• 龍奏

【龍奏】叫声を喚ぶ竜

マスター:香月丈流

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/23 19:00
完成日
2016/05/01 13:10

みんなの思い出

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オープニング

 人であれ動物であれ、『生きる』事は戦いの連続であり、数々の試練を乗り越える必要がある。労働、病気、捕食、環境、災害、勉学……規模や重要度に差はあるが、挙げればキリがない。場所や国が変わっても、それは同じだろう。
 付け加えるなら、『世界が変わっても』同じである。
 紅界と蒼界。どちらの世界でも、大小様々な戦いが起きてきた。紅界に至っては、ここ数年は『激動の年』と言っても過言ではない。多数の新規ギルドの設立に始まり、サルヴァトーレ・ロッソの受け入れ、歪虚の活動増加、大規模作戦の連続……。
 目まぐるしく変わる世の中に、不安を抱いている市民も居る。天変地異や、歪虚の強襲を心配している者も居る。
 それでも……生きるためには、前に進むしかない。戦いの先に『新たな試練』があっても、乗り越えていくしかない。最後に、平和な時代が来ると信じて。
『うわぁぁぁ!!』
 男性数人の悲鳴が重なり、寒風を斬り裂く。次いで赤い液体が雨のように降り注ぎ、頬や顔を濡らした。鉄錆にも似た臭いが鼻を貫き、視界が恐怖で染まっていく。
 ほんの、一瞬だった。
 目の前に『竜に似た人型のバケモノ』が現れ、馬車馬の首を斬り落としたのは。
 3mを超える巨体に、不自然なくらいに盛り上がった筋肉。長く鋭い爪が不気味に光り、全身は硬い鱗に覆われている。頭部は竜やトカゲと大差ないが、首から下は人間と同じような二足歩行。関節の作りも、ほとんど人間と変わらない。
 異形のバケモノ……歪虚。竜人間が現れたのは、極北領域に入ってから数kmの事だった。カム・ラディ遺跡の復興と拠点化に伴い、資材や食料が必要になっている。そのため、連合軍が主体となって補給部隊を編制し、物資の輸送を行っていた。
 今までに何度か荷物が運ばれたが、歪虚や野盗の類に襲われた事は一度も無い。補給部隊も仕事に慣れ、心のどこかで油断していたのだろう。
 『輸送経路は絶対に安全だ』と、勝手に思い込んで。
 竜が再び、全力で腕を振り下ろす。強靭な筋肉から繰り出される爪撃が、馬車の車体を豆腐のように両断。積荷と残骸、馬の血肉が周囲に飛び散り、大地を汚した。
「ひ……きひぃぃぃ!?」
 恐怖が限界に達したのか、男性達が奇声を上げながら駆け出す。任務も荷物も放り投げ、自身の命を守るために。
 何故、今日に限ってバケモノが現れたのか。
 心の中で問い掛けるが、答えは返ってこない。いつもと変わらない物資輸送が、命を懸けた逃走劇になるとは、誰も思わなかっただろう。
 蒼界には、『神は乗り越えられる試練しか与えない』という言葉がある。だとしたら……今回の輸送襲撃も、試練の1つなのだろうか?

リプレイ本文


 極北の荒野を駆ける2台のバイクと、併走する騎馬が2騎。それを追うように、1台の馬車が走っている。進行方向的に、目的地はカム・ラディ遺跡や龍園ヴリトラルカではない。
 彼らの行先がドコなのか……その答えは、北狄に入って数分もしないうちに分かった。
 極北の地を我が物顔で歩く、巨大な人型。トカゲと人間を混ぜたような、異形のバケモノ……一般的にリザードマンと呼ばれる、竜人の雑魔である。
 3m近い巨体を目視し、時音 ざくろ(ka1250)はバイクのアクセルを回した。急加速で黒い長髪が靡く中、片手を離して空中に三角形を描く。そこから光が溢れ出し、敵に向かって一直線に伸びた。
 光の奔流が雑魔を直撃し、衝撃で脚が止まる。ざくろはバイクから跳び下り、着地と同時に剣と大盾を構えた。
「そこまでだ、竜人雑魔! ざくろ達が相手だ!」
 叫び声が空気を震わせ、赤い瞳が雑魔を正面から射抜く。ざくろに続くように、2騎の騎馬が急加速。逆に、マリィア・バルデス(ka5848)はバイクを停め、車体を銃架代わりにしてマシンガンを構えた。
「最近、随分トカゲとの遭遇が多い気がするのよね……『トカゲ革でバックや全身スーツを作れ』って神の思し召しかしら?」
 独り呟き、狙いを定める。高まる集中力に呼応するように、銃身にマテリアルが収束。引金を絞るのと同時に、それが一気に解放された。
 マテリアルで弾丸が加速し、発射の衝撃で茶色の髪が大きく揺れる。高速の連弾が空中に鈍色の軌跡を描き、数十メートル離れた雑魔を直撃。その右半身に、複数の銃創が刻まれた。
 次いで、イーディス・ノースハイド(ka2106)が愛馬のエクレールから跳び下りる。細身の体を全身鎧で武装しているが、軽やかな動きは重さを感じさせない。細長い盾とバスタードソードを手に、地面を蹴って敵の側面から懐に飛び込んだ。
「多勢に無勢だが、悪く思わないでくれ。これ以上、歪虚を野放しにしたくないのでね」
 そう告げながら、剣を鋭く斬り上げる。鋼色の刀身が鱗と接触して硬い金属音が響いたが、切先が敵の体表を切断。胴部に斜めの傷を描いた。
(装甲は硬そうですね……まずは耐久度を確認させてもらいましょう)
 仲間達の動きと敵の様子を観察していたアメリア・フォーサイス(ka4111)は、馬上で静かにライフルを構える。手綱を握りながらも照準を合わせると、青い瞳が金色に変色。全身のマテリアルが活性化し、弾丸に集まった。
 その状態で、アメリアは引金を絞る。銃口から氷の粒が弾け、冷気を纏った弾丸が空中に氷の軌跡を描いた。凍れる銃撃が雑魔の左脚に突き刺さり、同時に傷口の周囲が凍結。少しずつ、冷気が広がっている。
 ハンター達に受けた負傷を気にする事なく、雑魔は右腕を振り上げた。鋭い5本の爪に力を込め、踏み込みながら大きく薙ぐ。
 咄嗟に、ざくろは後方に跳んで射程外に退避。イーディスは盾を構え、防御を固めた。爪と盾が衝突し、金属音と共に火花が舞い散る。強烈な衝撃が一気に押し寄せ、彼女の全身を駆け抜けた。
 膝が崩れそうになるのを、奥歯を噛み締めて耐える。アメリア達が援護射撃しようとした瞬間、敵の側面から輝く光弾が飛来。それが雑魔の頭部を直撃し、爪撃の威力が瞬間的に弱まった。
 光弾を放ったのは、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)。彼は馬車を使い、敵の注意が仲間達に向いている間に側面へ移動していたのだ。
「せっかく空が綺麗なのに……こんなのが居たら台無しですね」
 空と雑魔を見比べ、ユキヤが独り呟く。残念そうな口調とは裏腹に、その表情は薄っすらと微笑んでいるようにも見える。
 炸裂した光弾が粒子となって消える中、イーディスは盾で爪撃を捌き、後方に跳び退いた。
(この威力……想像以上だ。次は、止めてみせる)
 決意を胸に、武器を構え直して体勢を整える。青い瞳の奥に、少しだけ闘志の炎が見えた。
「油断大敵だよ、雑魔。貴様の敵は、4人だけじゃないんだからね」
 少々高圧的な口調で言葉を伝え、右手で拳銃を構えるシャルル=L=カリラ(ka4262)。裕福な家庭に生まれたためか、動作は優雅で華麗。整った容姿も相まって、攻撃する姿は絵画のように美しい。
 シャルルはユキヤの隣で狙いを定め、引金を絞る。乾いた銃声と共に弾丸が放たれ、雑魔の強靭な胸板を直撃。新たな銃創が、1つ穿たれた。
(物理攻撃に強いけど、抵抗力はそれに劣る……なら)
 雑魔の斜め後方まで移動した央崎 遥華(ka5644)が、馬車を下りて精神を統一。胸の前で十字を切ると、全身を稲妻のような幻影が包んだ。
 素早く黒檀の杖を振ると、動きに合わせて空中に水が出現。それを球状に纏め、敵に目掛けて撃ち放った。遥華が狙ったのは、シャルルと同じ胸部。傷口とダメージが重なり、衝撃がより深く内部に走った。
「敵は硬いですが、限度はあるはずです。細心の注意を払って、根気強く戦いましょう」
 アメリアは仲間達に声を掛けながら、再び銃を構える。冷気の弾丸を放つため、銃身にマテリアルを込めた。ほぼ同時に、マリィアもマシンガンにマテリアルを送り込む。
 冷気を纏った弾丸と、高速の散弾が雑魔に殺到。当然、同士討ちにならないよう、仲間は射線から外している。無数の銃弾が敵に突き刺さり、複数の傷を穿った。
 負傷を微塵も気にせず、雑魔が腰を捻って素早く右腕を振り上げる。瞬間的に胸筋が盛り上がり、銃創から弾が抜け落ちた。それが乾いた音を響かせる中、爪を一気に振り下ろす。爪撃が大気を斬り裂き、前衛2人に迫る。
 イーディスは両脚に力を込め、全身のマテリアルを瞬時に活性化させた。鎧の左胸に『守護』を意味する印章が輝き、精霊の加護が宿る。敵の攻撃に対し、イーディスは盾を振り上げた。
 鳴り響く金属音に、飛び散る火花。威力は一撃目と同等か、それ以上だろう。押し寄せる衝撃に耐えながら、イーディスは更に力を込めた。
 恐怖や痛みを頭の片隅に押し込め、敵の攻撃と向き合う。受け止めるだけでなく、押し返す……渾身の力を込め、雑魔の腕を大きく弾いた。
 間髪入れず、ざくろは魔法剣にマテリアルを集中。刀身で虚空に三角形を描くと、軌跡が光を放って輝き始めた。
「この三頂点の輝きを恐れぬなら、かかってこい!」
 挑発的は言葉を口にし、図形の中心を剣先で差す。それが合図になったように、3つの頂点から光が溢れて閃光と化した。荒々しい光が雑魔の肩を貫通し、衝撃が駆け抜ける。
 その瞬間、雑魔は初めて叫び声を上げた。悲鳴とは違う、怒りを込めた咆哮……双眸は赤々と燃え上がり、殺意と闘志がハンター達を打ち付ける。敵のプレッシャーを跳ね除けるように、7人は武器を握り直した。


 斬撃が鱗を斬り裂き、銃撃が穴を穿つ。覚醒者達の攻撃は、確実にダメージを与え続けていた。
 戦況を見る限り、互角か、ハンター側が有利に戦闘を進めている。が、楽観はできない。敵の勢いは衰えていないし、覚醒者達も傷を負っていた。後衛の5人は無傷に等しいが、前衛2人は大小様々な負傷が刻まれている。
 そして、また傷が1つ。ざくろの回避行動を予測したのか、雑魔が着地を狙って爪を突き出す。予想外の行動に、彼の反応が一瞬遅れた。直撃は避けたものの、左腿に赤い線が深々と描かれた。
 追撃するかの如く、雑魔が左腕を振り上げる。次の瞬間、爪を目掛けて散弾が殺到。正確無比な射撃が爪を叩き折り、左腕の攻撃能力を低下させた。
「でかい雑魔って、狙いやすくて良いわね。乱戦中でも1m近く『的』が飛び抜けてるんだもの」
 口元に薄っすらと笑みを浮かべ、マリィアはマテリアルを瞬間的に開放。銃のリロードを高速で終わらせ、再び照準を定めて引金を絞る。高速で放たれた銃弾が、雑魔の左腕に連続で撃ち込まれた。
 爪を砕かれた恨みを晴らすべく、雑魔が大きく口を開けて雄叫びを上げた。その口内に『負のマテリアル』が集まり、一瞬で真紅の炎を生み出す。燃え盛る炎が球状に纏まり、マリィアに向かって放たれた。
 直後。イーディスは盾を強く握り、その射線に飛び込む。発射から数メートルの位置で、炎球と盾が接触。炎が弾けて火の粉が舞い散り、衝撃が彼女の体を駆け抜けた。
「私は『鍛鉄の盾』。キミが後衛を狙うなら、盾となって仲間を守ってみせよう」
 嘘や偽りのない、力強い言葉。本音を言えば、ざくろも守りたいのだが……前衛が2人しか居ない状態では少々難しい。もっとも、彼が深手を負った場合は、自分が前に出る覚悟をしているが。
 イーディスの気持ちを知ってか知らずか、雑魔が再び口を大きく開いた。炎球が発射される事を予測し、アメリアと遥華が瞬時に動く。
 アメリアは敵の射線に対して横に若干移動し、マテリアルを両目に集めた。敵の口内を精密に狙い、引金を引き絞る。
 敵の側面に移動した遥華は、杖の尖端を雑魔に向けた。別方向から銃声が響く中、細い雷光が空中を奔る。それが敵の鼻先で弾けると、周囲に冷気の嵐が吹き荒れた。
「氷の世界からの贈り物です……よく味わってくださいね?」
 普段の遥華からは想像も出来ない、冷たい言葉と眼差し。仲間を大切に思うが故に、雑魔に対して敵意を向けているのだろう。
 精密な射撃が敵の口内を貫通し、冷嵐が負のマテリアルを吹き飛ばす。炎球の発射を完全に潰され、雑魔は唸り声を上げるしかなかった。
「ついでに『コレ』も味わって下さい」
 追い打ちとばかりに、ユキヤがマテリアルで光の杭を生み出す。これは、確固たる信念を持つ者にしか扱えない、断罪の光。ユキヤが軽く腕を振ると、杭は光の尾を引きながら雑魔に飛来した。
 一筋の閃光が、敵の胸に深々と突き刺さる。傷痕やダメージは無い。代わりに、光が全身に広がって雑魔の動きを鈍らせた。
 この決定的な隙を、シャルルが見逃すワケがない。地面を蹴り、敵との距離を一気に詰める。走りながら武器を構え、ブーツからマテリアルを噴射。敵の目前で急加速し、天高く舞い上がった。
 敵の頭上を跳び越えながら、燭台型の魔術具にマテリアルを込めると、手のように大きく開いた尖端にエネルギーが集まる。破壊の力が閃光となって放たれ、雑魔を直撃。背面に、熱傷と伴う裂傷が深々と刻まれた。
 シャルルはそのまま、敵の背後に着地。素早く体勢を整え、敵の射程から逃れるように地面を蹴った。
 が……雑魔の方が一瞬早かった。痛みで体の感覚が戻ったのか、ユキヤの光を振り解くように半回転。その力を爪に上乗せし、シャルルを狙って攻撃を放った。鋭い一撃が彼の胸を斬り裂き、傷口から鮮血が流れ落ちる。
「へぇ……まだこんな力が残ってたのか。でも、そんなに大振りで攻撃して良いのかい?」
 傷を負いながらも、不敵な笑みを浮かべるシャルル。雑魔は今、彼以外の6人に背中を向けている。シャルルの付けた銃創を狙い、アメリアはライフルにマテリアルを込めた。
 銃の内部で強烈な冷気が発生し、弾丸を包む。引金を絞ると、発射と共に氷の結晶が舞い散った。極低温の銃撃が宙を滑り、寸分違わぬ位置に着弾。銃創が凍りつき、冷気が全身に広がった。
「油断大敵、ですね。狙い撃たせてもらいました」
 若干の皮肉を込めて、アメリアは口元に少しだけ笑みを浮かべた。その瞳は雑魔から動かず、観察するように凝視している。
 アメリアの着弾から間を置かず、マリィアの散弾が雑魔に降り注ぐ。高速の銃撃が次々に命中し、鱗を貫いて穴を穿った。
 ようやく自身の不利を悟ったのか、雑魔が急いで振り向く。その動きに合わせて、ユキヤが光弾を発射。横っ面で光が炸裂し、衝撃で雑魔の体勢が大きく崩れた。
「決着をつける場所は、ここ……この先には進ませない」
 遥華の呟きに呼応し、周囲の空気が凍て付く。冷やされた大気が氷を生み出し、矢の形に氷結。瞬く間に、氷の矢が生み出された。
 緑の双眸が雑魔を射抜き、細い指の動きに合わせて矢が空を切る。彼女の狙いは、雑魔の脚部。鋭い矢が右膝に突き刺さり、冷気が爆発的に広がって右脚を完全に凍結させた。
「試練を乗り越え、未来を切り開く為……伸びろ光の剣、ハイパー機導剣!」
 ざくろは『今が勝負所だ』と感じ取り、魔法剣を両手で握って頭上に掲げた。全身のマテリアルがエネルギーとなって武器に集まり、刀身から溢れ出して巨大な光の剣を形作る。
「真っ向唐竹割っ!」
 叫びながら大きく踏み込み、ざくろは雑魔に向かって光剣を振り下ろした。移動を封じられた雑魔は、両腕を交差させるように振り上げて斬撃を防御。火花に似た閃光が奔り、腕の鱗を焦がした。
 その横合いから、イーディスが駆け込む。両腕を上げている雑魔は、無防備に等しい。ガラ空きの胴を狙い、分厚い刃を走らせた。渾身の力を込めた斬撃が、雑魔の鱗を斬り裂いて深々と押し込まれる。
 上と横、2方向からの攻撃を受け、ほんの僅かに敵の力が弱まった。拮抗していた攻防が一気に崩れ、光の剣が雑魔を縦に両断。真横からの斬撃も敵を寸断し、雑魔の体が4つに斬り裂かれて大地に転がった。
「危険を承知で、遺跡の奪還に向かった皆を……少しは支援できたでしょうか」
 敵が力尽きたのを確認し、遥華は遺跡の方角を眺めてポツリと呟く。戦闘中は冷たい表情を浮べていたが、今は普段通りの穏やかな表情で、想いを馳せていた。


 戦闘終了後、ハンター達は安全確認の意味も込めて事件が起きた現場を訪れていた。馬車は完全に破壊され、積荷がゴミと化して散乱している。荷台を引いていた馬も、同乗していた人々も……無惨な姿となって命を失っている。
「私の好きだった小説でね、主人公がこう言うのよ。『出来たことは神の思し召し、出来なかったことは私の思い上がり』って。すごく好きで、とんでもなく嫌いな言葉だわ」
 誰に聞かせるでもなく、マリィアが言葉を口にした。口調は淡々としているが、その横顔には深い悲しみが隠れているように見える。
「運命は信じても、神を信じる気にならないわね。見守ってくれる超越者が居なくて、自分で物事に立ち向かわなきゃいけないからこそ……ハンターがやれるのよ。私の場合は、ね」
 自分の考えを、他人に押し付ける気は毛頭無い。信仰に厚い人間を差別する気も、否定する気もない。
 ただ……マリィアは『神』という超越者は居ないと思っている。この世界に転移してきた、その日から。
 長い独り言が終わり、マリィアは遺体に歩み寄る。静かに手を合わせて冥福を祈り、大きな布で遺体を包んだ。
 他の6人もそれを手伝い、遺体を馬車の荷台に乗せる。このまま野晒しにするよりも、家族の待つ町まで運んだ方が良い。安全を再確認する意味を込めて、ハンター達は輸送路を通って村に戻って行った。
 再びこの道に雑魔が現れないよう、祈りを込めながら。

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MVP一覧

  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイドka2106
  • 雷影の術士
    央崎 遥華ka5644
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデスka5848

重体一覧

参加者一覧

  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイド(ka2106
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 麗しい海賊
    シャルル=L=カリラ(ka4262
    人間(蒼)|17才|男性|機導師
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
イーディス・ノースハイド(ka2106
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/04/22 22:37:37
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/22 12:57:45