【壊神】落日のブラフマー。ヴィシュヌ破壊

マスター:草なぎ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/07/08 12:00
完成日
2016/07/11 21:14

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 グラズヘイム王国西方、リベルタース。
 機動要塞ブラフマーの全貌が明らかにされた。しかし、それは、予期せぬ事態を生んだ。ブラフマーに黒幕と思しきシヴァ(kz0187)の姿はなく、その麾下で双璧の「黒伯爵」の歪虚パールバティとインドラからの言葉は、ハンター達の予想を覆した。パールバティはハンター達とのやり取りでブラフマーの放棄を宣言、部下達と離脱する。ある意味、それは選択肢を人類側に渡される、といった形になり、ハルトフォートのラーズスヴァンはいったん軍議を開いていた……。

 ブラフマーの内部では、いまだ残った一部の上級歪虚アイテルカイトらが話し合っていた。
「おい、これをどうする」
「俺さあ……何か悪い予感がするんだよねえ……」
「と言うと?」
「あれだよあれ。退屈したシヴァ様が『破壊の光』でこのブラフマーを壊しに来るんじゃないかってこと」
「ああ……破壊衝動が抑えられなくなるって奴だな」
 一同吐息する。
「つまりさ。俺たちに残された道は三択だ」
「聞こうか」
「このまま交戦を続ける、そしてハルトフォートに突貫する。もう一つ、真逆の選択肢、白旗を掲げてイスルダ島に逃げ帰る」
「最後は?」
「俺に考えがある」
「それは?」
「コアマテリアルクリスタル『ヴィシュヌ』を暴走させ、ここでどかんと花火を上げる」
「おお! それすげーな!」
「だろ? へっへっへ。多分間抜けな人間どもは、パールバティ様の言葉でいったん停止しているはずだ。だが、奴らはこのままいたら間違いなく攻め込んで来る。その前に、やっちまうのよ」
 ……この歪虚達のクレイジーな会話を聞いている者がいたのだ。
 第六商会、いや、またの名を「ラプト・フラジオ」の密偵の女、クロエ・スコットである。
「…………」
 クロエは動き出した。
 無造作に拳銃を抜くと、アイテルカイト達を二人撃ち殺した。
 歪虚らが呆気に取られている間も、クロエは次々とアイテルカイトらを撃ち殺した。
 やがて、アイテルカイトらが正気を取り戻した時、クロエは駆け抜けた。刀剣がアイテルカイトらを薙ぎ払って行く。クロエはその場の歪虚を圧倒した。最後に残った歪虚に、刀を突きつける。
「き、貴様……!」
「他にクレイジーなことを考えている奴はいるか?」
「何だと!」
「もういい」
 クロエは歪虚の首を切り飛ばした。
「…………」
 クロエは無人の艦橋を見渡すと、要塞を後にした。

 ハルトフォート軍陣中――。
「クロエ・スコットだ。ミュラ上級騎士卿と話がしたい」
 クロエは天幕に向かった。兵士は槍を下げると、道を開けた。クロエは天幕に入った。
 ブラフマー攻囲戦の指揮官、ミルズ・ミュラ上級騎士卿は、食事の最中だった。パンを置くと、クロエと視線を合わせた。ミュラはクロエの正体は知らない。
「何か良い知らせかね?」
「ブラフマーの内部を探っておりました。艦橋にまだ歪虚がおり、話込んでおりました。連中は、例のコアを暴発させ、自爆する算段を付けておりました。確か……ヴィシュヌに関しては、回収すると言った案も出された様子ですが、あれはさっさと始末した方が良いでしょう」
 クロエの言葉を聞いて、ミュラはワイングラスに口を付けた。
「なかなかクレイジーな奴がいる。始末したのか」
「ええ。ひとまずは……ですが……残党が」
「やるしかあるまいな。ヴィシュヌは破壊する」
 ミュラは副官を呼び寄せると、全軍に命令を下した。
 ――再度敵要塞に攻勢をかける。要塞内部の負のマテリアルに耐えられる「突入可能な」者は全員要塞内部に突入。敵要塞コアを破壊、また敵の艦橋を制圧、障害は全て排除せよ。全員の奮起に期待する。以上。
 ハルトフォート軍は速やかに、そして風のように動き始めた。ハンター達もまた。敵要塞へ、再度突入する……。

リプレイ本文

 エルバッハ・リオン(ka2434)は、ブラフマーにし侵入する前に、外部からブラフマーを見上げて、「とんだ置き土産ですね。どうせ置いていくなら、もっといい物を置いていけばいいと思いますね」と冗談交じりに言っている。
 とはいえ、まだ敵も残っているので、すぐに意識を切り替えて、「要塞コアのヴィシュヌの破壊。残った敵に何かされる前に果たすとしましょうか」と呟いている。
「……行動阻害のバッドステータスがあるのは分かってるんだけど。空家の破壊って思うとちょっとどころじゃなくやる気が下がるのよね……インドラでもシヴァでも戻ってこないかしら」
 マリィア・バルデス(ka5848)、ガンスミスの言葉は意外な形で実現することになる。

 …………。突入。…………。速やかに移動。……目的地を制圧。

 機動要塞ブラフマー内部、コアマテリアルクリスタル「ヴィシュヌ」が座する空間――。

 ザレム・アズール(ka0878)、メイム(ka2290)、鞍馬 真(ka5819)、マリィア、花(ka6246)、エルらは、ヴィシュヌの前にいた。
「…………」
 何とも複雑な雰囲気である。まあ、経緯が経緯だけに何とも言い難い思いを抱く者もいる。
 そんな人間たちの心理的葛藤ざわめきには小揺るぎもせず、ヴィシュヌは、きらきらと白い魔法の光を放って、白い輝く無数の浮遊魔法陣に取り囲まれていた。ブラフマーの心臓。要塞の負のマテリアルの根源である。春先であったか、ヴィシュヌが上陸し、沿岸に雑魔が大量に発生したことがあった。あれすらも懐かしい……。ともあれ、あれらを生み出した全ての源泉は、主にヴィシュヌである。そして、それは今も変わらない。要塞の心臓部に眠る幻想的白輝石とも形容しがたいエネルギーを有するマテリアルクリスタルは、歪虚が作り出したものだが、見る者を圧倒するマテリアルのきらめき、光、粒子、星々、流星、泡沫の流れ……そうしたものに包まれていた。
 ザレムは、血の涙を流していた。いや、実際に流しているわけではない。心が泣いている。
「うおおおおおおお……! 人類に、人類に浮遊技術を……!」
 雄叫びを上げるザレム。
「ロッソ以外にも飛べる物が生まれればイスルダ島への偵察や……攻め入る事だって……! 海からだと偵察見付かるし攻めるのも遅くなる! 飛行するCAMもできるかもしれない! 是非とも欲しい!」
 ザレム、血の涙を流す。
「ヴィシュヌは解析し、ブラフマーも改造して活用したい。けど、依頼人の希望だからな。壊すしかない(血の涙)」
 銃を構える。
「俺は……今、鬼になる! この秘宝を破壊しなければならんのだ! 鬼だ! 鬼になる!」
 メイムはレオンハルトとジュークに声を掛ける。
「レオさん、ジュークさん、オーライ? わくわくする~」
「オーライ~!」
「準備は万端だが……」
 ジュークがザレムを好奇の目で見やる。
「あのハンターは何なんだ?」
「ザレムさんはね……もう極め人、匠だから」
 メイムは肩をすくめる。カービン「ベンタロンVE3」を構える。
「スキルは活かせないけど動かない目標だし問題ないよね、目標をセンターに入れて……トリガ~♪」
「では私も参るとしましょうか」
 エルは腕を持ち上げると、ウィンドスラッシュを構えた。アイスブルーの瞳に雷光のような戦火が閃く。大マギステル、マテリアルを解放準備に入る。
 鞍馬は、MURAMASAを抜いた。
「沈めかけた船は、責任を持って最後まで沈めなければな」
 鞍馬にも、僅かだが、郷愁が去来する。
「不思議なものだ……。まあ、ザレム君の気持ちも分からんでもないが……なあ」
 鞍馬は肩をすくめると、刀身をヴィシュヌに向けた。
 マリィアも肩をすくめた。
「コアが壊れても暫く時間はあるんでしょう? ならいいじゃない、先に自爆を防げるようになる方が」
 マリィアは歪虚の技術云々はどうでもいい感じ。
「味方に死人が出そうにない良い依頼ではあるわね。でも空き家を壊す依頼じゃ大した敵が出ないのがつまらないのよ。……それより」
(こんなものがなくても、人を滅ぼすのは簡単だと歪虚如きに見切られたのが腹が立つ。そしてそれが相手の傲慢ゆえの驕りでないことに余計腹が立つのよ)
「……何でもないわ。これ以上騎士卿の部下や傭兵団に被害が出ないのを喜ぶべきよね」
 マリィアは零した。
 花は壁歩きでじりじりと壁を移動して、ヴィシュヌの上に跳び移った。
「いやはや、硬そうだねぇ」
 ヴィシュヌから伸びている光のチューブを引っ張ってみる。花はPDAで写真を撮っておいた。
「ちょっとみんな待ってくれ。念のため、これを撮影しておこうと思う」
 ヴィシュヌの様子をPDAに収めていく花。
「……よし。これくらいでいいだろう。みんな、待たせたね」
 花は手を振った。
 それでは……。ハンターらと他、レオンハルトにジュークが攻撃態勢に入る。

「攻撃開始!」

 ザレムはコア本体には傷を付けず、コアから繋がる線や管を破壊する事で「ヴィシュヌシステム」(仮称)を破壊することにする。斧を使う。
「コアより、管や線の方が耐久力が低いから壊し易いぞ」
 HPがコア単体ではなくシステムとしての物なら、周りを削りHPゼロに出来ると期待する。
 ザレムは周りのチューブを切って切って切りまくった。
 花も、クリスタルの上のチューブをどんどん切っていく。
 エル、メイム、鞍馬、マリィアの攻撃が続く。

 ……攻撃続行中……。

 ……何と、三十分経過……。

「これは……」
 花は、地道にチューブを断ち切っていく。
 ザレムも、びっくり。エルは後ろで休んでいた。エルは膝を折って床に腰かけて手の上に頭を置いて、ぼうっと終わるのを見ていた。
 そして、とにもかくにも、全てが終わる時が来る。
 光が、明滅し始めた。
 エルは見上げた。
 魔法陣が、ふっ……ふっ……と消えていく。ふふふふふふふふふふふっ……! 次々と魔法陣が消滅していく。
 低い震動が鳴動して、要塞内部の光が落ちた。
 マリィアが銃で壁をぶち抜いた。
 ヴィシュヌが明滅を繰り返していき、そして、遂に光を失い、負のマテリアルの残骸と化した。
 花はヴィシュヌの上から降りた。
 がこん! と震動がして、床が抜けて、ヴィシュヌだったものが落下して行った。ブラフマーが崩壊する。あちらこちらが崩れて行き、機動要塞は、クリスタルの残骸と化した。
 ――終わったのである。

 帰路、メイムは、ランタンの明かりを灯していた。クリスタルに触れてみる。
「触った感じ負のマテリアルはほとんど感じないし多分これ持って帰ってもほとんど価値無いよー?」
「まだ……分からんだろう」
 くわっ。ザレムは見開き、思案顔だった。
「大きすぎるし持って行くならこないだの小さいのにしない?」
「まだ……だ……っ」
 ザレム、くわっ。
「まあ、一応、残骸も収めておきますか」
 花は、PDAで写真を撮影していく。

 エルと鞍馬、マリィアは、艦橋だった場所へ螺旋階段を上って移動していた。
「この間インドラがいたところだな……エル、そっちを頼む」
「はい」
「私は一応見張っておくわ」
 天井はあちこち穴が空いていて、光が差し込んでいる。
 鞍馬はコンソールと思しき台座の部分に近づいた。幾何的な装置があちこちに残骸となって残っている。しかし、光は完全に失われている。機動は停止している。静寂だ。
 エルも幾何的な文様が刻み込まれたクリスタルの壁に触れたりしながら、吐息した。
「…………」
 大きい。こんなものが残ることになるとは……。ブラフマーからはどうも負のマテリアルは消失した様子。あのヴィシュヌは……どうなったのであろうか……。
 マリィアは、手をかざして、上空の青空を見た。
「敵要塞の天井から見る青空ね。平和……てことでいいのかしら……」

 ミュラ上級騎士卿は、外の雑魔の掃討が終わると、ハルトフォートにブラフマー機動停止の報告を送っておいた。
「さて……と」
 ミュラは、陽光を反射する巨大なクリスタルの遺物を見上げた。
 撤収準備に取り掛かる前に、あれをどうするか。
 ハルトフォートから派遣されてきた技術者……と言う言い方が正しいのかどうかはさておき、ヴィシュヌ回収の件をいったんは伝えに来た技師は、ブラフマーに向かっており、ミュラは「彼」の判断を待たねばならなかった。

「さあ、ここからが本番だ」
 自分に正直なザレム。
 艦橋には何も残っていなかった。資料などを探したが、そもそも歪虚は資料などを使わない。制御装置は、ぼろぼろに崩れ落ちて、ただのクリスタルと化していたのだ。一応詰め込んだが、クリスタルはただの石であり、何の価値もない。
 が、落下したヴィシュヌは別である。あれはまだ負のマテリアルを帯びており、完全に死んではいなかった。
 ザレムはヴィシュヌの遺物を、綱で纏め、どうにかこうにかして、荷車に積んで持ち帰ろうと悪戦苦闘していた。
 その間も、件の技師は、一応ヴィシュヌの残骸を確認していたが、これは危険に過ぎると判断する。
 ザレムは「彼」の説得を聞き入れずに作業を続けていた。
「こいつを帰還後全ての国に提出して、解析を頼むんだ。俺も出来るだけ解析したい。小型飛行戦力開発の礎になる事を願って……な!」
「おい、駄目だ。もう半日近く経ったが、見ろ、地面が黒く侵食され始めている。このままだと雑魔が発生する。既に周辺のマテリアルバランスが崩れ掛かっているのだ。リスクが高すぎるから破壊すべきであろう」
「だったら待ってくれ……! せめて……せめて中身を見て……何か持ち帰りたい! あと少し」
 ザレムはぎりぎりまで粘った。ザレムはヴィシュヌを砕いて、中を見ようと試みたが、中にある負のマテリアルの源泉は、これまでにも人類が確認したことがある黒い塊であった。負の力の塊である。
 ザレムには分からなかった。というより、単に誰にも理解できるはずもない。敵は負のマテリアルを源に魔法を使っているのである。言ってみれば、人間にはストレスになるものが力になるのである。これをどうせよというのであろうか。
 そんなわけで、ヴィシュヌは粉々に破砕された。あとで聖職者の浄化作業が入ることになる。

 鞍馬は、ふと目を止めた。
「ん?」
 あれは……。あの男は……。
 つい先日、ワッダ村で会った男、流浪剣士シルヴァ。
 鞍馬は金髪の剣士に歩み寄った。
「シルヴァ」
 シルヴァは、鞍馬を見やると、軽く手を上げた。
「鞍馬」
「お前、ここに来ていたのか。結局シヴァは姿を見せなかったし、インドラやパールバティも健在。まだまだ戦いはこれからなのだろうな。まあ、考えても仕方あるまい。奴等が現れたら撃破、で良いだろう。そろそろインドラとは本気で戦いたいものだが……」
「戦いが好きだなお前も」
「まあ、とにかくも一つ片付いた」
「仕切り直しだろうな。歪虚にしたところで、要塞を失って」
「ああ……」
「シルヴァさん」
 エルが歩み寄って来た。
「やあエル」
「まさかこんな所でお会い出来るなんて、びっくりです」
「お前たちも来ていたのだな。私は見届けに来たのだがな。噂には聞いていた」
「終わりました」
「そのようだな」
 シルヴァ――シヴァ(kz0187)は少しそこに滞在して、姿を消した。

「はあ~終わった終わった♪」
 メイムは伸びをした。
「レオさん、リンスさんはお疲れなのかな~?」
「お嬢様は、また別件で呼ばれたようだ」
「ふうん……。あたし少し心配しちゃった。リンスさんお疲れモードなのかな~て」
「はあ……まあ、俺も疲れたわ。あの要塞狂ってたからな。中は常にバステって……。クレイジーだろ」
「だって歪虚だもん♪」
「敵はストレスだよ……全く。人類は歪虚の脅威に晒されているが……なんつーか……まあ、言葉も浮かばんな。とにかくストレスさいなら。俺はちょっと水浴びでもしたいな」
「ふうん……♪ あたしはねえ……」

 マリィアは、撤収作業に取り掛かりながら、歩み寄って来た男の影に目を上げた。ジューク・マシガンであった。
「よ、マリィア」
「ジューク。お疲れ様」
「またどうだ。仕事の後に一杯」
「ん~。考えとくわ」
「何だ、ふられたのか」
「ふられるようなことしたの?」
「俺はさ、魅力的な女性とは常にお近づきになりたいと思ってるのさ。レディ」
「あのねえ……そう言う台詞は、ミュラ上級騎士卿とか、そう言う人が言う口説き文句なのよ?」
 マリィアは呆れた様子で言って、肩をすくめた。
「ふーむ……」
 ジュークはうなるように言って、その場から立ち去った。

 花は、PDAの写真を確認していた。……よく撮れている。が、まあ、これは無用の長物となるであろう。もはやヴィシュヌは存在しない。しかし、何かの役に立つこともあるかもしれない。ヴィシュヌに関して言えば、この写真はもはや存在しない歪虚兵器のものなのであるから、さして役にも立つまい。ともあれ、あの機動要塞の中枢を映し出した写真は、貴重な資料ではある。王国軍には提出もすることになろう。
「凄いものだ……ね」
 白い輝くクリスタルを見やる。きらめく魔法陣。まさに魔法の世界である。
 花はPDAの電源を落とすと、帰り支度に取りかかる。

 ハルトフォート。
 帰還した兵士たちを歓呼の声が出迎える。
「勝った! 勝った! また勝った!」
 飛び交う色とりどりの紙吹雪。ラッパが鳴り、砦の上方で祝砲が撃ち放たれた。
「凄い歓迎ねえ……」
 マリィアは見渡して、くらくらして吐息した。
「いえーい!」
 レオンハルトに肩車されたメイムは、歓声に応えて手を振る。
「いえい、です♪」
 エルは、メイムを見上げて微笑みながら、ピースサインで応えた。
「はあ~。まあ、仕方ないか……前を向いて歩こう」
 ザレムはまっすぐに背筋を伸ばすと、歓声に答えた。
「そうそう」
 鞍馬は肩をすくめて笑った。
「英雄とは……一人で作られるものではない……と言ったところでしょうか」
 花の言葉に、鞍馬は頷いた。
「花さん、お疲れさまでした」
「ええ……ですが……」
 そこで、どっ、とひときわ歓声が大きくなる。
 群衆を割って、ドワーフが姿を見せたのだ。ハルトフォート司令官、ラーズスヴァン。
「みんな! ご苦労だったな! 今日はひとまず休息日にしよう! 好きなだけ飲んで歌って、騒いでくれて構わんぞ!」
 祝砲が連呼する。
 鞍馬は呟いた。リアルブルーの英雄、ジュリアス・シーザーの戦勝報告の一節である。
「来た、見た、勝った」

 ……上空。
 シヴァは、浮遊してハルトフォートを見下ろしていた。
「…………」
 金瞳で砦を見渡し、シヴァは呟く。
「勝った、勝った、また勝った……か」
 シヴァの口許が微笑に変わる。
「では、また会おう、人類よ」
 シヴァは身を翻し、イスルダ島に飛び去って行くのだった。

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参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 仕事が丁寧
    花(ka6246
    鬼|42才|男性|疾影士

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依頼相談掲示板
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メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/07/07 17:41:17
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/07/05 22:19:30
アイコン 相談卓
花(ka6246
鬼|42才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/07/08 11:20:41