スイート・ハニー・ハント

マスター:蒼かなた

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/08/26 07:30
完成日
2015/09/10 13:21

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●甘い誘惑を求めて
 夏の終盤へと向かおうとしているこの時期。とは言っても、その暑さはまだまだ衰えることはない。
 そんな暑さの中、開拓地『ホープ』のとある屋根の下で、机に向かってペンを走らせている女性が1人。
「駄目。熱すぎるわ……」
 そう言って長い黒髪の女性、ラナ・ブリギットは手にしていたペンを机の上に転がした。
 茹だる様な暑さは西方世界でも北に位置する辺境であろうと、やはり容赦が無いらしい。
 どこかの行商人が持ってきた「団扇」で自分を扇ぎながら、ラナは椅子の背に深く凭れかかった。
「族長、追加ですよ」
 そう言って部屋に入ってきたのはラナの右腕とも言える人物、ラッヅだ。両手で抱えた小高い紙束の山をどさっとラナの机の上に置く。
 ラナはそれを見て本日何度か目のウンザリとした目つきをして、さらに溜息を吐いた。
「何で私が書類にサインをする仕事をしないといけないのかね?」
「そりゃあ、貴女が族長だからです」
 部族会議が本格的に動き出したことで、その一端を担うことになった各部族の仕事は勿論増えた。
 特にこういった書類仕事はこれまでになかった仕事というか文化であり、ラナはここ数日その仕事をしているが全く慣れない。
 目を通してサインをするだけと聞くだけなら簡単だが、書類の不備やこっそりトンでもない内容が書かれた物が紛れ込んでいるので、読み飛ばすことも出来ないのだ。
「どうせ書くなら、新しい武具のデザインとかがいいんだけどね」
「それは若い衆がやってます」
「私も年齢的にはその若い衆のはずだけど?」
「いえ、貴女は族長です」
 断固として譲らないラッヅに、ラナはまた溜息を漏らした。
「だが、こう暑いと正直集中出来ないね。書類が私の汗濡れになるよ?」
「それは困りますけど、じゃあどうしろと?」
「何か冷たい飲み物くらい用意して欲しいね。甘くて美味しい奴を」
 にっと笑って催促するラナだったが、ラッヅはソレに対して無情にも首を横に振った。
「何でさ。昨日まではあっただろう? ほら、レモネードって奴」
 レモンの酸っぱさを上手い具合に中和して、ほんのりとした甘さとすっきりした喉越しをしたあの飲み物。
 ホープ内で配られているそれをいたく気に入ったらしいラナは、それが手に入らないということに眉を顰める。
「実は原料になってる蜂蜜が品切れしたらしくて。今、入荷待ちらしいですよ」
 何と、他の人達にも好評だったのか作りに作り続けられた結果、夏の終わりを前に材料が切れてしまったようだ。
 蜂蜜は何だかんだで高級品。ホープとはいえ、この辺境に次に入荷される日はまだ未定だそうだ。
 そこまで聞いたところでラナは立ち上がった。
「族長、聞くまでもなく何をしようとしているかは分かっていますが、敢えて聞きます。何を?」
「勿論、蜂蜜を手に入れに行くのさ!」
 然も当然と言わんばかりに笑みを浮べるラナに、今度はラッヅが大きな溜息を漏らした。
「でも、この辺に養蜂してる奴等はいませんよ? もっと東のほうじゃないと」
 ラッヅの言う通り、少なくともこのホープ周辺は蜂が生きていくには厳しい環境だ。
 温暖な東部であれば養蜂をしている部族もいるが、そこまで取りにいくには流石に時間が掛かりすぎる。
「ふふふ、分かってるだろう?」
 だがラナはそんなこと承知の上と言った様子で笑みを浮べている。
「もしかして、ルーペスアピスの巣を探しに行くんですか?」
「その通り! アレの相手をするなら、覚醒者の私じゃないと危ないだろう?」
「覚醒者でも1人じゃ危ないですって。もう、分かりましたよ。ハンターを雇ってきますので少し待っててください」
 やる気満々と言った様子で出かける準備を始めるラナを止める術はもはや無く、ラッヅはそう言い残してホープにあるハンターオフィスへと足を向けた。

●ハンターオフィス
 今日、ハンターオフィスに1つの依頼が張り出された。その依頼の説明をオフィス職員がしてくれる。
「今回の依頼はハニーハント、その名の通り蜂蜜集めです」
 ハンターに開示された資料には、辺境の地図が入っており。ホープから少し北に行ったあたりの区域が表示されている。
「このあたりにはルーペスアピス、別名岩蜂というちょっと変わった蜂が生息しているんです」
 オフィス職員の説明によると、その岩蜂は寒冷地帯でも問題なく生息できる特異な蜂だ。
 岩蜂は蜜蜂と同じように蜜を集める習性があり、巣から半径数km圏内の花畑から根こそぎと言っていいほど蜜を集めていく。他に競争相手がいないからこそ出来る芸当だ。
「ルーペスアピスの巣は、大抵が洞窟などの奥に作られます。そしてその巣の中央に蜜池というものを作るのが特徴ですね」
 蜜池というのは、そのまま言葉の通り蜜で出来た溜め池だ。岩蜂達はそこに全ての蜜を集めており、大きい巣だと人が溺れてしまうほどの蜜池が作られていることもある。
 さらに補足しておくと、この蜜池に溜め込まれた中でも一番底のほうに溜まった蜜はロイヤルハニーと呼ばれ、黄金色に輝いているらしい。その昔は同じ重さの金と交換されていたとまで言われている。
「因みに、これがそのルーペスピアスです。今表示されているサイズが一般的な大きさですね」
 そういってオフィス職員がハンター達に見せたのは、10cm近くある灰色の石のような体をした蜂の姿があった。
 ハンターが念のためにオフィス職員に確認するが、表示に間違いは無く。岩蜂は確かにこの大きさなのだと言う。
「刺されるととても痛いそうなので、気を付けてくださいね」
 オフィス職員はそう言って笑顔を見せた後、参加者募集を開始した。

リプレイ本文

●とある森の中
 辺境のジグウ連山南部にある山の麓にて、そこに広がる森の中にハンター達が足を踏み入れた。
 ハンター達は一先ず手分けして岩蜂の巣を探すことにして、3つの班に分かれた。
「岩蜂がいるのは……やっぱりお花畑かな……?」
「そうだね。あいつらは花が咲いてる時期なら何時でも活動期だから、花畑さえ見つけりゃきっといるはずさ」
 浅黄 小夜(ka3062)の言葉にラナは頷く。
 今、彼女達が歩いている森の中でもちらほらと小さな花が咲いているのは見つけられているが、ラナが言うにはここまで小さい花には岩蜂は寄ってこないらしい。
「ほら、あんなデカイ蜂じゃあまずこのサイズの花には止まれないからね」
「確かに……花のほうが……折れちゃいそう……」
 小夜もラナの話を聞きながらこくりと頷く。
「けど、その岩蜂って洞窟に棲むんだよね。それならそっちを探したほうが早いんじゃないかな?」
 ふとした疑問といった風にハニーラヴァ・ベア(ka3793)がラナに問いかける。
「そういう探し方もあるけど、それじゃあつまらないじゃないか」
 『つまらない』という言葉をさも当然といった風にラナは答えた。それにハニーラヴァはその真意が分からないとばかりに首を傾げる。
「だから、洞窟なんて中が空っぽだったら残念なものを探すより。ハズレだったとしても目で見て楽しめる花畑のほうが探していて楽しいだろう?」
 ニィッと笑ってラナはそう答えた。そもそもラナにとっては蜂蜜を入手するだけでなく、こうして外を出歩くこと自体が息抜きという一つの目的なのだ。
 それならばより楽しい方法を選ぶ。ただそれだけのことであった。
「そういうものなの?」
「そういうものさ。なあ、小夜?」
「えっと……そういうことも……あるかも……?」
 ハニーラヴァの問いに即答し、そのラナに同意を求められた小夜はどっちつかずな答えを返す。
 そんな雑談を交えながら3人は花畑を探して森の中を歩いていく。

 一方そのころ、別のもう1班も同じようのお喋りをしながら岩蜂探しをしていた。
「巴、颯、一緒に沢山蜂蜜採って帰ろうね! あっ、冒険団の皆のお土産にもできるかな」
 先頭を行く時音 ざくろ(ka1250)は満面の笑みを浮べながら後ろを歩く2人に振り返って声を掛ける。
「そうですね。まあ気楽に行きましょう、いつものデートのときのように」
 舞桜守 巴(ka0036)はざくろにそう微笑んで返す。2人が恋人同士ということもあり、その意味はすぐにざくろにも伝わった。
「うん。今日は巴と一緒にこれて、ざくろ、嬉しいな」
 ざくろは少し恥ずかしげに一度頬を掻いて、はにかんだ笑みを返す。
 そんな2人の様子をさらっとスルーして、いつの間にかざくろを追い越して先に進んでいた八劒 颯(ka1804)は茂みを掻き分けていたところである音に気付いた。
「お時ちゃん、巴さん、聞こえましたですの?」
「へっ? あ、ご、ごめん。何か言ったかな?」
 巴との会話に夢中になって何か颯の言葉を聞き逃したのかと、ざくろは慌てて颯に聞きなおす。
 ただそういうわけではなかったので颯は一度首を横に振って、茂みの先を指差す。
「ほら、やっぱり聞こえますの。この先からですわ」
「確かに。けどこの音は……」
 3人は茂みを掻き分けて十数メートル進んだ先、そこには積み重なった岩の隙間から湧き出ている水が、小さく音を立てながら地面へと零れ落ちていた。
「わあ、湧き水って奴だね」
 そこに真っ先に駆け寄ったざくろは流れる水を掬い、少し火照った肌にかける。
「うん、やっぱり冷たい! 2人とも気持ちいよ。ほら、触ってみて!」
 まるで子供のようにはしゃぐざくろに巴は小さく息を吐く。
「まったく、お仕事の最中ですよ……ま、少しくらいはいいですけどね」
 巴も湧き水に近寄って水に触れてみる。ざくろの言う通り水はひんやりと冷たかった。
「隙ありですの」
 と、そんな声と同時に颯は手で掬った水を2人の顔に向けて飛ばす。
「わわぁっ!?」
「きゃっ!?」
 勿論そんな突然の行動を予見できなかったざくろと巴はそれを避けられず、顔に冷たい一撃を貰ってしまった。
 驚いてぱちくりとしている2人の顔に、颯は満足げに頷いている。
「……あはは、もう。やったな、颯!」
 やっと事態を把握したざくろは、おかえしだとばかりに水を掬って颯に向けて飛ばす。颯はそれを避けずに、寧ろカウンターとばかりに掬っていた水をまたざくろにむけて掛け返す。
「ちょ、2人とも……もう、全く」
 そんな2人に挟まれてしまった巴はとばっちりをくらいながらも、最後にはそれに混ざり暫しの涼を楽しんだ。

 そして最後の1班は、ずんずんと奥へと進んでいくエニグマ(ka3688)と泉(ka3737)、そしてその後を追うアバルト・ジンツァー(ka0895)の班だ。
「スンスン……こっちから甘い香りがするぞー」
 エニグマは鼻を鳴らして森の更に奥を指す。
「マカロンとちくわもなにかかんじるじゃもん?」
 泉はペットであり友人でもある妖精とフェレットに聞いてみる。妖精のほうはかくりと首を傾げるが、フェレットのほうはエニグマと同じらしく、その方向の茂みに向けて鼻を鳴らしている。
 そんな2人の後ろを着いてきたアバルトは、目印に木に小さな印を残してから双眼鏡を取り出した。
「ふむ、どうやら当たりのようだな」
 アバルトの双眼鏡を使った視界には、木々の隙間から覗く色とりどりの花が見えていた。
 3人はそのまま花畑のすぐ傍まで進んでいく。そこには小さいながらも綺麗な花畑が広がっていた。
「いわばちはいるじゃもん?」
 泉はきょろきょろと花畑の中を見渡すが、それらしき姿は見当たらない。
「ハズレな感じか?」
「まあ、少し様子を見てみようじゃないか」
 アバルトの言葉を受けて、3人は花畑の茂みの中からじっと岩蜂が現れるのを待つ。
 それから10分ほど経った頃だろうか、どこかで聞いた覚えのある音が3人の耳に聞こえてきた。
「おっ、出てきやがったぞ」
 3人の視界にその姿を捉えた。花畑のどこかに潜んでいたのか、小さな鳥くらいの大きさのある白っぽい体をした蜂がそこにはいた。
 岩蜂はそのまま花畑の上をくるりと一周するようにして飛んでから、そのまま森の中へと飛んでいった。
「よーっし、おっかけるんじゃもーん♪」
 泉の掛け声と共に一行は岩蜂の後を追う。やはりその大きさだけあって、追跡するのは簡単であった。
 そして辿り着いたのはちょっとした高さの崖の傍。目の前に聳える岩壁の頭上2mほどにある岩穴の中に岩蜂は入っていった。
「よっしゃ、それじゃあ早速――」
「待て、仲間を呼ぶのが先だ」
「ちぇー」
「もーっしもーっしじゃもーん。はちさんみつけたからおっかけてくるんじゃもーん」
 勇んで飛び込もうとするエニグマをアバルトが抑え、その間に泉が通信機を手にして仲間達へと呼びかけた。

●ハニーハント
 集まったハンター達は、すぐ目の前の岩肌にぽっかり開いた洞窟を眺める。
 時折岩蜂が出たり入ったりと、とりあえずここが巣であることには間違いなさそうだ。
「けど、巣のすぐ目の前にいるっていうのに。本当に襲ってこないんだね」
 ハニーラヴァの言う通り、岩蜂はこちらを気にする様子もなくせっせと蜜を取りに出かけては戻ってきてを繰り返すのみ。
 こっちの姿が見えていないんじゃないかってくらいに、ハンター達のことを気にする素振りすら見せない。
「で、どうしよう。やっぱり燻す?」
「いや、下手に刺激しちゃ不味いからね。岩蜂は怒らせないに越したことはないよ」
 ハニーラヴァの提案にラナは首を横に振る。という訳で、一行はそのまま岩蜂の巣の中へと突入することに決定した。
 巣はすこし高いところにあるが、ハンター達ならそこまでよじ登るのも難しいことじゃない。
「巴、少しだけじっとしててね」
「はい。お願いしますね」
 ざくろは巴を抱え、靴からマテリアルを噴射させて飛び上がり、洞窟の入り口に着地する。
「っ! ざくろ、伏せて」
 と、そこで巴がざくろを抱き寄せるようにして体を強く引く。ざくろもそれに逆らわず身をかがめると、頭の上を大きな羽音を鳴らしながら岩蜂が通過していった。
「あっぶなかったなー。巴、ありがとうね」
「どういたしまして。今度からは気をつけてね」
 洞窟の奥は少し暗い。明かりを灯してみると、随分と奥まで続いているように見えた。
 時折頭上を飛んでいく岩蜂に注意しながら、ハンター達はなるべく静かにゆっくりと奥へと向かっていく。
 と、その途中で岩肌がごつごつしたものではなく、なにか硬質だが弾力のあるものへと変わった。
「これは何だろうか……白い蝋のように見えるな」
 アバルトがそれに触れてみるとやけにつるつるしている。そして指で削ってみれば、少し力を入れたら剥がれるようにして取ることができた。
「もしかして……岩蜂の巣の……一部……?」
「多分そうだね」
 小夜の言葉にラナも頷く。それは恐らく巣の一部で、それが現れたということはそろそろ巣の中央も近いということだろう。
 ハンター達の鼻にも、どことなく甘い香りが漂ってきた。
「そろそろじゃもん? あまいかおりがするんじゃもーん」
 そして、それと同時に何かが複数動く、いや、蠢くような音も聞こえてきた。
「すごい嫌な予感もしてきましたの」
 颯がそう口にしてから更に数メートル進んだところで、その予感はばっちり的中した。
 そこは洞窟の中にしては少し広い空間で、まるでドームのように円形状をしていた。そしてその壁の至るところに沢山の岩蜂がいるのだ。
 ひしめく岩蜂達は羽を震わせたり、所々にある穴の中へ出入りをしている。とりあえず、ここが巣の中央で間違いはなかった。
「これはすごいものですねぇ……怒らせる前に帰りたいものです」
「うん。流石にこんなに一杯は、一度に相手できないよね」
 ざくろと巴はそんな感想を漏らし、そしてハンター達と一緒に蜜池を探し始める。
「あっ……あの……皆さん……ありました……」
 そしてそれを一番に見つけたのは小夜だった。巣の少し奥のほう、そこにはぽっかりと穴が空いていた。
 直径1mはあるだろうか。ちょっとした井戸のようなその蜜池には、既に溢れそうなくらいに蜜がたっぷりと蓄えられていた。
「たんまり溜め込んでるじゃないか。こりゃあ大当たりだね」
 しめしめと、まるで泥棒のような台詞を呟くラナ。まあ、岩蜂達にとっては泥棒も同然なので間違ってはいないのだが。
 ハンター達はせっせと蜜を掬い上げ、持ってきた樽の中へと注いでいく。数分の作業であっという間に樽は一杯になった。
「むむーん、せっかくだからろいやるはにーもほしいんじゃもん」
「おっ、欲張ってみるかい?」
 泉の言葉にラナは乗り気のようで、一緒になって用意したバケツにロープを結んで底にへと沈める作戦に出た。
「ゆっくり……沈んでるね……」
「まあ、蜜だからね。おっ、そろそろ底に着いたかな?」
「じゃあこんどはひきあげるんじゃもん!」
 蜜池の中へと沈んでいたロープが止まったところで、泉がぐいっとロープを引く。結構な重さがその腕に掛かるが、それも蜂蜜の為ならば苦にもならないとそのまま引っ張り上げていく。
 そして泉の手が蜜池に浸かったロープの所為でべとべとになった頃、それは漸く姿を現した。
 バケツの中には先ほどまで組んでいた蜂蜜とは違う、本当に金を溶かしたのではないかというくらいに煌びやかな蜜が詰まっていた。
「これがロイヤルハニーか……凄いな。本当に金色だ」
「本当? 見せて見せて!」
 と、そういってざくろが近寄ってきたところでだ。その足が引っ張りあげる為に使ったロープを踏んづけた。蜜でたっぷりのロープをだ。
 そしてその後は当然の如く、ずるりと、豪快に滑ってしまうのが自明の理である。
「わっ、わわぁ!?」
「ざくろ!?」
 巴がその腕を掴むが、体勢が悪かったのか、単純に勢いがつき過ぎていたのか、結局は2人揃って蜜池へとダイブした。
「何をしてるんですの、2人とも」
「め、面目ないんだよ」
 落ちた2人に手を貸す颯だが、これで彼女の手や服も蜂蜜塗れだ。
 そしてそんなことをしている間に随分と洞窟内が騒がしくなってきた。
「そりゃあ、流石にここまでの粗相をすれば怒るよね」
 ハニーラヴァが周囲を見渡せば、先ほどまで大人しくこちらを殆ど無視していた岩蜂達が羽音を五月蝿いくらいに鳴らしながらこちらを見ている。
 巣のあちこちにある穴からも続々と岩蜂が這い出てきているのも目に入った。
「よし、全員走れー!」
「おじゃましましたじゃもーん!」
 ラナの一声と共に、ハンター達は一斉に走り出した。勿論それに反応した岩蜂達は大挙して襲ってくる。
「ごめんね……」
 その群れに対して小夜は小さな詠唱と共に手をかざす。すると青白い靄が立ち込め、そこをくぐった岩蜂達がぽとりぽとりと巣の中で地面へと落ちていく。
 だが、それをも掻い潜った岩蜂達はやはり執拗にハンター達を追いかけてくる。
「さよ! いまのもういっかいつかえないんじゃもん?」
「魔法を使うには……立ち止まらないと……いけなくて……」
 ここで立ち止まるということは、まず間違いなく先頭の集団には刺されることを覚悟しなくてはいけない。そしてそんな大量の蜂に刺されながら魔法の詠唱をするというのは、流石に難しいと言わざるを得ない。
 そういう訳なので、ハンター達は只管逃げに徹するのが一番と全力で走る。
「おっと、オレサマが仕掛ける前にパーティー始めたのかよ。ずるいじゃんか!」
 と、出口ももうすぐとなったところで、先に蜜を詰めた樽を運び出していたエニグマが現れた。
 何を言っているんだと声を荒げたいところだが、ハンター一同はとりあえず逃げることを優先してエニグマの脇をすり抜けて洞窟から飛び出す。
 そして数秒後に洞窟の内部から……
「ぐまぐままーっ!!!」
 という雄叫びとも悲鳴ともつかない声が聞こえてきた。
「さあ、エニグマが時間を稼いでくれてるうちに逃げるよ。アバルト、蜜樽を背負いな!」
「あれはそういうのとは違うと思うが、まあいい。急いで逃げるとしよう」
 抜きかけていた拳銃を仕舞い、アバルトは背負子に乗せた蜜樽を背負う。
「これでおいしーはちみつげっとじゃもん。おいしーおかしつくってもらうんじゃもん♪」
「そのまま食べるのもいけますよ」
 そんな蜂蜜談義を繰り広げたり。
「私はそれより、まずこのべとべとを落としたいです」
「服まで蜂蜜塗れですの。流石にこのままじゃ帰れないのですわ」
「うん、そうだね。あっ、ならさっきの湧き水のところで一緒に……あっ、勿論そういう意味じゃなくて!」
 何て相談をしながらも、とりあえずこの場を後にしたのだった。

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MVP一覧

  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜ka3062
  • もぐもぐ少女
    ka3737

重体一覧

参加者一覧

  • 母親の懐
    時音 巴(ka0036
    人間(蒼)|19才|女性|疾影士
  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 《破天荒》な黒い熊
    エニグマ(ka3688
    ドワーフ|6才|男性|疾影士
  • もぐもぐ少女
    泉(ka3737
    ドワーフ|10才|女性|霊闘士
  • 天然蜂蜜マイスター
    ハニーラヴァ・ベア(ka3793
    人間(蒼)|13才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/23 22:09:28
アイコン 相談卓
エニグマ(ka3688
ドワーフ|6才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/08/26 00:40:44