聖は地に堕ち魔は高らかに笑う

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2015/06/18 12:00
完成日
2015/06/20 22:32

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●穢された誇り
 負のマテリアルを籠めた宝珠を雑魔として使役し、或いは地中に埋めることで近辺の植物を雑魔化させる力を持つ歪虚、べアルファレス。
 兜が蛙の形をしたその奇妙な歪虚とハンター、そして戦いの舞台となる山を守護するベルセルクの女性、御影 小夜子(kz0118)が邂逅したのは先日のことだった。
 次のショーの準備、などとサーカスのピエロのような言動をして去っていったべアルファレスのその後は杳として知れない。
「……ラキエルといい新しくやってきたべアルファレスといい、いったい何が目的なのだ? これ以上後手に回る前に何か足掛かりがつかめればいいのだが……」
 ハンターたちと別れた後、小夜子は一人山を駆け巡ってべアルファレスの影を探していた。
 一人で敵う相手だとは思っていない。ラキエルと同格かそれ以上の力を持つであろうべアルファレスに拮抗する力を、自分が持っていないことを小夜子は理解していた。
 けれどそれならばせめて手がかりを。
 あの愉快犯のような、こちらが苦しむことを何よりの喜びとするような歪虚から有益な情報を引き出すほど話術に長けているとも思えなかったが、何もしないよりは気がまぎれる。
 そして何もせずに静観してこの山がこれ以上蹂躙されるのは小夜子にとって耐えがたい苦痛であり、彼女の誇りを傷つけることにもつながった。
(叶うなら、全ての企みを明らかにする。それが不可能ならせめて、次の演目とやらの手掛かりを探し出す……!)
 黒曜の瞳が怒りに煌めく。足早に進む小夜子がふと足を止めた。
 ――否、一瞬だったが体が竦んで動かなかった。
「……なんだ?」
 強烈なマイナスの気配。それはリアルブルーから小夜子と共に転移してきた祠の方角から漂ってくる。
「まさか、神霊樹の若木に何か仕掛けられたのか……っ!?」
 祠の奥にはまだ司書のいない神霊樹の若木が存在する。
 ネットワークとして使用することはできないが、ラキエルの狙いは神霊樹の若木とこの山に住む存在を全て雑魔と化して剣妃に捧げることだった。
 後任であるべアルファレスが神霊樹の若木を歪虚に都合のいいように力ずくで変質させているとしたら――……?
 もしかしたら罠かもしれない。けれどべアルファレスに遭遇する好機かもしれない。
 罠でも、最悪何かあったことをソサエティに伝えることができればいい。
 最近は都合のいいことに定期的に連絡を取っている。定時連絡が絶えれば異変が起きたと察知してくれることだろう。
 そこまで瞬時に計算すると、小夜子は祠、ひいては神霊樹の若木に向かって駆け出したのだった。

「優れた舞台には演じる項目ごとに背景を変える時間が必要。けれどあまりに冗長だとお客さんは待ちくたびれてしまう。
 早着替えの時間はちょうどキミたちがくれたし、そろそろ第二幕を始めようか」
 いつの間に現れたのだろう、特徴的な兜を被った全身鎧のデュラハン、べアルファレスは駆け去る小夜子の後姿を見てクツクツと陰鬱に笑う。
「楽しい舞台になると良いねぇ。絶望は何より美しい。悲鳴はどんな楽器より素晴らしい。
 命乞いの声は可愛らしくて、血と死の香りに包まれた戦場跡は甘美だ。
 足掻いて足掻いて、むごたらしく屍をさらして、ボクを愉しませてくれる日が待ち遠しいよ」
 サディスティックな、愉悦のにじむ声はしかし同時に紡ぐ言葉の不吉さを際立たせる。
「今回の主役もまた、ボクではないからね。しばし舞台裏から見物させてもらうさ。
 検討を、小夜子。そしてハンターの諸君」
 絶望色の未来を夢見る歪虚は誰に気づかれる間もなく山の木立の中へと姿を消していった。

 一方、その間も神霊樹の若木へと向かって足を進めていた小夜子は再び足を止めた。
 これは神霊樹の若木に起きた異変ではない可能性を、距離と、開け放たれた祠の扉から漏れ出る負のマテリアルが示していたからだ。
「……まさか、ご神体を穢したのか……? しかし、何のために……?」
 祠にご神体として祀られていたのは一振りの太刀だった。
 それを隠すように覚醒した時の小夜子によく似た姿の、九尾の女性の掛け軸が配置されている。
 ご神体を隠していたのは、リアルブルーに祠が祀られていた際、常時不届き者がご神体を盗まないか管理する体制が整っておらず、またひとたび盗まれれば凶器として使うに十分な殺傷能力を持つことを隠す為だった。
 神主のいない小さな神社ではあったが今は継承者がいなく寂れてしまっているだけで、ご神体には強い力が宿っていたのだと、マテリアルの流れをエルフほどではないが感じ取れる覚醒者になってから小夜子は驚いたものだった。
 その強大な力を持つご神刀が歪虚に変じ、べアルファレスの意のままに操られるとしたら。
「……これが、第二幕だというのか……?」
 血で穢された刀は聖性を更に失い、魔性へと変じていくことだろう。
 故郷との縁と、今暮らす世界の無事。はかりにかけたのは一瞬だった。
 そしてこの御神刀は自分だけで破壊できる、雑魔のような下級のものではないと察するのも。
「ソサエティに緊急連絡を……」
 身を翻した小夜子に負のマテリアルが渦巻いた暴風が襲う。
 幹に叩きつけられ、一瞬息が詰まったがそれでも小夜子は自分の役目を果たすために山を駆け下りたのだった。
 彼女の姿が見えなくなると同時に祠から現れたのは、太刀を隠すためにかけられていた女性が絵の世界から抜け出してきたような、覚醒状態の小夜子によく似た出で立ちの人影。
 その女性が人、少なくとも一般人でないことはゆらゆらと陽炎のように揺らめく波動と、その波動に水面を揺蕩うように宙に浮く髪の毛が示していた。
 その右手には歪虚と化したご神体である太刀が、禍々しい輝きを放って握られていた。

リプレイ本文

●護るべき存在(もの)
 ご神体が歪虚に侵食されたことを伝えるために山を降り、ソサエティに駆け込んだ小夜子の傷は起伏のある地を全力疾走したためか当初より悪化したようだった。
 ヴァイス(ka0364)は傷の具合を案じ、自分たちにまかせて小夜子は療養した方が良いのではないか、と話を持ち掛けたがベルセルクの女性は狐面で表情を隠したままゆっくりと首を振る。
「貴殿たちの実力が私より上だということは理解している。今の私が、足手まといになりかねないということも。
 しかしあの祠は私にとって縁のある場所であり、あの山は家族同然の絆を結んだ精霊と暮らした場所だ。
 そして新しい縁を結んだ村の方々の暮らす生活の場所でもある。
 どうか同行させて欲しい。せめて、見届けたいのだ」
「分かった、だが絶対に無理はするなよ」
 ハンターたちが大まかな行動指針を決めている間に応急手当と痛み止めの薬の処置を受けた小夜子は後衛に留まる、という条件付きで同行することに了承を得た。
「絶対無茶はしないでね」
「気遣いに感謝を、舞殿」
 天竜寺 舞(ka0377)の念押しに小さくうなずいて改めて一同は歪虚と化したご神体がいる、小夜子の暮らす山へと向かった。
「本来聖なるものであるはずのご神体を穢して歪虚とするとは、許し難いです。
 微力ながらわたしも力を尽くさせて頂きましょう」
 日下 菜摘(ka0881)の言葉にそのことですが、とためらいがちに声がかけられる。
「未だ敵の掌の上で踊っているというわけですか。ですが、やられっぱなしというわけにもいきませんね」
 声の主、レオン・フォイアロート(ka0829)は疑問に思っていることを道中で小夜子に問うた。
 これはべアルファレスの罠ではないか、という疑いが心に湧いたためだ。
「ご神体は、小夜子さんが確認した時は単独だったそうですが、その存在が知られれば討伐にハンターが乗り出すのは必至。
 べアルファレスは自立可能な歪虚を作り出す能力を持つのに何故単独で放ったのでしょう?
 ご神体が勝てばよし、負けてもご神体に仕組まれた罠が発動するというということなのでは……。
 以前回収した負のマテリアルを籠めた宝珠のように、ご神体を砕けば負のマテリアルがあふれるといったような事態を想定した方が良いのでは、と思うのですが」
 レオンの言葉に小夜子だけでなく同行したハンター全員が足を止めないまでも思案のために多少動きが鈍くなった。
「ご神体の使い手は、覚醒状態の小夜子さんに似ているとのことでしたね。
 小夜子さんと何か関わりがあるんでしょうか。例えば、血を引いているとか。
 ご神体と小夜子さんに関係があるなら、呼びかけや祝詞を唱えることでご神体に込められた力が活性化されて、浄化という形でべアルファレスのたくらみを阻止できないかと思ったのですが……」
「確かに姿形は似ている面もあるが……私の家は元々面師の家系で、祠というかあの神社には舞の稽古の後掃除と参拝をしていた程度だからな……呼びかけに答えてくれるほどの縁を結べていたかどうか」
 狐の面で表情は分からないが、小夜子は自分の無力さを歯噛みしているようだった。
「……となるとご神体の破壊も念頭に置かないといけないって事か。奴のたくらみに乗る上に、小夜子さんの故郷との繋がりを断てってのか!」
 リシャール・ヴィザージュ(ka1591)が悔しそうに憤怒の声を上げる。
「奴の真の企みを阻止する手掛かりを得るためとはいえ……済まない、小夜子さん」
「……否。故郷との縁が一つ失われることは無念だが……本来幸福を願って祀られたものが悪用されるのでは、ご神体も気の毒だ。ヴィザージュ殿の気遣いは有難いが、私はこの世界で生まれた縁を破壊してまでご神体に拘ろうとは思わない」
 べアルファレスの策略に乗るのは癪だが、と苦い口調で続けられた言葉は、ハンターたちが感じている思いとおそらく同様だろう。
(せっかく、村の方とも仲良くなれているのに、まだ、小夜子さんを惑わせるのですね。)
 ミオレスカ(ka3496)は戦闘になったら後方で小夜子を護ろうと決意を固めながら、静かにべアルファレスのやり口に怒りの炎を燃やしていた。
「本来ならば祈り、願い、自ら立すると誓いを立てるものこそご神体。人の願いと夢こそを見守る刀が、血塗られた悪夢を紡がぬように、叶うべきものは、光ある誠心だと信じるが故に。
 この剣戟の歌、奉納致しましょう」
 織宮 歌乃(ka4761)は鳥居をくぐる際、神霊に礼を示す為お辞儀をした後凛とした声を響かせた。
「えぇと、この先に祠があって、そこに歪虚となったご神体がいて、その奥に神霊樹の若木があるのよね。
 ショーだかなんだか知らないけれど、ややこしいことしてくれるじゃない……!」
 グエン・チ・ホア(ka5051)が呟き、その後は不意打ちに備えて全員で周囲に気を配りながら祠へ続くけもの道を歩く。
「嫌な、気配がします。歪虚となったご神体、どうやら祠の辺りに留まっているようですね」
 エルフ特有のマテリアルに対する感覚の鋭さで歪虚の負の波動を感じ取ったのかミオレスカが注意を呼び掛ける。
「結構、大物っぽい感じだな。流石ご神体、といったところか」
 リシャールもまた悪しき気配を感じ取ったのか表情が険しくなった。
 木立を抜け、祠が視界に入ると同時に髪を揺蕩わせ、陽炎のように揺らめく気配を持った、小夜子によく似た出で立ちの女性がカマイタチを飛ばしてきた。
「警告もなしかよ。説得する隙が作れるかどうかが既に問題って事か」
 ヴァイスが剣圧でカマイタチの相殺を図りながら呟き、ハンターたちは祠にたどり着く前に展開していた布陣を、戦いに適した距離にあわせて取り直した。
「ご神刀を祀る儀式とかに心当たりあるか?」
「祭祀を執り行う人のいない神社だったからな……期待に添えず申し訳ないが、心当たりがない」
 第二波のカマイタチを小夜子が受け流しながら答える。
「じゃあとりあえず鎮められないか戦いながら試すしかないか」
 舞が前に出て攪乱のために動き出す。
(あのご神体は、小夜子さんにとってリアルブルーとの繋がりを感じられるたった一つの縁だった筈。
 それを利用して、あまつさえ小夜子さんに瓜二つの存在に震わせるとか、あの蛙頭、絶対ぶっ飛ばしてやる!)
 怒りを力に変換するように瞬脚で一気にご神体を操る精霊の懐に迫り、一閃。
 物理攻撃が通るようなら精霊であり霊体である使い手を無力化した後で御神刀の浄化に取り掛かれないか試す算段は、しかし失敗に終わった。
 核と本体を兼ねている御神刀に向けての攻撃以外は、物理的な物もそうでないものもすり抜けるだけだったのだ。
「あー、もう! 霊体って厄介だなぁ……っ」
 狙いをご神体へと変えながら、周囲の木々と、心の中で謝りつつ祠も足場にして死角や頭上から斬りかかる舞。
 舞の攻撃がより確実に死角からのものになるように、レオンは真正面から攻撃を仕掛ける。
 刺突一閃を歌乃とタイミングを合わせてご神体へ叩き込んだ。
 手ごたえは感じたが、元となったご神体が強力な力を持っていた分、歪虚としてもタフなのか精霊は前衛には刀で応戦し、隙を見つけては強力な風の刃を放って後衛にも攻撃を仕掛けてくる。
「まずは序段は舞い、詠の剣の調べへ繋ぎましょう」
 歌乃は歪虚の注意を引くため、仲間の攻撃の直前に電光石火で背面に回り込んで挟撃を仕掛ける。
 精霊が自分を中心にカマイタチを周辺へ放つと、祠が余波に耐え切れずに崩壊した。
「うわ、ご神体の精霊なのに罰当たりな……自我、残ってないのかもともとないのか、暴走してるのか……」
 足場にしようとしていた祠の倒壊を受け、慌てて近場の木を代わりの足場としながら舞が顔を引きつらせる。
「ご神体が自分の眠ってた祠壊すとか、どうなのよ……」
 グエンもまた呆気にとられつつも攻撃の手は休めない。
 自分が本命と見せかけ飛び込むが、本当は彼女はフェイント。自身の身を囮にして仲間に攻撃を叩き込んでもらう行動と、一緒に突撃した仲間の胸や肩を借りて高く飛び、周囲の地形を利用して死角からナイフで斬りつけるトリッキーな動きを見せた。
「相手の射程が、大体わかりました。ヴァイスさん、どうぞ前進してください。
 小夜子さんは、もし、マテリアルの異常を感じるようでしたら、教えてください」
 ミオレスカがカマイタチの射程外に自分の身と小夜子の身の置場を確保すると、冷気を纏った射撃攻撃を行う。
 リシャールが動きが止まった隙を見て御神刀目がけて剣を叩き込み、動きが再開される前兆を読み取ってドッジダッシュで距離を取る。
(東方でいう地脈が此処にもあるのか……? この山はそれが湧き出る土地で、べアルファレスの最終目的がそれだとしたら、東方から専門家を呼ぶ必要があるかもしれないな。だが、そのためにもまずは)
 再び距離を詰め、攻撃を通さない霊体は無視して本体に一撃を叩き込む。
「調査して、べアルファレスを叩き潰す為にも、先にこっちをどうにかしないと駄目か」
 愉快犯を気取るあの歪虚が今もこの場を何処かから眺めていると思うと苛立たしさもあるが、降りかかる火の粉を払わねば次へは進めない。
 菜摘がレクイエムで歪虚の行動を阻害、遠距離からホーリーライトでの支援攻撃や傷ついた仲間への治癒など、その時に最善と判断したサポートをとり行い、精霊が立ち回る事で後衛が射程内に入った段階でのカマイタチはヴァイスが衝撃波で相殺する。
 御神刀に細かいヒビが入ったのを見て取り、前衛が小夜子に、正気を取り戻すか語りかけてみてくれ、と呼びかけた瞬間だった。
「完全に歪虚化してるとは思うけど、念のため妨害させてもらおうかなぁ」
 暗さを感じる特徴的な笑い声と共に小夜子の周囲にナイフ形の、飛行する雑魔が複数出現する。
「蛙頭っ……」
「御機嫌よう、小夜子とハンターの諸君。ボクの趣向は楽しんでもらえているかい?」
「胸糞わりぃ」
 リシャールの言葉に蛙型の兜を被ったデュラハンは陰鬱さの中に愉悦の混じる笑い声を高らかに響かせた。
「それは残念だ。ボクはとても、とても楽しんでいるんだけどねぇ」
 ミオレスカが制圧射撃として連続した射撃行動を取ろうと魔導拳銃を向けると、雑魔の一体が小夜子の首筋の血管に寄り添うように動いた。
「攻撃を仕掛けるのは君たちの自由だ。でも、ボクを倒す前に小夜子が死ぬよ」
「……下衆が」
 足手纏いにならないように、と最後尾に壱どっていた小夜子が低く呟くと、返事は三度の笑声。
「あぁ、そうだ。ボクの使う宝珠を、小夜子に飲ませてみるのも楽しいかもしれないねぇ。
 地中に埋め込んで徐々に侵食させたことはあったけれど、そういえば生身の、しかも人間で同じことを試したことはなかったなぁ。
 どんな結果になるのか、とても興味がわいてしまったよ。
 狂い死ぬか、覚醒者としてのマテリアルの流れとボクのマテリアルが入り混じって拒絶し合って息を吹き込みすぎた風船のように内側から弾けるか……それとも、人間でも歪虚でもない歪で楽しい生き物に変容してくれるのか……君たちも興味はないかい?」
「そんな悪趣味なことに、興味なんてないよ!」
「思いを共有できないのは残念だねぇ。ボクは実験が好きで、色々試しているだけだというのに。弱っているモルモットは、新しい実験をするのに有効活用するのが一番だと思うんだけどなぁ」
 精霊の攻撃が近接攻撃だけになったので前衛陣はカマイタチを発生させないように、かつご神体に致命的なダメージを与えないように気を配りながら仕掛けられる攻撃を防ぐ。
 後衛陣は小夜子が人質に取られたも同然で、膠着状態が続いた。
「小夜子さんを惑わせて、追い詰めて、どうするつもりですか」
 ミオレスカの固い声にべアルファレスの使役する雑魔は次々と小夜子の身体の急所へとその刃を添わせていく。
「ご神体を破壊して欲しいのさ。そしてその結果訪れる事態に君たちが慄く姿が見たい。
 浄化するのは無理だと思うよ? かなり念入りに侵食させたからね。
 でも、ご神体を破壊させるのは罠じゃないかって気づかれちゃったから、罠だと知りつつも壊すしかない状態に持っていこうかと思って出てきたんだよ」
 勘がいい役者がいると舞台はスリリングで楽しいね、とピエロを気取る歪虚は語る。
「僕がご神体を壊すより、キミたちに壊させて、それが取り返しのつかない事態を巻き起こしたのだと後悔して欲しいのさ。
 それとも小夜子を犠牲にしてボクを倒せないか挑戦してみるかい? 万全な態勢じゃないから犠牲者が増えるだけだと思うけど」
「……っ」
「まぁ、どうしても壊したくないなら、力を注ぎこんだ者としてボクが壊れろ、と念じても結果は同じなんだけどね。
 ただ、それじゃあつまらない」
「とことん下衆だね……アンタが約束を守るっていう保証は?」
「小夜子も役者の一人だ。まだ死ぬ場面ではないから、取引は守るよ?」
「……どの道、浄化の方法は見つかっていません。ならば、歪虚を討つのは目的の一つではありますが……」
 菜摘の言葉に、他の面子も苦い顔で同意を示す。
 レオンが攻撃を受け止め、返す刃で御神刀だった歪虚に生じたヒビに向かって全霊を込めた一撃を叩き込む。
 刀が砕け散り、霊体だった女性が霧散すると同時に、かなり大規模な地震が生じてハンターたちは体勢を崩した。
 べアルファレスも、彼が使役する雑魔も小夜子の傍を離れて姿が見えない。
「第三幕の道が開かれたようだからボクは失礼するとしよう。
 地下の旅を楽しんでくれたまえ」
 地震がおさまると、倒壊した祠のあった場所に地下へ降りる階段が出現していた。
「この先に、蛙頭の言う後悔があるって事……?」
 舞の言葉に応じる者はいない。
 舞台は、まだ暫し続く。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 行政営業官
    天竜寺 舞ka0377
  • 堕落者の暗躍を阻止した者
    レオン・フォイアロートka0829

重体一覧

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 堕落者の暗躍を阻止した者
    レオン・フォイアロート(ka0829
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士

  • リシャール・ヴィザージュ(ka1591
    エルフ|29才|男性|疾影士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士

  • 織宮 歌乃(ka4761
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士
  • 多彩な技師
    グエン・チ・ホア(ka5051
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/17 13:11:49
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 舞(ka0377
人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/06/17 21:15:36