緑の錬金術師

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/18 12:00
完成日
2014/07/24 05:36

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ――帝国にはマテリアルを浄化する技術がない。
 マテリアル公害で汚染したらしっぱなし。歪虚の影響受けたら受けっぱなし。だからこんなにも国内における雑魔発生事件が後を絶たない。
 例えば王国ならばエクラ教の、辺境ならば巫女の儀式によって乱れたマテリアルを正常化する事が出来るだろう。
「……同盟では巫女や聖職者を呼んで浄化をお願いしている所もあるみたいね」
 無論、帝国内におけるマテリアル浄化の方法が全くの皆無というわけではない。
 帝国にもエクラの教えを受ける者はいるし、辺境から流れて来た巫女も全くいないわけでもない。しかし自前の汚染で土地をダメにしたりしているので基本的には自業自得の焼け石に水。それで他国にしょっちゅうお願いするというのも実に締まらない話だ。
「ではなぜ、それでも仮初の平穏を保つ事が出来ているのか」
 帝国は、その領土内にエルフ最大規模の集落であるエルフハイムを擁している。
 エルフ達は自然と寄り添って生きる種族だ。特にエルフハイムのある森は精霊に守られ、汚染から身を守っている。
 そして一部の“維新派”と呼ばれる住人達は森から活動範囲を広げ、帝国内の各地にて大地の浄化を行っている者もいると言う。
 彼らにとって帝国の汚染は他人事ではない。今はまだエルフハイムにまで問題は波及していない物の、それは時間の問題なのだ。だからこそ帝国の環境汚染を糾弾するし、それは至極まっとうな訴えに思えてならない。
「汚染を正常化させる為には幾つかの手段が存在する」
 一つは精霊に訴えかける独自の文化、技法によって儀式を執り行う事。
 そしてもう一つ。それは多くの生物、特にここで言う場合は人のプラスの感情を一か所に集める事。
 これもまた厳密な意味では祭事の一つであり儀式と呼べない事もないのだが、特別な技術を学ばずとも誰でも参加する事が出来るという部分で大きな違いがある。
「異世界から転移してきたサルヴァトーレ・ロッソが、その船内に潜む歪虚を浄化する為に宴を開いた事は記憶に新しい」
 帝国にはそういった祭事も過去には存在したのだろう。そもそもこの国は王国から派生したものだ。
 しかし長い間続いた一部特権階級が国を支配し、私利私欲の限りを尽くした腐敗の歴史の中で多くの祭事は失われてしまった。
「……そういえば、最近は新たな祭事を作ろうとしているみたいだけど。アイドル……だったかしら?」
 ともあれ、今の帝国は汚染の浄化に優れていない、という事である。
「これからこの世界で帝国が生きていく為には……いえ。人が世界と共生する為には、より多くの浄化手段が必要とされる……」
 ハイデマリー・アルムホルムの研究室は帝都バルトアンデルスの路地裏にあった。さほど大掛かりな実験道具を必要としない彼女の研究生活において、金の掛かった居住空間はただの贅沢。むしろ各地に足を運ぶ旅費の方に充てた方が賢い選択だった。
 もう隋分長い間袖を通していない、洗濯もしていない白衣が皺くちゃになって床に放られている。部屋の中には所狭しと鉢植えの植物が並び、簡単な機械構造の“自動水やり機”が水滴を落とす音だけが響いていた。
 これらの植物は帝国各地で採取してきたもので、汚染された植物を正常な状態に戻す事が出来るのかという、彼女の研究において必要不可欠な実験素材だった。
「簡単なのは、新たな祭事を幾つも生み出してしまうか、エルフハイムの技術を大きく取り入れる事だけど……」
 帝国は戦いに明け暮れる事ばかりに頭がいっぱいで、祭事を作るなんて理性的な事は出来ない。ハイデマリーはそう踏んでいた。
「まあ、その辺は殊勝な変態に任せましょう」
 武力で解決する手段がないわけではない。例えば汚染地から延々と発生し続けるスライムを覚醒者が正のマテリアルで滅ぼせばそれだけ汚染は浄化される。何度も何度も同じ汚染地にハンターが赴いてその度に戦闘で浄化すれば、いつかは元通りになる可能性はある。
「まあ、何十年かかるんだって話だけど」
 となれば残りはエルフの力だが、ハイデマリーはそれも半ば諦めていた。エルフハイムと帝国の確執は根深い。ここから外交を動かすにしても、それは政治家の仕事である。
「となれば……何か新しい手段を講じるしかないんだけど」
 手帳を閉じ、眼鏡を外して女は前髪をかきあげる。
 朝日が差し込む窓辺に腰掛け、恨めし気にその光を睨んだ。帝都の空には今日も煙が上がり、光を浴びたそれらは皮肉にも美しく見えた。
 兎にも角にも、何かを変える為に必要なのは動く事だ。静と動で言うならば、どちらが前に進んでいるのかなんて一目瞭然だから。
「……前に進んでいるのか後ろに進んでいるのかは、わからないけれどね」
 眼鏡をかけ直し立ち上がる。本棚に無造作に立てかけてあった魔導銃の入ったケースを手に取り、財布と上着を持って女は家を出た。
 こんな早朝でもこの町は動き出している。人ごみは好きではなかったが、町が眠りから覚めるようなこの時間を歩くのは好きだった。
 汚れた川を小さな船が行き交う。まだ少し肌寒い。銃の入った縦長のトランクを肩にかけ、体を抱くようにして空を見上げる。
 この世界の寿命はどれほど残されているのだろう。今日も無責任に人々は目覚め、生きる為に何かを汚していく。
「それでも、人は生きていたいのね」
 空腹に腹が鳴るので寄り道をしよう。とりあえずパンとコーヒーで一息ついて。それからオフィスに向かおうか。
 そんな事を考えながら女は歩く。その姿はやがて朝もやと町の人々に紛れ、見えなくなった。

リプレイ本文

●興味
「元宙軍SOT隊の君島だ。改めて今回の任務は宜しく頼む」
 びしりとした君島 防人(ka0181)の敬礼に目を丸くする依頼人。一行は目的地である森の前で最後の準備を進めていた。
 と言っても主に手を動かしているのはハイデマリーで、ハンター達はその準備待ちといった所だが。
「今後の活動を見据え、汚染浄化について幾許かの知識と経験を得たい。可能な限りで構わないが、作業を手伝わせて頂けないだろうか」
 眉を潜め防人を一瞥する。正直な所、どうするべきか迷っていた。
 ハイデマリーはハンターに護衛以上の事は望んでいなかった。そもそもしてくれるとも思っていなかったからだ。
 ハンターは金を払えば雇えるが、所詮は傭兵。好き好んで戦いの道を選ぶような連中だから、もっと粗野で乱暴だと思っていたのだが……。
「こと汚染に関しては、実に他人事ではなくて、ね……。僕などで良ければ、是非手伝わせてくれないかい?」
 胸に手を当て微笑みかけるリンランディア(ka0488)。ハイデマリーは機材を片手に立ち上がり。
「エルフが私に協力、ね……」
「おかしいかな?」
「これまでもエルフハイムのエルフには協力を要請してきたけど、門前払いも良いところだった。維新派とコネを持てれば別なんだろうけど、私は人付き合いが雑だから」
「同胞最大の集落、エルフハイム……あそこは閉鎖的で、部外者に開かれた門は狭いと聞く」
 アシフ・セレンギル(ka1073)はゆっくりと瞑っていた目を開き、視線だけをハイデマリーに向け。
「帝国の様子を見る為にこの依頼を受けたが……俺達エルフの持つ技術や古来より伝わる術以外を技術体系を立ち上げんとする意気……というのか。そういったものに興味を持ってな」
「私はエルフの文化についてはサッパリだが、分野は違えど学業や研究で身を立てる事を志している。先人の力になれれば幸いだし、アルムホルム氏の研究を見学できる事で私の何かの糧になってくれれば更に良い」
 ニヤリと笑い、久延毘 大二郎(ka1771)は肩を竦める。
「……マア正直に言ってしまえば、期待をしているのは後者の方だがね。私は私の為にこの依頼に参加している、ただそれだけの事だ。アルムホルム氏もそう警戒しないで貰えると嬉しいのだがね?」
「私の研究に興味を持ってくれる人なんていなかったから、少し驚いてるだけよ。変わってるのね、あなた達」
「良く言われるよ」
 まるで冗談のように笑い飛ばす大二郎。ハイデマリーは相変わらず無表情だが、目元が少し柔らかくなった気がする。
「それにしても、時代は進んでございますね。浄化の技術を、エルフの儀式以外の方法にて探るとは……」
 ガルヴァート=キキ(ka2082)は長い年月を生きたエルフだ。新しい技術の革新をしみじみと受け入れていた。
「妾が浄化の儀式に詳しければ良かったのでございますが……。今回の依頼者の研究が成功すれば、世紀の大発見になるやもございません。それが妾等の肩にもかかってると思うと、闘志が湧いてくるというものでございます」
「そんな大した事じゃないわ。まだ誰にも認められてないし」
「しかし必ず形にすると決意を固めているのでございましょう? でなければ、研究者でありながら自らをそこまで鍛え高める必要はなかった筈ですから」
 ガルヴァートの指摘に目を丸くする。それから腕を組み、小さく息を吐いた。
「……こんなに変わり者のエルフが多いんだったら、最初からハンターに協力を依頼すればよかった」
 それは遠回りな協力許可であった。相変わらず愛想は皆無だが、少しはハンターを信頼したらしい。
「それじゃあ早速提供可能な情報はすべて貰えるかぁ。こっちじゃどうか知らないけど、ボクの所では情報は最大の武器なんでねぇ」
 ヒース・R・ウォーカー(ka0145)の声に依頼人は地図を取り出し説明を始めた。が、そこでアシフは違和感を覚えた。
「こっちの方からうろうろして、この辺行って、多分こっち……」
「……待て。タイムテーブル管理はどうなっている? 目的地ははっきりしていないのか?」
「フィールドワークってそんな物でしょ。しょっちゅう来られるわけじゃないから、目につく事は全部調べたいし」
「マア、気持ちはわからんでもないがね」
「依頼人がどちらに向かうのかもわからないようでは、守りようがないだろうが」
 笑う大二郎にアシフはため息交じりに呟く。ヒースはトランシーバーをハイデマリーに手渡し。
「なら、どっちに行きたいのか思いついた時点で報告しなぁ」
「今回は護衛任務じゃからの。依頼人を守り、敵をぶちのめすのが仕事じゃ。ハイデマリー殿の好きなようにするのがよかろう」
 ギルバート(ka2315)は腕を組みウンウンと頷く。依頼人が勝手に動き回れば護衛は難しくなるのだが、そういう依頼ならば仕方ない。
「安心せい。ハイデマリー殿に危険が及ぼう物なら、ワシがこの身を張って守ってやるからの!」
「それはどうも」
 豪快に笑うギルバートに無表情に頷くハイデマリー。噛みあってないようだが、悪い空気ではない。
 こうしてハンター達は依頼人と共に、汚染された森の中へ足を踏み入れたのであった。


●採取
『……こちらヒース・R・ウォーカー。進行方向上に雑魔を発見したぁ』
 ハイデマリーに確認するように目配せする防人。そしてトランシーバーに応答する。
「護衛班了解。障害を回避し別ルートを使う。進行方向は……」
 森の中を進む一行の中、ヒース一人が先行し、ルート上の雑魔を索敵していた。
 これにより事前に戦闘を回避する事が可能となり、一行は体力を温存したまま森の中を進む事が出来た。
「その道具はなんだね?」
「封印管。汚染の影響を受けた植物サンプルを持ち帰る為の自作の道具よ」
「意外と重さがある。この金属部分、中が空洞で何か入っているね?」
「マテリアル鉱石。純度は低いものだけど。マテリアル汚染を受けた植物は、通常の植物より多くマテリアルを摂取するから、ただ詰めるだけだと枯れてしまうの」
 興味深そうに何度も頷き、大二郎は楽しげに笑みを浮かべる。
「やはり他人の研究という物は興味深い。内容もそうだが、段取りや細かい行動一つ一つにおいても参考になる。この道具など、アルムホルム氏のトライアンドエラーの象徴。これを見ただけで氏の研究過程が浮かんでくるかのようだ」
 封印管を手にうっとりした様子で呟く大二郎。ハイデマリーは彼方此方で詰んだ植物をこの管に詰め込んでいた。
「おぬしそんなに細いのによく大荷物を担いで移動出来るの~」
「慣れ、かしら? 疲れてはいるけど、何だかサンプル採取中は気にならないというか」
「わかる、わかるよ~アルムホルム氏! 知的好奇心を前にした研究者等そんなものであろう」
 両腕を広げハイデマリーに近づく大二郎だが、ハイデマリーはスっと身をかわした。
 と、そこでまたヒースから敵発見の連絡を受けた。しかし次の採取地は開けた川原で、付近を雑魔がうろついていては落ち着かない。
「でしたら、我々の出番でございますね」
 穏やかに笑うガルヴァート。一行は先行するヒースに追いつく為急いで川原に向かい、合流を果たすとうろつくスライム達に狙いを定めた。

「川の水を採取したいの。何か所か取りたいから、このまま北上出来る?」
「勿論じゃ。張り切って行こうかの!」
 腕をぐるりと回し、金棒を構えるギルバート。川原を彷徨っていたスライムが三体、こちらに気づいて接近してくる。
「グリップ、良し。機関、良し。弾薬、良し。後は実用に耐えうるか否か」
 猟銃を構え、スライムを狙う防人。
「敵性ヴォイド確認、これより戦闘に入る」
 接近途中のスライムに銃弾を放つ防人。続いてリンランディアが拳銃を構え。
「風よ、導け!」
 マテリアルの光を帯びた弾丸は防人の攻撃で弱ったスライムを撃破。アシフはワンドを構え、自身の周囲に浮かび上がった炎を束ね、矢と成してスライムへと放った。
「私はもっと研究の様子を見ていたいのでね。早々にお引き取り願おうか」
 大地から岩を出現させスライムへ放り投げる大二郎。これで二体目のスライムも吹き飛んだ。
「この調子ではワシが殴る前に敵がいなくなってしまいそうじゃの!」
「無様に嗤え」
 駆け出すギルバート。ヒースはそれに先行しスライムを斬りつけると、続けギルバートが金棒で止めの一撃をかました。
「採取は完了でございますか?」
「ええ。次に行きましょう」
 不測の事態に備えハイデマリーの背を守っていたガルヴァート。幸い雑魔は弱く、ハンター達の脅威ではなかった。
 そのまま川を上がりつつ遭遇するスライムを殲滅するハンター達だが、遠距離攻撃が強力で大体スライムは近づく前に蒸発していった。
「クリア!」
 銃を構えたまま左右を警戒する防人。消失したスライムの残滓を見つめ、ギルバートはちょっと残念そうだ。
「ワシの見せ場が……」
「なんだぁ? もっと戦いたかったのかぁ?」
「うむ。もう少し頑丈なら良かったんじゃがの」
「それならついでに雑魔化した植物のサンプルも採取したいんだけど……」
 ヒースに肩を叩かれていたギルバートがハイデマリーの一言でぱっと目を輝かせる。
 一行は森に戻り、触手のように蔓を蠢かせる植物歪虚を探したのだが……。
「適性ヴォイド確認、これより殲滅する」
「これが汚染された植物……。本来の形から歪められ闇に染まった自然とは、こうも醜いものか……」
 発見するなり銃をぶっ放す防人とリンランディア。更にアシフがこれでもかと言わんばかりにウィンドスラッシュで切り刻んでしまった。
「ワシの出番が!?」
「このくらい小さければ十分か?」
 破片をつまんでハイデマリーに渡すアシフ。涙を流すギルバートの肩をガルヴァートがそっと叩いた。


●理解
「そろそろ休憩に入っては如何でございましょう? 多少ですが、食料と飲料がございますよ」
 ガルヴァートの提案で休憩を挟む事を決めたのは、ハイデマリーが汗だくになっていたからだ。
 重い機材と魔導銃を背負っていれば当然の事だが、元々それとは関係なく体力はあまりないらしい。
「研究に没頭するのもほどほどに……でございますよ」
「気を使わせちゃったかしら。ごめんなさい」
 首を横に振るガルヴァートから水を受け取るハイデマリー。ヒースは一人、無線機を手にその場を去る。
「ボクは周囲の警戒をしておくから、ごゆっくりぃ」
「この猟銃は民生品だが精度・威力共に良好、中々いい銃だ。何か食べられそうな獲物を確保してこよう」
「そ、そこまでしなくてもいいかな……」
「おぬし肉を食わないからそんな細っこいんじゃぞ? ちゃんと食わんと肝心な所に栄養が行かんぞ。胸とか尻とか頭にの」
「そういう問題でもないかな……」
 真顔の防人とギルバートに冷や汗を流すハイデマリー。リンランディアは浮かない様子で口元に手を当て。
「しかし目の当たりにすればするほど、何とかしないと、と強く思うね……これは」
 邪悪な変貌を遂げた植物も、本来は愛すべき自然の一部だった筈。だがもうああなってしまった物はどうしようもない。
「手遅れになってしまう前に、打開策を見つける必要がある。汚染を押し留める手段を、ね……」
「……この森には俺達以外も誰かが出入りしているんだったな。森の汚染とその“誰か”……関係があるのか?」
 アシフの問いにハイデマリーは首を横に振る。
「関係性はわからない。ただ、出入りしてる人は知ってるわ」
「もし差支えなければ、教えて欲しい」
 リンランディアに頷き返すハイデマリー。これは別に隠すような事ではないから。
「帝国ユニオンのリーダー、タングラムよ」
 予想外の名前に目を丸くするリンランディア。タングラムとは何度かエルフについて語り合った仲だった。
「昔、この近くの研究所で事故があって。タングラムとの関わりはわからないけど、それが原因で森がこうなったらしいわ」
 タングラムは長い間この森に出入りして雑魔を倒してきた。それが長い目で見れば森の浄化につながると信じて。
「その解毒薬も彼女に頼まれて作った物なの」
 アシフはしまっておいた解毒薬を取り出す。やけに準備が良いとは思っていたが、今回の依頼は誰かの長い努力の途中にあったもののようだ。
「でも……私の話をこんなに聞いてくれる人がいるなんて思わなかった」
 それもどうせ分かり合えないと諦めていたエルフ達が一番熱心に理解しようとしてくれたなんて。
「確かに、同胞の中には人間に厳しい目を持つ者もいる。けれど僕達のように自分に出来る事を探している者もいるんだ。きみの研究が汚染問題を解決する為にあるのなら、同志として手伝わせて欲しい……。そう考えるエルフはきっと他にもいる筈だよ」
 少し離れたアシフに目くばせするリンランディア。アシフは目を伏せ何も応えなかった。
「一人でがむしゃらになる時も必要でございましょうが、誰かの力を借りる事もまた必要。ババアの小言と思って覚えておいて下さい」
 ガルヴァートの言葉に頬を掻いて頷くハイデマリー。ギルバートは頷き。
「近くにあった村やその研究所には寄らなくて良いのかの?」
「村はただの廃村だし、研究所は今の装備じゃ汚染が凄くて危険だから」
「そういう事ならマア、諦めるしかないかね。どうなっているのか興味はあるのだが」
 肩を竦める大二郎。休憩もここまでと立ち上がったハイデマリーに防人は手を伸ばす。
「研究を手伝う事は出来んが、荷物持ちくらいは出来る」
「……壊さないでね?」
「細心の注意を払おう」
 機材の入った鞄を受け取る防人。日が暮れるまでには森を出たいが、幸いまだ余裕はある。一行は再び森の中を歩き出した。
「力と発展を求めて代償を支払う事になるのはどの世界も同じかぁ。ヒトの愚かさは変わらないらしい」
 トランシーバーで話を聞いていたヒースが一人で呟く。
「ま、他人の事は言えないんだけどねぇ、ボクも。それでも……愚かだろうとやるべき事はやらないとねぇ」
 愚かだったからと言ってそのままでいいだなんて思わない。
 人は変わっていく。変わる事が出来る。それをほんの少しずつ証明しながら、前に進んでいくしかないのだ。
「よし、では残りの仕事を終えて一杯どうかの? 追加報酬は肉と酒、そしてハイデマリー殿じゃ! ……変な意味ではないぞ、勘違い……いたい! なぜぶつのじゃ!?」
 ギルバートを殴り、苦笑を浮かべるハイデマリー。静かな森の中に柔らかな木漏れ日が差す。
 この森が本当の静寂を取り戻すのは、まだもう少し先になりそうだった。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 8
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカーka0145

重体一覧

参加者一覧

  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • 歴戦の教官
    君島 防人(ka0181
    人間(蒼)|25才|男性|猟撃士
  • 緑の理解者
    リンランディア(ka0488
    エルフ|20才|男性|猟撃士
  • 魔弾
    アシフ・セレンギル(ka1073
    エルフ|25才|男性|魔術師
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師

  • ガルヴァート=キキ(ka2082
    エルフ|87才|女性|霊闘士

  • ギルバート(ka2315
    ドワーフ|43才|男性|霊闘士

  • nil(ka2654
    エルフ|16才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談
リンランディア(ka0488
エルフ|20才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/07/18 08:39:26
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/14 19:51:59