• 審判

【審判】ワルサー総帥の巡礼路防衛戦

マスター:御影堂

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~12人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/01 19:00
完成日
2016/04/12 00:52

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「ふえぇ」
 エクラ教巡礼路に隣接した宿場町で、サチコ・W・ルサスールは情けない声をあげていた。その声の意味は、どうしてこんなことに、である。
 今、サチコは剣を手に宿場町の前に張り巡らされた柵の前に立っていた。
「……思い返せば」

 思い返せば、護衛についた商隊の隊長から聞いた情報に始まる。
 旅をするなら巡礼路がいいぞ、という情報に従ってサチコはエクラ教巡礼路を移動していた。そんな中、立ち寄った酒場で自警団に助けを求められたのだ。
「……もう一度お伺いしてもいいですの?」
「何度でもお願いいたします。どうかルサスール家のお力をお貸しください!」
「いえ、急にそんなことを言われましても……私は私的な旅の途中ですし」
 話を聞けば、エクラ教信者を装った集団や翼を有した歪虚がエクラ教巡礼路の各地で侵攻を開始しているのだという。
 この自警団は周辺の村や街から集められた精鋭で結成されていた。いわば、この宿場町は最終防衛ラインに相当するのだという。
「ですが、あなたは偉い貴族の方なのでしょう?」
「……えぇ、それはそうなのですけれど」
 集められた団員の中に、先のゴブリンとの戦いでサチコの部隊に組み込まれた兵士がいたのである。サチコの身分を知る元兵士が、その力を貸して欲しいと懇願してきたのだ。
 やや興奮気味の自警団員を収め、サチコは冷静に言い放つ。
「まず、ルサスール家に救援を頼もうにも間に合いません」
「……それは」
「ですから、ルサスール家として支援はできません。そこは了承してください」
 見るからに落胆する自警団員を前に、サチコは心が痛む。ルサスール家という家名には、それ相応の重みがあるのだと思い知らされる。
 少し逡巡して、サチコは桃色の唇を再び開く。
「ですが、私個人の力でしたらお貸しできます」
「あなたの?」
 自警団員は眉間に眉を寄せたが、先の戦いでサチコが巨大なゴブリン相手に一歩も引かず戦ったことを思い出す。期待してもいいのだろうか、と顔に希望の色が見えた。
「不足でしょうか」
「いえ、今は一人でも戦力が必要な時です。是非、お願いをいたします」
 まっすぐ自警団員はサチコを見つめ、協力を願い出た。
 差し出された手をサチコはしっかりの握り返すのであった。


 そして、現在。
 サチコの目の前には、目に余るほどの瘴気が見えていた。エクラ教の外套を纏った集団が、その瘴気の中で歩いていた。
「うぅ、気が滅入りそうですわ。ですが……」
 望遠レンズで倒すべき相手を確認する。姿形はエクラ教の巡礼者だが、エクラ教のマークが大きくバツ印でかき消されていた。そして、その外套の下に見えたのは……。
「……まじですの」
 身体の部品が継ぎ接ぎされた亜人や人間であった。歪虚であることは疑いようもなく、その周囲には翼を生やした獣も見えた。
 白い大鷲のような翼を持った大狼、そして、天使のような歪虚の姿もあった。天使を模した歪虚は、偽巡礼者同様に一部の身体部位が獣にすげ替えられていた。翼も天使のように白いが、大きな鳥にも見える。
 大狼も天使もどきも一体ではない。それなりの数がいる。
 こうした相手を目の前にして、サチコは自身の頬をぱちんと叩いた。
「あんなのに神聖な巡礼路を蹂躙させるわけにはいきませんわ!」
 俄然気合を入れて、剣を構える。その後方では、従者のタロとジロが表情をこわばらせていた。
「サチコ様、敵の集団におそらく要がいるかと思われます」
「わかっていますわ。厳しい戦いですけれど、それを叩けば……」
 防衛ラインを超えられることはない。
 そう強く思いを乗せ、剣の柄を握って、サチコは敵集団を見やるのだった。

リプレイ本文



 暖かな風が吹く、見晴らしのいい平原。
 巡礼路の彼方にある異様な気配が近づいている。サチコは緊張した面持ちで向こうに見える塊を眺めていた。
 サチコの周囲にはハンターたち。そのうちの一人、天竜寺 舞(ka0377)が双眼鏡を覗きながら呟く。
「継ぎ接ぎの歪虚か。前にもこういうの遭遇したけど何か関係あるのかな」
「こいつらも継ぎ接ぎか……ドンナァの野郎を思い出すな」
 かつて戦ったことのあるゴブリンを思い出し、ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は舞の呟きに答えていた。裏で糸をひく者がいるのかもしれないと思いもするが、今は横においておく。
 同じ考えに至ったのか、舞は双眼鏡を目から離すと肩をすくめた。
「まぁ、何はともあれ。やるしかない、か」
「そういうことだな」
 ヴォーイはサチコを振り返ると、表情を緩めて告げる。
「なぁに、巡礼路を行く限り遅かれ早かれぶつかってたろうよ」
「……ん」
 小さく頷くサチコの後ろでは、緊張感の砕ける声がした。
「うーわぁ、歪虚が巡礼者の恰好かよ……ぞろぞろと気色悪ぅ。さっさと終わらせて、帰りがてら酒でもひっかけたいもんだねぇ」
 鵤(ka3319)は冗談めかしく、半ば本気でそんなことを言っていた。
「エールもいいが、王国ならワインもありだな」と思案顔だ。
 サチコの視線に気づくと、
「やーん、楽しみぃなんちってー」
 鵤の軽い嬌声に、呆れ顔を見せたサチコの頭へ紫月・海斗(ka0788)が手を置く。
「あまり深刻に考え過ぎると、刃が空振っちゃうぜ?」
「そうそう。ちょっとばかし敵が多いが、まぁ何とかなるだろう」
 柊 真司(ka0705)が海斗の魔導バイクのサイドカーに、マシンガンを取り付けようとしていた。が、うまくいかない。軽く固定し、抱えるようにして行くことにする。
「仕方ない抱えていくか」
「サイドカーなら問題はないな。ドリルも……まぁ何とかなるだろう」
 魔導バイクにかっちりと嵌まらないものの、魔導ドリルも装着されていた。ただし、支えなければ激しい動きには耐えられないかも知れない。
 実際の運用はやって試すといわんばかりに、二人は着実に準備をすすめる。
 そんな二人の側で、
「ふむん。確かにちと敵がおおいかのう」
 紅薔薇(ka4766)はまだ遠くにある歪虚の集団を見ながら呟く。
 次の瞬間には、
「まぁ、たぶん何とかなるのじゃ。案ずるより産むが易しというしのう」
とあっけからんと言ってのけるのだった。

 一方で不安が募る者もいる。
「これは面倒だな」
 鈴胆 奈月(ka2802)はため息を吐くようにいう。奈月の場合、不安というより正直な感想といったところだろうか。
 その隣ではアシェ-ル(ka2983)が、声を少し荒げていた。
「無限に出てきそうで卑怯です!」
 あまりの敵数の多さに理不尽さを感じているらしい。これもまた、不安というよりは怒りの感情に近い。
 アシェールの後ろ側では、最上 風(ka0891)が天を仰いでいる。
「乱戦、防衛戦、敵沢山、帰りたくなってきました」
 いや、風の感情も不安ではない。
「やれやれ、回復役は風一人ですかー。過労死しますよー?」
 これは、不満である。
「この戦いが終わったら、サチコさんに、ご飯を奢ってもらうんだ―っと、フラグでも立てておきますかね―」
 そして、諦観である。とはいえ、自分の役目はしっかりと担う。
 風は、町を守って恩を売っておけば、何かいいことが起こるはずだと信じていた。少なくとも報酬は出る。
 心底不安そうなのは、サチコだけらしかった。

「サチコさんはどーんとかまえていてください。何かあっても私たちがフォローしますから」
 その不安を解きほぐすように、エルバッハ・リオン(ka2434)が声をかける。
 ともに前線へ赴く紅薔薇が、サチコに尋ねる。
「サチコ殿、範囲攻撃……つまりは線や面で攻撃できる技を準備してもらえるかのう?」
 サチコに今回の敵は数が多い。多い敵にはそうした攻撃のほうが、
「そちらのほうが効果的なのじゃ」と紅薔薇は説明する。
 熱心に紅薔薇の言葉を聞き入れると、サチコは剣の柄を握る。技を放つという感覚にサチコはまだ慣れていない。
 不安は抜けてきても緊張が残る。
「大丈夫。皆いるし落ち着いていこう」
 強張る方に手をおいて舞が快活に微笑む。
「はい、深呼吸」
 促されるまま剣から手を離しサチコは深呼吸をする。
 表面上は落ち着きが出てきたところで、前を向いた。
「さぁ、始めますわ」

「いるねぇ、有象無象がウジャウジャと」
 戦いの機運が高まったところで、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が白い歯を見せていた。戦斧を手に近づきつつある群れに睨みを利かす。
「纏めて吹き飛ばしてやるから、テメェ等全員かかってこぉい!」
 気合一閃、戦斧を振り下ろしてボルディアは先行する。
 その隣では、マッシュ・アクラシス(ka0771)が手綱を握る。
「いやはや、色々混ざりこんで大層な事で」
 マッシュはこの状況が把握できていない、それでも、やることは一つ。
「差し当たりどうにかすればいいのでしょう?」
 サチコに目配せし、頷きを見て視線を群れへと戻す。
「なんとか団……は、よく存じませんが」
 やることはやる、と意志を込めてゴースロンを走らせる。
「それでは……失礼して」


 ボルディアとマッシュ、二対の馬が駆ける蹄の音が、戦闘開始の合図となった。
 二人に続いて飛び出したのは、紅薔薇だ。
「行くのじゃ」
 彼女がまたがる巨躯のゴースロンは嘶くと同時に地を蹴った。主に応えるように、ボルディアたちへ追いつき並走する。
 紅薔薇を加えた三人の疾走を追うように、舞とサチコ、アシェールが続く。彼女らが地上にひしめき合う偽信者や地上を狙う有翼大狼に応対する。
 だが、近づいてくるハンターに最も早く反応したのは天使もどきであった。
 胡乱な瞳を向けると、一斉に弓を射かけ魔法を放つ。暴風雨のように迫り来る攻撃に、先行する三人は散開した。
「一気に抜けるぜ!」
 炎が肌をかすめる中、ボルディアが率先して足を速める。ボルディアが引っ張るようにして、目の前に広がる群れへと突撃していく。
 続く舞は矢を腕に受けながらも、前進していた。サチコと並んで進む彼女は、多少の傷を大丈夫と受け流す。舞とサチコが追いついた時、ボルディアは大狼の一匹と対峙していた。マッシュは大きく回りこみ、偽信者の一辺をなぎ払う。
「邪魔じゃ!」
 最初に深く斬りこんだのは、紅薔薇であった。ひしめく偽信者の群れの中へ、大狼の攻撃を刃で受け流し突撃する。
 黒き馬上から振るわれる日本刀が紅き光を纏う。白き衣を纏う偽エクラ教信者の中で、紅薔薇は幾重にも刀を振るう。
 一振りごとに紅い薔薇の花弁を舞い散らせながら、邁進する。
 彼女に続いて舞が群れの中に切り込む。突き抜ける紅薔薇と違い、撹乱するように偽信者の間をすり抜けていく。
 すり抜けざまに手にした剣が、継ぎ接ぎの身体を斬りつける。それらの身体が崩れ、倒れていくのを横目で見ながら舞は歯噛みする。
(あんた達をこんな目に遭わせた奴は、絶対切り捨ててやるから)
 もう元には戻れない、動物も人も混ぜあわせたような歪虚たちへ。その素材となった者たちへと舞は誓いを立てる。今はただ、とどめをさしてやることしかできない。
 舞と同時に群れへ追いついたサチコも、複雑な表情を見せていた。だが、思いをはせる余裕は彼女にはない。紅薔薇や舞から託された役目を担うのに、精一杯であった。
 複雑な心を必死させ埋め、サチコは鋭い刺突を放っていく。
 紅薔薇や舞が取りこぼした相手をサチコが一閃する。
 なおも残ったならば、
「確かに数は多いですね。下手な鉄砲もなんたらっていいますし」
 アシェールが桃色の球体を弾けさせ、炎を撒き散らす。
「あぶり出してみせます!」
 文字通り炙りながら、アシェールは前衛の邪魔にならない位置を取る。アシェールに向けても天使もどきが矢を放つのを、何とかかわしていく。
 一瞬できた隙間を狙い、アシェールはサチコに向けて叫んだ。
「サチコ様、武器に炎を付与させます!」
 炎弾と同じ桃色の火球が、サチコに向かって射出された。サチコはレイピアで火球を受け止めると、そのまま敵に向けて刺突する。
 桃色のオーラがサチコの動きに合わせて軌跡を残し、まるで花びらが散るように消えていく。渦巻く桃色の炎を武器にまとい、サチコは戦場を駆ける。
「サチコ様との悪者退治、頑張ります!」
 サチコの姿にぐっと拳を握り、桃色のリボルバーをしっかりと構え直す。
 その隣では、奈月が気合が入っているな、とアシェールの様子に感心する。
「僕も動くとするか」
 偽巡礼者の群れにサチコを狙って降下する有翼大狼を狙って弓を引き絞る。でかい的を外すわけがない。矢はまっすぐ進み、翼を射抜く。バランスを崩した有翼大狼は、再度飛び直して機会をうかがう。
 紅薔薇や舞がサポートしている様子から、群れの中心とでも思われたか。
「こっちの要は、しっかり守らないとな」
 有翼大狼を牽制しつつ、奈月は少しずつ最前線と距離を詰める。抑えきれずに抜け出てきた偽信者を見て、奈月は懐中時計に手を添える。そしてもう片方の手でLEDライトを掴む。
 扇状に広がる炎が偽信者を焼き払う。もし、残った者が入れば要なのだが……。
「残念。ハズレだ」


 奈月が呟き、地上班が敵と相対する少し前――。
 天使もどきや上空を駆ける大狼を相手にする空中班も動き出していた。目の前に広がる戦況を見やり、ヴォーイが偵察の準備を始める。
「さて、話したとおりに始めるとするぜ」
 連れ込んだイヌワシとシンクロし、ヴォーイは念じる態勢に入った。
 ファミリアズアイと呼ばれる魔法で、今、ヴォーイはイヌワシと視界を共有していた。地上班を追うようにイヌワシは飛翔する。
「任されたよ。さて、行くかねぇ」
 シールドと双眼鏡を手に、鵤がイヌワシの後を追う。鵤に平行して、エルと風も前進する。
「危なくなったら、動ける内に、回復の射程に来て下さいよー」
 雨あられの如く矢や炎の降り注ぐ戦場を前に、風は地上班へと叫ぶ。その声が届いたのかどうかはわからない。目視で状況を確認できる距離まで、風たちも進む。

 その風たちの後ろから颯爽と走り出す一台の魔導バイクがあった。
 海斗はエンジンを豪快にかけながら、サイドカーに乗る真司に告げる。
「さて、真司よ。オジサン達も要を見つけて、突撃するとしよう」
「要かぁ。見つかったら最優先で叩くけど、見つからないなら見つからないで、全部倒せばいいだけだしなあ」
 マシンガンをサイドカーに何とか固定し、真司は答える。
「気楽に探すかな」
 気楽に、という言葉が次の瞬間には苦楽に変わる。魔導バイクが奏でる音は、天使もどきの癇に障ったらしい。前線に向けられていた攻撃の一部が、海斗たちに向けられた。
「ハッハァ!」
 降り注ぐ炎弾を避けながら、海斗は笑い声をあげた。一発受ければ大惨事とも成りかねない中、海斗のテンションはアゲアゲだった。
「テンション高めだすよ、オジサン。ヒャッハー!」
「運転荒いなぁ。仕方ないけど、さ!」
 ゴリゴリと地面を削るタイヤの振動に耐えつつ、真司はマシンガンの銃口を上空へと向ける。大放出される弾丸に比例して、マシンガンは激しく揺れる。腕から来る振動と下から突き上げるような振動に挟まれ、真司の体は揉まれるような感覚に苛まれた。
「ぬぉおおおおお!?」
「どうした、真司。気張れ気張れ!」
 真司の状態などつゆ知らず、海斗は適当に励ましの言葉を投げる。そのままエンジンをかっ飛ばし、群れの周辺をぐるりと回っていく。
「邪魔だ、邪魔」
 甲高い音をかき鳴らし、急カーブを決めて海斗は純白の魔導銃をぶっ放す。矢が頬を掠めた代わりに、天使もどきの羽根を散らす。
「うっとおしいから、ファイアスロワーで薙ぎ払ってもいいなコレ」
「おい、過ぎた無茶は……」
 真司が言うのも聞かず、海斗は一気に加速する。有翼大狼が数匹下降してくるのに合わせ、海斗は炎を撃ちはなった。
 炎を被りながらも突っ込んでくる有翼大狼の爪牙を避け、海斗は間をすり抜ける。
「……囮としては、上出来だな」
「ヒャッハーズの面目躍如ってやつだ」
 海斗はそういって、豪快に笑うのだった。

「派手にやってるねぇ」
 海斗と真司の疾走劇に、鵤は煙草をくわえる。一服したところで、くまんてぃーぬを構えた。天使もどきの一体が、飛び回るイヌワシに気づいたのだ。
「はーいはい、おたくらのお相手はこちらですよっと」
 くまんてぃーぬの口から射出された弾丸が、天使もどきの面前を抜けていく。牽制で十分であった。こちらに注意が向いた隙に、前に出ながらデルタレイの準備に入る。
 光で形成された三角形の頂点から、光が射出される。
「こっちだって、いってるでしょうよ」
 今度は天使もどきの翼を射抜く。バランスを崩しかけた天使もどきの、胡乱にして奇妙な目が鵤へ向く。
「うわ、こわぁ」
 感情のこもっていない驚きの声を鵤は上げる。
 そんな鵤の隣から、エルが炎弾を放っていた。双眼鏡を片付け、代わりにワンドを振りかざす。
「探しきれませんでした。残念ですが、攻撃に入ります」
 一体一体を確実に撃ち落とすべく、狙いすまして一つ、二つと炎を打ち上げる。狙われた天使もどきは、二人をターゲットに矢を射かけてきた。
「……っ!」
 エルはそのうちの一本に腕を貫かれた。ワンドを落としかけたが、素早く放たれた風の注射器ミサイルによって落ち着きを取り戻す。突如飛んできた注射器には、いささか驚きもあったが、それも一瞬のこと。
「助かります」と目線で一礼し、エルは再び炎弾を放つ。鵤のデルタレイと合わせて、翼がもがれた天使もどきが地に落ちる。
 そこを轟音で駆け抜けていく海斗たちが撃ち倒すのが見えたのだった。


 火中の栗を拾うように、敵中で要を探す。
 最初に要に気づいたのは、舞だった。鋭敏な視覚と少しの幸運を下支えに、彼女は有翼大狼の中に翼の色が違う個体を見つけたのだ。
「あの狼……翼に金色が混じってるみたい」
「なら、あいつが降りてきたところを叩くぜ」
 ボルディアは、風音を放つ斧を体を軸にして豪快に振り舞わす。まるで鎌鼬の旋風のように、偽信者がボルディアの回転に巻き込まれて叩き切られていく。
 派手な動きを見せ、わざとらしく要の有翼大狼へ視線を送る。要が唸ると、側にいた有翼大狼が動いた。
 尖兵として送り込まれた有翼大狼の牙をボルディアは受け止め、肩口から血を流す。
 だが、ボルディアから流れ出た血液は紅々と燃え、傷を癒やすではないか。何でもないことのように、ボルディアは血の滾りを見せて――吠えた。
 自身の身長よりも大きな斧を、野性味溢れる動きで素早く操る。連続で切り込まれた有翼大狼は翼をもがれ、毛皮の剥がれた箇所からマテリアルを流出させた。
 飛ぶのではなく、跳んでボルディアへ爪を伸ばす。
「……お、らぁっ!」
 負傷する度に流れる血も、彼女を癒やす活力として燃える。
 気合一閃――有翼大狼の頭へ叩きこまれた刃が、突き進んで顎まで砕く。どっと地面に倒れた有翼大狼から視線を上げる。
 要の有翼大狼が咆哮した。

「うぉ、凄い叫びじゃのう」
 薔薇の花びらを散らしながら、紅薔薇はひとりごちる。紅薔薇は偽信者の中を突き進み、群れの後方に躍り出たところであった。
 あからさまに要とわかり過ぎる者はいなかったが、気になる動きを見せる者は何匹かいた。偽信者がハンターの動きに合わせ蠢くとき、率先して動く者たちだ。群れの中に点在し、指示するような腕の動きすらある。
 これには、どうやら上空を行くヴォーイのイヌワシも気づいたらしい。
 紅薔薇が再び切り込むべく足を踏み入れたところで、血糊がそいつらにぶっ掛けられた。
「いい目印じゃ」
 にっと笑いながら紅薔薇は、要らしき偽信者に向けて歩を進める。行く手を阻むものは、彼女の剣に散らされる。ハンターの動きに機敏な要どもは、逃げるように偽信者を動かす。
 返す波のように、押し込まれそうになるがマッシュが道を切り拓く。馬による突撃からの強力な薙ぎ払い。壁を作るように密集した偽信者が弾け、千切れ飛ぶ。
「やれやれ、面倒なことをする」
 そのまま有象無象の中を突き進み、旋回、馬の機動を活かして射線を確保する。
 狙いを定め、カービンの引き金を引いた。弾丸が虚のような偽信者の目に吸い込まれ、頭蓋を貫いた。しかし、そこは歪虚――残った瞳でマッシュを見た。
「おっと」
 群れが要の視線に合わせて蠢く。
 馬を引いたマッシュの視線の端で、薔薇が舞っていた。マッシュを追う偽信者を打ち払った彼女は、そのまま要まで邁進する。
「――っ!」
 接近して初めて要が短剣を握っていることに気づいた。いや、纏っていた外套に隠していたのか。鋭利な痛みが二の腕を走る。
 だが、それで止まる紅薔薇ではない。
 むしろ、痛みで狂い咲く。
 膨大なマテリアルが全身を駆け巡り、瞬間に咲き誇る華のごとく、苛烈な一撃を要に与えた。
 崩れる体の中で、頭に残った黒い黒い眼球がぐるりと紅薔薇を見た。最後にターゲッティングするような、睨み。周囲の偽信者が殺到したのもつかの間、眼球は弾丸に撃ち抜かれる。
「……」
 マッシュはカービンを引き下げると、次の相手を探してその場を離脱した。
 紅薔薇に集った偽信者は、糸が切れた人形のように動きが緩慢となった。要を倒した時は、わかるのかという疑問が少し氷解した。
 紅薔薇は木偶となった偽信者を打ち払い、一度前線から退く。


 紅薔薇と代わるように戦場へ戻る姿があった、舞だ。要を見つけると同時に、天使もどきの炎弾をまともに受けていた。負傷したサチコを連れて、一度風の回復圏内に引き下がっていたのだ。
「ついでに援護攻撃行きますよ―、なぎ払いますよー」
 舞と入れ違いに迫る有翼大狼を前に、風は帽子の目の部分から光の波動を放って一撃を与える。戻る前に傷を負われては商売繁盛もいいところだ。
 適度な休憩こそ、商売長続きの秘訣なのである。
 
「鵤サン、あざーっす」
 風の後方では、ファミリアズアイを解除したヴォーイが前にいる鵤へ声をかける。紅薔薇とマッシュの活躍で、早くも一体が除かれたのを解除する直前に見ていた。
 鵤が庇ってくれていたとはいえ、多少の被弾はある。自身の防衛本能を目覚めさせ、傷の回復を早めておく。
 準備は整ったとばかりに、続けて動物霊の力を借りて視力を高めた。
「さて、サチコ様の助けになりに行きますか」
 戦場を緩やかにかけながら、ヴォーイは短弓を引く。山なりに放たれる矢は、偽信者の群れの中にいる赤い印目掛けて飛ぶのであった。

 赤い目印こそヴォーイが見つけた要の証拠。
「疑わしきは黒……っていうより赤か」
 つぶやきながら赤いものが見える当たりへデルタレイを撃ちこむ。直接要に当たらずとも、要までの道が開ければいいという考えだ。
 戻ってきた舞が戻ってきたのに合わせ、炎を放ってより広く掃除してやる。目配せをして舞が拓けた地点へ飛び込んでいった。
 その間際、
「乙女には熱い女子力が必要です!」とアシェールが桃色の華炎を付与する。炎を纏った剣を振るい、舞は偽信者の中腹へと切り込む。
 倒し損ねた偽信者をサチコが一所懸命に払っていた。
 だが、偽信者に気を取られれば有翼大狼の爪牙が襲いかかる。アシェールはいち早く有翼大狼の動きに気づいた。大きく息を吸い込むと叫びを上げる。
「対空迎撃ができないと思ったら、大間違いです! 超弩重雷撃砲!」
 派手な桃色の雷撃が迸り、有翼大狼を飲み込んだ。雷撃は大狼を超えて、天使もどきの一つまで届く。
「いい感じだぜ、お嬢ちゃん!」
 豪快な笑い声と快音をかき鳴らし、アシェールの隣を海斗たちが疾走していった。
 真司が何事か告げると、海斗はさらに加速する。
「見つけたって、本当だろうな?」
「さっきアシェールの雷撃をかすめた奴、他のに比べて装備が豪華だ」
 金属系の装飾具が多いのは、要の証だろういう根拠だった。
「OK、そんじゃ突っ込むぞ! 主砲担当気張れよー!」
「……マジか」
 知ってたことだが、本当に面前に群れが迫ってくる。降りてきた有翼大狼へ炎を浴びせ、有象無象を蹴散らす。目標に向けて、海斗は足場を探す。
 こちらに向けて降りてきた有翼大狼を前に、一段速度を上げる。
「ハッ! 機動の徒舐めんなよ!」
 おおよそ無茶である。良い子は真似してはいけない。機導師として身につけた知識や技術、あとは大方の度胸を用いて全力で駆ける。車両の機能を機導術で最大限に引き出して、有翼大狼を踏み台に跳ぶ。
 この所業を成すために――幾重もの要素が絡み合う。バイクを鋼鉄の馬と例えるのなら、きっと、騎乗技術も助けになろう。それと、少しの運が必要だ。
 かくして、何とか次の踏み台……有翼大狼の背中を叩いて天使もどきへと到達する。
「ヒャッハー! ギリギリのラインだろうと、俺のドラテクで辿り着いてやらぁ!」
 跳ぶための足場を繋ぐ、本当にギリギリのラインなのである。
 同じ戦場で二度成功することは難しいだろう。
「オラ真司、サクッと決めろや!」
 知ってか知らずか届いた興奮に、海斗は叫ぶ。自身は一瞬の間に魔導ドリルを起動していた。天使もどきに真司がマシンガンで無数の弾痕を作り、羽根を崩す。
 もっとも大きい風穴を開けたのは、海斗のドリルであった。

「で、降りるときは?」と問われれば、「考えていない」と海斗は答えただろう。
 五体満足、魔導バイクが無事であったのは奇跡としか言いようが無い。


「おたくら無茶しすぎ」
 滑空する魔導バイクを眺めながら、鵤は苦笑する。だが、派手な動きに気を取られ続けるわけにもいかない。有翼大狼の数匹が、群れを抜けて向かってくる。
 デルタレイで牽制しつつ、群れの中に潜む要を見やる。海斗たちが堕としたのとは異なる個体だ。同じようにやや豪華な装飾品を纏っていた。
 放たれた光の一つが、要を穿つ。
 その間に接近を果たした有翼大狼だが、腕を伸ばすと同時に後方へはじけ飛んだ。
 光の障壁に迸る雷撃、攻性防壁で鵤は距離を稼ぐ。
「フォローするには身の安全の確保が重要ですね」
「エルちゃんの言うとおり、撃ち漏らししないようにねぇ」
 怯んだ隙を見逃さず、エルのファイアーボールに合わせてデルタレイでとどめを刺す。個体数が減ったことで、要がわかりやすくなる。
 風も加わり、空中班に抜けてきた有翼大狼を狩り落とす。
「さて、天使もどきを狩るとしようかねぇ」
 鵤の声の元、要の天使もどきにエルらも照準を合わせる。
 爆炎が空を舞い、天使もどきが羽根を散らす。光が翼の根本を穿ち、片翼を落とした。バランスを崩した天使もどきを風刃が切り裂いた。
 幾重の負傷に堕ちていく姿をエルたちは見届けるのだった。

 そして、天使もどきと同じく、落ちるものがいた。海斗たちだ。
 二人は派手な音を鳴らして、サチコの傍らに車体を落とした。
「……っおい!?」
「ひっ!?」
 肩を震わせたサチコの前で、海斗は一息つくとバイクの調子を確認する。どうやら走行は可能らしいが、サイドカーがガタついていた。もう一度同じことをやるのは、危険だろう。
「うっし、外周を走りながら決めるぞ」
「わかった」
 呆然とするサチコに親指を立てて、海斗たちは走り去る。
 その後ろ姿を見届けると、我に返ったサチコは迫る偽信者を打ち払うのだった。


「やっと来やがったか。待ちくたびれたぜ」
 ボルディアは偽信者を薙ぎ払った大斧を振りかざすと、一匹の有翼大狼へ駆ける。薄っすらと金色を翼に織り交ぜた、要の大狼だ。
 一段と大きな身体で空から駆け下りる。疾さの載った一撃を脇腹に受けつつ、ボルディアは大斧を振り放った。
 まず一閃。
 そして、飛び立とうとするのを防ぐように翼をたたっ斬る。右側の翼が中折れし、裂け目を作った。
 咆哮とともに与えた二撃によって、左側は羽根が散り、尺骨が砕けた。地面に縫い付けられた有翼大狼――翼をもげば、ただの巨大な狼は、地面を蹴り跳躍した。
 牙を戦斧で受け止め、突き放す。だらしなく垂れた翼の残骸が、地面を擦り上げ土埃が舞う。大狼が顔を上げた時、土煙の間を駆け抜け、ボルディアが目前に迫っていた。
 後方に跳ぶのを見越したかのように、ボルディアは追いすがる。振り上げた斧が一回転し、渾身の一撃が叩きこまれた。刃は大狼の部下と同じく、頭蓋を砕いて下顎を突き抜ける。
 それでも、要たる歪虚。悪あがきにボルディアを引き裂かんと腕を伸ばす――。
「ふんっ!」
 僅かに届かない。ボルディアは避けると同時に、大狼の肩を切り落とす。それがトドメとなったらしく、大狼は地面に伏せるのだった。
 ボルディアは次はどいつだと言わんばかりに、戦場に視線を巡らす。止まった視線の先では、舞が偽信者の要に相対している姿があった。

 その少し前――。
 舞はだいぶすっきりとした様相の空を見ていた。空中班の活躍、それとアシェールの雷撃が空を行く天使もどきや有翼大狼を追い落とす。
 このまま押し切れれば申し分ない。
 そう考えていたのだが、敵も愚かではなかった。畢竟、こちらが気にかければ気にかけるほどに相手へ与える情報は増える。
 その情報とは、サチコのことだ。彼女が重要な要であるという点だ。
 劣勢を極めた歪虚が取ったのは、サチコを狙うという、たったひとつの冴えたやりかただった。いや、それは愚策だったかも知れない。
 彼女へ戦力が集中し始めた瞬間、それを見越したように一陣の風を吹かせながら、紅薔薇が迫り来る偽信者を散らした。
「無事かのう、サチコ殿?」
 舞い散る花びらの幻影が消えていく中、紅薔薇はサチコに目配せをする。
「も、もちろんですわ!」
「ならば、とりあえず回りの敵を吹っ飛ばすのじゃ!」
 そう紅薔薇が切っ先を向けた先で、偽信者は二つの炎に飲み込まれて塵と化した。
 一つは、
「動きがわかりやすくて助かるな」と嘆息混じりに告げる奈月の炎。
 もうひとつは遠くから戦況を見極めたエルの炎弾であった。
 偽信者で間に合わぬならば、空から攻めると残り少ない天使もどきも動き出す。だが、早くもそのうちの一体が光に翼を貫かれ、雷撃に焼かれて消える。鵤とアシェールだ。

「任せてよさそうかな」
 戦力が集中したことで、道ができた。舞は要の周囲を固める偽信者を斬り伏せながら、血糊の固まった要へとたどり着く。
「小賢しいことしてくれるよね。これは、その……お礼だよ!」
 要の継ぎ接ぎを狙って、激しい連続斬りを叩き込む。その身を崩しながら、要は残った偽信者を手繰り寄せて舞を押しやる。マテリアルを集中させ、包囲網を離脱。再度、敵を打ち払いながら要に肉迫する。
 偽信者で壁を作り、傷を受けながらも逃れようと要はもがく。
 だが、側面から叩きこまれた鋭い刺突が、肉壁もろとも、要を貫いた。遊撃要員として立ちまわっていた、マッシュだ。
「逃げ場なんて、ありませんよ」
 馬の機動力を活かし、別の角度からも手痛い一発を見舞う。要の腹部が大きく抉れ、その場で完全に立ち止まった。指揮をするべく鳴らした喉も、舞が切り裂く。
 一つ、二つとその身を切られ、要は糸の切れた操り人形の如く、地面に落ちていった。
 残る要は二体、そのうちの一体はボルディアがすでに逃げ場を塞いでいた。
 視線の先で、ボルディアは派手に偽信者をふっ飛ばしていた。勢いをそのままに突進すると、要を一直線にたたっ斬る。右肩から下腹部に至るまで、刃が深々と突き刺さる。
 野性味ある咆哮とともに刃を引き抜くと、素早く薙いだ。勢い激しく戦斧が風を生み、土埃が舞う。ボルディアを前にして、要は何一つ許されはしなかった。


「よし、この調子で全部倒すぞ」
「……後は消化試合ですね。いえ、最後まで油断をしてはいけませんが」
 マシンガンを撃ち切った真司に合わせ、エルは戦場を眺めていた。
 天使もどきの姿はなく、頭を失した有翼大狼は集団的行動を放棄していた。残るは偽信者の要とその傀儡のみだ。
 風の回復を受けたサチコも決着を着けるべく、群れの中へと突き進む。要を失った偽信者は、ただの木偶の坊だ。しかし、腐っても歪虚。後始末をするように薙ぎ払う。
 アシェールが桃色の雷撃を放ち、要までの道を作る。サチコに先行して、紅薔薇は要に追いつくと整えた呼吸から、正確な一撃を叩き込んだ。
 この一撃によって、要は壊れた玩具のような奇っ怪な動きを見せ、やがて止まった。周囲の偽信者が、まだ統率されているのを感じ、追いついたサチコがとどめを刺す。
 残ったのは、魑魅魍魎。
 せめてもの供養とばかりに、全てを打ち払うのであった。


「とりあえず、サチコさん主体で勝ち鬨でも挙げてください」
 注射器が舞う中心で風がサチコに促す。
 サチコは注射器による治療を受けながら、わたわたと片手を上げた。
「え、あ、わ、私達の勝利ですわ!」
 サチコの勝鬨が小さなうねりとなって、戦場を包む。
 偽信者を始め、歪虚の残骸が消えていく。まるで夢想のようだが、ここであった戦いは紛れも無い現実だ。そして、サチコたちは勝利した。
「後、ついでにサチコさん主体で宴会とか祝勝会とかおねがいしますよー」
「え。それは……町の人と交渉してみますわ」
「お疲れ様でした。大変だったと思いますが、見事な指揮ぶりでした」
 風の願い事に当惑するサチコへ、エルも声をかける。
 気恥ずかしそうに、
「そんなことは」と否定しようとしたサチコの元へ、アシェールが激突する勢いで駆け寄る。
「サチコ様!」
「ふぇ!?」
 驚くサチコを前にアシェールはサチコの服をタオルで拭き始めた。乾いた戦場とはいえ、土埃が舞えば汚れるものだ。
「お召し物が汚れてしまっています!」
「そんな、悪いですわ」
「いえいえ、そんな」
 お互いに譲らないまま、なし崩し的にサチコはアシェールにされるがままだ。
 汚れが落ちたところで、アシェールは顔を上げてまっすぐサチコに告げる。
「サチコ様の活躍は、きっと勲章ものですよ!」
「皆がいてくれたから、ですわ」
 間髪入れず、サチコが告げる。ものすごく気恥ずかしそうに、けれど、正直な言葉だった。
 そんなサチコの背中を海斗がパンパンっと叩く。
「よし、それじゃあ、宴会の交渉を先にしに行くか。足になるぜ?」
「え、え?」
 当惑するサチコを抱え、海斗は魔導バイクへと近づいていく。瞬く間にサチコは魔導バイクに乗せられていた。
「え」
「とばすぜ!」
「ひっ……ひぃやぁあああ!?」
 サチコの悲鳴がドリフト音とともにフェードアウトするのを見届け、残された者たちも戻る支度を始める。
「戻るとしましょうか」
「飯が整ってると、いいな」
 マッシュとボルディアはそれぞれの馬で道を行く。
「それじゃあ、エール……いや、ワインをもらいに行くとするかねぇ」
「……まだ迷っているのか」
 鵤や奈月、アシェールら徒歩組が後に続く。
「おたくも、そろそろ行くぜ?」
「うん」
 ヴォーイは戦場のさり際に、舞へと声をかけた。
 舞は継ぎ接ぎにされた人々や動物、その魂に祈りを捧げていた。それらを作り出した大本が、この世界のどこかにいる――漠然とした予感があった。
「このままじゃと置いて行かれるのじゃ!」
「急いだところで、宴会があるかどうかもわからないぞ」
 紅薔薇や真司が二人の横を抜けていく。
 とりあえず今は、戦いに勝利したという感慨を胸に、街へと戻る。

 その宴会で、誰かが勝手にサチコの武勇伝を作ったとか何とか。
 それはまた、別のお話。
 

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  • 自爆王
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  • 最上 風ka0891

  • ヴォーイ・スマシェストヴィエka1613
  • 不破の剣聖
    紅薔薇ka4766

重体一覧

参加者一覧

  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士

  • 最上 風(ka0891
    人間(蒼)|10才|女性|聖導士

  • ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613
    人間(紅)|27才|男性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 生身が強いです
    鈴胆 奈月(ka2802
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 不破の剣聖
    紅薔薇(ka4766
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/29 08:27:33
アイコン 相談卓
最上 風(ka0891
人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/03/31 22:55:31