商会、つくりマス

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/11/28 22:00
完成日
2016/12/01 00:34

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 食料を山ほど詰め込んだ二両仕立ての馬車は、コトコト野道を走る。
 馬を繰る娘は、水飲み場では馬にブラシをかけてやり、たまたま同じ休憩場所で一緒になった商人に明るく話しては、積んだ食料をちょっとその場でアレンジしてお昼ご飯はいかがですかと売りに出す。
 轍の音色に合わせてのんびり歌でも唄い、子供が駆け寄ってくれば挨拶を。
 村についたら、馬を降りて轡を引きつつ、扉の向こうから出てきたおばさま方にご挨拶。
 自慢のソースの缶詰をはじめとした食料品を下ろして、売り口上。一通り終わってもらう拍手にいつも赤面しつつ。
 たくさんの品物を売って、料理方法なんかも伝えたりして。そして代わりに今度は畑の野菜を空になった籠に積んで。
 そこで手伝ってくれるのはお兄さん。兵士を辞めて村に戻ってきてくれたの。と子供たちが教えてくれる。ジャガイモが売れるようになったから。男性の笑顔にミネアもにっこり。
 夜は団欒にお邪魔させてもらって、家族でもなければ血のつながりもないけれど、たくさんの喋って笑って、遊んで食べて。
 寝るまでに伝票の整理をして……おやすみなさい。
 村にさようならして、二両仕立ての馬車は、コトコト野道を走り出す。

 それがミネアの日常。昨日までの。


「どうしよう……」
 ピースホライズンの片隅で、ミネアは途方に暮れていた。
 万霊節の終わったピースホライズンだけれど今日もお祭り、明日もお祭り。賑やかでないのなんて彼女くらいなものだ。
 といっても目の前は非常ににぎやかな紙の束だった。帝国の地方を回遊する彼女への注文をしようと思えば、ここピースホライズンで手紙を預けるのが一番だと商人たちはよく知っていた。
 そう。いま彼女の目の前にあるのは。注文書の束だった。
 特別に甘いホクホクとした食感のジャガイモ新品種のたいよう。
 それからエトファリカ連邦の一つ、詩天から輸入した果物を使ったフルーツソースとデミグラスソース。
 引く手あまたは嬉しいことだけれども、そろそろ人間としての限界に挑まなければならないような仕事量に差し掛かってきた気がしつつ、ミネアはとにかく注文書の仕分けを始め……。
「新年会の祝祭用にメーアーシュレスヴィヒにジャガイモ55箱、エルヴィンバルトに救急用として20箱。えーと、そっちはレストラン用にソースが120箱……バルトアンデルスの食堂に……700」
 馬車しか移動手段がないのに何週しなきゃならないのか。
 そもそもジャガイモもソースもピースホライズンの倉庫にない。村に戻ってたいようのジャガイモを急きょ仕入れて……。
「いや、村のジャガイモもギリギリかもしれない。とすると代用品を先に仕入れて……」
 少なくとも村に20周、それから配達業者にお願いして、それからソースの材料を詩天にいる人に連絡して。
「ああ、手紙じゃ間に合わないィ。覚醒者の人に転移門で飛んでもらって……ああ、そもそも冬の果物になっているから、ソースも構成も調整しないと……じゃあ私が転移門で飛んで……転移酔い3日で馬車を乗り込む程度には回復したいな。……帰りも考えると、転移酔いしたまま味見かな、うぇえ」
 覚醒者でもないミネアが詩天にまで短時間での移動を決めるとなると、転移門を使うしかないのだが、一般人がやると数日間身動きなどできないほどのひどい体調不良を引き起こす。
 注文書の紙より真っ白になりながら、それでも期待には応えねば。とミネアは身体と心が沈むのを支えた。
「お姉ちゃん、なんで真っ青な顔してるの?」
 ジャガイモのたいようを販売しにきていた村の少年たちがミネアの顔を覗きこんだ。
「うん、ちょっとお仕事がいっぱいはいっててね……」
「なんだ、そんなこと」
 割とにべにもない一言にミネアは思わず顔を曇らせた。そりゃあ、他人事かもしれないけれど……。
「お姉ちゃんもさ、商人ならもっと人頼りなよ」
「へ?」
「たいようのジャガイモが売れてからさ、すっげー家も明るくなったんだぜ。兄ちゃんも兵士辞めて戻ってきてくれたし。母ちゃんなんかもう毎日ニッコニコなんだよ。それもこれもミネアお姉ちゃんが頑張ってくれたからでしょ。その恩返し位させてよ」
「ってーか、もう、ミネアお姉ちゃんが頑張る必要ないよね。ここに来て売り方勉強できたしさ。お姉ちゃん注文だけ受けてくれればそれでいいよ」
「嬉しいけど、若干辛辣に聞こえるんだけど……?」
 子供たちが話し合う様子にミネアはなんとも微妙な顔つきになる。
「ミネアお姉ちゃんはこの際しゃちょーしつの椅子でふんぞり返って札束数えてくれててもいいよ」
「あ、いいね。僕らの社長だ」
「威厳ないけどな」
「色気もないけどな」
 言われたい放題である。
「とりあえずオレ達で会社作ろうぜ、な!」
「いやいやいや、ちょちょ、ちょっと待って、落ち着いて。あたしはそんな立派じゃないよ!?」
「何言ってんのさ。商品もある、販売先も持っている。コネもある。金もある。ないのは威厳と色気と身長と胸と……あとなんだっけ。ああ、人手だろ」
「余計なものが半分以上占めてる! っていうか、これから成長期迎えるから、身長その他諸々も足りるから!!」
「本当にー?」
「た、多分……」
 そこまで言ってミネアは少し考えた。
「でも人手は足りないかもしんないかな……手伝ってくれる?」
 その言葉に子供たちは親指をぎゅっと立てて、笑顔で答えた。
「ハンターと相談してすっげーカブシキガイシャ作ってやるからな!」
「セカイセーフクできる会社だぜ」
 カブシキの意味は多分あんまりわかってないよね。
 でもハンターが手伝ってくれるなら大丈夫かな。ミネアは笑顔で親指を立て返した。

リプレイ本文


「ダメよ。そんな適当半分に『お願い』しちゃ」
 愛梨(ka5827)はミネアの鼻先に指を突き付けてそう言った。
「いい? 商会を作るってことは色んな問題も起こるわ。それを乗り越えてでもやってく覚悟、ある?」
 愛梨の鋭い瞳にミネアは気弱になってそのまま後ろにずり下がる。
「あなたのやりたい事はなに? どうして商売しようと思ったわけ?」
 とうとう壁に追いつめ、両手で壁に手をついた愛梨はミネアに吐息がかかるほどに顔を近づけて問いかけを続けた。
「あ、壁ドン」
「愛梨ちゃん、そんな……」
 ナツキ(ka2481)とリラ(ka5679)の囁きが背後から聞こえる。なんか誤解が発生しそうになっているが、ここで否定しにかかったら台無しになる。愛梨は顔を真っ赤にしながらもミネアの瞳をじっと見つめた。
「教えて、あなたの気持ち」
「幸せをみんなに運びたいなって……思ってる」
「うん、素敵ね。ミネアのその気持ちは絶対に共感してもらえると思うわ。ミネアの幸せをあたし達にも……見せてくれる?」
 愛梨の優しい笑顔にミネアはこくこくと頷いた。
「……なんかアブない関係が成立した! ちょとショックだけど、うん、お祝いするね」
「「ちっがーう!!!」」
 リラの拍手に今度こそ愛梨とミネアは全力で否定した。


「セカイセーフクするためには、まずどこにどれだけの戦力が必要か、考える。こういうの大規模作戦でやってきた」
 ナツキは天央 観智(ka0896)の用意した帝国地図の上ですばやく伝票を場所ごとに切り分けていく。
「見て。帝国はバルトアンデルスを中心にして放射線状に道が伸びて先端に各都市がある。ミネアの注文地域はだいたい南西部に集中してる」
「わー、すごい。分かりやすい!」
 地図の上に置くことで、場所と卸す量が一目でわかることにミネアは目を丸くした。ちょっと嬉しいナツキはそのまま伝票の集まるエリアを丸で囲む。
「そうですね……南西部の半分以上が……エルフハイムですけど。神霊樹を使わせてくれたらいいのですが」
 円の中心部分は、現在騒乱真っ只中のエルフハイムであった。そもそもこのエルフハイムは帝国を4分割した時、南西部の広大な部分を占めているのである。それに詩天から果物を運ぶには転移門を使わないといけないが、転移門は神霊樹あってこそのシステムである。
「エルフハイムは無理でもピースホライズンから運べばいい。ついでに言うと、エルフの知り合いいる。ミネアの料理おいしいからエルフもきっと気に入る」
「ああ、なるほど。先日、森を出てきた人がいましたね……彼女達の居場所作りにも、倉庫はできるだけ分散しポイントで管理できれば……拡張性も確保できます」
 ナツキと観智は視線を交わしてこくこくと頷いた。
「ふむ、各地の知り合いに声をかけるのはいい方法だな。ミネアのような真心に溢れた人間の人となりを知っていれば、きっと集まってくれる人も多いに違いない。それに覚醒者の友なら護衛も雇わずに済む」
 明王院 蔵人(ka5737)はしつかと頷くと地図に目を落とした。
「広大だ地域をカバーするにはトラックも必要だ。手配してこよう」
「ところでジャガイモ120箱いるけど、たいようのジャガイモ、ある?」
 ナツキは再び伝票を回収し、今度は数だけを計上してミネアに尋ねると彼女は真っ青になった。
「そんなにないと思う。今年から生産しだしたばかりだから……どうしよう」
「大丈夫、勇気をもって早く断るのが大切。遅くなると相手も困る」
 ミネアの手をぎゅっと握り締めてナツキは言った。その手は熱く、顔も微かに紅潮していた。
「勇気をもって答えを出して。魔導バイクで送ってあげる」
「ナツキちゃん……」
 ぶしゅう。とナツキの頭から煙が吹いた。
「頭沢山使ったら、熱が出た……」
「きゃー、お水お水!!」


「行ったのね?」
「行きました!」
 ミネアが注文断りの為にナツキの魔導バイクの後ろに乗って行ったディーナ・フェルミ(ka5843)とリラがにんまり笑いあった後合図を送ると、子供たちがわらわらと寄ってくる。
「それではミネアちゃんの流通王への第一歩を盛大に祝う会を始めるの!」
 ディーナは色紙と筆を用意すると、ミネアの名前をかわいい兎さんマークの上に書き記した。
「兎は豊穣の象徴ですの。ご飯いっぱい、幸せいっぱい。そしていつも忙しく走り回るのよ。ミネアちゃんにぴったり。ここに社名を描いて社章にするのなの」
「わっわっ、いいですね。ディーナさんの絵かわいい! 社名ってもう決まっているんですか?」
 リラが拳をぎゅっと握って、ディーナの言葉を待つ。
「……決めてもらうの忘れてたの」
「リアルブルーっぽく言うと、カンパニーとかですかね。大きな工場とかならインダストリー、流通ならディストリビューションです」
 リラは仲の良い友達のうち、リアルブルーから転移した人から聞いた話や知識を思い出しつつ、子供たちに語る。
「カンパニーにしようぜ。呼びやすいし」
「カンパニーってカンパイー、みたいで景気良いよね」
「パンパカパーンっぽいし」
「はいなの♪」
 ディーナは笑って子供たちの意見に頷いて、紙にさらさらっとミネアカンパニーと書き……ふと思いついて、文字を跳ねさせて兎のように形取る。
「Mが兎の耳で、Cはお鼻に。首のリボンにちゃんとMCってかいておくなのね」
 兎の横顔を輪郭縁取るように書き加えたものに、子供やリラからすげー、素敵! とか賞賛の雨が降ってきて、ディーナは照れたように笑った。
「でも下の方がちょっと寂しいから、あの、書き加えてもいいですか?」
 少し考えて、今度はリラ顎から首のリボンをつなぐようにして文字を書き連ねた。
「『おいしい料理で幸せを運びます』?」
「ミネアさんいつも幸せを届けたいとか言ってたから、こういう信条を書いておくとどんな会社なのかすぐわかるかなって」
「素敵なの! デザインもばっちりなのね。絶対の信条をあらわすのに王冠もつけちゃうなの」
 王冠をつけた兎さん。
「うわー、すっげぇな。顔なんかミネアにそっくりっぽい。二人とももしかして絵師ってヤツ?」
「ふふふ、違うけどありがとなの。それじゃこれで焼きゴテを作るなのー」
「おーっ!!!」
 みんなも跳ね、賛成の声が躍った。


「ううむ、さすがにございます」
 シャーリーン・クリオール(ka0184)のソース作りの手際よさはまさしく魔法の様であった。果物はあっという間に鍋の中で色を様々に変えて輝くような香りが立ち上る。そんな様子を五条は真剣なまなざしで見めていた。
「何言ってるのさ、今度は五条殿が作る番さね」
「は、わたくし?」
 てっきり冬用の果実で作るソース作りの調整をしに来たのだと思っていた五条は目を真ん丸にした。
「いや、あの、私は作るのはちょっと……」
「はい、五条さんがそういうと思いましてマニュアル作ってみました! ふふふ、反復練習が上達の早道ですよ。一緒に練習しましょ?」
 おののく五条の真後ろから、シャーリーンのソースを作る手順をばっちり書きこんだ手順書を持ったルナ・レンフィールド(ka1565)がくすりと笑った。
「うう、あまり得意ではないのですが……」
「そりゃあ残念だね。これを製品化できるようになったら五条殿に任せようとミネア殿は話していたのにな。ソース製作の技術を持てばその技術料を得られる上に、慣れれば応用も……」
「やります!」
 段々五条の事が分かってきた気がする二人は笑い合った。

「きょうもー いっちにち おつかれさま」
 五条はルナの作ったマニュアルと小鍋を交互に見つつソース作りを手伝う中、ルナがリズムよく口ずさみながら、果実を剥いていく。
「あしたもー にっこり がんばりましょ」
 シャーリーンが剥いた柚子の皮を刻みながら、ルナに引き続いて口ずさむと、三人は顔を見合わせ
「まいにちー さんどの 食事は ミネアカンパニー」
 声が綺麗にはもるとみんなはクスクスと笑って再びソース作りに戻る。
「この唄は中毒性が高いというか……頭の中でぐるんぐるんしますね」
「そう、子供からお年寄りまで覚えてもらえるように。ミネアカンパニーの社歌です」
 ルナが嬉しそうに言うのは、作詞作曲は彼女だからだ。
 出来上がったソースを缶に流し込み、最後の熱処理をすれば、ディーナ製作の焼き鏝を軽く当てて出来上がり。
「これなら詩天の人達でもできますよ」
「まさしく。田畑を失いあぶれた家族もおりますので、労働力の必要なこの作業は是非詩天にお任せくださいませ。みねあかんぱにー詩天工場責任者としてじゃんじゃん作って見せます」
 五条の言葉にシャーリーンもルナも笑顔で拍手し、そしてよろしくおねがいします。と改めて手を重ね合わせた。


 ミネアが断りの連絡を入れて戻ってきた時にはゆっかり夕暮れになっていた。
「魔導バイクってすごいね。1日で往復できるなんて思ってもみなかった。ナツキちゃん、ありがとう! ……でもピースホライズンはまだ先なんじゃ?」
「私もミネアの役に立てて嬉しい。ここ、倉庫の場所。落ち合う予定していた」
 ナツキはいつもの感情の起伏が少ない顔をしていたが、ぎゅと手を握られる手の温かみからか、少しだけ口元がほころんだ。ほんの少しだけ。
「あー、もう遅い。何やってんの」
 そんな二人に愛梨の声が飛んでくる。手を振っているのは愛梨だろうが、その周りには今日の為の依頼に集まった以上の人影が見える。
「ほら、あれが会頭さん。ミネア。さっそく人を集めてきたわよ」
「人徳ですかね……仕事の担当配分を決めていたところですが……十分な人数ですよ」
 観智は作った書類をミネアに渡して微笑んだ。
「在庫管理、受発注の受付は……新婚夫婦のお二人。品質管理は倉庫をお借りする村のお子さん方……今回の依頼された皆様ですね。各地へ配送はミネアさんもご存知のサイアとミーファさん。それから詩天からピースホライズンまでの配送はディアナさんという聖導士さん」
「あ、お世話になります。ミネアです……この度はお世話になります」
 観智に紹介されてそれぞれに挨拶する人々に、ミネアは腰を低く、どっちが紹介されている側なのかよくわからないくらいの挨拶を繰り返す。
「なんか、大事になってきた……」
「今更すぎですよっ」
 釣り上げられた魚のように口をパクパクさせるミネアにリラは噴き出した。
「そしてぇ!」
 ディーナが声を張り上げると同時に、ルナがリュートをかき鳴らしてドラムロールの代わりをして、リラが真横にある建物にかけていた幕を取り払った。
「これが、ミネアさんの商会、ミネアカンパニーの看板でーす」
 兎の紋様に描かれたミネアカンパニーの文字が輝く。
「なんか想像を超えちゃってる!?」
 慌てふためくミネアをよそに村人もハンターも、新しく雇用された人達もごそごそしだす。
 そしてミネアが振り返った瞬間。もう一度ミネアは噴き出した。
「な、ナンデスカ。ソノウサミミ……?」
「この村のご神体なんですって」
「まさか倉庫ってここだとは思いませんでした……縁とは本当に不思議なものです」
 ルナはなんだか感慨深くシャーリーンのウサミミを手直ししていた。どちらもこのウサミミをちょっと前に付けたばかりだというのに。
「これ制服な。村起こしにもなるからって、かーちゃん言ってた。倉庫代やその代わりタダでいいって」
「うむうむ。持ちつ持たれつとはまさにこのことだな」
 抱き上げた子供たちにウサミミをつけてもらっている蔵人はしみじみとそんなことをいう。
「いや、あの、みょーおーいんさん。それでイイノ?」
「勿論だ。ウサギはいい。タヌキが好きな奴もいる」
 蔵人はそういうと、ミネアの頭にもウサミミをつけて、そして一転真面目な顔をした。
「祝いたいところだが、まずはもらっている注文をすぐさま消化しなければならん。ナツキが整理しくれたおかげで、必要な情報は全部揃っているが、早く動かねば締め切りに間に合わん所もあるだろう。今回は覚醒者にはトラック込みで駆けつけてもらった。どれも我々やミネアに縁のある人材ばかりだ」
「え、あ、はいっ」
 ウサミミは慣れなかったが、ミネアも真面目に戻ると、大きく息を吸い込んだ。
「お仕事いっぱいありますが! 是非、よろしくお願いします。たくさんの人を幸せにするためにっ」
「幸せを届けましょう~!!!」
 リラの透き通った声にみんながこぶしを突き上げて声を返した。


「積み込み完了!」
「エルヴィンバルトこと、エルフハイムへの救急物資! 届けてきました。ちっきちきばんばーん!!」
「よし、任せたぞ」
「ソース第二陣到着」
 蔵人が魔導トラックを見送っていく。その後ろには山と積んだMC印のジャガイモの木箱が積まれている。
「ポイントの経過を記載する書類も作った方がいいですね……リアルブルーのように管理システムがあると便利ですが……」
「書類の最適化というヤツだな。任せろ」
 観智の言葉に蔵人はウィンクして書類を取り出した。書類は観智の提案したポイントによる管理システムに対応できるように、切り目が入っており、ポイントを通過するごとに切り離して使えるようになっていた。
「素晴らしいですね……」
 大柄な蔵人ながら、その書類の精緻さは観智もしばらく目を走らせて唸るしかなかった。眼鏡の彼にはちょっと眼精疲労の元になりそうな感じだったが、その分しっかりと繰りこまれているのがわかる。
「なんかすげーなー。トラックばんばん走るしさ。これ本当にセカイセーフクできるんじゃね?」
 どうしようか迷うというところがないね一糸乱れぬ行動に子供たちは呆然とするばかりであった。
 そんな彼らの肩にシャーリーンは腕を回すと、後ろから笑いかけた。
「何言ってるのさね。ミネア殿の料理と幸せを運ぶという熱意は世界一だろうさ。きっとすぐセカイセーフクしてしまうよ」
 そしてシャーリーンはまるで魔法のように手から寒天のゼリーの入った器を子供たちの眼のまえに披露する。
「一段落したし前祝い、やるかい?」
「おーいぇーーー!!!」

「それではミネアカンパニー設立するなの」
 シャーリーンの用意した料理はどれも美味しそうで、子供たちの眼はそちらに釘付けだったが。かろうじてつまみ食いは我慢していた。
「セカイセーフクの前祝いとして」
 リラが掛け声をかけると、みんなが声を揃えた。
「いっただきまーす!」
 食べもので幸せにするミネアカンパニーだから、お祝いの言葉もいただきます。
「それじゃお祝いの歌として、演奏しますね。ミネアカンパニー社歌いっきまーす」
 ルナがリュートをかき鳴らしすと、みんな揃って口ずさむはあのメロディー。
「きょうもー いっちにち おつかれさま
 あしたもー にっこり がんばりましょ
 まいにちー さんどの 食事は ミネアカンパニー!」

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MVP一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智ka0896
  • にゃんこはともだち
    ナツキka2481
  • 鉄壁の守護神
    明王院 蔵人ka5737

重体一覧

参加者一覧

  • 幸せの青き羽音
    シャーリーン・クリオール(ka0184
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • にゃんこはともだち
    ナツキ(ka2481
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士
  • 鉄壁の守護神
    明王院 蔵人(ka5737
    人間(蒼)|35才|男性|格闘士
  • アヴィドの友達
    愛梨(ka5827
    人間(紅)|18才|女性|符術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/26 20:15:03
アイコン 相談・商会を作ろう会なの
ディーナ・フェルミ(ka5843
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/11/27 20:48:36