• 闇光

【闇光】雪原の肉。奪い合う歪虚達

マスター:馬車猪

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2015/11/25 19:00
完成日
2015/12/02 04:16

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●3ヶ月前
 ガルドブルムが音速を突破した。
 全身を襲う衝撃が心地が実に心地よい。
 なお、彼の本来の力ではこの速度は出せない。
 消化中の歪虚王「獄炎」の血と肉が、ガルドブルムの力を1つ上の次元に押し上げているのだ。
 唐突に視界が黒一色になった。
『何だァ?』
 高度と速度が激変していた。
 おそらく数秒意識を失っていたのだろう。
 地表との距離は100メートルを切り、向きも地面に垂直に近い。
 翼は痙攣して自由に動かない。
 ぼやけた視界に映る細長いものは、腹におさまっているはずの己の内蔵だ。
『ハッ、ようやく本気を出せたのかよ獄炎ッ!』
 視界がさらに歪む。
 破裂しかかる眼球、正確には眼球に無理矢理入り込もうとする血液を気合で食い止める。
『いいぜ、消化するまで付き合ってやらァ』
 不敵に笑う。
 壊れかけのドラゴンが急斜面に激突し、遠方からも分かるほど巨大なキノコ雲を発生させた。

●現在。歪虚王直属軍
『信じられん』
 立ち上がれば3メートル近いデュラハンが、雪原から何かを掘り起こしていた。
 慎重に両手ですくいあげる。
 冷え切っているのに鮮やかな赤を保った血が、凶悪な負のマテリアルを放出している。
 合計しても猪口一杯に満たない血を口にする。
 一瞬、ドラゴンと尻尾の数を減らした大妖狐が食い合うイメージが浮かび、数秒遅れて全身に血が広がった。
『これほどのっ』
 膨大な量のマテリアルが注ぎ込まれ、存在の規模が拡大する。
 内圧に耐えきれずに装甲がひび割れる。即座に再生し強い素材がひび割れを補修する。
『これほどの力があれば』
 新たな血を探そうと周囲を見渡す。
 雪で覆われた大地に、全く同じ事を考えた歪虚が何体もいた。
『血が多いのは』
 大型化した同属の位置を確認。
『東か』
 彼が知る術もないことだが、その方向に数十キロ進むとガルドブルムの墜落現場に到着する。
『着いてこい』
 ただのスケルトンに命令を下し、東へ走り出す。
 力と装甲が増している。これならば上に取って代わることも、あるいはそれ以上のこともできる。
 そんな甘い考えを持ってしまっていた。
 鉄の豪雨が横殴りに降った。
 1粒が30ミリの銃弾1つ。
 休み無く打ち付けるそれが装甲に小さな凹みをつけていく。
『小賢しい真似を』
 大型化したデュラハンが走り出す。
 大剣を盾のように構える。降り注ぐ弾の半分以上が、剣を突破できずに速度を失う。
 残った弾も倍近く厚くなった装甲を打ち抜けない。
 このまま近づき切り倒す。それで全て終わるとデュラハンは考えていた。
 射手の、CAMに酷似したセンサーが薄く光る。
 アサルトライフルの射撃を停止して、軽くブースターを吹かしてデュラハンとの距離をとる。
『馬鹿な』
 彼我の距離が最初に戻っていた。これでは一太刀浴びせることなど出来る訳がない。
『防げ!』
 スケルトンに殿を命じて退却に移る。
 同属と合流しても反撃手段はないが、それでも盾にはできるはずだった。
 30ミリ弾が、前面に比べると薄い背部装甲を貫いた。
 慌てて背中を大剣で隠すが遅い。
 連続して撃ち込まれる30ミリによって、肥大化した核が打ち砕かれた。
 ブースターに火が入る。馬とは比較にならない速度で移動しスケルトンの視界から消える。
 スケルトンは追うすらできなくなり、鈍い足取りで生き残りのデュラハンの元へ歩いて行った。

●再出撃
「6機の再調整完了しました。コンディションは小破未満です」
「こちらは中破です。ロッソに持ち帰らないと完全には……」
「そこの馬鹿騎士の機体には予備の弾と装備くくりつけとけ!」
 大型トラック周辺で、殺気だった整備兵達がCAMの修理と補給を行っていた。
 ハンター達はそれぞれ修理を手伝ったり食事をとったりその他所用を済ませたりで忙しい。
 一部は滅多に見かけないトラックに乗り込んで、大型の観測機器を弄っていた。
「遠眼鏡より遠くが映っている」
 真面目な顔でメーガン(kz0098)が驚いている。
 驚いているだけでそれ以上のことは全く考えていない。
 1つの大型ディスプレイには宙を舞うドラゴンの姿が映し出されている。場所は北、数は4。
 もう1つの大型ディスプレイには地上を東に向け進軍する歪虚の姿がある。場所は北西、数は、見えているものだけで20。
「デュラハンとスケルトン……デュラハンはオーガ以上CAM未満の大きさか」
「歪虚王の配下でしょう。でもなんでこの方向へ?」
 軍人連中が騒いでいるが結論はでない。
 そろそろCAMの乗り込むかとメーガンが思ったとき、片側のディスプレイに大きな変化が起こった。
 見慣れたものとは少しだけ異なる、30ミリの光の線が歪虚を襲った。
 数十センチに達していたデュラハンの装甲が小さく凹む。
 慌てて回避行動を開始するが、慣れない大きさとバランスの崩れた装甲が邪魔をしてろくな回避ができない。
 圧倒的な装甲も耐久力も活かせず、デュラハンは3桁近くの銃弾を浴び、崩れ去った。
「射手を発見しました。予備画面に映します」
 スマホ大の画面に、デュミナスにしか見えないものが映し出された。
 丸い装飾に似た魔導エンジンがない。
 リロード無しで弾を吐き出し続けるアサルトライフルが、ドラゴンの鱗に似たもので補強されている。
「検索します。……該当1件。歪虚ガルドブルムに奪われたCAMに酷似していています」
「大物が出てきましたな」
 歪虚王「獄炎」相手に共同線じみたものを張った相手ではある。
 同時に、これまで人類社会に破壊をばらまいてきた最悪のろくでなしでもあった。
「仲違いするなら共倒れになる迄放置しても……」
「ドラゴンが動きます。目標は歪虚王、いいえ、何もない場所に」
 複数のセンサーからの情報が総合され、1つの鳥瞰図として映し出された。
 デュラハンの集団とドラゴン数頭が何もない平地に向かい、横から歪虚CAMが射撃とブースター移動を繰り返しデュラハンの数を削っている。
「負のマテリアル?」
 ハンターがつぶやき、軍人達の顔色が変わった。
 どう考えても、放置すると危機が群れをなしてやってくる。
「補給完了しました」
「急いでくださいっ」
 ハンター達はCAMに乗り込み、十数キロの先にある、複数勢力の歪虚が目指す地に向け飛び出した。

リプレイ本文


 デュミナスの操縦席で、ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)の目だけが動いていた。
 ヘッドマウントディスプレイが膨大な情報を送り込んでくる。
 広大な雪原の中から、強調表示されているとはいえ豆粒大しかない歪虚を探し出すのは非常に大変だ。
 左からは大型デュラハンの大群が近づいてくる。1歩踏み出すたびに雪原に足が埋まり、速度は酷く襲い。
 右斜め前方ではドラゴン4体が全力飛行中だ。ブースター使用時のCAMよりずっと遅い。だがブースターを連続使用できないので平均すればCAMと同程度だ。
「まるでバーゲンセールに群がる主婦みたいな状況だな」
 ある種の割り切りと共に右の操縦桿を動かす。
 CAMの指が半分ほど勝手に、実際はゼクスの予想と8割ほど一致した動きをして、スナイパーライフルの銃口を北の一点へ向けた。
「バロール、じっとしてくれよ」
 前回戦ったドラゴンと同種だと仮定して目標の動きを推測。
 CAMの諸元と実際の癖を計算に入れ、ドラゴンの進路上に置く感覚で狙いを修正する。
 己の体でCAMの微細な揺れを把握。揺れが最も小さくなる瞬間に引き金に触れた。
 発砲の反動でCAMが揺れる。
 105ミリの銃弾が極めてなだらかな曲線を描いて、豆粒大のそれに消えていく。
「掠めるだけか」
 半秒遅れで、先頭のドラゴンの高度が十数メートル一気に下がった。
 足を庇いながら鋭く左右に視線をやるが、ゼクスとバロールがやったとは気づけていないようだ。
 頻繁な警戒は速度の低下を招く。CAMがここを撃てと言うように低速ドラゴンを猛烈に強調する。
 ゼクスはそこに2射目は送り込まず、その上方30メートルをいくドラゴンに撃ち込んだ。
「頑丈だな」
 胴に当たって凹みをつくる。
 雑魔なら挽肉になるか消滅するかしているはずなのに、ドラゴンは速度を落とさず周囲を警戒し続けていた。
「もらうわ」
 十数メートル横のCAMの中で、フィルメリア・クリスティア(ka3380)が囁く声で宣言した。
 バロールと同一の発砲音が響く。
 105ミリが描く軌跡もほぼ同一だ。
 大重量の銃弾は瞬く間に距離を詰め、目的地に辿り着く寸前のドラゴンヘッドを真横から叩いた。
「無茶をさせるけど……付き合ってね、サフィラス」
 マイクを切った状態でつぶやく。
 まるで聞こえているようなタイミングで、動作補助プログラムを再始動推奨という表示が外の光景に重ね合わせて表示された。
 彼女は3つのうち2つだけを再始動させる。
 CAMの四肢の動きにプログラムの影響が出始め、フィルメリアは複雑極まる操作を常時行うという苦行から解放された。
 出来た余裕を無駄にはしない。
 敵味方の位置と動きを1秒強で読み取り、予想外の情報を見つけて形の良い眉を動かした。
「この状況、私達も含めた三つ巴ではなく……」
 リロードを行いながら、今度は北の西よりに意識を集中する。
 サフィラスは違った、魔導エンジン未搭載の機体。
 操縦者の技量が劣る分を機体の性能が補った動きで、頻繁にドラゴンを警戒しつつデュラハンに対する射撃を続けている。
『何事!?』
『めーちゃん、報告は簡潔明瞭に』
 戦友の慌て声と窘め宥める声が続いて聞こえた。
『負のマテリアルが濃い箇所を掘って血痕を発見。回収を試みると雑魔化っ』
 フィルメリアは漏れそうになる溜息を意識して止めた。
 デュラハンは遅く遠い。推定歪虚CAMはデュラハンにしか興味を示さず、ドラゴンは銃弾を浴びて速度が鈍っている。
「10秒お願い」
 バロールが軽くうなずき発砲。
 サフィラスは90度右へ方向転換の後、右に向けて発砲した。
 強いて表現するならスライムに似た不定形雑魔を、銃弾が一部削ぎ落とす。
 雑魔の動きが止まる。体積の割には酷く呆気なく消滅し、それまで覆われていたメーガン(kz0098)機が現れた。
「作戦に変更無し」
『了解した』
 メーガン機はブースターを使って後方へ下がり、サフィラスは左に90度方向転換の後ドラゴンに対する発砲を再開する。
 お目当ての品を前に足踏みするドラゴンに対し、別のCAM2体が突入しようとしていた。


 ブースターが停まる。
 急速に速度が0に近づいていく。
 そこでようやく、敵を有効射程の内側に捉えたという報告がディスプレイに現れた。
 目標であるドラゴンは、嫌な気配のする場所の至近にまで迫っている。
「作戦を変更する。このまま直進しドラゴンに当たる」
 雪ノ下正太郎(ka0539)が通信機越しに呼びかける。
 ブースター再起動までの時間を活用しアサルトライフルを使用。
 邪魔な同属2体を追い越そうとしたドラゴンに30ミリの銃弾を浴びせた。
 了解のボタンを押した表示が、仲間全員分ディスプレイに現れた。
「無理をしてもらうぞ」
 CAMに語りかける。
 魔導エンジンのお陰で燃料消費は無視できる程度。予備弾薬も単機で敵の4分の1は落とせるだけの量がある。
 問題は敵の数と敵の目的だ。
 ブースター再起動。アサルトライフルからガトリングに持ち替えた上で暴発防止のため固定。
 数百メートルの距離を数秒で飛び越え、ドラゴンの目的地を庇う位置に着地する。
「敵の目的物は最低でも歪虚兵級の負のマテリアルだ」
 ディスプレイには不明や推定歪虚を示す記号が乱舞している。
 CAMはマテリアルが引き起こす現象は理解できても、マテリアルそのものを感じられないからだ。
「これより接近戦を行う。他の歪虚は任せたぞ」
 ドラゴン4体は咆えもせず、ほとんど音もたてずに一斉に急降下に移る。
「させるかっ!!」
 ボタンを押し込む。視界の隅にコンボ始動の4文字と、正太郎が登録した動作複数が同時進行している旨が表示された。
 ガトリングガンが咆哮する。
 口径はアサルトライフルと同じでも発射頻度が根本的に異なる。圧倒的な鉄量がドラゴンの腹部鱗装甲を撃ち抜いて腸をぶちまけさせた。
 ドラゴン1体が落下中に消滅、3体が動きを継続。
 正太郎は視線とボタン操作で実行中のコンボを別のものに切り替えた。
 ドラゴンを衝突直前まで迫る。ガトリングの弾幕がさらに1体を撃墜。直後にCAMの位置を数メートルずらし激突を回避する。
 肩部分装甲がドラゴンの爪に引き千切られる。
 コクピットを守る胸部装甲に2本の亀裂が刻まれる。
 ドラゴンはCAMに追い打ちはかけず、前方から吹きつける負の気配を目指し文字通りの全力で駆けた。
 瞳が欲一色に染まる。まだ位置を特定できていないのに、横の同属を押しのけようとして速度が落ちた。
 カタナを装備したCAMがすり足で前進する。構えは蜻蛉だ。
 ドラゴンはCAMに気づくが反応するより早くCAMがカタナを振り下ろす。
 刃の先端部分は覚醒者でも視認困難なほど加速しドラゴンの翼を半ばから切り飛ばした。
 片翼のドラゴンは器用に着地する。
 もう1体もCAMを警戒して速度が鈍り、遠方からのスナイパーライフルを浴びて後退する。
 CAMの動きが乱れた。
 マリアン・ベヘーリト(ka3683)は思わず呻いた。
 入力が間に合わない。
 たった2本の操縦桿では必要な指示を出し切れない。斬撃の副産物である速度を制御できずにCAMの足裏が雪原に滑った。
 ボタンを押してバランサーを再起動。CAMの四肢を自由に動かす感覚が瞬時に失われ、雪原も歪虚も遠くに感じられた。
 地球における膨大な試行から生み出されたプログラムは見事に性能を発揮する。これまでの情報から雪原の状態を判断して、過不足なく力を入れて雪原の上に安定して立つ。
「感覚と現実が一致しないのは面倒ですね」
 ブースターに点火する。
 斜め前方に直進してから弧を描いてドラゴンの背後に迫る。
 いわゆるメイン行動でしかブースターを扱えないため、移動直後に手持ちの武器では攻撃できない。
 振り返って攻撃すれば攻撃直後を襲われると思い、ドラゴンは本来の目的である異様な気配の源目がけて飛び立った。
 砲声と同時に105ミリ弾と30ミリ弾が到着する。
 1つは外れて雪煙を発生させ、もう1発が翼の中程に当たって皮膜を破れさせた。
 ドラゴンが不時着する。受け身をとるのに失敗してうめく。
「ひょっとしてCAMは」
 左のスティックを前に倒して前進、斬撃再現コンボを起動する。右のスティックで機体の向きと攻撃方向を微修正し、蜻蛉の構えからの斬撃を繰り出した。
 ドラゴンが体をひねる。背中に裂傷が刻まれるも致命傷だけは避けて、壊れかけの翼に無理をさせ飛んだ。
 冷たい空気の中弧を描く。
 歩行時や走行時のCAMでは逃れられぬ速度と自由度で、マリアン機、個体名ヒトフリの背中を狙った。
「白兵に向いていないのでしょうか」
 ブースターが発光、8メートルの巨体を軽やかに宙に舞わせる。
 ドラゴンが飛行に失敗し頭から雪原に突っ込む。
 正太郎機による30ミリの鉄の豪雨が、避けも防ぎもできないドラゴンの体を肉片に変えた。
 ヒトフリが最後のドラゴンの背後に着地する。ドラゴンは銃撃の回避と防御に集中しているため振り返ることができない。
 カタナで止めを刺す際、何故か寂しく感じられた。


『安全に輸送するための手段がない。……破壊してくれ』
 後方からの通信は苦渋に満ちていた。
「承知した」
 Gacrux(ka2726)が右の操縦桿の引き金を引くと、CAMのアサルトライフルが十数秒連続して30ミリ弾を吐き出した。
 雪原に数十の穴が穿たれ、唐突に爆発した。
 白い爆風に混じっているのは灰黒の瘴気。日差しを浴びて瞬く間に力を弱め、Gacruxが再装填を終えたときには完全に消滅していた。
「流石は、対歪虚兵器」
 先程の攻撃をCAMを使わず実行するためには、遠方から長時間かけて大人数で投石機を持ってくるしかなかったかもしれない。
 なお、彼が評価しているのはCAMの物理的な力だけではない。
 視界の隅には敵味方の位置と動きを表現した鳥瞰図がある。
 武人や武将が研鑽の果てに手に入れられる能力なのに、CAMには標準装備だ。
「頼り切ると危険かもな」
 理解した上で使う。
「アルファス、速攻を提案する」
 CAMの重心を下げ、スナイパーライフルを北に向けて狙いをつける。
 歪虚CAMを表す記号が1つ、それまでのデュラハンに対する執着が嘘のように、北東へ移動しつつあった。
 対するこちらは3機がまだ南にいて、北の4機のうち2つのスナイパーライフルでしか攻撃が届かない。
「了解しました」
 元地球連合軍人らしくアルファス(ka3312)は即断した。
 あのCAMはこちらのCAM7体の戦力を見極め、己が援護に回らなくても確実にデュラハン一党を滅ぼせると判断したと推測できる。
 つまり知恵がある敵であり生かしてはおけない。
「何にしろ奴の所へ戻すわけには」
 移動力以外はCAMの劣化版とはいえ、CAMが1機歪虚側にあれば人類側の打つ手が制限される。
「移動力勝負で勝ち目は無し」
 なら射撃で勝負すれば良い。残弾無限は個々の戦場であれば脅威ではないのだから。
 敵CAMの背部ブースターを狙うよう指示した後、CAMに任せられる操作は全て任して情報収集および分析に専念する。
 敵機の予想進路をCAMに伝達。
 機体が髪の毛1本分動いて狙いを正確にする。
 発砲のタイミングをCAMに預けてより詳細な推測を送る。
 高熱を発するまで考え抜いた後、Gacruxの発砲からコンマ2秒遅れで引き金を引いた。
 歪虚CAMが激しく発光する。寸前まで無傷であったシールドがわずかに変形し、弾着箇所がオレンジ色に発光している。
 アルファス機の弾が届く。盾の脇をすり抜け、急激に光を増す噴射口に当たりかけた。
「シールド防御と回避性能はこちらと同程度ですか」
 アルファスは新たな射撃諸元を機体に送る。
 歪虚CAMは弾着直前に体を捻り、ブースターの直撃だけは避けていた。
 噴射口が歪み腰部分に大きな穴が開いている。にも関わらず噴射口から正常に光が噴き出し、全高8メートルの体が東に向かって飛んだ。
 Gacruxは冷静に観察している。
 シールドを保持するCAM歪虚の腕が火花を散らしている。飛距離も3割減。腰部分の穴も低速ではあるが拡大している。
「後5発ですか」
 それだけ当てれば何発かシールドで防がれたとしても撃墜できる。
 しかし歪虚が着地したのはスナイパーライフルの有効射程ぎりぎりで、奇跡に近い幸運に恵まれても当たって4発、期待値で2発。
「大勝が無理なら並の勝利をもらう」
 アルファス機と同期させ、噴射口を庇う歪虚CAMの腕目がけて撃った。
 最初の2発は歪虚の左右にずれ雪原に消える。
 次の2発のうち1発がシールドを当たって弾かれる。残る1発は、歪虚CAMが不用意に晒したアサルトライフル後部を粉砕し飛び散らせた。
 リロード無しでデュラハンを苦しめてきた銃が落ち、雪原に穴を開けて見えなくなった。
 歪虚CAMが視線を向けるがハンターを見て回収を諦める。
 変形したままのブースターから光を噴出させ、器用に体を捻って進路をコントロールし北東へ飛んだ。
「デュラハンの対処に向かいます」
 速度の差があるので追撃しても無駄と判断し、アルファス機がブースターを使い南西に向かった。


「獲物は選り取り見取りだ。好きに食らってくれ」
 デュラハンの南方集団を片付けた後、ゼクス達は北へ向かい南方の倍以上のデュラハン退治ととりかかる。
 アルファス機と肩を並べ、東に向かおうとする大型歪虚に30ミリの豪雨を浴びせている。
 これでは歪虚は盾代わりの大剣で防ぐことも困難だ。薄い背部装甲を食い破られ、剥き出しになった核を砕かれ次々に消えていく。
 ときおり捨て身になったのかあるいは西に逃げるつもりの大型デュラハンが全力で駆けてくるが、フィルメリア達に横や斜め後ろから30ミリを浴びせて仕留められる。
 ゼクスは退き撃ちする必要もブースターで飛んで位置を変更する必要もない。
『勝ったぞ! これがあれば貴様等程度っ』
 集団東端のデュラハンが雪原を掘ろうと勢いよく腕を伸ばす。
「素人ですね」
 アルファス機がスナイパーライフルに持ち替え、発砲。
 ガルドブルムの血に撃ち込んで消滅させ、ついでにデュラハンの指を巻き込んで宙に舞わせた。
「玄人が素人に堕すほど魅力的なのかもしれませんが」
 アサルトライフルに持ち替え最も近くのデュラハンを撃つ。
 背中が穴だらけになり、そこに味方の30ミリが殺到して核ごと砕かれる。
 デュラハンは残り3体。スケルトンは南の生き残りとあわせて30強。
「問題は次です」
 北東を見る。
 掘り起こされた雪原が延々と続いている。
 その果てに何があるか、容易に推測できた。

 最後の1体まで滅した後、ハンター達はメーガン機から補給を行い最後の戦場に向かった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 人と鬼の共存を見る者
    雪ノ下正太郎(ka0539
    人間(蒼)|16才|男性|霊闘士
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 世界より大事なモノ
    フィルメリア・クリスティア(ka3380
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • うさぎ聖導士
    マリアン・ベヘーリト(ka3683
    ドワーフ|20才|女性|聖導士
  • 【ⅩⅢ】死を想え
    ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529
    人間(蒼)|25才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
フィルメリア・クリスティア(ka3380
人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/11/23 22:50:47
アイコン 相談卓
Gacrux(ka2726
人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/11/25 17:37:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/22 06:38:58