会談は海に浮かぶ~第四師団と海上守護団~

マスター:旅硝子

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2015/10/30 22:00
完成日
2015/12/16 16:10

みんなの思い出

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オープニング

「海上守護団……ネーベルバンク、そして亡霊死団。名前から最後はゾンビ船の正体と想定すると、主にベルトルード周辺で活動している海賊団はこの3つと言えるからしら」
 何とか波乱の処女航海が終わった後、ユーディト・グナイゼナウ(kz0084)はハンターズソサエティに再び依頼を出し、集まったハンター達に現代の情勢と共にそう話した。
「亡霊死団がゾンビ船中心に構成される、背後に歪虚のいる可能性も高い海賊団。ネーベルバンクは歪虚の有無はわからないけれど、残虐非道に沿岸地域の民衆を虐げている海賊団。海上守護団はそれに対して、亡霊死団と思われるゾンビ船と戦っていたことから、少なくとも歪虚と敵対している事は確か……それ以上の情報は確定できないわ。少なくとも沿岸地域での調査では、海上守護団の名前は出てこなかった。……表立ってはね」
 表だって、ということは。そう尋ねたハンターに、ユーディトは頷く。
「一応、ネーベルバンクのことがあってから各町村に1人ずつは密偵を潜ませているのだけれど、彼らから上がってきた報告の中には『海上守護団』の名前があったわ」
 密偵達は一般市民としての生活を送り、町や村に溶け込むようにしている。だからこそ海上守護団の情報が入って来たのだろうし、逆に言えばその存在を第四師団から隠し通していたということだ。
「財源は不明だけれど、沿岸の貧しい村に施しに来ているのは確かだし、略奪の話も聞かない。つまりは『義賊』である可能性が高いと思われるわ。そこで、各海賊に対する対処法を、第四師団ではこのように制定したの」
 ハンター達には、第四師団の決定に従う義務はない。だが、依頼を請けた場合、よほどのことがなければ合わせてほしい、と第四師団から要請するとのことである。
「まずは、亡霊死団。これは相手が歪虚である限り基本的に殲滅、力が及ばないならば撤退と周辺地域の住民の避難。人間がいた場合なるべく確保して事情聴取。
 次に、ネーベルバンク。これは相手が抵抗すれば殺害もやむなし、被害を最小限に留めることを優先。生存者は基本的に第十師団行き。
 最後に、海上守護団とは――会談の機会を設けたいと思います」

 ハンター達への依頼は、会談への立会人である。
「けれど、この会談への立会人を第四師団やあたしが雇ってしまうと、結局公平性を疑われる事になるわ。だから、今回は『ハンターの自由意志』による『無償で、自発的な』立会人となってもらう必要があるの」
 報酬を払えないことは謝罪する、とユーディトは頭を下げる。
「その代わり、今回は第四師団からは、会談への立会人となる以外のことは求めません。恐らく海上守護団とは意見が対立する場面もあるでしょうけれど、中立となることも、海上守護団の側に立つことも全く問題はないわ」
 その点については海上守護団も承知の上であるという。戦艦の処女航海でゾンビ船と戦った際、ハンターと海上守護団の代表の話し合いで決定したとのことだ。
「ベルトルードでの会談はこちらの本拠地だからと断られてしまったので、会場は海の上になったわ。こちらは高速小型船1隻、向こうも所持する船1隻のみを出し、こちらが立会人を連れていく代わりに会談の場所は向こうの船の上。当然第四師団から私の護衛を出すから、仮に襲撃された場合もまずは自分達の身を守ってちょうだい。また、万が一第四師団が海上守護団に対して襲撃を掛けた場合も同じ。その上でどちらに味方するかはハンターの皆さん個人に任されるわ」
 あくまで自発的に立候補してもらえれば嬉しいわ、と語ったユーディトの前に、幾人かから手が上がる。

 ――海上。
「お初にお目にかかるわ、私はゾンネンシュトラール帝国第四師団長、ユーディト・グナイゼナウ」
「ああ、初めまして。あたしは海上守護団の代表、ヴァーリア。……どうした、お前達」
 ユーディトの名を聞いた瞬間僅かにざわめいた海賊達の何人かに、まだ十を越えたほどの少女、ヴァーリアが振り向いて不審げな目を向ける。
「いえ、何でも」
「……だったらいいけど」
 海上守護団の船は、古いようではあるが丁寧に手入れされていた。その甲板の中央に据え付けられたテーブルにヴァーリアとユーディトがつき、その間を立会人であるハンター達が埋める形だ。護衛として手練れの第四師団員4名が、共に乗り込んでいる。
「へいどうぞ。ベルトルード風の赤ワインは、帝国軍人様のお口にゃ合わないかもしれませんが」
「あら、あたしは大好きよ。砂糖はこの辺りのを使っていて?」
「……ああ、そうですぜ」
 全員にサーブされた砂糖入りの赤ワインにユーディトはそう返し、グラスを運んだ髭面の海賊は意外そうに眉を上げる。
 ――平和の中に緊張感を孕んだ空気の中、会談が幕を開けた。

リプレイ本文

 冬目前のベルトルード近海にしては、薄曇りのその日は暖かく、波も穏やかであった。
 凪は海の沈黙、時化は海の怒り。ベルトルードの古いことわざを借りるならば、この海は沈黙でも怒りでもなく、恵みの漣で、この会見を迎えてくれているのだろう。
「ふむ、中々美しい海ではないか。純粋で、雄大で、きっと荒れ模様も美しい事だろう」
 三里塚 一(ka5736)の言葉に、帝国第四師団長ユーディト・グナイゼナウ(kz0084)と海上守護団代表の少女ヴァーリアが頷く。
(海を愛する心は一緒ってことだね)
 きれいに揃った2人の動作に気付いて、レベッカ・アマデーオ(ka1963)は微笑みを浮かべる。
 一方、ステラ・ブルマーレ(ka3014)は、前回会った時と違い、かなり気を張っている様子のヴァーリアに心配そうな眼差しを向けていた。
(上手く纏まれば良いけど……)
 緊張をはらんだ空気の中、一は周囲に視線を走らせる。
(さて、どうにも守護団とやらは感情的だな。道理は師団側、しかし連中は仁義的なだけあって、支持者もいない事はあるまい)
 あくまで異邦人としての冷静な視点と解釈。立会人に立候補したのも、この世界の情勢を見聞するため。
(しかし、第四師団にしても妙な点はある。本来額面通りであるのならば、別にこんな会談をしてまで取り込む程の事もあるまい)
 軽く首を傾げた一は、どこか楽しげだ。その横で、スティード・バック(ka4930)は、ふむと小さく呟いた。
(力関係だけを見れば、守護団が帝国の下に入る他無かろう。が、これまでの経緯を見れば、帝国が全面的に守護団の面子と利益を守るくらいはするのが筋だろうな)
 いずれにせよ、最も互いの利益が大きくなる形での協力に落とし込めれば、とスティードは考える。
「海の問題は、傭兵の俺にとっても無関係な話じゃないからな」
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)はそう前置きすると、慣れた様子で司会進行役を買って出る。
「我々ハンターは双方の優れている点、問題点は贔屓無しに発言していくからそのつもりで。では、良い会談としよう」
「ええ、よろしくお願いしますね」
「よろしく頼む」
 ユーディトは穏やかに、ヴァーリアはやや硬い様子で、椅子から立ち上がり頭を下げた。後ろに控える師団員と海賊達も、それぞれに一礼する。
 そして、ユーディトが口を開く。
「まずは、第四師団長として、帝国軍が十年以上の間師団長を置かず、ベルトルード周辺地域と近海の平和維持を怠っていたことを謝罪させていただきます。本当に申し訳ありませんでした」
 深々と下げられた白く染まった頭を、ヴァーリアと海賊達は驚きと共に見つめる。
「……口先だけの謝罪に意味などありゃしませんからな。受け入れるかどうかは、今から判断させてもらいやしょう」
 一番に口を開いたのは髭面の海賊だった。ヴァーリアが、彼の言葉を承認するように頷く。そこには信頼関係が感じられた。恐らくは幼い代表を主に支えているのは、この髭面の男なのだろう。
「ええ、それで構わないわ。信頼というのは、言葉だけで築くものではありませんものね」
 穏やかに微笑んだユーディトは、師団員に資料を配らせる。文字が読めぬ者がいる可能性に配慮して、絵や図を多く盛り込み、これから話す内容をわかりやすく解説したものだ。
 その資料を配るよう提案したラザラス・フォースター(ka0108)は、複雑な表情を浮かべて海賊達の様子を見つめていた。
「それでは、まずは互いの主張をお願いします」
 エヴァンスにうながされ、ヴァーリアが口を開く。
「海上守護団は、海の平和を守る気のない帝国に代わってベルトルード周辺地域と近海の平和を守る集団だ。今後もこの海はアタシらが守る。帝国に望むことは、アタシらを捕らえず、活動を邪魔しないこと、それだけだ」
 次に、ユーディトが主張を述べる。
「では、第四師団長としての意見を言わせてもらうわ。長い間、この海の平和を守ってくれてありがとう。でも、私が第四師団長として任命された以上、これからは帝国軍に任せて欲しいの」
 真っ向から対立する主張に、ヴァーリアが鼻を鳴らす。
「話にならないな」
「ね、ちょっと聞いても良い?」
 早くも決裂の気配を見せた会談の中、そっと手を挙げたステラに、エヴァンスが頷いて見せる。
「この船よく手入れされてるけど、結構老朽化してるよね?」
「よくわかったな」
「ボクも漁村の生まれだからね」
 その言葉に、幾分ヴァーリア達の視線が柔らかくなったのを感じる。
「それに、海上守護団が沿岸の貧しい村に施しをしてるのは聴いてるし、略奪行為も聞かない。……施しの資金はどこから出てるの?」
「商船の護衛をして積荷の一部をもらったり、悪質な海賊を倒してその財産を奪ったりして調達してるぞ」
 胸を張るヴァーリアの言葉に、レベッカが眉根を寄せる。
「それってつまり、半強制的な護衛で金を取るってこと?」
「ネーベルバンクを中心に、この辺は危ない海賊も多い。それから守ってるんだから、問題ないだろ?」
「ヴァーリア、アンタはそれを自分の矜持や仁義に照らし合わせても恥じない行為だと思うのか?」
「……矜持? 仁義?」
 レベッカは、きょとんとした様子のヴァーリアから視線を外す。
「……この子の前の代から船乗ってる古参は?」
「全員ですぜ。代表がヴァーリアになったのは、まだ去年っすからねぇ」
 レベッカは、髭面の海賊に真っ直ぐな怒りをぶつける。
「お前ら何やってやがる。矜持や仁義を教えんのは古参の仕事だろうが! お前らのやってることは、ただの強請りじゃねぇか!」
「ああ、強請りだ」
 あっさりと返された言葉に、レベッカは目を瞬かせる。
「アンタも海賊の出か?」
「そうだよ」
「なら少しは分かるだろう。俺達は海賊。『賊』だ。陸の連中に白い目を向けられる俺達には、こんな方法しか残されてないのさ」
「そんなこと……」
 ない、と言い切るには、レベッカは正直すぎた。海賊の出というだけで向けられてきた視線が脳裏をよぎる。黙り込んだレベッカのあとを、さりげなくエヴァンスが引き取って続けた。
「では、海上守護団としては護衛を続けると?」
「もちろんだ」
 それに対するユーディトの答えに、悲しげな響きが混じる。
「商船の護衛を第四師団の責任で行っている以上、半強制的護衛行為は見逃せないわ。商船への接触をやめないならば、帝国第四師団としては討伐対象とするしかない」
 討伐、という言葉に、海賊達が色めき立つ。反射的に第四師団の護衛達も武器に手をおいた。
「剣を取るか? それで傷つき命を落とすのはお前達だけではないぞ」
 機先を制するように、海賊達に鋭い視線を投げたスティードは、続けて第四師団の護衛達にも睨みをきかせる。
「留守を預かり、地域を守っていた彼らに銃口を向けるのが帝国の正義か。他地域もさぞや帝国を見直すだろうな」

――ちりん。

 ぴりりとした空気を破るように、澄んだ音が響いた。
「おっと失礼。グラスをぶつけてしまったようだ」
 言葉とは裏腹の優雅な仕草で、一がワインの入ったグラスをかざして見せる。
「甘くておいしいワインだ。私の地でも古くはこういった飲み方をしたそうだ。……そう言えば、師団長殿はどうもこれらへの造詣があるようだが、郷里はどちらだったかな?」
 突如としてはじまった世間話に、船上は毒気を抜かれたように静まり返る。
「あたしは旧帝国の出身よ。そしてかつては海賊だった」
 海賊達の間に、ざわめきが漣のように広がった。
「お前も海賊だったのか」
 ヴァーリアが目を見開く。
「ええ。アネリブーベにいたこともあるわ」
 微笑むユーディトの首にうっすらと残る痕。それは囚人として過ごした年月を意味していた。
「だったらアンタも知ってるだろ」
 髭面の海賊が苦々しげに吐き捨てる。
「革命直後の海賊討伐。帝国は義賊的活動をしていた海賊まで討伐した。その上、十年以上も第四師団長を任命しなかったんだ。帝国にはこの海を守る気はねえってことだろ」

 その言葉を聞きながら、ラザラスは、ここに来る前に行われた話し合いを思い返していた。
「なあばーちゃん。……学がないってのはさ、悲しいな」
 そう切なげな顔で呟いたラザラスに、ユーディトが柔らかく聞き返す。
「それは、一体どういう意味で?」
 込められた思いを聞きたい、との気持ちが伝わる問い掛けに、ラザラスは伏せた瞳を上げる。
「俺も一歩間違えれば、あっち側で彼らと同じ事をしたかもしれないからさ」
 学ぶことができなかったのは、海賊達のせいではない。けれど、最善と信じて行った行動が産むのは、悪循環でしかない。
「貧しい村への施しは悪いことじゃないわ。でも――」
 途中で言葉を切ったユーディトが期待するようにハンター達に視線を向けると、ステラが言葉を続けた。
「施しだけじゃ意味無いよね。それが慢性化しちゃうと逆に地元の人達の危機感を削いじゃうよ。だって、何もしなくても天からお金が降ってくると思うもん」
 その言葉にレベッカも頷く。
「ああ。施されることに慣れた連中がどうなるか……それを想像出来ねぇほど連中が軽いオツムじゃねぇことは期待しとくわ」
「根本的な改善策は、地元ならではの産業を起こさせて、自力で生活出来るようにすること」
 2人の言葉に深く頷き、ユーディトが目を細める。
「そういうこと。ステラちゃんとレベッカちゃんの言う通りよ」
 施されることに慣れれば、人は発展を求めなくなる。
「けれど……それが、第四師団が活動していない間、人々を救ってきたのもまた1つの事実だわ」
 人々にとっても、海上守護団にとっても『それしかなかった』のが現実なのだ。
「だからこそ、よ。そこに話し合う余地があるわ」
 ユーディトの言葉に、ラザラスが身を乗り出す。
「じゃあさ、まずは地域振興の話をしてさ、それから施しの影響について話すのは? そのためにも、せめて第四師団との協力体制を結んでくれないかって、貴方達の力を借りたいんだって言ってみるのはどうだ?」
 すぐにスティードの思慮深い声が続く。
「協力体制というのは良い響きだな。例えばだが、地域振興のノウハウなり、守護団が必要としている装備や人材なりを、これまでの補償として提供できまいか」
 2人の意見を聞いたユーディトが考え込む。
「そうね。とても良い意見だわ。協力や補償という形なら受け入れてもらえるかもしれない」
「理屈も大事だけどさ、見せなきゃならないのは、今までの遅れを取り返そうとする姿勢だよ。あたしら海賊は理屈でわかっても感情が納得しなきゃ動かない」
 そうでしょ、という含みを持ったレベッカの視線に、ユーディトが声を上げて笑う。
「確かにそうだね。こうと決めた海賊は梃子でだって動きゃしない」
 にっと笑ってエヴァンスも意見を述べる。
「頑固な海賊相手に、今回の会談だけで答えを出すのは難しいだろう。どうだろうか。あくまでも次を見据えた、相互理解を深めるきっかけを得る場として話を進めて、お互いの状況を把握できた頃に再度話し合い、見直しの場を設けるというのは」
「次を見据えた、きっかけを得る場ね。……それで一ちゃんも異論はない?」
「ああ」
 気配を消すように佇んでいた一が短い答えを返す。
「その中立的な態度が役立つ時がきっとあるわ。皆も、会談では宜しくね」
 ユーディトの微笑みと共に話し合いは締めくくられた。

「――帝国は変わった、と言っても信じてもらえなさそうね」
 船上では会談が続いている。
「さて、第四師団長としての意見はさっき言ったわね。だから、ここからは、あたし、ユーディト・グナイゼナウの意見」
 そう切り出したユーディトに、海賊達の警戒するような眼差しが集まる。
「あたし達、協力できないかしら」
「帝国に望むことなど何もない」
 提案を跳ねのけたヴァーリアに、ユーディトは忍耐強く言葉を続ける。
「本当に? さっきステラちゃんが気付いたことだけど、この船、老朽化してるわよね。自力で歪虚と渡り合うためには、装備面に不安があるんじゃないかしら?」
 ヴァーリアが、ぐっと言葉に詰まる。
「第四師団は、歪虚と渡り合うための装備を提供できるわ。これは取引じゃない。帝国のいない間、あなた達がこの海を守っていてくれたことへの補償よ」
 それはスティードの言葉。
「それと、貧しい村への施しも悪いことじゃないわ。でも、もっと良い方法がある。地元ならではの産業を起こしたら、彼らは貧しさから抜け出し、自力で生活が出来るようになる」
 それはステラの言葉。
「でもその手助けは、あたし達だけじゃできない。この海を愛する、地域に根付いた人材が必要だわ。だから、貴方達の力を借りたいの」
 それはラザラスの言葉。
 ハンター達の思いが、言葉が、海賊達の心を動かしていく。
「悪くない条件に聞こえるが、すぐには答えられない」
 慎重さを見せる髭面の海賊にユーディトが頷く。
「もちろん今回の会談だけで答えが出ると思ってないわ。あくまでも次を見据えたきっかけを得る場になればいいと思ってる。協力体制が組めれば、再度話し合い、見直しの場を設けましょう」
 それは、エヴァンスの言葉。
「どうかしら。この海のために手を組むことはできない?」
 それはユーディトの言葉。そして、レベッカの言っていた、今までの遅れを取り返そうとする姿勢。
「でも、どうやって信用しろっていうんだ? アンタが嘘を吐いていないとどうして分かる」
「ばーちゃんは嘘吐きなんかじゃない!」
 これまでのユーディトの努力を、ずっとそばで見てきたレベッカが叫ぶ。
「そうだよ!」
「そうだ!」
 ステラとラザラスも声を合わせた。まるで本物の祖母と孫を思わせる真剣さに、ヴァーリアは眩しげな表情を浮かべる。
「ついでに言わせて貰えば、我々は報酬により雇われている訳ではない。自由意志でこの会談に参加した、各自個人的な立合人だ」
 一が冷静な声で告げた事実に、海賊達が息を呑む。無報酬での尽力。それはユーディトに対する何よりの人物証明だった。
 海賊達の様子を確認するように振り返ったヴァーリアは、髭面の海賊と頷き合う。そして、降参だというように両手を軽く上げた。
「わかった、わかったよ。ただし、アタシ達が協力するのは、帝国じゃない。ここにいるアンタ達だ」

 それは、成功という言葉以外の何で表せただろう。
 船上で、資料を覗き込みながら地域振興について話し合う海賊とハンター、師団員達。まだ話し合いが必要なことは多い。だが、そこには既に協力と理解の兆しが見えていた。
 そして会談は、エヴァンスが代表2人に促した握手で終わりを告げた。
 第四師団長の皺の刻まれた手に、海上守護団代表の小さな手がしっかりと重ねられる。
「この海のために」
「この海のために」
 潮風に2人の声が重なった。

(代筆:尾仲ヒエル)

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MVP一覧

  • ユーディトの孫ポジション
    ラザラス・フォースターka0108
  • 海と風の娘
    ステラ・ブルマーレka3014

重体一覧

参加者一覧

  • ユーディトの孫ポジション
    ラザラス・フォースター(ka0108
    人間(蒼)|12才|男性|機導師
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 海と風の娘
    ステラ・ブルマーレ(ka3014
    人間(紅)|16才|女性|魔術師

  • スティード・バック(ka4930
    人間(紅)|38才|男性|霊闘士
  • 白羽の盾
    三里塚 一(ka5736
    人間(蒼)|27才|男性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問・確認
レベッカ・アマデーオ(ka1963
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/10/27 00:17:46
アイコン 相談卓
スティード・バック(ka4930
人間(クリムゾンウェスト)|38才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/10/30 08:17:52
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/10/26 22:24:57