている事しかできない。
「革命戦争で……カッテは、何が起きてるのか……理解するしかなかったって言った。でも目を背けず、貴方の始めた事を今も続けてる。へーかが記憶喪失になっても、ずっと……!」
 シェリルとヒルデブラントの間には埋めがたい実力差がある。
 腐っても歴代最強、力で国をひっくり返した英雄だ。現実からは逃れられない。
「貴方が決めて、貴方が進めたことでしょ……それをどうして邪魔するの!?」
「それがオレの決めたものにすぎないのであれば、な!」
 剣を持たぬ手を振り上げ、拳を固めて繰り出す。
 シェリルはガードしたが、その上からでも衝撃が走り、小柄な体躯が縦に地べたを転がった。
「どうした? まだ鼻血が出て舌を噛んだだけだろ? 骨は折れちゃいねぇし、武器も無事だ。立ち上がって意地を通せ!」
 歯を食いしばり、鼻血を拭って立ち上がる。
 この人が何を考えているのか、全然わからない。
(どうして私を……斬らないの?)
 殺せたはずだ。もう何度でも。
 殴ったり放り投げられたり。遊ばれている? いや、違う。待っている。ただ、立ち上がってくるのを――。
「ひえぇぇ~~っ! 回復あるからって、流石にもうボロボロですよぉ~~!!」
 パーシヴァルから逃げ回りながらソフィアが悲鳴を上げる。
 ルイトガルトも劣勢が続いている。回復スキルはまだ使えるが、だからこそこれ以上はジリ貧だ。
「……仕方ないのじゃ! ソフィアどんが動けなくなる前に引き上げるのじゃッ!」
 ソフィアは踵を返し、ブリューナクを構える。
「よし来た! さんっざん切り刻んでくれたお礼……たっぷりお返ししますよ!」
 星神器の真の力が解放される。守護者に許された、一撃限りの必殺技。
「マテリアル解放! ラヴァダの光条……吹っ飛びやがれぇぇぇえええっ!!」
 太陽の光にも等しい一撃が三人の敵に襲い掛かる。
 ヒルデブラントはラストテリトリーの力で攻撃を集めようとするが、ソフィアはあえて攻撃地点をずらし、爆風に巻き込む形で三体を狙う。
 ラヴァダの光条は光速の一撃。回避できず、三体まとめてダメージを与えることに成功した。
「やっぱり……貴方は仲間を守るんだね」
 その光の渦をチェイシングスローで突き抜け、シェリルは剣を振り上げる。
「仲間は想えるのに……どうして家族は、想えないんだ!」
 刃は獅子王の身体を切り裂いた。ラヴァダの光条で体制を崩していたのもある。
 だが――普通に考えれば撤退するべきタイミングの攻撃を、ヒルデブラントは目で追いながら、笑顔で受け入れたような気がした。

 星神器の攻撃をきっかけに双方は距離を取った。一先ずこれなら痛み分けと言っても詐欺ではあるまい。
「今は村から引いて。村人達が選んでないなら……彼らの道を決めないで。それじゃ……貴方の変えたいものは何も変わらない……」
「道を決めないで、か……フッ、オレ好みの言葉だ」
「結局あんた何がしたいんだ? 歪虚という共通の敵がいて、種族や生まれの壁を超えて協力しあえている現在に逆走しているぞ」
「それはお前らの視点だろ? お前自身が言った通りの事だ」
 シガレットも理解はしている。所詮、政策がどうあれそれは帝都や一部の人々の認識。
 何も変わらずに水汲みで凍える子供を救う方法など、シガレットにもわからない。
「せめてヴルツァライヒという看板はなんとかならんのかの? ヒルどんで新しい組織名を決めた方が、誤解がないように思うのじゃが……」
「いや。ヴルツァライヒという名が必要なのだろう」
 剣を鞘に納め、ルイトガルトは目を瞑る。
「蟲を引き寄せていた灯りが再び灯れば、今まで引き寄せられなかった蟲も姿を現すだろう」
「ほぉ。お前さん何かオレに縁があるんだろう?」
「レーデル家のルイトガルトだ」
「そうか。悪いが記憶にねぇな」
「……だろうな。記憶されたいとも思わん」
「やっぱり、先帝サマの狙いはそういうことですか」
 ソフィアはしきりに頷く。であれば、こちらを追撃してこないのも納得だ。
「……貴方は帝国の負の遺産を全部背負って……自分ごと断ち切らせるつもりなんだね」
「おう、そうだぞ」
 獅子王はまるで隠す事ではないと言わんばかりに、腕を組んでニッカリと笑う。
 だが、シェリルは笑えない。それは――結局、どちらかが死ぬまで終わらない戦争だ。
「異を唱えるなら好きにしろ。オレは逃げも隠れもしないからな。また会おうぜ、ハンター」
 高笑いをしながら男は去っていく。
 敵は退き、その目的についても知ることが出来た。
 圧倒的劣勢で始まったことを思えば、極めて優秀な結果であったと言えるだろう――。

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  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナ(ka2130
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • 戦場に疾る銀黒
    ルイトガルト・レーデル(ka6356
    人間(紅)|21才|女性|舞刀士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/16 15:55:53
アイコン 相談卓
シガレット=ウナギパイ(ka2884
人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/09/21 18:52:33