【紅空】試作機は空を飛ぶ夢を見るか?

マスター:蒼かなた

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
12日
締切
2015/09/07 19:00
完成日
2015/09/09 07:30

みんなの思い出

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オープニング

●紅世界の空に
 辺境と帝国を隔てる長城の傍に、開拓地『ホープ』はその居を構えている。
 元はCAMの実験場であったことから、この場所には大型の工場も多数設けられていた。過去形であるのは先の大規模によってその殆どが破壊されてしまったからだ。
 そんな壊滅してしまった工場にある元はCAM用の資材倉庫の1つで、とある実験を行う為にハンター達が召集された。
 責任者はサルヴァトーレ・ロッソの技術開発部に勤める技術仕官、トーマス・W・ヴィンチである。
「えー、という訳で。諸君には人類が大空に羽ばたく為の礎になって貰いたい」
 よれよれの白衣を着たトーマスはこの場に集まったハンター達に向けて、へらりと軽い口調で説明を始める。
「リアルブルー出身の人は当然知ってると思うけど、向こうの世界には飛行機という乗り物があった。これがその飛行機ね」
 そう言ってトーマスは大型スクリーンに映像を映し出す。そこには大型の旅客機が飛び立つシーンや、戦闘機が空母から離発着するシーンなどが流れていく。
「もう分かったと思うが、我等が新たに開発しようとしているのはこの飛行機なわけだ。と言っても、色々と問題があるんだけどね」
 1つ目がやはり燃料の問題。知っての通りクリムゾンウェストには化石燃料というものが存在しない。CAMの運用もそのおかげで慎重にならざるを得ず、ロッソに至ってはこの2年間海にぷかぷか浮いているのみで1度も動いていない。
 2つ目が資材の問題。飛行機とはリアルブルーの技術の最先端を集めた代物と言ってもいい。その為、最新鋭機に使われる資材には特殊な生成方法が必要だったり、そもそも希少素材が使われている。
 3つ目が技術面の問題。サルヴァトーレ・ロッソのデータベースに航空機関連の設計図はあるのだが、最新鋭機は勿論機密扱いなのでトーマスの権限を持ってしても閲覧不可なのだ。
「まあ、そーゆーわけで前途多難な訳だが、それで諦める我々ではない。まずはこれを見て欲しい」
 そう言ってトーマスが指し棒で大型スクリーンを指すと、そこには3枚の画像が映し出される。ぱっと見た感じではどれも機械で出来た部品のように見える。
「これはエンジンと言うのだが、CAMや魔導アーマー、最近だとバイクなどで使われる動力源の部品だ。人間で言うところの心臓だな」
 トーマスはさらに続ける。
「リアルブルーの歴史では大まかに3種類のエンジンが開発されているんだけど。これがそうで、右からレシプロ、ジェット、ロケットだ」
 まあ、見ただけじゃ分からないよねとトーマスは最後に零す。その通り、その道の専門家じゃないと写真だけ見せられても分からないだろう。
 とにかく理解して欲しいのは、飛行機にはこのエンジンが必要不可欠だということだとトーマスは言う。
「まあ、簡単な例を見せよう。まずレシプロエンジンなんだが、これはもう珍しくないかな。魔導トラックや魔導バイクで使ってるのと同じ奴だよ」
 そう言ってトーマスは飛行機の形をした模型、というより玩具を取り出した。先端にあるプロペラをくるくると指で回しながらレシプロエンジンの詳細な説明をしているが、正直ハンター達には意味不明だろう。トーマスも最後にそれはどうでも良くて、と言っている。
「要は車やバイクのタイヤを回すのと同じようにこのプロペラを回すんだ。そうすると、こうなる」
 そう言ってトーマスは飛行機の玩具をひょいっと投げる。するとプロペラは回りだし、飛行機の玩具はゆっくりとだが倉庫内を旋回しながら飛ぶ。
「はい、次はジェットエンジンね。仕組みは簡単で、まず空気を圧縮して……」
 説明をしながら、トーマスはポンプのようなもののレバーを動かし続ける。するとその先にあるチューブで繋がれた風船がどんどん膨らんでいく。
 そして十分膨らんだところでチューブから風船を外し、トーマスはぱっと手を離した。勿論風船は口の部分から空気を噴出しながら倉庫の中を飛び回る。
「と、こうなる訳だ。本来はこれに熱を加えて空気を膨張させてとかあるんだけど、今ので大体分かったでしょ?」
 そう言いながらトーマスは最後にと、何か棒のような物を取り出した。その先端には何か筒上の物が貼り付けてある。
「これはその名もロケット花火と言うんだけど、これも空を飛ぶ。仕組みは単純でこの筒のとこに燃料が詰まってて、それが燃えるとガスが発生して……」
 そう説明しながら、トーマスはそのロケット花火の点火線に火をつけた。そして数秒後、空気を切り裂く音と共にロケット花火は倉庫の天井目掛けて飛んでいった。
「とまあ、こんな感じだ。3つのエンジンの仕組みについては理解できたかな?」
 そう言ってトーマスはハンター達に問いかけるが、反応は様々である。
「まっ、実はこの辺のことは君達が知らなくても問題はないんだけどね」
 なら何故説明したかと言えば、トーマスは笑みを浮べながら暇つぶしだと答える。
「さて、そろそろいいかな。助手一号と二号、アレを!」
「はーい。よいこらせっと」
「ていうか、せめて名前で呼びなさいよ」
 トーマスの指示を受けて2人の男女が、倉庫の一角に鎮座している何かから被せてあったシートをはがす。
 そこには3台のマシンがあった。そのマシンにはしっかりと翼があり、先ほど見せられた映像の飛行機とそっくりであった。元は魔導バイクであったものを改造したのか、どことなくその面影もある。
 1台目はマシンの先端にプロペラが装備されている。2台目は両翼に円柱状の筒が搭載されている。3台目はマシンの後部に2台目のものと似た円柱状の筒が搭載されていた。
 そして、そのマシンをハンター達が目にしたところで倉庫の大型扉がゆっくりと開いていく。するとそこにはまっすぐと伸びるしっかりと舗装された道に、白線が綺麗に引かれていた。
「さて、諸君。覚悟は出来ているかな?」
 笑みを浮べるトーマスは、ハンター達にそう問いかけた。

リプレイ本文

●快晴の空へ
「少し期待していたが……CAMの燃料問題の解決は無理そうだな」
 ロケット機の操縦席でシートベルトとショルダーハーネスを装着しながらラザラス・フォースター(ka0108)が呟いた。
『おや、君はCAM乗りだったかな?』
「いや、俺は整備士だ。今回もCAMの為になるならばと思って参加したんだが……」
 期待ハズレだ、とはラザラスもそこまでは口にはしなかった。
『確かにこの実験では君の願いは叶わないだろうね。けど、CAMの為にならないわけではない』
「そうなのか?」
 意外な言葉にラザラスは思わず聞き返した。
「勿論だ。戦闘機とはそもそも地上戦を補佐するのが役割なんだからね」
 トーマスが言う事はつまり、行く行くはCAMとの同時運用が想定されているということだ。
 地上をCAMが駆け、上空には戦闘機が飛び交う、そんな戦場がこの先に待っているのである。
「そうか。なら、CAMの為にもしっかりデータを取らないといけないな」
 ラザラスはそう口にしたところでスライド式のキャノピーを閉める。
 そこでスピーカーからトーマスとは別の若い女性の声が聞こえてきた。
『試作ロケット機をこれよりレッド01と呼称。レッド01、風は320度から6ノット、離陸に支障ありません』
 操縦席から見るラザラスの視界では、右斜め正面に立っている作業員が大きく旗を振るのが見えた。
「CAMの為だって言うなら、やってやるさ」
 ラザラスは頭に巻くバンダナを今一度締めなおし、ロケットエンジンの点火スイッチをゆっくりと押した。

「本当に飛ぶもんだねぇ」
 自分の右隣に並んでいたロケット機が物凄い勢いで滑走路を走っていき、そのまま空へと舞い上がっていくのを見てレベッカ・アマデーオ(ka1963)は思わず口笛を吹いた。
『試作ジェット機、ブルー01、応答してください。アマーデオさん?』
「……ああ、悪い。ちゃんと起きてるよ」
 呼びかけに少し遅れて応えたレベッカは、計器の色が全てグリーンで統一されていることを確認する。
「オッケー、こっちも何時でもいいよ」
『ではブルー01、離陸を許可します。よい空の旅を』
 レベッカは離陸許可が出たと同時に、手元にあるスロットルをゆっくりと前に倒す。
 するとレベッカの体からじんわりとマテリアルが流れ出て、それがジェット機の双翼にある魔導エンジンへと流れ込んでいった。
 するとジェット機は魔導エンジンの後部から赤い軌跡を残しながら数百メートルの距離を一瞬のうちに駆け抜けていく。
「っ! 何これ、きつっ!?」
 レベッカは体が押し潰されるのではないかという重圧を感じながら、操縦桿をぐっと手前に引いた。
 すると僅かな浮遊感と共に目の前に流れていた景色が一変する。その先には荒野しか広がっていなかったはずが、今その視界には沢山の青と僅かな白しか映っていない。
 そのまま数分、漸く体が慣れてきたところでレベッカは改めて外の景色へと目を向けた。
 そこは地上から数百メートルの場所、小さな丘や森などもはや視界を遮るものではなくなり、今はただ遥か地平の彼方を望むことが出来た。
 さらにレベッカの目が小さな点の集団を捉えた。それを良く見れば、それは鳥の群れであることが分かった。
 だがそれが鳥の群れだと気付いた次の瞬間には、ジェット機はそのまま鳥の群れを追い越しあっという間に置き去りにしてしまった。
「ははっ……いいね。まるで自分が風になったみたいだ」
 口元に小さく笑みを浮べたレベッカは、更なる風を感じる為にその手をキャノピーをロックしているレバーへと伸ばした。

●ランチ時々ディスカッション
 お昼時、ホープの倉庫の一角にてハンター達とトーマスはサンドイッチなどが乗ったテーブルを囲って食事をしていた。
「レーべちゃんの記録は17分。キャノピー開けなければもう少しはいけたかな?」
「あはは、悪い。つい風を感じたくなっちゃって」
 頭を掻きながらそう言うレベッカは特に悪びれた様子も無く笑っている。
「で、ラスくんは6分か。あっという間だったね」
「寧ろ機体がバラバラにならなかったことのほうが驚きだ。飛んでる間中ずっとそこら中がミシミシ鳴ってたぞ」
 試作機に乗る前より随分と顔色の悪いラザラスは溜息を吐きながらそう言葉を漏らす。
「とりあえずどれも飛べそうだね。けど何でまたこんなエンジンを全て試すみたいな構成にしたんだ?」
 ストローを口に咥えながらシャーリーン・クリオール(ka0184)はトーマスにそう尋ねる。
「ああ、簡単に言うと上の人に見せる為かな。なまじリアルブルーの本物を知ってる分、机上の空論だけじゃ納得してくれなくてね」
 トーマスはそう言って肩を竦める。如何せんリアルブルーの技術を完璧に再現するには障害が多いのだ。
 だから大幅なダウングレードが必要になるのだが、本当にそれが必要であることを人に納得させるにはやはり実験結果を見せるのが一番なのである。
「なるほど。つまり、最初から全てを作る気はないんだな? 特にロケット機のほうは」
 ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)は納得と一つ頷いてから滑走路の前に並ぶ試作機体を見やる。
「ご名答だ、リリルくん。まあ、折角だから試してみたいという好奇心があったことは隠さないでおくよ」
 トーマスはそう言ってへらりと笑った。

●空は高く、地上は遠く
「これくらいの、Gなら……問題ないな」
 僅かに言葉が詰まったものの、シャーリーンは無事に空へと飛び立った。
「しかし、何だ。やはり機体の動きが重いね」
 シャーリーンは機体を真後ろへUターンさせる。特に負荷を掛けるつもりもない一般的な動作の1つなのだが、いざ操縦を行うとシャーリーンが想定している動きよりやや鈍重でテンポもずれているように感じた。
『それは恐らく魔導エンジンへのマテリアルの伝達が悪い所為だろうね』
「伝達が悪いって、何が原因?」
 トーマスの言葉にシャーリーンは眉を顰める。
『その魔導エンジンはまだ調整中でね。原因はマテリアルに関する何かかな。時折、電装系にラグが発生するようだ』
「割と致命的だよな、それ。どうする気?」
『勿論直すさ。そもそもこーゆー問題を見つけるための実験だからね』
 なるほど、とシャーリーンは返してから操縦桿を握り直す。
「それなら、たっぷりデータを取らせてやるよ!」

 試作ジェット機と試作ロケット機が高速で空を飛ぶ中で、それより一段か二段は遅く飛ぶ機体があった。そう、試作レシプロ機である。
「操縦性と安定性が第一なの」
 佐藤 絢音(ka0552)は幼い口調ながら、しっかりとした考えを持ち操縦桿を握っていた。
「ウィンチさん、仮想敵はやっぱり竜とか鳥みたいな歪虚なの?」
『ああ、その通りだよ。勿論地上目標への攻撃も考えてるけどね』
 航空戦力の用途は色々だ。それこそ、リアルブルーでは多様化が進んで対空、対地、対艦など様々な機体と装備が開発されていた。
「それならやっぱり低速を維持できるのは大事なの。早すぎたら遅い相手は逆に狙いにくくなるの」
『なるほどねぇ。確かにこっちじゃ速さを競う必要もないしね』
 リアルブルーでの戦闘機の発展は、敵側にも同じ航空戦力があり速度と運動性能が高ければ高いほど有利になるという状況があったからこそである。
 その点で言えば、一部の上級歪虚を除いて時速数百kmで空を飛ぶような敵は存在しない。故に速度はそこまで重要ではないと言えるかもしれない。
「それに『弾着観測』を行うならやっぱり長時間飛べるほうがいいの」
『あやねん、君は博識だねぇ。行く行くはそういう使い方も出来るかもしれないね』
 リアルブルーで培った技術はただの青写真ではない。クリムゾンウェストでもそれを確かな色で彩れば、きっとその姿はこの世界の空でも蘇ることであろう。
『さて、目標の30分まで残り10分だ。操縦ミスして落っこちないようにね』
「勿論なの。あやねはやり遂げてみせるの」
 翼で風を切るレシプロ機は、そのまま優雅に空を舞い続けた。

「うーん、やっぱ乗り物は浪漫っ、だよね!」
 そんなハイテンションでウーナ(ka1439)は試作ジェット機の操縦席ではしゃいでいる。
 今は高度1000mを越えた場所で、眼下に広がるホープの建物も豆粒のように小さくなっていた。
「鳥とかが私達を見る時の視界ってこんな感じなんだね」
 そんな事実に感心しつつ、機体はどんどん空へ空へと上がっていく。
「とりあえず、いけるところまでゴー!」
 ウーナは機首を空へと向けて、ゆっくりと上昇していく。
 暫くすればもはや鳥などの生物も目に入らなくなり、変わりに目の前に白くて大きめの積雲が姿を現した。
「よーし、行っちゃうよ。この先まで!」
 ウーナはスロットルを押し込み、さらにエンジンの出力を上げる。
 ジェット機は音を立てながら雲へと飛び込んだ。操縦席の外が完全に白い視界で覆われるが、構わずにそのまま突き進んでいく。
 そして、白い視界にすっと割れ目が見えたかと思うと、次の瞬間には青い空が再び視界に広がった。
「おーっ……太陽が、近いなぁ」
 ウーナはそう言って太陽に手を伸ばす。それで手が届くはずがないが、ただ少しだけ何かを掴めたような、そんな気がした。
 と、その時である。突然何かが破裂するような音と共に、機体が大きく揺れた。
「えっ? なに、ナニ!?」
 計器の大半が赤色へと光を変え、何かを急かす様なアラート音が操縦席に響き渡る。
 そしてその原因はウーナにもすぐに分かった。キャノピーから外を見たところで、右翼のエンジンから黒い煙が上がっているのだ。
「あっ、これはヤバイ感じだっ」
 ウーナは素早くハーネスやシートベルトを外し、キャノピーのロックを解除して一気に開く。そして機体から飛び出たところですぐのパラシュートを開いた。
 そしてゆっくりと地面へ降りていく最中に、ジェット機が地面へと落ちていく途中で爆発を起こしてバラバラになりながら地面に降り注いでいくのが見えた。

「このロケット機は、やはり癖がありすぎるな」
 空が茜色へと変わろうとする頃、丁度ルナリリルはテスト飛行を終えて地上に帰ってきた。
 エンジンを停止しての滑空性能などの確認を行ったのだが、エンジンを止めた瞬間に機体はすぐにぐんぐんと下降を始め危うくそのまま地面にダイブするところであった。
「速さだけはピカイチなんだけどねぇ」
「その速さが操縦者に大きな負担を強いる。一般人じゃ真っ直ぐ飛ぶだけでも意識が飛ぶんじゃないか?」
「だろうね。もし戦闘機動なんてしたら機体が空中分解するかな」
 やっぱり駄目かと呟くトーマスに、ルナリリルは当たり前だとばっさり切り捨てた。
「当面はレシプロとジェットに絞ることだな」
「そうだねぇ。まあ、そのジェット機はついさっき爆発四散したんだけど」
「……本当に大丈夫か? このプロジェクトは」
 呆れたといった眼差しを送ってくるルナリリルに、トーマスはへらりと笑って返す。
「まあ、とりあえずロケット機はもういいかな」
 トーマスがそんな考えをしたところで、彼の助手の女性が駆け寄ってくる。
「リーダー、レッド01がこちらの指示を待たずに発進しちゃったんだけど、どうする?」
 助手の指差す先で、エンジンを点火させたロケット機が勢い良く滑走路を走っていくのが見えた。
「あー……まあ、無茶しなけりゃ大丈夫でしょ」
 が、ロケット機は離陸と同時にほぼ垂直に機首を向け、エンジン出力を最大まで上げたのか真紅の炎を吐き出している。
『マッドの血が騒ぐんだ、暴走してこそマッド、そして爆発は芸術だってなー!』
 通信機から聞こえてくるのはアレア=レアーレ(ka1339)その人の声である。そのテンションの高さはもはや異常である。
 そしてまるで花火が撃ちあがるかのように機体は空を目指し、そしてやはり花火のように上空で機体が弾け飛んだ。
 トーマスが双眼鏡で覗いてみれば、パラシュートを開いて降りてくるアレアはガッツポーズを決めているように見える。
「ホント、ハンターって壊すのが好きだね」
「アレとは一緒にしないで欲しい」
 トーマスの台詞にルナリリルはすかさず言葉を返した。

 夕暮れ時、空が茜色に染まった頃に空を飛ぶのはレシプロ機のみとなっていた。
「まさかこちらに来てこんなに早く飛行機に乗る機会が得られるとは……感激であります!」
 そのレシプロ機の操縦席にて込み上げてくるものをぐっと押さえ込み、しかしつい口から声を出してしまったクラヴィ・グレイディ(ka4687)はガラス窓越しに空を見上げる。
『ラヴィちゃーん。とりあえずホープを一回りするようにぐるっと旋回してきてくれる?』
「はっ! 了解であります、トーマス殿!」
 通信機からのトーマスの指示でクラヴィは操縦桿を右へと僅かに倒す。すると機体は僅かに傾いて、今度は操縦桿を少しだけ引いた状態で固定する。
 あとはそれを維持しているだけでレシプロ機はまるで空を滑るかのようにして、ゆっくりと曲線のカーブを描きながらホープの外周を回り始めた。
『どうだい。そろそろ15分経つけど、マテリアル切れ目前だったりする?』
「いえ、大丈夫であります。このまま残り15分を飛び続けることは十分可能であります」
 トーマスの言葉にクラヴィは余裕を持ってそう答える。実際、クラヴィは自分のマテリアルがまだ半分を切っていないように感じている。
「トーマス殿、これは最終的にはどれくらい飛べるようになるのでありますか?」
『うん? そうだねー。乗り手のマテリアル量とか今後の開発次第だけど、巡航のみで2時間までは延ばせるかな』
「そうでありますか。では、遠くに荷物を運んだりするのにも使えそうでありますね」
 嬉しそうな声色でそう告げるクラヴィに、通信機からの返事はない。
「トーマス殿?」
『んっ? ああ、いや。何でもないよ。そうだねー、色々運べるようになると思うよ』
「それは僥倖であります。他にも遊覧飛行などにも使えるようになるといいでありますね!」
 クラヴィとトーマスはそんな雑談を交わしつつ、ただゆっくりと目標時間を目指して紅の空を飛び続けた。

●テスト結果
 レシプロ機 最長飛行時間1時間5分 多少損耗が見られるも機体、エンジン共に問題なし。
 ジェット機 最長飛行時間22分 最高速度を出そうと試みたところでエンジンが負荷に耐え切れず爆発。
 ロケット機 最長飛行時間9分 最高速度に達する前に機体が空中分解、その後エンジンが爆発。

 何れのエンジンでも予測最高速度に届かず。エンジンの改良と共に機体の軽量化が必要である。
 今回のテスト結果を持って地球連合に資材の申請を検討する。

依頼結果

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MVP一覧


  • 佐藤 絢音ka0552
  • 竜潰
    ルナリリル・フェルフューズka4108
  • Earth Hope
    クラヴィ・グレイディka4687

重体一覧

参加者一覧

  • ユーディトの孫ポジション
    ラザラス・フォースター(ka0108
    人間(蒼)|12才|男性|機導師
  • 幸せの青き羽音
    シャーリーン・クリオール(ka0184
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士

  • 佐藤 絢音(ka0552
    人間(蒼)|10才|女性|機導師
  • カラミティ
    アレア=レアーレ(ka1339
    人間(蒼)|14才|女性|機導師
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 竜潰
    ルナリリル・フェルフューズ(ka4108
    エルフ|16才|女性|機導師
  • Earth Hope
    クラヴィ・グレイディ(ka4687
    人間(蒼)|15才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
ウーナ(ka1439
人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/08/27 06:24:13
アイコン 【相談卓】君はどれと空を飛ぶ?
ウーナ(ka1439
人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/08/31 00:36:38
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/31 05:59:45