新人歓迎!闇夜に浮かぶ顔と叫び

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/03/29 07:30
完成日
2016/04/08 00:48

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ここは同盟領、農業推進地ジェオルジのとある村。
「さて、今日の仕事はお終い」
 果樹園で農民が伸びをする。
 陽はすでに傾き西の空は茜色に焼けている。
「温かくなって雑草も伸びてきたねぇ」
「そのうちブドウの花が咲く。そうなれば受粉させてやらないと」
 ご存知の通り、ブドウは一つの房に小さな実が多く付く。当然、実になる前は花であり、すべてが受粉してなくてはならない。自然に任せてもいいが、より確実に実を結ぶようにするには人工授粉させるのが良い。とはいえ、果実園でまんべんなく人工授粉させるとなると数が数だけに大変な作業となる。もちろん雑草の除去も欠かせない。忙しくなる。
「ま、それはもう少し先の話。今はのんびりするさ」
「違いねぇ」
 そんな話をしつつ、仕事仲間の数人で帰路に就く。
 その時だった。
 ――ぁぁ……。
「え?」
 仲間の一人が振り向いた。
「どうした?」
「いま、遠くで悲鳴が聞こえなかったか?」
「いや……まったく聞こえなかったが」
 足を止めてそんな会話。
 ――ぎゃあぁぁぁぁ……。
「ほ、ほら。今のは聞こえたろう!」
「お、おお」
「な、なんちゅう不気味な叫び声じゃ」
「行ってみるぞ!」
 彼らは勇敢だった。
 この世のものとは思えないような響きの叫びを聞き、それでも逃げなかったのだ。
 無論、逃げ帰ったとしてもその原因を調べるため勇気のある者が現場に行かなくてはならなかったろう。ただし、この場合は何かわからない物の一端に触れることもない。
 すぐに行けば、何があったか分かるかもしれない。
 その何かがどれだけ危険なものかどうかというのはともかく。
 とにかく彼らは走った。
 が、叫びは二度と聞こえてこない。手掛かりを失った。
「なあ、どれだけ村から離れていたのかもわからないんだ。今日のところは引き上げよう」
 仲間の一人が言うのも無理はない。見晴らしのいい草原には、遠くにも特に変わったことはないからだ。
「いやしかし……」
「お、おいッ! あれを見ろ!」
 突然、仲間の一人が森の方を指差した。
 全員がそちらに注目するッ!
 するのだが……。
「……何もないじゃないか」
「人の顔が森の闇の中で白くぼんやりと浮かんでたんだよ……とても生きている人の表情じゃなかったんだ!」
 指差した男は、まるで幽霊でも見たかのようにガタガタ震えていた。

「そして、森の中に入ってみるとッ!」
「ひ、ひいいいいっ!」
 ここは、とある町のハンターオフィス。
 駆け出しの……というか、あまり依頼を受けていないさぼり気味のハンター、南那初華(●●)が身を縮めて怖がっていた。
「あ、ごめんなさい。依頼の説明をするうちについ興奮して……」
 不気味な表情をして初華にぐいい、と顔を近付けていた受付係の娘がこほんと咳払いして身を正す。
 どうやら上記のとおり依頼の経緯を説明していたところ、ついついホラー風味で説明してしまったようで。
「ん、んもう。怪奇作家のお父さんのお話だって苦手だったんだからね!」
「とにかく、そういう事情で念のためにハンターに調査依頼が来ました。……とはいうものの……」
 ぷんぷん、と頬を膨らませた初華。受付係の娘は声を改めたものの、またも言葉を濁した。
「と、とはいうものの?」
 またも身構える初華。これを見てぷっと笑ってしまう受付嬢。
「安心してください、調査依頼といっても敵の正体はおそらく予測がついている、と言いたかっただけですので」
「ほへ? 分かるの?」
 目を丸くして身を乗り出す初華。
「何もないところに悲鳴もないでしょう。奇怪な超音波を発する歪虚がいるので、おそらく敵の正体はそれだろう、と」
 だから新人ハンターに向けた依頼にするんですけどね、と受付嬢。すっ、と出した資料には「ビッグアゲハとそれに分類されるもの」と書かれていた。
「ただ、森の奥の闇で見た人の顔、というのが引っかかるというので魔術師協会広報室が情報を欲しがっています。だから、少しは経験のある初華さんに同行してもらおう、と」
「私、ビッグアゲハと戦ったことないよ?」
 初華、能天気に返事する。
 これにごごごご……と物凄い形相で顔を寄せて来る受付嬢。
「そりゃあ、あまり依頼受けてないですからね。しっかり経験積んで北方の最前線にも行けるよう頑張ってもらいませんとね」
「ひ、ひぃぃぃ」
 再び身を縮める初華。
「ま、冗談はさておき、敵は空を飛びますし新人そっちのけで戦っちゃうような好戦的ではない経験者を一人つけておきたいので初華さんはうってつけなんです」
「……何その役立たずみたいな言い方」
「とにかく、新人のバックアップをお願いしますね」

 というわけで、ジェオルジのとある村付近の森に出るビッグアゲハと思しき歪虚を退治してくれる人、求ム。

リプレイ本文


「ふうん、歪虚と戦うの初めてなんだー」
 南那初華(kz0135)がぽややん、とりり子(ka6114)に聞いた。
 ここは依頼のあった村。早速現場に向かっている。
「訓練はつけてもらったけど……」
 りり子もぽんやりと答え空を見上げる。
 胸中に去来する、孤独だった日々とそうではなくなった日々。雲が流れる。どこから流れてきたのか、どこに行くのか。
 大きい雲もあるし、小さい雲もある。
 あるいは、一つ一つの小さな雲が集まって大きくなったのかもしれない。
(今のうちがどのくらい通用するのか……)
 大きな雲を見て思うのだった。

「大丈夫。みんながいるしやっつけられるよ!」
「先輩ハンターの初華ちゃんがそう言うなら……よろしくなのですー」
 りり子の思いとは別に励ます初華。その周りをちょこまか動き回る卯月 瑞花(ka6019)が近付き、最後に顔の前に近付いて、にこー。
「はぅ! 僕、ちょこっとだけ先輩さんなのです! かっこいいところを見せるのです!」
 白い和服の瑞花の隣で、桃色ショートヘアに桃色装備のネプ・ヴィンダールヴ(ka4436)がえへんと胸張り。胸はうすぺただが左眼帯のボーイッシュな娘である。
「それよりその歪虚。蝶々なのに、人面も見える……何だか不思議だね」
 横から金髪の三つ編みを揺らしユウキ(ka5861)が思慮深く緑色の瞳を伏し目がちにして考え込んでいる。
「森の闇の中で白くぼんやりと浮かぶ、人の顔か。不気味な叫び声もあわせて、さぞ肝を冷やしただろうね…」
 神秘的な舎利鎧「久遠」を着込む天道 遮那(ka6113)が話に乗って来た。
「敵の頭が人面なのか、羽が人面なのか……或はその他の存在?」
 ユウキ、遮那を見上げた。その背後でざわ、と複数の気配が反応する。
「ああ。その話は僕としても職業柄、気になるかな」
 遮那の言葉。背後でざわざわ、と気配。
「どしたの、初華ちゃん?」
「ゆ、幽霊じゃないと信じたいわっ!」
 腰の引けている初華に瑞花が首を傾げていた。
「はぅ!」
 初華の言葉に過敏に反応するネプ。初華と一緒にざわざわしていた張本人の一人だ。
「これで本物の幽霊だったら怖くて涙目になってた所だよ」
 狐中・小鳥(ka5484)もざわざわしていた一人。
 三人仲良く怖がっていたのだが……。
「はぅ? ならなんでここにいるのです?」
 ネプ、どストレートに聞いてみた。デリカシーの欠片もない。
「あ、もしかして半分怖いもの見たさとか?」
 初華も振り返って突っ込んだ。
 二人に詰め寄られ「う……」と言葉に窮する小鳥。
「さっきまで一緒に怖がってたのに……」
 瑞花、手の平を返すようにわいわいし始めた三人に呆れるのみ。
「と、とにかく……ただの歪虚なら怖くないんだよ!」
 結局小鳥、否定しなかった。
 それはそれとして。
「『ビッグアゲハとそれに分類されるもの』らしいけど…、心当たりが2つあるんだよね。1つは羽の模様が人面に見える類いのモノ。もう1つはリアルブルーで伝わる、『飛頭蛮』って妖怪だね」
 遮那は幽霊苦手組の様子を特に気にするでもなく話を進めていた。横でこれに気付いた初華、ネプ、小鳥がそろって遮那の方に前のめりになりつつうんうんと力強く頷いている。
「幽霊じゃないからって……」
 瑞花、手の平を返すように仲良く並んだ三人に以下略。
「とにかく殲滅するよ。誰一人傷付けたりさせない」
「うんっ!」
 ユウキの言葉に皆が頷く。

 もちろん、空を見上げていたりり子も。
(みんなと一個一個経験をつんでいって……いつかは)
 すっかり空を見上げるのをやめた。
 やめて皆と一緒に頷く。
 それはさておき…。
「ビックアゲハゆーのやったら羽が薄くて見つけにくかったとか羽に色々模様とかあるんやろかね? ……そうや、空飛ぶんなら頭上も注意やね」
 静かだったのが一転、まくしたてていたり。
 その様変わりに皆が――実はりり子の様子を心配して言葉を積極的に交わしていたのだが――安心したように微笑するのだった。



 さて、現場に近付いた時。
 ――ゅうぅぅぅ……。
「なんや?」
 風の中に妙な音に気付き、りり子が足を止めた。
「どうしたのですー、りり子ちゃん?」
 瑞花がりり子の顔を覗き込む。
「うち、超感覚ゆうの使ってるんやけど……」
「はぅ、それなら敵の超音波もよく聞こえるのです!」
「……威力倍増とかしないの、それ?」
 りり子の呟きにネプと初華が食い付く。ちなみに超音波、聞こえる音波帯はダメージに関係せず、聞こえない音波帯は聴覚器官に作用するものではないので初華のツッコミは間違いである。
 閑話休題。
 ――うぁぁぁ……。
「…どうやら探す手間、省けたみたいだね」
 遮那、片手で合掌するように手を立てて音に集中しりり子の聞いた音を捕えたらしい。
「ね、どんな音?」
「亡者の苦しんでいる声、が近いかな?」
 聞いた初華にこともなしに答える遮那。ひ、と初華は身を引く。
 ――ぐおぉぉ……。
「聞こえた、あっちだ。行ってみよう!」
 ユウキ、一番に駆け出した。誰かが苦しんでいるかもしれないのだ。のんびりしていられない。
 そして、丘を一つ越えた時。

「え?」
 思わず足を止めるユウキ。
 遠くの草原に、亡者の顔がいくつも見えた。
 いずれも目を不自然に見開き、力の限り何かを叫んでいるようだった。
 いや。
 それだけではない。
 歯を食いしばって何かに耐えるように引き歪んだ顔。
 窒息しそうなのか舌を伸ばして虚空を見据える顔。
 それらが現れたり、消えたり……。
「これ……なんだ?」
 ドワーフとして誇りを持ってハンターになった。怖れはない。驕りもない。
 それでも、このような怪異は見たことがない。
 羽に三つも四つも苦悶の表情を浮かべた人面模様のある蝶々など!
「羽の模様だったか……それにしても」
 続いた遮那が冷静に口にした。高野山真言宗総本山、金剛峯寺を出自とし、退魔行の修行を兼ねて各地を放浪した。あるいは、慣れているのかもしれない。
 逆に、元気になった者もいるッ!
「紛らわしい歪虚をさっさと倒して安全確保しないとだね。それに幽霊はいなかったって報告もしないと!」
 小鳥、これまで怖がらせてくれてよくも、な思いを込めて吶喊。ちゃきり、と右手にダンサーズショートソードの、そして左手に小太刀「風魔」の刃がきらめく。
「幽霊の正体見たり、ってね。ま、枯れたススキよりはぽいですかねー?」
 瑞花も小鳥に合わせ突撃。こちらは霊刀「小狐丸」の二刀流。
「人面アゲハは三匹か? ならうちも入れて三対三や!」
 遅れてりり子がきらめく長物、ミラージュグレイブをしっかり手にして続いた。
「待って。ビッグアゲハは確か……」
 ユウキがスピラルバックラーを前に、引いた右手で儀礼剣「クラレント」を持ち追い掛ける。確か瑞花は出掛けに資料「ビッグアゲハとそれに類するもの」を読んだはずだと強く念じている。
 ちょうど逆三角形陣形で突っ込んだ三人に気付き、地面で大きな羽を揺らめかせていた人面ビッグアゲハ三羽がついに、宙に浮いたところだった!
 ――ぐおぉぉ……。
 ――うぁぁぁ……。
 本格的に聞こえる不気味な亡者の苦しみのような音。蝶の羽根の動きに合わせて聞こえて来るようだ。
「はぅ、羽ばたきの音だったのです」
「もー、勘弁してほしい~」
 最後尾のネプと初華がぼやくが、その横で。
「優雅だが速い。気を付けて!」
 遮那が叫んだ。
「確か、超音波ですよねぇー」
 んふふ、と瑞花が余裕を見せたところだった!
 ――ぎゃああぁぁぁっ!
 真ん中のアゲハから恐ろしい響きの悲鳴とともに超音波、来たッ!
「え?」
 予想しなかった響きに小鳥の足が止まった。
「卯月瑞花、推して参るっ! ……んふふー、言ってみたかった……え?」
 もちろん、正面から瞬脚で逃げ超音波をかわした瑞花も。
 視線は、全員が前方の一匹に集中した。
 その横で。
「あっ。頭上も注意や!」
 りり子の叫び。
 が、遅い。
 見上げた全員の頭上左右で、二匹のアゲハが人面羽をいっぱいに広げ、そして大きく羽ばたいた。
 ――うぉぉおおぉぉん!
 ――ひぎゃぁあああぁぁぁぁ!
 刹那、灰色とピンクの鱗粉がどっさりと舞ってきた。
「くっ」
「けふん」
「はぅ! りんぷんとかいう粉を出すとか聞いたのです! そんなの、眼帯をしている僕には無駄なのです!」
 思わず目を逸らすハンターと、うすペタな胸を張るネプ。
 ――うぎゃぁぁぁぁ!
 さらに超音波、来る。
「うわっ」
「ひっどぉい」
「…もう片方の目がむずむずするのですーーーーー!!!!!」
 食らうハンターたち。ネプだけは地面ごろごろーっとしてて回避したが。
 続けて左右からも。
 ――ギャーーーッ!
 ――キャー――ッ!
 鱗粉まみれにして三方から超音波を放ちまくりのアゲハ三羽。
「んもう、髪の毛~」
 弱音を吐く初華に攻撃が集中していたが。
「もう、誰も傷付けたりなんかさせないよ」
 敢然とユウキが前に立ち、超音波を受け止めた。
 それだけではない。
「オン・アキシュビヤ・ウン」
 背後には、遮那。パンジャ「ホーリーライト」を手に印を結び「阿?如来退魔呪」を掛けている。光が初華を、そしてユウキを包んだ。
「これで抵抗して楽になるはず」
 そしてぽむ、とユウキと初華の頭に手を。
「ただ…髪は防げないからごめんね」
 ここでアゲハも気付いたはずだ。
 鱗粉が落ち着いた時、中心にいたのはこの三人だけだったことに。



「はぅ!」
 この時ネプ、ゴロゴロ転がっていたが気付くと輪の外にいた。運良く効果的な方法で離脱をしたようで。
 そして振り返ったその視界には。
「乙女の命をキズモノに…。悪・即・斬! なのですっ!」
 瑞花がいた。
 鱗粉をたっぷり長い髪に食らってぱさぱさでいやんな感じになった恨み晴らさずおくべきかと敵に一直線。スラッシュエッジで羽の根元を狙った。
 ――ずぱっ。
「卯月瑞花、推して参るっ!」
 さらに振り返って逆の羽の根元を。
「うちはまだ得物の扱いがそこまで上手やないんでかんにんしてや!」
 反対の正面からは、鱗粉の中から現れたりり子。
 ミラージュグレイブを大きく振り抜きクラッシュブロウ。蝶の胴体にもろに入った。
「……どついてもうたが、かんにんや」
「……んふふー、一度言ってみたかったんだよねぇ、これ」
 攻撃モーションから改めて立ちなおして敵を見る二人。
 アゲハは地に落ち、動かない。

 別の一匹は一番森に近い場所にいた。
「蝶のように舞い蜂のように刺す、とはいかないけど、歪虚の蝶にはまけられないね」
 小鳥が円を意識した体さばきで回り込みつつ、低い姿勢から伸身した勢いでスラッシュ。さらに半回転しながらもう一方の小太刀でスラッシュ。少し弾くようにしたのは……。
「一体も逃がさないようにしないとだね。逃げ道は塞ぐんだよ!」
 電光石火で吹っ飛ばした方に回り込む。最初にあっという間に間合いを詰めてきたのをちゃんと覚えているのだ。
「おっと」
 さらに逃げた蝶だが、それは小鳥の術中だった。
 ――すぱっ。
「これでも剣術は得意でね」
 遮那が降魔刀で一閃。止めを刺した。
 敵、森に逃げることはかなわず遮那の方に逃げてしまっていたのだ。

 もう一匹。
「これ以上は、誰も!」
 先ほどまで専守防衛に努めていたユウキが、盾を持つ手を後ろにしていた。捨てた守りの動きから滑らかに移行したクレラントの切っ先が再び超音波を出そうと動きを止めた敵に突き刺さった。
 ひら、と崩れそうになった動きから大きく動いた。
 こちらも逃げるつもりだ。
「ネプさん!」
「はぅ? くまんてぃーぬで支援するのです!」
 初華の呼び声に気付いたネプ、魔導機械「くまんてぃーぬ」を構えた。スキル「猪さんの力」でみなぎるマテリアル。デフォルメされた可愛い猪の幻影が横に現れた。
 そして、ぱかっとくまんてぃーぬの口が開き、ずどん。
「……何その動物いっぱいな攻撃」
「野生の力なのです」
 初華のうらやましそうな声に、自慢そうなネプの声。

 その後。
「これで終わり……だと思うけど、実は幽霊も別にいました、とかないよね? ね?」
「ちょ……私に聞かれてもっ」
 小鳥、初華に迫って念を押していたり。
 とにかく、これで敵は全滅した。



「ほかに幽霊とかはいないみたい」
「おらんかったな」
 戦闘後、付近を調べた小鳥とりり子が戻って来た。
「そうか……願わくばこの功徳を以って普く一切に及ぼし、我らと衆生とみな共に仏道を成ぜんことを」
 遮那はまだ残っているアゲハの羽に回向で手向ける。
「羽の模様、幽霊なのですか?」
「いや、そうじゃないけど念のため……それにしても、これが今回の元凶か……」
 ネプにそう言って、自身がスケッチした絵を見る。
 描き写したのは恨みの顔ばかり。
「遮那さん、絵が得意なの?」
「どうかな。ただ、魔術師協会の人に情報を渡すためにもしっかりと記録しておかないとね」
 聞いてきた初華に答えた遮那だが、ここで驚いた。
「落ちないですー」
 何と瑞花、鱗粉まみれの髪にミネラルウォーターを掛けたではないか。
「きゃー、瑞花さんっ! あとでお風呂入ればいいからっ」
「初華ちゃん、一緒に入ってくれる?」
 きゃいきゃいやってるその横で。
「……ほっ。綺麗な金色」
 ユウキが、いじっていた自分の髪の毛を見て安心していた。
「どうしたのかな、ユウキさん」
 小鳥が近付いて聞く。
「鱗粉ですっかり髪が傷んだけど、三つ編みの中までは鱗粉が来ないから……ほら、編み直すと内側が外に来て、ね?」
 ユウキ、嬉しそうに自分の三つ編みを見せる。輝きの失われた先ほどの様子から、見違えるほどキラキラした髪になった。
「しまった、私も三つ編みにしておけばなぁ」
「初華ちゃん、今からでも三つ編みする?」
「はぅ、ボクも三つ編みするですっ」
 初華と瑞花のやり取りにネプも加わる。
「いや、それ無理じゃないかな?」
「何とかするのです! 小鳥さんもっ!」
「ええ!? わたしはいいからっ!」
 ショートヘアの二人もどったんばったん。
「……ちょっと避難しておこうか」
 遮那はこっそり女性陣から離れておくのだった。
 そして、近くにりり子がいたことに気付く。
「いいのかい、みんなと騒がなくて?」
「ええんや」
 りり子、答えて爽やかに空を見上げた。
「打ち解けて楽しそうな雰囲気見とるだけで、今は満足や」
 そのうち、こういう雰囲気に慣れていければとの思いがあるのかもしれない。

 村人はハンターたちに感謝したことは言うまでもなく、後日であるが魔術師協会広報室も今回の敵に大変興味を持ち満足したという。

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  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥ka5484

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参加者一覧

  • どうぶつ武器庫
    ネプ・ヴィンダールヴ(ka4436
    人間(紅)|11才|女性|機導師
  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
  • 守護ドワーフ
    ユウキ(ka5861
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • 乙女ニンジャ―
    卯月 瑞花(ka6019
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • 仏道を歩む者
    天道 遮那(ka6113
    人間(蒼)|18才|男性|聖導士
  • うつむかない者
    りり子(ka6114
    鬼|13才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/26 13:50:16
アイコン 相談卓
卯月 瑞花(ka6019
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/03/28 01:07:25