炎からの脱出 ~騎士アーリア~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/04/27 19:00
完成日
2016/05/05 18:07

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国の南部に伯爵地【ニュー・ウォルター】は存在する。
 領主が住まう城塞都市の名は『マール』。マールから海岸まで自然の川を整備した十kmに渡る運河が流れていた。そのおかげで内陸部にも関わらず海上の帆船で直接乗りつけることができる。
 もっとも帆船が利用できるのは『ニュー港』まで。それ以降の水上航路は手こぎのゴンドラを利用しなければならない。
 升の目のように造成された都市内の水上航路はとても賑やかだ。各地からやってきた行商もゴンドラに乗って売り買いの声を張り上げている。
 橋を利用しての徒歩移動も可能だが、そうしている者は数少なかった。それだけマールの民の間に水上航路は溶け込んでいた。
 この地を治めるのはアーリア・エルブン伯爵。ニュー・ウォルターを守護するオリナニア騎士団長を兼任する十七歳になったばかりの銀髪の青年だ。
 前領主ダリーア・エルブン伯爵が次男である彼に家督を譲ったのは十四歳のとき。それからわずかな期間で亡くなっている。闘病の日々で死期を予感していたのだろうと当時は市井の者の間でも囁かれていた。
 長男ドネア・エルブンも事故で亡くなっていたが、妹のミリア・エルブンは健在。幼い頃から秀才ぶりを発揮し、弱冠十五歳ながらも内政を担う。アーリアにとっては心強い片腕であった。
 マール内で発生した偽金事件は想像し得ない様相を見せる。
 偽の聖堂教会に残されていた暗号は『アスタロト』『闇の支配』『ドネア』と読み解けた。ドネアとはアーリアとミリアの死んだはずの長兄であった。
 世間には事故と発表されたドネアの死因だが、現実には謀反に失敗して命を落としている。
 ドネアが本当に死んだのか、真相を暴くべくハンター達が動いた。謀反に加担した行方不明のバーンズを探しだす過程においてそれは暴かれる。
 ドネアが歪虚として墓から蘇ったことは間違いない。また謀反に関与していた元ドネア親衛隊の女性ロランナ・ベヒも歪虚になっていた。
 歪虚のアイテルカイトとなったドネアはアスタロトを。ロランナはネビロスを名乗る。
 後日、城下の水路で武器防具を積んだゴンドラの底に穴が開けられて沈没する事件が発生した。
 背後にアスタロトの影を感じたアーリアはハンターに依頼。水中に隠れてゴンドラを沈めていた雑魔を退治してもらう。結果、武器防具を市中にばらまく暗躍阻止にも協力したハンター一行であった。


 アーリアは領主としての役目を果たすべく伯爵地【ニュー・ウォルター】内を巡っていた。城塞都市マールの治安については副長ミリオド・スコンに任せた形になる。
 アスタロトの妨害も想定してそれなりの人員を揃えた。騎士団五分隊六十名、それに覚醒者としてハンター一行にも加わってもらう。
 巡回の地は七個所。すべてが滞りなく進んで五つ目の町を訪問。町長との会談も終えて案内された屋敷に泊まる。
「やけに静かだな」
 晩餐を終えて宛がわれた部屋にいたアーリアが呟く。まもなくして巡回の指揮を任せたセリーナ女性分隊長が報告に現れた。
 セリーナ分隊長が許可をとってアーリアの耳元で囁く。
「団長、状況がおかしいのです。先程までいた屋敷の者達が一人としていません。そして団長の許しがあったとして見張り番の団員に酒が振る舞われております」
「私は誰に対してもそのような命令はだしていない」
「はい、承知しております。それと酒の効きがあまりによすぎるようで……睡眠薬かそれに類するものが混ぜられいたのではないかと。飲酒した団員は二十五名を数えます」
 アーリアとセリーナ分隊長が話している最中に扉がノックされる。中に入ってきた団員とても焦っていた。
「団長、分隊長、この屋敷を中心にした町の建物が……すべて燃えています! 炎に取り囲まれております!」
 団員の言葉を聞いた分隊長がカーテンに手を掛けて窓外を眺める。暗いはずの景色がほんのりと赤く染まっていた。
「……毒を用いず、一部団員を酔っ払わせたのは足手まといにするための策だな。その上で火災で焼き殺すつもりか。誰の仕業か大凡の見当はつくが」
 炎の向こう側から放たれたと思われる火矢が屋敷の外壁に突き刺さる。
 アーリアは脱出の指示をだす。酔った団員は馬車へと収容。動ける団員達は馬や馬車にこれでもかと水をかけた。ハンター一行も同様だ。
 ラッパによる号令がだされて、馬車が屋敷から次々と飛びだす。そして燃えさかる炎の中へと突っ込むのだった。

リプレイ本文


 屋敷が炎に取り囲まれている現状で、騎士団とハンター達は慌ただしく脱出の準備を整える。
「覚醒者の泥酔者を優先でキュアするの! 誰と誰か教えてほしいの!」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)は泥酔の覚醒者騎士達に浄化を施していく。
「抵抗は本人にして貰わなきゃならないから、絶対じゃないけど……それでもこの人たちが泥酔じゃなくなれば、出来ることはぐんと増えるのっ」
 酒精だけではなく薬にも身体が蝕まれているようで、全快させるのは容易ではなかった。それでも二人だけはそれなりに戦えるまで回復させられる。
 時音 ざくろ(ka1250)はハンターに宛がわれた先頭車両ではなく、前から五番目の馬車に乗り込むことにした。もしものためにである。
「大丈夫、どんなことがあっても全員無事にここを突破する……。だからみんなでがんばろ」
 時音は『にこっ』と笑顔を振りまき、周囲にいた騎士達の士気をあげた。
 脱出に使用する全車両は井戸の近くに集められて水がかけられる。騎士達が交代で汲み上げ井戸を動かし、屋敷にあるありったけのバケツを水で満たす。
「してやられましたね、ここは」
 ミオレスカ(ka3496)が運んできたバケツの水を馬車へとかけた。
「狙いはアーリアさん……でしょう。炎を抜けても敵が居ると考えた方が無難ですね」
 セシル・ディフィール(ka4073)は水浴びさせた馬たちを馬車の長柄に繋ごうとしていた。
「しかし、ここからは、私達の力量を見誤った敵を、掃蕩にかかりましょう」
「ええ。護りきります。絶対に」
 ミオレスカとセシルは空のバケツを持って井戸へと向かう。
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は馬たちと同じくバルツァーのイェジドを池の中へと浸からせる。
「お前には悪いが今の俺が乗って炎に突っ込むのはかえって危ないからな……。頼むぜバルツァー。さっき馬車の後部に刺したナイフを目印にするんだ」
 そして何度も馬車の後方からついてくるにようにと言い聞かせた。
「アーリアさん、こちらにどうぞ」
「そうさせてもらおう」
 アメリア・フォーサイス(ka4111)の案内でアーリアが馬車へと乗り込んだ。アーリア自身もそうだが、非常事態故に馬車内もすべてがびしょ濡れにされていた。
(今はこの状況を抜けるのが先決ですね)
 多少の犠牲を払ってでも脱出を成功させなければならない。馬車の屋根に登ったアメリアはそのような決意を秘めながら、用意した綱で馬車と自分を繋いでおく。
「火矢の攻撃は止んでいない。そちらでも頼んだ」
 御者台の左隅に立つウル=ガ(ka3593)が屋根のアメリアに声をかける。その直後、彼が飛んできた火矢を鞭を撓らせて叩き落とす。
(炎の先に敵が待ち構えているのは間違いない。だが、行くしかないっ)
 そしてもう一人、御者台の右隅に立っていたのが鳳凰院ひりょ(ka3744)だ。
 アーリア自らがラッパの音が鳴り響かせて号令をだす。ウル=ガと鳳凰院に挟まれて座る御者役の騎士が馬車を走らせた。後方の馬車がそれに続く。
 鳳凰院は炎上中の何かを敵と見做し、構えた名刀「虹」で衝撃波を放つ。すると炎の中に細くわずかな道が現れた。炎の中へ飛びこんでもできる限り繰り返す。
 炎の中でも容赦なく火矢が降り注ぐ。だがウル=ガの鞭やアメリアの妨害射撃によって、後方の馬車に刺さりそうな矢の大半も弾かれた。
 中衛馬車の御者台にいた時音が屋根へと登っている。ゴーグルで両目を保護し、口元を濡らした布で覆った格好で大剣を振るう。
「超機導パワーオン……弾けとべっ!」
 まずは倒れてきた燃えさかる柱を弾いた。さらに建物の壁が倒れてくる。
「道を切り開く為、剣よ今一度元の姿に……超・重・斬!」
 大剣をさらに巨大化させて振り抜くと壁が粉々に砕けた。辺りに大量の火の粉が舞う。
 灼熱の中、ミオレスカは濡らした両手で目の周囲を覆いながら車窓から覗きこむ。直感視で敵を捉え、「右前方に火の針を飛ばしている雑魔がいます」と叫んだ。その声が聞こえた屋根のアメリアが銃口を向け、目視した瞬間に銃爪を絞る。ヘッドショットで仕留めきった。
 馬車が次々と炎から抜けでていく。
 突っ切るまで二十秒程度だったが、それ以上の体感が全員を疲弊させる。それは人だけではなく馬もだ。走る勢いが確実に落ちていた。
「この先の十字路が広くなっている。そこまでは持たせてくれ」
 アーリアが御者に直接指示。自らラッパを吹いて後方の馬車群にも指示を伝える。セリーナ分隊長が乗り込む殿馬車から、炎を通過したことを示す銅鑼の音が鳴り響く。
 降り注ぐ矢の攻撃に晒されながらも馬車十両は走り続ける。そして広場のように広い十字路で円を描くようにして停まり、陣を成したのだった。


「アーリアよ、焼かれ尽くされるこの町が貴方の墓標となることでしょう。黒伯爵であらせられるアスタロト様のお慈悲をむせび泣いて受け入れなさい!」
 炎に赤く照らされる景色の中てネビロスらしき声が響き渡る。
 馬車円陣目がけて火矢が放たれていた。
 騎士の多くは馬を護るべく盾を構える。銃や弓矢を手にした一部の騎士が反撃。馬車の外壁に刺さった火矢は剣で叩き切った。
「あれは……」
 エヴァンスが立ち並ぶ建物を双眼鏡で確かめた。射手の多くは建物の屋根や室内の窓から火矢を放っている。その近くには必ず雑魔や歪虚崇拝者らしき存在が見受けられた。脅かされているのは明白だ。
 エヴァンスは「射手は敵ではない」と情報を紙片に認める。
「私も書こう」
「やらせてください」
 車内にいたアーリアとミオレスカもエヴァンスを手伝う。紙片は窓からイェジドに咥えさせて他の馬車まで運ばせた。
 防戦ばかりでは後がなかった。アーリアが状況を判断し、反撃を意味するラッパを吹き鳴らす。
「強敵が居たら加勢します。ここは、お願いしますね…!」
 馬車を護る騎士達にそう告げて、セシルが敵中へ身を投じる。
「本当は、そのまま走った方が敵を振りきれそうな気がするけど……。うぅん、分かったの、応戦するの」
 ディーナが馬車円陣の外側に立ち、クロイツハンマーを高く掲げる。
「アーリアさん人気者ですね~。いっぱい敵がいそうですよ」
「私を狙っているのは確かなことだな」
 アメリアはアーリアと話しつつ、馬車窓からライフルで敵を狙う。
「此処で一旦敵を蹴散らす方が良さそうだ……な」
 馬の護りを騎士達に任せたウル=ガが突進。建物の軒に片足をかけてさらに跳ぶ。建物内に飛びこんで手にしていたスローイングカードをまとめて投げた。鋭いカードの四辺が射手達を死なない程度に無力化。そして人狼のような姿の雑魔には真っ白に発光する鞭を見舞う。
 ウル=ガは常にアーリアの安全を念頭に置いていた。敗走の敵は無視して、一旦馬車円陣へと退く。
 階段を駆けあがった鳳凰院が建物の屋上へ到達。衝撃波で射手を無力化し、その上で覚醒者の敵を名刀「虹」で斬り倒す。
(ネビロスがいるということは、奴が、アスタロトが近くにいるのかっ? アーリアをやらせるわけにはいかない)
 長居はせず、鳳凰院も馬車円陣に戻ってアーリアの身辺を警護した。
 セシルは戦いながら脱出の経路を探る。
(どの道が安全でしょうか? 迷いますね)
 往来の中央に立ち、ライトニングボルトで一条の輝きを放つ。そうすることで行く手を塞いでいたバリケードを敵ごと薙ぎ払った。脅されている射手達を相手にするときにはスリープクラウドで眠らせる。その上で敵を雑魔や崇拝者に絞って倒していく。
 馬車円陣に攻め込んできた敵一団もいた。騎士達の奮闘に加えて、ディーナとアメリアが大きな盾となる。
「ここより一歩も通させないの」
 ディーナがセイクリッドフラッシュで輝く。その光が攻め寄る雑魔の群れに悲鳴をあげさせた。その後、彼女はディヴァインウィルの連続使用でアーリアがいる馬車ごと周囲を敵の目から隠す。
 馬車円陣の内側へでたアメリアは車両間から狙い、巨体雑魔の頭部をライフル弾で撃ち抜く。次々と射撃位置を変えながら馬車の損傷を確かめた。
(これはもうすぐ駄目になりますね)
 車輪が壊れかけた馬車一両を発見。予備車輪はなかった。傷ついた馬も何頭か見つけたが、今のところ走る分には問題はない。
 迫り来る雑魔に統一性は皆無でごちゃ混ぜの状態だ。但し、数だけは揃っている。このことからディーナとアメリアは確信のようなものを感じていた。敵集団を統括しているのは下っ端歪虚のネビロスではなく、もっと高位のアスタロトだと。
 馬車円陣から少しだけ離れた街角で戦っていたのは時音だ。
「これ以上はやらせないよっ!」
 掲げた大剣の切っ先で宙に光の三角を描く。そして彼女は「くらえ必殺、デルタエンド!」と叫び、デルタレイの輝きで雑魔三体を貫いた。
 敵を倒したその後、時音は裏路地を通ったとき偶然にも塔の上で跪くネビロスを見かける。そして彼女が見つめる視線の先に誰がいるのかを想像した。
(もしかして噂に聞いたアスタロトかな?)
 仲間を集めて戦いを仕掛けようか迷った時音だが、ここはアーリアの身の安全を優先。馬車円陣に戻り、ネビロスとアスタロトを見かけた東の方角に罠が仕掛けられているのではないかと報告する。
「西の方角に逃げれば、少しは時間が稼げそうだな。とはいえ、このままで済むとも思えないが」
 車窓から銃撃で仲間を援護しつつエヴァンスが意見を述べた。
「更なる策は必要です。それは――」
 馬車円陣の外側で戦っていたアメリアが車内に戻ってアーリアに提案する。
「それはよい考えだな」
 アーリアはアメリアの案を採用。エヴァンスに頼んでバルツァーを遣いにだす。そして呼びだしたセリーナ分隊長と細かな打ち合わせを済ませるのだった。


 敵射手の無力化が成功して戦闘が一時収束する。
 屋敷があった方角はより燃えさかり、熱気が十字路まで届く。しかし煉瓦造りの建物によって外側への延焼は留まっていた。
 敵との交戦中に休んだ馬達がそれなりに回復。アーリアの馬車群は意を決して町からの脱出を図る。
 敵の本陣が構えていると思われる東側を避けて西方面への経路を選んだ。それでも背後から追っ手の馬群が迫る。
 アーリアの馬車群は大通りから外れて細道を進む。
 途中で一番後方の馬車を放棄。馬車から切り離した馬にはセリーナ分隊長と覚醒者の騎士が騎乗した。他の騎士達はすでに他の馬車へと振り分けられている。
 アメリアが銃撃で放棄した馬車の車輪を吹き飛ばすと横倒しに。細道を壊れた馬車に塞がれた崇拝者達の馬群は立ち往生。アーリアの馬車群は悠々とその場から離れていった。
 裏をかいたつもりが裏をかかれたアスタロトは黙ってはいない。そうアーリアやハンター達は考える。推理は的中。西城塞門の内側でネビロスと雑魔群が待ち構えていた。
「ロランナ・ベヒか」
 アーリアが人であった頃のネビロスの名を呟く。ハンター達は馬車群を停まらせないまま、城塞門に突進し続けた。
 馬車群は二列となり、ハンターの多くは先頭二両の御者台や屋根の上で身構える。
「一瞬だけだが城塞の屋上から光が漏れた。伏兵がいるぞ」
 車内のエヴァンスが双眼鏡で冷静に敵の布陣を観察。それを仲間達に伝えた後、試作型魔導銃で車窓から狙い撃つ。
「私も城塞の敵を狙いますね」
 馬車の屋根で腹ばいになったアーリアがライフルの銃爪を絞る。わずかでも姿を見せた敵に銃弾を叩き込んだ。
「近寄らせないの!」
 ディーナが馬車群に迫る雑魔等にセイクリッドフラッシュの輝きを浴びせかけた。それだけではない。馬車群が通りすがった倉庫から騎乗する崇拝者達が現れる。
「しつこい方は嫌われますよ」
 セシルは馬で追いかけてきた崇拝者達との間にアースウォールによる土壁を出現させた。次々と激突し、悲鳴と嘶きが彼女の耳に届く。
「アスタロトもどこかに隠れているのかな」
 正面を塞ぐ相手に鳳凰院が最後の衝撃波を放つ。それ以前から銃撃を受けていたネビロスは仕方ないといった態度で退いていく。
 馬車から飛びおりた時音は全力で駆けて城塞門へと一足先に辿り着いた。
「この一撃でっ!」
 そして超重練成による一撃で頑丈な門扉に亀裂を入れる。
「これなら」
 御者台に立っていたミオレスカが強弓「アヨールタイ」の弦を鳴らす。放たれた矢が亀裂に命中。門扉の一部が割れ落ちて、馬車群はその間をすり抜けた。
 ウル=ガは八艘跳びして一番後方の馬車屋根に到達する。
「まだ……追いかけてくるのか」
 しつこい敵の馬群に対して、カードを広角投射。転倒した先頭に後方の馬群が巻き込まれて玉突き状態に。門扉の隙間が馬と崇拝者達で塞がれた。
 こうしてアーリアの馬車群は火災の町からの脱出に成功する。
「あれはもしや……」
 アーリアは車窓から町の城塞を振り返った。そのとき、火災を逆光にして闇に浮かびあがる人影がアスタロトのように見える。
 その人影に向かってミオレスカが矢を放つ。一矢報いられたのかどうか。それを確認するにはあまりに暗すぎて、そして遠かった。
 アーリアの馬車群は一時間ほど走り続けた。町が見えなくなって草原で休憩をとる。
「何かみんな凄い顔になってる……これ使ってよ」
 時音が祝福の水筒の中から取りだした濡れた布を仲間達に手渡す。全員の顔が煤で真っ黒だ。ようやく笑える雰囲気となった。
(アスタロトは私を仕留めようとしていたのか。それとも弄んでいる?)
 アーリアは今回の一件でアスタロトの真意を探る。最終的には自分を殺そうとしているのは間違いない。だが、その前に成し遂げたいことがあるのではないかと結論づけた。
「アスタロトにとって私を殺すことも復讐の範疇だろう。しかし一番欲しているのは、伯爵地ニュー・ウォルターそのものだ。だからこそ黒伯爵を名乗り、私からすべてを奪い取ろうとしている。そう思えて仕方がない」
 アーリアは途中で立ち寄った町で休養を取った際にハンター達に自らの考えを伝えた。
 安全を図るため魔導伝話で応援の騎士部隊を呼び寄せる。その上で城塞都市マールへの帰路に就いたのだった。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • エルブン家の知人
    ウル=ガ(ka3593
    エルフ|25才|男性|疾影士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 冒険者
    セシル・ディフィール(ka4073
    人間(紅)|21才|女性|魔術師
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 敵包囲網を突破せよ!
ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/04/27 08:37:41
アイコン 質問卓
セシル・ディフィール(ka4073
人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/04/26 15:19:46
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/24 20:32:44