初依頼に幸あれ

マスター:藤城とーま

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2014/06/27 19:00
完成日
2014/07/01 22:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ハンターさんと変な職員

最近賑やかになってきたハンターズソサエティ。
こうして連日依頼を見に行っているというのに、依頼に入るのは容易な事ではなかった。

「……む」
依頼を見て思わず小さく唸った男がここにも一人。訓練場周辺でよく見かける、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)。
表情が乏しくとも、彼にはそれなりに人間的な部分はある。
気になる依頼が確定していたり、そもそも空いている依頼が無ければ驚いたり残念がったり――顔に出さないまでも、一応心の中で感情は出している。ちなみに、少し残念がっているようだ。

ハンターを生業にしているのはこの男だけではないし、仕事にうまくありつけるかは、当然運も絡んでくる。
暫くは仕事も回ってはこなさそうだ、と思い、ハンターオフィスを出て行こうとすると――……。
「マクシミリアンさん」
「……?」
不意に声を掛けられた。何事かと肩越しに後方を振り返れば、カウンターに座っている女性職員が笑顔で手招きしていた。
呼ばれるまま近づいてみると、人懐こい笑みを浮かべた職員は、いきなり『マクシミリアンさんは暇ですよね』と切り出した。
「……急になんだよ」
「訓練場周りでウロウロしてますが、割と時間空いてますよね。最近毎日オフィスの依頼を無愛想に眺めてましたし!」
「俺は至って普通に見てるだけだが……ニタニタしながら依頼を見る奴がいるのか?」
「まー、人それぞれ? ですけどね!」
あはっ、と言って笑う職員。
用がないなら帰るとマクシミリアンが方向転換したところで、むんずとジャケットを掴まれる。
「おや! 逃がしませんよ! 暇そうなベテランハンターに仕事をというお達しなんですからね!」
そう言って微笑んだ……つもりなのだろう。マクシミリアンや他のハンターから見れば、ニタリと笑いながら袖をつかんで離さない職員の目は血走り、ある種の執念すら感じられるものであった。
「離せ」
「話せ? 依頼の話ですね! あのですね――」
「まず、お前が俺の服を掴んでいる手を離す。その後、お前から依頼の説明を聞いて俺が受けるか判断する、のが流れだろう」
指摘されて、あらあらそれもそうでした、と言いながら服を離す職員。
ヨレヨレになった服を手で伸ばしつつ、無表情でマクシミリアンは彼女から話を聞いた。


「……初心者の付き添い?」
「はい! リアルブルーからのハンターさんも増え、クリムゾンウェストのハンターの方々もぐんぐん登録が増えまして。『今、ハンターが熱い! ブーム到来!』……みたいな」
「そんな軽い気持ちでやらせていいのか?」
呆れたような声を投げるマクシミリアンに、職員は刮目して『そこです!』とハンターオフィス中に響くような大声を出して指を彼の眼前に突きつけた。
マクシミリアンも目を通常より見開き、依頼を探している他のハンター達も、ぎょっとしてそちらを見ていた。

「……そう、ピクニックとは違います。狩る側も狩られる側も命がけなんですよ。その覚悟がなければ、マクシミリアンさんみたいに、俺の敵は斬るとか、スキルの名前叫びながら突撃したりしないんですよ!」
「おい。俺はそんな事をした覚えは無い。適当言うな」
マクシミリアンの訂正も聞こえていないようで、更に職員の女性は『だからこそ』と、一つの依頼を取り出した。
「戦闘経験のないハンターさんと一緒に出かけ、戦いをサポートするお仕事を、戦闘慣れしたハンターさんに頼んでいます。記念すべき初依頼は、きちんと成功させたいですよね」
言っていることは分からなくもない。ふぅん、と言いながらマクシミリアンは己の初依頼を思い出そうとしたが……その記憶が呼び起こされる前に、職員が『決まりですね!』と嬉しそうな声をあげたため、マクシミリアンは鬱陶しいものでも見るように眉を寄せた。
「辺境に、丁度雑魔を討伐してほしいという要請が有りましてね! 初心者さんが多いので、マクシミリアンさんを入れておきますっ」
「おい」
「雑魔は馬型5匹でして」
「聞け」
「比較的大きな馬で、もし普通の馬だったら、いい値で売れてたのに雑魔だと倒さないといけないから残念だなとか――」
 まだ尚も言葉を重ねる職員に、マクシミリアンは机に拳を置く。だん、と強い衝撃音が彼女の言葉を掻き消した。
 ひきつった顔のまま固まる彼女の目に映るのは、鋭い目つきをするマクシミリアン。
「……勝手に決めるな。それとも、そうしなければならない理由があるのか」
「馬に蹴られて死んじゃったら、大変だからです。先輩のフォローが行き届かない、黒い企業だという噂が出たらマクシミリアンさんたちも私も仕事が無くなって困ります。路頭に迷います」
「それは」
「後進の育成も大事な任務ですよ!」
 たまにはハンターズソサエティのお願いも聞いて、と泣き落としに入ったようだ。
 再び帰ろうとするが、むんずと裾を握られる。引っ張っても離してはくれない。

「…………わかった。ハンターたちが危なくなったら助ければいいんだろ」
「ちゃんと協力してくださいよ! 見てるだけとかダメですよ! 重体なんか負わせたら報酬なしですよ!」
 マクシミリアンに念押しすると、職員は恐るべき速さで依頼への参加処理をし、完了ですと笑顔を向けた。
「よろしくお願いしますよ、先輩っ」
「……無理を言った分の報酬はきちんと払えよ」

リプレイ本文

●辺境の大地

 依頼を受けた6名と、その同伴者。
 彼らは高いリーゼ(壁)に覆われたその向こうに思いを馳せる。
 ふふふ、と艶のある声で楽しげに笑ったのはラーラ=ラ=ロガ(ka0200)であった。
「最初の任務、って……なんだかわくわくするわ。期待も、不安も入り交じって変な感じだけれど」
 仲間たちへと微笑めば、そうですねと不知火陽炎(ka0460)も小さく頷いた。
「私にとってはこの世界で初めての戦闘行為であり、皆さんにとっても……初依頼でしたよね」
 この世界と言っているように、リアルブルーの出身である陽炎。
 目を細めると気を落ち着けるようにゆっくりと息を吸う。
「……やれることを、最大限やってみます」
 あまりヴァイスさんの手を煩わせないようにしたいですから、と後方で地図を確認しているマクシミリアンを振り返った。
「既に俺もそのつもりだ。危険と感じた際には手を貸すことにする。だからって、気負いすぎにも注意しろよ」
 仲間もいるんだしな、というマクシミリアンの言葉に、雪風 凍華(ka2189)は感情を映さぬ黒瞳を、集まったハンターたちへと向ける。
「そうだね……頼りになる先輩や、仲間もいるんだし……」
 陽炎と同じくリアルブルー出身の凍華は、転移する前の暮らしを振り返る。
 多数の穢れ仕事を受けてきたことや、頼れるのは自分しかいなかったことを。
「今回は……自分だけの力で戦うわけじゃないから……」
 仲間だけではなく、己に言い聞かせるようにそう呟く。
「そうさなぁ……新人ハンターにはうってつけの依頼、って感じではあるよな」
 葉巻に火をつけ、紫煙をゆっくりと吐いたナハティガル・ハーレイ(ka0023)が、フッとシニカルな笑いを凍華へ向けた。
「――俺も、その新人だけどな? ま、よろしく頼む」
 そう言いつつ、再びうまそうに葉巻を口元へ持っていくナハティガルだったが、依頼された内容を思い返していた。
「請け負ったのは雑魔退治だったよな。疾走する馬ってのは、いいモンなんだが……」
 敵じゃ良くはねえよな、と肩をすくめる。
「きっと、この大地を馬の背に乗って走り回ったら……さぞ気持ちがよいのでしょうね」
 帽子をかぶりなおしながら、マリーシュカ(ka2336)は残念だわ、と至極悲しそうに口にし首を横に振る。
「あたし達が対峙するのは馬ではなく、馬型の雑魔だけ……。そして、それももうすぐ居なくなってしまうのね」
 とても残念だわ、と再度呟いたが、表情はだんだんいつものニマニマ笑いへと変わっていった。
「さあ、そろそろ雑魔がいるらしき戦域へ向かおうか。脅威は取り除かないとね……」
 凍華は皆に声をかけると、辺境へと続く門に向かって歩き始めた。

●ウマい具合に発見

 要塞を出て、広大な平野に目を細めた6名。
 ここから敵を捕捉できるだろうか。そう思った矢先、ナハティガルは『アレか?』と、指で何かが見えた方角を示す。
 距離にしておよそ1キロほど先だろうか。ここからでは米粒よりも小さくしか見えないが、何か動いている――ようにも見える。
 しかし、あれが本当に雑魔であるとも限らない。とりあえず距離を詰めてみることにしたハンター達。
 急ぎ足で近づいていくと、発見した時は小さかったその姿が徐々に大きく、正体も明らかになっていく。
『馬の形』をしているが、明らかにそれは『馬ではない』ものだ。
「雑魔に違いないけど、ターゲットの行動を観察し、警戒しなくちゃ……不用意に距離を詰めてはいけない」
 しかし、準備は怠らないでと凍華は皆に告げ、銃を強く握る。
 雑魔たちは少し駆けては立ち止まり、空気の匂いを嗅ぐかのように鼻先を上に向ける。
 5匹の馬は背の低い草花を踏みしめ走り回っているだけにも見えたが――1匹の黒馬がハンターたちに気付き、身体ごと向き直ると、残雪を蹴散らし駆けてくる。
 それを合図にしてか、残りの4匹もやや遅れて馬首を向け、こちらを観察した数秒後に駆けだした
「あらあら~、見つかっちゃったわぁ~。見つめ過ぎたかしら?」
 ラーラがのんびりと朗らかな声を上げるが、あまり大変そうには聞こえない。
「むぅ……。雑魔の出現が街中ではなかったので、被害が出ずに済んでいますが……こう、何もないような場所では罠も仕掛けにくいですね」
 もっとも、それどころじゃないですが、と言いながらコートニー・ヴァンシタート(ka1724)はワンドを握りしめる。
 障害物の多い街中であれば、ロープを張るという簡単な罠でもおびき寄せる事は出来たなぁ、と思い立ち、同じように縄を張れるような箇所はないかと周囲に視線を走らせ……マリーシュカの姿を捉えた。
 帽子が風に飛ばされぬよう押さえつつ、身を低くして移動……しているかと思えば、小石をいくつか拾い集めている。
「これ? 敵の気を引いたりするための投擲用に、使えそうかなって思ったの……ふふ」
 コートニーの怪訝そうな視線を感じたマリーシュカが意図を伝え、手のひらに乗った石を見せる。
「遠くから射るのと近接……おお、丁度戦いやすいバランスじゃねーかな、俺たち」
 そこで、ナハティガルは仲間達の武器を見た後、簡単な作戦を提案。
 近接が得意な者と、遠距離が得意な者がペアを組んで、各個撃破していくというものだ。
「馬が2匹以上集中しちまった所は、白兵得意な奴が急行して叩こうぜ」
 そこは臨機応変かつ相互補助な、と白い歯を見せて明るく言うと、数人がつられて柔らかな表情で頷く。
「では……どなたかよろしくお願いします!」
 陽炎が重藤弓を握り、肩越しに仲間に視線を送ると、マリーシュカが『まかせて』と烏枢沙摩へ手をかけ、ニマリとした笑顔を向けた。

●ウマが合うならウマくいく

 その場から正面、左、右に2名ずつ分かれて駆け出す。
 まだ、魔法の射程内ではない。コートニーがワンドを構え、集中を高めているところに陽炎が声をかけた。
「私が初撃をさせていただきます!」
 射程の長い重藤弓を引き絞り、陽炎が左側面より馬の胴を狙って矢を射る。
 動くものに当てるのは大変だが、馬は胴が長いため狙いやすい部類だったようだ。
 馬の肩に矢は突き刺さり、身体を傷つけられた怒りか、1匹の馬は陽炎へと狙いを定め、列から外れる。
「光よ、敵を貫け!」
 正面から疾走してくる馬の鼻先に向かって、コートニーがマジックアローを唱える。
 狙い違わず一番手前の雑魔へ炸裂し、ダメージはもとより衝撃と音に驚いた馬は、前脚を高く上げて仰け反った。
 動きを止めたため、真後ろに連なる馬の動きを極端に鈍らせる。

「ありがとう……とても、狙いやすいよ……!」
 凍華のターコイズブルーの瞳は、もたつく馬の脚を狙っていた。
 トリガーを引く瞬間にマテリアルを強く込める。
 放たれた銃弾は馬の前膝を穿ち、雑魔は大きくその馬体を崩しふらついたが……なんとか、といった体で踏みとどまると、鼻息を荒げて2頭が凍華へと向かって行った。
「”猪突猛進”――……いや、こりゃ馬だから“馬突猛進”とでも言うべきか?」
 咥えていた葉巻を投げ捨て、スピアをくるりと回して構えたナハティガル。
 美しい金銀妖眼は黒き雑魔を見据えながら、凍華の前へと進み出た。
「――来な、バケモン共。順番にあの世へ還してやるよ」

「できれば、遠距離からの攻撃で1頭は仕留めたいなぁ……と思いますが」
 再度矢を射った陽炎は、距離が詰まってきたためタクトに持ち替える。
「大丈夫よ……十分、頑張ってくれたものね……ふふ、美味しい所は残してもらわなくちゃ」
 マリーシュカは地を駆けるものを使用して陽炎の側を抜け、ウィップで馬の足止めを狙う。
「ねえ? そんなにはしゃがないでほしいわ。砂埃って、目に入ると痛いし嫌なのよ」
 手首のスナップを効かせて馬の鼻先に一撃当てると、今度は足にウィップを絡ませた。
 引き寄せるかバランスを崩させてから雑魔の細い脚を切り落とそうと考えたため、マリーシュカがぐいとウィップの柄を引っ張った。
 だが、窮地に追い込まれた雑魔は、瞬時に駆け出した。
 そのままマリーシュカへと体当たりを敢行するようだ。
 ぐんと迫った歪虚にマリーシュカの瞳は見開かれ、表情から笑みが消える。
「ッ……!」
 朱い刀を握り直したが、片手が塞がっているためウィップを手放す。
 陽炎も異変に気づいたが瞬時に判断を変え、スキルを使用した――瞬間、馬とマリーシュカの間に誰かがすばやく滑り込んできた。
 踏み込んでロングソードを逆手に持ち、下から上へと大きく振ったのはマクシミリアン。
 強烈な斬撃を食らった雑魔は地面に倒れ込み、マリーシュカの間に再び距離が開いた。
「……おい、早く追撃しないと起き上がるだろ」
 後方を一瞥するとスッと後ろに下がったマクシミリアン。
 ハッとしたマリーシュカは、起き上がろうとする馬の首筋へと刀を突き刺した。
「助けてもらっちゃったのね」
「礼ならペアを組んだ奴に言え。攻性強化がなければ、押しきれなかったかもしれないからな」
 ウィップを拾い上げると、マリーシュカへ投げて返すマクシミリアン。すぐに違う班の様子を見に行ったようだ。
 マリーシュカが自分の後ろを振り返ると……手を前に突き出したままの陽炎がそこにいた。
「咄嗟だったので、声かけるの忘れちゃいました」
「……ありがとう。でも、いつまでもそのポーズをしているのは格好悪くない?」
 次に行きましょ、と意地悪く笑ったマリーシュカだったが、礼を述べる時の声音は素直なものであった。

●主導権という手綱

 自分たちのほうへ雑魔2匹を引き寄せることに成功したコートニー。
「初めてなのに、2匹を相手取るなんて……うまく出来るかしら~」
 その様子を満足げな表情で見つめるラーラ。
 女性が振るうには大きな斧を持ち、ヴェールを風にふわりとなびかせて馬型雑魔にゆっくり近づいていく。
 間近に迫る馬。ラーラが武器を構えた瞬間、コートニーのマジックアローが馬の胸元に命中する。
 間髪入れず、ラーラは横合いから攻める。
『踏込』で間合いを詰めると、大きく開いたスリットから太ももを惜しげも無く露わにし、渾身の力を込めて横薙ぎに斧をブチ当てるように振るう。
 その細い身体のどこにそんな膂力があるのかと疑いたくなるほどだ。
 見事に斧は1体の胴を捉え、その肉厚である体を深々と切り裂き、どす黒い血を飛び散らせた。
「馬っていうと巨体なので突進も怖いですが、なんといっても……立派な脚ですから蹴りのほうが怖いですよね」
 想像するだけで恐ろしいです、と間髪入れずにもう1体の脚を狙って、コートニーのワンドから閃光が放たれる。
 魔法が命中した前脚をばたつかせる馬へと、ラーラが斧を振り上げて肘から下を切断。
 離れた所へ刎ね飛ばされた肘下がごとりと落ち、断面から黒い靄を上げていた。
「あら、ごめんなさいね~、痛がらせてしまったわ?」
 口元に手を当てつつ眼を細めて妖艶に微笑むと、周囲の様子を伺う。
 マリーシュカらはナハティガルの方へと応援に回り、『先輩』は、コートニーと凍華を挟んだ中心あたりで
戦況を見つめていた。
「ラーラさん、最後まで気を抜かずに、畳み掛けましょう!」
 再び詠唱の体勢に入ったコートニーに、ラーラは微笑みを返事として投げる。
「奔れ!」
 胸をざっくりと切り裂かれている歪虚へ数回目のマジックアローを放ち、その逞しい首目がけてラーラが戦斧を振り下ろす。
 切断された部位は、地へ落ちるとすぐに消滅を始める。
 両前肘を失った馬は、尻尾を神経質に揺らしラーラとコートニーを睨みつけていた。
 片手で斧の柄を強く握りしめ、呼吸を整えたラーラ。
 重量のある斧が馬の肩口から腿を断ち切るまでは数瞬であった。

●冷静なる眼

 次々に分断した馬が倒れていくのを見たナハティガルは、やるもんだねぇと小さく笑っていた。
 彼もスピアの長さを利用し、常に間合いを調節しつつ戦いを行っていた。
 そして、後方から援護する凍華も落ち着いて複数の雑魔と戦闘を繰り広げている。
「足の付け根を狙うから……怯んだら攻撃を加えてほしい」
「あいよ」
 軽い返事をするナハティガルだが、凍華の射撃と共に彼の槍は正確に馬の身体を貫いていく。
 銃弾は間合い内へ近づく馬には遠射や強弾で脚の付け根を狙い、動きを鈍らせた後射撃でじわじわとダメージを与えていた。
(徐々に合流する仲間は増えている……。近接で叩きやすいようにこのまま足止めを中心に組み立てて、体力を奪っていければ……)
 素早く別の馬へと的を切り替え、胸や脚を集中的に狙撃。
 命中さえすれば弾は小さくとも、殺傷能力は高い。
 そして、コートニーのマジックアローがナハティガルの後押しをするかのように放たれていた。
「おおっと……!」
 蹄を鳴らし、敵の顎を割らんと脚を振り上げた歪虚。
 ナハティガルは上半身を仰け反らせつつ後方に飛び退き、ふぅと安堵の息を人知れず吐いた。
「当たらなけりゃ、いいけどよ……一瞬肝が冷えるよ、な!」
 すぐに間合いを詰め、踏込と強打を併用し、馬の心臓を刺し貫く。
 会心の突きは、歪虚を倒すに十分な一撃であった。
 スピアを引き抜き周囲を見ると、最後の1匹をラーラとマリーシュカ、陽炎が囲んでいる。あれが倒されるのは時間の問題だろう。
「相手の死角から強弾を撃つよ……」
 凍華の言葉に、ナハティガルが馬の気を引きつけつつ、太い首を刺し貫く。
 すかさずコートニーが集中で高めた一撃を放つ。
「これで、終わりだよ……!」
 思いと強いマテリアルを込めた銃弾が、歪虚の頭部を貫通。
 ナハティガルが槍を引き抜いて離れた際に、その巨体は地面へと横たわった。

●殲滅完了

 周囲を見渡し、消えかける雑魔を見つめながらナハティガルは再び葉巻を口に運ぶ。
「フ……仕事上がりのコレが癖になっちまったりしてな」
 満足そうな面持ちで煙を吐きだすと、マクシミリアンに近づき『お疲れさん』と声をかけた。
「保護者同伴、退屈だったんじゃねえか? 何はともあれ無事に終わったぜ」
「俺は仕事が無事に終わればそれでいい。お前たちも良くやったと思う」
 マクシミリアンがそう結び『帰るぞ』と踵を返す。
 陽炎は一緒に組んだマリーシュカに労うような言葉をかけ、すぐに無口になった。
 自分の良かったところや反省すべき点などを振り返っているらしい。
「いいんじゃない? 終わり良ければ総て良しと、いうのだから」
「……うん。本当に、なんとかなって……よかったよ」
 マリーシュカの言葉に凍華がそう呟き、自身の胸に手を置く。
(僕の人生において、初めての真っ当な依頼だったけど――たまにはこういう仕事っていうのも悪くないね)
 誰かを信じて共に戦える事。
 信頼の絆というものの片鱗を感じ取った凍華は、そっと目を閉じた。

依頼結果

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MVP一覧

  • 一刀必滅
    ナハティガル・ハーレイka0023
  • 深淵を駆け抜ける光
    雪風 凍華ka2189

重体一覧

参加者一覧

  • 一刀必滅
    ナハティガル・ハーレイ(ka0023
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人

  • ラーラ=ラ=ロガ(ka0200
    人間(紅)|26才|女性|闘狩人

  • 不知火 陽炎(ka0460
    人間(蒼)|20才|男性|機導師

  • コートニー・ヴァンシタート(ka1724
    人間(紅)|22才|女性|魔術師
  • 深淵を駆け抜ける光
    雪風 凍華(ka2189
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士

  • マリーシュカ(ka2336
    エルフ|13才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
雪風 凍華(ka2189
人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/06/27 03:21:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/23 06:37:09