• 剣機

【剣機】死者の行軍

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/23 19:00
完成日
2014/09/27 06:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「しかし、新皇帝を選挙で決めるねぇ……そんな事する意味あるのかね?」
「わしはその……選挙と言うのが良くわからなくてのう。わざわざ遠出してまで投票しに行く価値があるのか……」
「ま、村をがら空きにするわけにもいかないんだ。投票は若い連中に任せておけばいいさ」
 帝国領内にあるとある村。日が暮れれば家の中から漏れてくるはずのランプの灯りは本来の半分程度しかなかった。
 新たな皇帝を選出するという選挙運動に参加する為、半数の村人は最寄りの師団都市に向かっている。村に残っているのは最低限畑と家畜の面倒を見られる程度の面子と、長距離移動がきつくなった老人達だけだ。
「ヴィルヘルミナ様は何を考えているのかよくわからん為政者じゃが、昔に比べれば随分とましになったように思うよ。わしは陛下が続投してくれればうれしいのう……んん? 何の音じゃ?」
 外から聞こえる風を切るような音に老人が首を傾げる。これは羽ばたきの音だ。鳥……ではない。もっとずっと大きい。
「おい、窓を開け――」
 老人の言葉が最後まで紡がれる事はなかった。木造の民家の屋根を突き破り、巨大な鉄の塊が落下してきたからだ。
 先程まで仕事上がりの団欒があったはずのテーブルは木端微塵に粉砕され、瓦礫の下からは血が滲み出る。辛うじて衝撃を免れた男が痛む身体に呻きながら立ち上がるのと、鉄の塊が展開されるのはほぼ同時だった。
 鉄のコンテナから現れたのは無数の腐乱死体。それらが我先にと雪崩出てくる。悲鳴を上げる男へ首をぐるりと向けると、腐った無数の腕が男へと突き出された。
 夜空が瞬き、青白い光が街へ降り注ぐと、爆発と同時に炎が上がった。何が起きているのか等誰にもわからなかった。轟音と光と熱の中、村人達は家から次々に飛び出してくる。上空を旋回する“それ”は続け、胴体の側面に装備していた小型のコンテナを連続で射出した。
 落下したのはまるで棺の様な鉄の箱。瘴気を吹き出し開かれた扉から姿を見せたのは甲冑を身に纏った死者の騎士達であった。
 コンテナの内側から盾と銃を手に取り、軋む鎧の音を響かせながら歩き出す。目についた村人へ銃口を向け引き金を引く事に躊躇は見られなかった。
 元々考える事など出来ないのだ。ただ命令通りに箱から出て、目についた生き物を殺すだけ。ただそれだけの“兵器”にすぎない。
 銃口から噴き出したのは青白い炎だった。人間が、建物が、畑が炎に包まれる。中には自らも炎に巻かれているゾンビもいる。所詮、その程度の行動だった。
 自らも燃え上がりながら、全てを壊す為に死者の軍団が歩き出す。剣が振り下ろされ悲鳴が上がり、炎が吹き出し悲鳴が上がり、いよいよ何も聞こえなくなったのはそれから数時間後の事であった。



「おはよう……って、朝っぱらから何の騒ぎ?」
 リゼリオの町にある帝国ユニオンAPV。朝早くからそこを訪れていたハイデマリー・アルムホルムは慌ただしさに首を傾げた。
「ハイデマリー? こんな所で何してるですか?」
 足を止めたタングラムが近づいてくる。二人は色々とワケアリな友人である。ハイデマリーは細い腹に片手を当て。
「研究費が不足しまくってるから、機導製品の修理でリゼリオに留まってたの。それで朝食を恵んでもらおうと思ったんだけど」
「またですか!? お前この間ユニオンに来てからここを無料の食堂かなんかだと思ってねーですか?」
「だって、いつも誰かが何か食べ物くれるから……。それより何かあったの?」
 眠たげに目をこするハイデマリーを見つめ、タングラムは直ぐに決断するように頷いた。
「ハイデマリー、銃は持ってきてるですか?」
「宿にあるけど……」
「なら話は早いですね。実は、一つ頼まれて欲しいのですが……」

 タングラムからの話はこうだった。これから歪虚討伐に向かうハンターに同行し、彼らを手助けしてやってほしいと。
 バルトアンデルスまで転移門を使って移動した一行は帝国軍の用意した魔導トラックに乗り込むと直ぐに出発した。朝焼けの光は弱まり、徐々に日も高く昇り始めていた。
 ハンター達が目指すのは帝国にあるなんの変哲もない田舎にある村の一つ。その村へ向かっているという歪虚の侵入を阻止し、これを殲滅するのが依頼内容であった。
「夜明け頃に近隣の村の一つが歪虚の攻撃で壊滅。その村を破壊し終えた敵が隣の村へ到達する前に倒せって事ね」
 ガンケースを抱くようにしてハイデマリーは目を細める。今回の依頼がただの歪虚討伐依頼ならそれで良かったのだが、どうやらそういうわけにもいかないらしい。
 歪虚の攻撃を受けて壊滅したという村はハイデマリーも立ち寄ったことがある。田舎を研究するような仕事なのだ、他人事には思えなかった。
「それに……タングラムが私にこんな事を頼むなんて普通じゃないわ」
 ハイデマリ―は覚醒者としても優秀な人材だが、本職は錬金術師組合に所属する博士である。クロウのような前例がないわけではないが、戦場に送り込むような立場の人間ではない。だがタングラムはだからこそこの仕事を依頼したのだ。
『まだ正確な報告があったわけではないのですが、噂に聞いたのです。新たな“剣機”が出たと。ハイデマリーも剣機については聞いているですよね?』
『そりゃ、まあ……。個人的に興味や因縁がないわけでもないけど』
『報酬は弾むですよ。その代り、現場を調査して情報を持ち帰ってもらいたいのです』
『食い扶持になれば構わないけれど、どうして私に?』
『個人的な友人だからこそ頼むのです。こっちにも色々あるですからね。頼んだですよ、ハイデマリー』
 数時間前の会話を反芻しつつ顔を上げる。トラックの運転手がゾンビを発見したと報告したからだ。
 ハンター達が身を乗り出し敵の姿を確認した次の瞬間、銃声が鳴り響いた。ゾンビが手にしていた長銃を発砲したのだ。
「銃で武装してる? それに……何、あの装備……? 新型なの?」
 次々に飛来する銃弾がトランクに命中し火花が散る。ハンター達はトラックを飛び下りると徒党を組んだゾンビの一団へと駆け出した。

リプレイ本文

 平原を移動する新型ゾンビ、エルトヌス型の集団。迎撃に現れたハンター達は走行するトラックの荷台から敵を睨む。
「奴等がここにいるって事は、村は……クソッ」
「いえ、諦めるにはまだ早すぎます。生き残りを探す為にも……まずはあの敵を止めなければ」
 悔しそうに呟く近衛 惣助(ka0510)にアティエイル(ka0002)は努めて冷静に応える。しかしその胸中は過去の記憶で掻き乱されていた。
「近くにはもう次の村があるんだ。これ以上被害を拡大させるわけにはいかない!」
「ああ……。帝国軍も今は生き残りの捜索や被害拡大阻止に駆り出されている。今奴らを止められるのは、俺達だけだ」
 決意を露わにするケイジ・フィーリ(ka1199)に神凪 宗(ka0499)は落ち着いた様子で頷く。そうして敵との距離が近づくと、エルトヌスは銃を構え迎撃を始めた。
 放たれた弾丸がトラックに着弾し、進路がずれると荷台も揺れる。そして更に弾丸が荷台を通過し、空を切る音にファティマ・シュミット(ka0298)が頭を下げた。
「ひゃあっ! も、もう撃たれてますーっ!」
「あの大型狙撃銃……一般的な人類側の銃よりも射程や精度で勝っているようですね」
「な、なんで落ち着いてるんですか?」
 片目を瞑り考え込むマッシュ・アクラシス(ka0771)の静かな様子に冷や汗を流すファティマ。そうしている間にも銃撃がトラックを襲う。
「まったく、遭遇場所が悪いわね。こんなだだっ広い場所で総力戦だなんて。こっちは生身の人間なのよ!」
 いくら覚醒者と言えどもあんな攻撃を受けては軽傷では済まない。溜息を一つ、坂斎 しずる(ka2868)は運転席に身を乗り出し。
「逃げ回ってないでもっとトラックを寄せて」
「集中攻撃を受けるぞ!?」
「だからよ。このトラックを壁にするの。そうでもしなきゃ、攻撃の取っ掛かりが出来ないわ!」
 なるほど、それは良い案だ。しかし運転手にも危険が伴う。
 だがここは帝国兵の維持を見せる時だ。運転手は雄たけびを上げながらトラックで突っ込み、距離を詰めつつドリフト気味に停車する。
「うひゃあ!?」
「おっとと。荒っぽい運転っすねぇ?」
 転がって来たファティマを受け止める無限 馨(ka0544)。ハンター達はすぐに荷台から飛び降りると銃撃から身を隠した。
「いやはや……かわいそうに。高いんですよ、このトラック」
「背に腹は代えられんだろう」
 眉を潜めるマッシュに宗が短く答える。
「敵が近づいてくるけど……あれって何だ?」
 狙撃型二体を後方に残りの四体が前に出てくるが、ケイジが首を傾げたのは殲滅型の装備。
「あれは……火炎放射器か?」
「惣助さん、知ってるの?」
「簡単に言えば、燃料に引火させて炎を放つ武装ね」
 補足するようなしずるの声。宗は眉を潜め、二人に視線を送る。
「……おかしくないか?」
「……そうね」
「ああ……」
 更に首を傾げるケイジ。三人がなぜ神妙な面持ちなのか、さっぱり見当もつかなかった。
 ハイデマリーやファティマもなんの事かわからない様子で、ケイジも含んだ機導師にもあの装備の違和感は理解出来なかった。
「ともかく、あれは燃料が無ければ炎を放てない筈だから、タンクさえ破壊してしまえば無効化できる筈よ」
「それは良いですが、まずはこの銃撃を黙らせない事には始まりませんね……」
「なら、まずは俺が囮になりつつ狙撃型を片付けます」
 マッシュの言葉に頷き馨が刀を抜きつつトラックの端へ移動する。
「確かにあの銃持ちは厄介だ。片付けられれば助かるが……やれるか?」
「心配無用っすよ、近衛さん。俺もあれから伊達に経験積んでませんから!」
 ウィンクする馨に惣助は少し表情を緩める。その肩を宗が叩き。
「俺も付き合おう。二人なら狙われる確率は二分の一だ」
「……わかった。頼りにしているぞ」
 白い歯を見せサムズアップする馨。そのまま立ち上がり仲間達に目配せする。
「俺と神凪さんにありったけの支援をお願いしゃーす!」
 頷く仲間達。ファティマ、ケイジ、ハイデマリー、そしてアティエイルの四人が二人へそれぞれ強化スキルを発動する。
「微力ではありますが、お役に立てるのなら……」
 逆巻く緑の風に髪を揺らすアティエイル。ファティマとケイジも息を合わせ、機導の力を高めていく。
「ケイジさん! 1、2の3でお願いしまーす!」
 二人のデバイスから溢れた光が仲間を包み込む。これで準備は完了した。
「二人共気を付けて下さい。注意がそちらに向いたら俺達も一気に攻め込みますから!」
「あなた様に精霊の加護を……。風よ、どうか彼らをよろしくお願いします」
 ケイジの声援、アティエイルの祈りを受けて二人はタイミングを合わせてトラックの影から飛び出した。

 姿を現した二人はそれぞれ左右から狙撃型を目指す。早速放たれた弾丸も、強化を受けた二人を捉えきれない。
「……行ける」
 手応えを感じる宗。しかし敵前衛も狙いを切り替え二人に迫ってくる。
 馨はあえてその真っ只中に突っこんでいく。驚く宗だが声をかける間もない。馨目がけ振り下ろされる大剣を横にかわし、更に視界を覆う火炎放射の光を跳躍して超えた馨は殲滅型の頭の上に手を着き、空中で回転しつつ背後に着地する。
「お前らみたいな鈍い奴には捕まらないっすよ!」
「……危なっかしい奴だ」
 すぐさま側面からチャクラムを投げつけ注意を分散させる宗。しかし二人の活躍で前衛はトラック側に背を向け、狙撃手の狙いも完全に釘付けになっている。
「よし、行こう!」
 好機と見て駆け出すケイジにファティマが慌てて続く。マッシュも小さく息を吐き、二人と共に敵の背中を目指す。
「随分無茶をしたわね、彼」
「あ、ああ……だが……見違えたよ。強くなったな、馨」
 しずるの声に嬉しそうに目を細める惣助。馨がハンターになったあの日、共に酒場で談笑した事を思い出す。
 懐かしさに浸る時間はない。直ぐに気持ちを切り替え銃を構える二人。ここから狙撃し、まずは敵の武器を無力化する狙いだ。
 幸い馨も宗も無傷で狙撃型に接近しつつある。ここまで距離を詰めた事を考えれば、狙撃型に関しては二人に任せても良いだろう。
「なら、私たちが狙うべきは――」
 背を向けている強襲型に盾を構えて突っ込むマッシュ。そのまま盾ごと背後から勢いよく突っ込むと、吹っ飛ばして転倒させる事に成功する。
「正面から当たっても得はありませんからね。直ぐに倒せないのなら……時間を稼がせて貰いましょう」
 すかさず倒れたエルトヌスの背後に飛び乗り、首元の隙間を狙って剣を振り下ろす。貫通した刃は大地へ突き刺さり、そのままマッシュは動きを封じにかかった。
 もう一体の強襲型は盾を持つ。ケイジは走りながら後衛の様子を確認し、銃を構え引き金を引く。
 しかし銃撃では殆どダメージを与える事が出来ない。鎧がそもそも異様に頑強なのだ。
「だったら!」
 相手が振り返るよりも早く駆け寄ると同時に機導剣を膝裏に突き刺した。がくりと体が揺れるが、振り返りざまに大剣を繰り出してくる。
 とっさに刀で受け流すが、衝撃は激しい。よろけながら背後へ跳ぶと、強襲型も盾を構えケイジを追ってくる。
「……射線が開いた!」
 そう、盾を持った巨体は邪魔だったのだ。惣助としずるは同時にそれぞれ殲滅型に狙いを定める。
 ちょろちょろ走っているファティマを殲滅型が追いかけている今なら、横から幾らでも狙い撃ちに出来るだろう。
 二人は精神を集中し、マテリアルを練りこんでいく。放たれた弾丸は今の二人に出来る最高威力、最高精度の一撃であった。
 弾丸が光の軌跡を残し、吸い込まれるように火炎放射器を貫通する。次の瞬間炎が舞い上がり、どす黒く光る煙のようなものが周囲に広がった。
「なっ、なんですかこの気体!? う、うぅ……すごい臭いですぅ……」
 涙目になるファティマ。この世のものとは思えない、鼻の曲がるような臭いのする煙こそ燃料だったのだろうが、いったい何なのか見当もつかなかった。
 殲滅型は既に破壊された火炎放射器を一生懸命ファティマに向けているが、炎が出る事はない。そんな隙だらけの相手にファティマはドリルを構え、マテリアルの輝きを纏わせていく。
「鎧の上から攻撃しても大ダメージが見込めないのはわかりました。だったらこれで!」
 ドリルの先端から細く尖らせた機導剣の一撃を、兜の正面、視界確保の為のスリットへ繰り出す。
「刺さって!」
 光が吸い込まれるとゾンビはのけぞり、そのスリットから体液を飛び散らせた。思い切り浴びてしまったファティマは目を白黒させつつ。
「う、うぅ……でろでろしてて気持ち悪い……。でも壊れてる武器で戦おうとしてるのはおばかでちょっとカワイイかも?」
「……ファティマさん、余裕あるなぁ」
 冷や汗を流しながら遠巻きに眺めるケイジ。こちらは剣をぶん回してくるのであんまり余裕はない。
 狙撃型は例え味方が攻撃を受けていようとも接近する馨と宗を無視出来ない。二人は弾丸を回避しつつ、それぞれ刀を繰り出す。
 二人の動きが遠くで重なり、銃口の先端に食い込んだ刃が火花を散らしつつ銃身を滑っていく。そのまま前へ踏み込み、すれ違うと同時、振り抜いた刀が狙撃銃を両断し破片を空に舞わせた。
「馨!」
「ういっす! 銃はぶっ壊したので……!」
「一体ずつ!」
「集中攻撃っす!」
 狙撃型も銃を失い、呆けたように固まっている。次の行動に移る前に盾を持っていなかった馨側の個体へ狙いを切り替えた。
 二人は挟み撃ちで入れ替わり立ち代わりに斬撃を放つ。敵は生半可では倒れない頑強さだが、得物を失い混乱する今、ただのサンドバッグと同義だ。
「どうやら上手く行ったようですね。さあ……一気に片を付けましょう」
 アティエイルの声に頷き物陰から飛び出す惣助、しずる、ハイデマリー。アティエイルは杖を構え、体の周囲に炎を纏わせる。
「どのように強き者であろうと、この口に戸板は立てれまい……さぁ、喧騒なる者に静寂を」
 杖に収束した炎を矢として放ち、ケイジを襲うゾンビを燃やすアティエイル。どうやら単純な物理攻撃よりも魔法的な攻撃、特に火の通りが良いようだ。
 実質すでに驚異的なのは強襲型二体のみ。そのうち片方は何とかマッシュが抑え込んでいる。ハイデマリーはそんなマッシュに強化を施しながら駆け寄る。
「手を貸すわ!」
「ありがとうございます。では……少々卑劣な気もしますが。最終的に立っていた者が勝者。これも仕事です」
 力を増したマッシュは刃を引き抜き、すかさず両手で刃を振り下ろす。鎧をまともに狙ってもダメージは見込めないので、狙いは関節部だ。
 手足をめった刺しにしてしまえばゾンビだろうが動けなくなるだろう。ハイデマリーもそれに倣い、鎧の隙間に銃口をねじ込んで引き金を引く。
 二人が足で強襲型を抑えながら執拗に攻撃を繰り返す様にファティマはちょっと引いていた。が、それくらいしなければ倒せない相手だ。
「シュミット、もう少しその二体を引き付けていられるか!?」
「あっ、はい。なんかもう、逃げてるだけなら全然へーきです!」
 火炎放射器をやっと捨てた二体はファティマを捕まえようと追いかけてくるが、正直よけるだけならいつまででも出来そうな遅さだ。
 惣助はそれを確認ししずると共にケイジを襲う盾持ちの強襲型を攻撃する。二人が銃撃しても中々倒れる気配のないこいつをまともに相手にしていたら、相当時間を取られただろう。改めて考えても武器だけ破壊したのは正解だ。
「まったく、なんて頑丈なの……!」
 思わずごちるしずる。アティエイルは再び炎の矢を放つが、ゾンビは盾をどっしりと構えそれを防ぐ。
 ケイジはその隙に自身を強化。強大になった機導剣を手に背後から再び膝を貫き、更に切断に成功する。
 片足を失い前のめりに倒れるゾンビ。惣助としずるはその頭に攻撃を集中させ、アティエイルが杖を振るうと炎がゾンビを覆い、ようやくその体は動かなくなった。



「どなたか……どなたかいませんか!」
 火を放たれ廃墟と化した村にアティエイルの声が空しく響く。
 手強かった強襲型さえ倒してしまえば、残りは武装を失った相手。倒すのに時間は掛かったが、さほど労せず戦闘は終了した。
 ハンター達はその後、手掛かりを探して件の村へ足を延ばしてみたが、生き残りらしい人影は見当たらなかった。
「なんて事……生き残りは……」
「……酷い事をするものね」
 膝を着いたアティエイルに寄り添い肩を抱くしずる。村にはいくつか投下用コンテナが発見され、ケイジは興味深そうに見つめていた。
「それにしても、なんでこんな事したんだろうな……」
「この時期での侵攻とは、はてさて……誰にとっての好機なのやら」
 腕を組み呟くマッシュ。馨はげんなりした様子で。
「元を絶たない限りこの先同じ事が起きるんすよね。空からゾンビが降ってくるとか厄介なんてレベルじゃないっすよ」
「これってどこからでも攻められちゃうって事ですよね……。そういえばさっき、あの子達の装備を見て何か驚いてましたよね?」
「ああ……その事か」
 ファティマの声に宗は腕を組み考え込む。馨は頭を掻き。
「確かに俺も感じてたっす。軍属だった皆さんはそうでしょうね」
「どういう事ですか?」
「……一目見て“火炎放射器”だと分かった。それくらい、あのデザインは俺達の世界の物に近いんだ」
 惣助の返答に目を丸くするケイジ。マッシュは「ふむ」と息を吐き。
「まさか、リアルブルーからの転移品でしょうか?」
「リ、リアルブルーの装備ってあんな変な気体を使ってるんですか……とても気になります! 腐っても錬金術師なので!」
 瞳を輝かせるファティマに苦笑した後、ケイジはコンテナを振り返る。
「何が起きてるんでしょうか。今、この国で……」
 アティエイルは手を組み祈る。この村で苦しみ、死んでいった人々に自らの過去を重ね。
「村の風習は知りません。送葬も出来ません……ですが、せめて……祈りだけでも」
 この事件はまだ終わっていない。剣機本体を倒さない限り、悲劇は繰り返されるだろう。
「月が魂を導いて下さるように……」
 死者を悼む為に祈るアティエイル。マッシュはその横顔を見つめ、目を瞑り、そして表情を変えないまま視線を逸らした。

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MVP一覧

  • スピードスター
    無限 馨ka0544
  • シャープシューター
    坂斎 しずるka2868

重体一覧

参加者一覧

  • ふたりで歩む旅路
    アティエイル(ka0002
    エルフ|23才|女性|魔術師
  • 理の探求者
    ファティマ・シュミット(ka0298
    人間(紅)|15才|女性|機導師

  • 神凪 宗(ka0499
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • スピードスター
    無限 馨(ka0544
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 鉄の決意
    ケイジ・フィーリ(ka1199
    人間(蒼)|15才|男性|機導師
  • シャープシューター
    坂斎 しずる(ka2868
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
近衛 惣助(ka0510
人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/09/23 13:25:28
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/19 20:01:59