ひみつのひみつ

マスター:朝臣あむ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/23 15:00
完成日
2014/10/31 16:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●錬金術師組合
 剣機の騒動も落ち着きを見せ、周囲に秋の色が見え始めた午後。リーゼロッテ・クリューガー(kz0037)は自身の執務室に籠り、内密の書面を手に眉を寄せていた。
「剣機の脅威が去った今こそチャンスだと思っていたのに……っ」
 プルプルと震えながら書面を置いた彼女のデスクには、何かの設計図らしき物が置かれている。
 ビッシリと綴られた文字に図面。これらはリーゼロッテが1年掛けて作り上げて来たもので、彼女の密かな研究の成果でもある。
「もしこの報告が事実なら、ここまでの苦労が水の泡……なんとしてもそれだけは避けなければいけません!」
 リーゼロッテは勢い良く立ち上がると、乱雑に物が詰められている引き出しを開けて大きな帽子とサングラスを取り出した。
 そうしてマスクを手に取ると、デスクの上にあった設計図らしき物を鍵のかかる箱に押し込んだ。
(この研究だけは誰にも見せる訳にはいきませんものね。ここなら安心でしょう)
 クスリと笑って鍵を閉める。しかもその鍵は魔導装置の起動が必要なリーゼロッテスペシャル版。ハッキリ言って並の人間では開けることは出来ない。
「ペリド! ペリドは居ますか?」
 部屋の入口に向かって呼び掛けること僅か。
 執務室の扉が開いてショートカットの元気な少女が顔を覗かせた。
「あれ? 先生お出かけですか?」
 キョトンと目を瞬く彼女は自称リーゼロッテの一番弟子にして秘書的な存在でペリドと言う。
 ペリドは出掛けるらしいリーゼロッテを見ると「?」と首を傾げた。
「ええ、少し出てきます。夕方までには戻りますので、執務室には誰も入れないようにして下さい」
「誰もですか? えっと、ボクもでしょうか?」
「そうですね。そうである方が望ましいです。あ、昨日の朝と昼と夜、それに今朝の分の紅茶のカップは下げておいてください」
 そう言い置くと、リーゼロッテは足早に執務室を後にした。
 残されたペリドは「はーい♪」と元気に返事をして執務室に入って行く。理由は今リーゼロッテが言った紅茶のカップを片付けるためだ。
「先生、風邪でも引いたのかな? あ、もしそうならお薬をもらってこようかな。確かクロウさんが怪しい薬を持ってたよね♪」
 カチャカチャとデスクに置かれた複数のカップを重ねると、片手に持って軽い足取りで執務室を出ようとした。
 だがデスクを離れようとした直後、ペリドの足が何かに引っ掛かる。そして慌ててカップを支えようと手を伸ばした彼女の手が、先程厳重に鍵を施した箱にぶつかった。

 ドンガラガッシャーン☆

 凄まじい勢いで弾け飛んだカップたち。
 カラカラと虚しい音を立てて崩れゆく破片に表情を青くしたペリドだったが、目の前に飛んで来た紙に目が釘付けになった。
「設計、図?」
 思わず手に取ったのはリーゼロッテお手製の設計図だ。びっしり書かれた文字や図形から彼女渾身の作品だとわかる。
 けれど何よりペリドを釘付けにさせたのは、設計図の表題であろう文字だった。
「『歩けわたしのくまちゃん試作品第一号。通称あるくくまー♪ やっぱり毛皮が重要よね!』……って……何、これ……」
 ペリドはそう呟くと、散らばったカップを忘れて設計図に魅入った。


「あ、あの……どういったご用件で……」
 ゴクリと生唾を呑み込んだ男性の目の前に立つのは、大きな帽子を目深く被ったサングラスの女性だ。彼女は顔を覆うほどのマスクをしながら咳払いをすると、周囲を伺うように首を動かしてから顔を近付けて来た。
「お願いしたい事があるんです」
 コソコソと紡ぎ出される声に職員が「!」となる。そうして目の前の人物をマジマジ見詰めると「あ!」と声を上げた。
 それに慌てて女性が人差し指を立てる。
「しー! しー、ですっ! 良いですか、私は依頼人L……そう、ミス・エールです」
「み、ミス、エール……」
 どうなのそのセンス。そうは思ったが口にはしない。その代り、引き攣った笑いを顔に浮かべると、職員は改めてミス・エールを見た。
(どうみても、錬金術師組合組合長だよな……なんで変装なんか……)
「実は、困っている事がありまして……個人的にお願いしたい事があるんです。ミス・エールとして」
 リーゼロッテ――もとい、ミス・エールはそう零すと、心底困ったように息を吐いて書面を差出した。
「これは?」
「アネリブーベ経由で仕入れたある物の情報です。荷物の中身は言えませんが、とても貴重な物で改めて仕入れるとなると来年になってしまうんです」
「えっと……その荷物を持ってくる、とかでしょうか?」
 錬金術師組合組合長が貴重と言うからには錬金術に関わる物だろう。しかも内密にこうして来るという事は内部的にも重要度は高いかもしれない。
「それでしたら簡単なのですが、先日の剣機の一件で活性化をしたのか、輸送経路に歪虚が出現したらしいのです。その退治をお願いと、可能でしたら荷物を直接届けて頂けないでしょうか」
 彼女が言うには、歪虚は岩山の間に通る街道を塞いでしまっているらしい。しかも何が原因なのか、歪虚が好んで狙うのは行商人や大きな荷物を持った物ばかりと言う。
「目撃情報によると歪虚は蛇のような姿をしていて、奪った荷物を丸呑みにするそうです。現在は人的被害と言うより荷物の被害が大きいそうですが、死傷者が出てからでは遅いですし……どうでしょう?」
 確かに話を聞く限り放置しておくいわれはないだろう。しかし何故匿名なのだろう。
「あのリ――」
「ミス・エールです」
「み、ミス・エール……あの……このままのお名前で依頼を?」
「はい。素敵な名前ですよね♪」
 ミス・エールはそう言うと、サングラスとマスクの下でにっこり微笑んだ。

リプレイ本文

「うぅ、お尻痛い……これなら馬車の方が良かったよ」
 そう言いながら、砂と石に揺れる魔導トラックの荷台で声を上げた天竜寺 舞(ka0377)は、依頼を引き受けた直後に馬車の手配を頼んでいた。
「まさか馬車より早い手段を用意してくれるなんて……って、痛いーッ!」
 大きく揺れた荷台に、乗車していたハンター達が跳ねる。それに合わせて強打されたお尻を抑える舞に「大丈夫ですか?」と声を掛けながら、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は感心したようにトラックを見回した。
「現場に急行できるのはうれしいですが、これだけの物を即座に用意できるミス・エールって何者なんでしょう」
「わからないわ」
 摩耶(ka0362)はそう零して息を吐く。その上で憂い気に外の景色を眺めると、思案するように目を細めた。
(ミス・エール……有名人と言うのはわかるのだけれど、ハンターズソサエティの方は誰だかわかっているようでしたわね……)
 依頼を伝達する際の挙動は明らかにおかしかった。たぶんハンターズソサエティの職員は依頼人が誰であるのか特定出来ているのだろう。
(何処で見分けているのかしら……気になるわ)
 ほう、と息を吐いて更に遠くを見詰める。そんな彼女の正面に腰を下ろす弥勒 明影(ka0189)は、トラックが跳ねる度に「にゃー!?」と声を上げる慈姑 ぽえむ(ka3243)を見ていた。
「……大丈夫か?」
 思わず掛けた声にぽえむが振り返る。そうしてニコッと笑うと、大きな揺れが彼女を襲った。
「きゃっ!」
「っと、危ない」
 慌てて荷台にしがみ付くぽえむと、その頭を押さえる明影。何故頭かと言うと、これ以上の跳ね上がりを防ぐためなのだが、上と下の両方から押さえつけられたぽえむは若干不満そうだ。
「どっちも痛いにゃー」
 だそうで、助けてくれた明影には頭を下げたものの、最終的には荷台にしがみ付く事で飛ぶのを防ぐことにしたらしい。
「まあ、落ちなければ問題ない」
 明影は然して気にしていない様子で煙草を取り出すと、優雅に火を灯してトラックの揺れに身を預けた。
 そこにゆったりとした声が響く。
「歪虚退治の前に怪我をしたら大変ですものね」
 ぽえむと明影のやりとりを見ていたユーノ・リリーベル(ka3344)は穏やかに微笑んで告げ、トラックの進行方向を見た。
 荒野から岩山へと突入している様子からして、もう少しで目的の場所になるだろう。そうなれば即戦闘、そろそろ心の準備もしておかなければ。
「戦いが得意とは言えない……などと言っている場合ではありませんよね。怪我をしないように精一杯頑張らないと」
 コッソリ呟いて手を握り締めると、トラックの運転手が「着くぞ」と声を上げた。
「……これが彼らの侵略の序章に過ぎないとするならば、気を引き締めなければならないかも知れないわね」
 岩陰に隠れる馬車と続く道。その双方を視界に納め、摩耶は仲間と共にトラックを降りた。


 ズルズルと這う音を響かせながら、巨大な蛇が岩の間を擦り抜けてくる。その様子を岩陰に隠れた馬車の後ろから覗き込んだユーノは、何故か残念そうに眉を寄せて後ろを振り返った。
「歪虚居ましたね」
「いや、居なかったら困るんだけど……何で残念そうなの」
 思わず苦笑した舞にユーノは言う。
「もし居なければ馬車を護衛しながら目的地に行けるかな、と思っていましたので」
 その時の対策もバッチリだったんです。そう零す彼女に摩耶が穏やかに微笑む。
「先を見据えて警戒するのは良いことだと思うわ。今回は運良く歪虚に遭遇できただけ……そうでしょう?」
 そう言って流し目に馬車の様子を確認する。それに習うようにユーノも馬車を確認すると、殆ど損傷の無い様子にホッと息を吐いた。
「このまま安全な場所にいて下さいね」
 荷物もそうだが人的被害が出るのも問題だ。
 柔らかな動作で顔を覗き込んだ彼女に商人の頬が紅く染まる。そうして頷き掛けると、目の前にオカリナが差し出された。
「不安な時は鳴らしてくださいにゃ? 多少無茶してでも死守しますにゃ」
 目を向けると、可愛らしい笑顔でぽえむが商人を見詰めているのが見えた。その仕草たるや、流石は元ご当地アイドルだ。
「商人さん、顔が真っ赤ですね」
 ユキヤはそう言って小さく笑うと、改めるように杖を持ち直して街道の先を見た。
 蛇と馬車の距離は遠くも無く近くも無くと言った感じ。但しこのまま接近を許せばいずれは馬車の存在に気付いて襲い掛かって来るだろう。
「馬車から蛇を引き離して倒す感じで良いでしょうか?」
「それが無難だろう。それにしても、ケツァルコアトル……と、呼ぶには些か矮小だな」
 トラックから降りた明影はそう呟くと、煙草の火をそのままに自らの太刀へと手を添えた。その仕草に舞もまた自身の剣に手を伸ばす。
「――では、大蛇狩りに洒落込むとするか」
「それじゃ、派手にいこう!」
 明影に続いて言い放った舞が駆け出すと、ユキヤもそれに合わせて杖を構える。
「はいはーい! そこのにょろにょろ長いだけのおバカさん、あたしと遊ぼう――よっ!」
 胴の長さと動きから想像して取った間合い。そのギリギリの距離で剣を振り降ろすと、今まで前進していた蛇の動きが止まった。
「みなさん、今の内に!」
 舞の動きで注意は惹けているが念の為。
 ユキヤは振り上げていた杖に光を集めると、蛇に向かって放った。
 一直線に蛇の頭めがけて飛んでゆく光の玉。それを岩壁に添って移動していたぽえむの視界に飛び込むと、彼女は呆けたように息を吐いた。
「これが実戦……すごく眩しい……」
 少しだけ高鳴る胸を押さえ、止まりかけた足を動かす。そんな彼女の耳には、他の仲間が繰り出す攻撃の音が響いていた。
「意外と動きは単調だな。進むか止まるか……後は噛付くか、か」
 離れた場所から銃弾を放ちつつ、明影は容赦なく蛇の姿を確認する。
 紫の肌をした蛇は事前情報の通り子供の幅くらいの太さがあり、背には翼らしき物が見える。
(飛行能力はないんだったか……となれば、厄介なのは『アレ』だな……)
 頭を掠めた情報に目を細める。と、彼の隣で同じく銃弾を放っていた摩耶が呟いた。
「来ますわ」
「ほーらほーら、こっちだぞー!」
 剣を左右に持ち変えては攻撃する素振りを見せていた舞だったが、聞こえて来たユキヤの声に真紅に染まる瞳を上げた。
「舞さん、距離を取って下さい」
「距離って……あ」
 動きを止め、翼を動かし始めた蛇にハッとする。そして蛇の首が自分に定められているのを確認すると、彼女は素早く後方に退いた。

 ドゴォォオオッ!

 凄まじい勢いで街道に減り込んだ頭にゾッとする。とは言えこんなことで動きを止める訳にはいかない。
「本当に長いだけのおバカさんなのね!」
 わざと挑発する言い方をしながら、クイクイッと蛇を手招く。
 この間、ぽえむは出来るだけ上に行こうと、岩壁を必死によじ登っていた。
 壁は凹凸があって登る事は可能なようだが、かなり高く登り切る事は難しそうだ。しかも思った以上に足場が悪く、時間は経っているのになかなか進まない。
 明影は壁を登るぽえむと、彼女の為に時間を稼ごうと動く舞を視界に、遠距離攻撃を仕掛ける仲間を伺う。
「懸念事項は然程重要では無さそうだ。ならば先の攻撃を待ち一気に叩くのが妥当と考えるが?」
「異論はありませんわ」
 放つ銃弾は蛇に当っている。その度に蛇が一瞬だけ止まるのだが決定打にはなっていない。
「でも、それまでに舞さんの体力が持つでしょうか」
 同意を示す摩耶に言葉を向けながら、ユキヤは新たな術を紡ぐべく杖を構える。
 彼らの視線の先では、先程から絶えず動き回る舞が居る。
 蛇の長い首が伸びる時には、アクロバティックな動きでそれを回避し、牙を使っての噛付きには剣でカバーしている。
「いけません、舞さん下がってください!」
 アルケミストタクトを構えてユーノが叫ぶ。そうして放ったマテリアルの光が蛇の胴を掠めると、辺りに紫の霧が吐き出された。
「っ、これ……!」
 急いで口を塞ぐが少し吸ってしまったようだ。クラクラする頭に意識を持って行かれた瞬間、舞の体が飛んだ。
「――!」
 岩壁に叩き付けられて息が奪われ、視界が霞んでくる。そこに追い打ちを掛けるように蛇の尾が飛んでくると、彼女は無意識に防御の形を取った。
(……当る!)
 衝撃を覚悟して奥歯を噛み締める。
 だが覚悟した衝撃は訪れない。それどころか目の前にあった尾と体が彼女の前から消えた。
「もう1度だ!」
 蛇の尾を弾いた光の玉。次いでもう1度放った光の玉が蛇の胴を直撃する。
「良い援護だ」
 冷静に戦況を見極めていた明影の声に、ユキヤの目が微かに綻ぶ。しかし喜んでいる暇はない。
「来るぞ」
 明影の言葉通り、蛇は戦況の不利を確認して、再びあの動きを見せ始めた。
 揺れる翼と止まる胴。どう見ても先程物凄い勢いで街道に突っ込んだあの攻撃を仕掛ける気だ。
「……一々気合入れなきゃ行動できないちょっと空回りさんなのね……」
 ぽえむは岩壁の中間地点で呟くと、足場を確保する為に向きを変え、ホーリーメイスを構えた。
 確か依頼書によれば、蛇はあの攻撃まま対象を丸呑みにして体内に納めてしまうとか。
「攻撃は重いかもだけど、おかげで隙だらけね……ありがと」
 妖しく光った桃色の瞳が蛇を捉える。
 そうして杖の先に光を集めると、攻撃を繰り出そうとしている蛇の後頭部に向けてそれを放った。

 ズゴゴゴゴッ!

 上方の、しかも後ろから迫った攻撃に蛇の頭が意思とは無関係に街道へ落ちる。
「あ、あれ? 思ったより威力が……」
 凄まじい勢いで大地を駆ける蛇の体にぽえむは驚いたが、きっとこれは彼女の無事を願う友の祈りが導いた力だろう。
「あら、痛そうですね」
「大丈夫ですわ、直ぐに痛みも感じなくなるでしょうから」
 優雅に首を傾げるユーノと、穏やかに言葉を返す摩耶。その2人の銃口が蛇の頭を捉えるのと、明影が太刀を振るうのはほぼ同時だった。
「やはり勝つのは我々だったな。歪虚を討つのは我等が覚醒者――勝利は今この瞬間に」
 勝利の宣言と共に放たれた一撃が蛇の胴を切裂く。そこに力を込めた銃弾が撃ち込まれると、蛇は大きく身をくねらせて大地に落ちて行った。


 マスクにサングラス、帽子を目深く被ったミス・エールは、無事に目的地に到着したハンター達を出迎えてくれた。
「馬車は襲われる前でしたので、中身は無事かと思います。後ほど確認してみて下さい」
 そう言って馬車の荷台から荷物を下ろさせる摩耶にミス・エールの視線が向かう。
 見たところ、彼女の言うように荷物は無事のようだ。
 その事にホッと息を吐くミス・エールを視界に、ユーノと舞は降ろされてゆく荷物を見ていた
「やっぱり中身が気になるますよね」
「うん、気になる。リアルブルーみたいに荷物に中身が書いてないし、結局何が入ってるかわからなかったんだよね。ここまで秘密にされる物……ハッ、もしかして国家転覆を謀る組織が開発した秘密兵器とか?」
 だとしたら凄いよね! そう言って目を輝かせる舞だったが、それを耳にした明影は冷静な様子で紫煙を吐き出した。
「見ていないだけ良いが……中身を知ろうとするのは依頼を受ける側としては禁忌だろう。好奇心は猫をも殺すとも言う。だが、禁忌に触れようとしてしまうのもまた人の姿か」
 ふぅっと息を吐き出しながら目を細める。
 そんな彼の隣では舞が更に妄想を膨らませていた。
「それじゃあ、ミス・エールの下着の詰め合わせとかはどう? スケスケセクシーな大人の下着満載だったらどうしよう」
「し、下着の詰め合わせ!?」
 思わず声を上げたユキヤに全員の視線が集まる。それに慌てて首を横に振ると、彼は顔を真っ赤にして視線を下げた。
「あ、あの……今のは忘れて頂いて、これを……」
 半分苦し紛れに差し出したのは、蛇の体内に辛うじて残っていた荷物だ。殆ど溶けかけているが中には無事な物ある。
 ミス・エールはそれらを確認すると、事情を察したのかユキヤから荷物を受け取って穏やかに微笑んだ。
「優しいハンターさんですね。わかりました、これは私の方から持ち主を探して貰うよう頼んでおきますね」
「ありがとうございます」
 そう言って頭を下げたユキヤにミス・エールもどこか嬉しそうだ。そして和やかな雰囲気のまま荷物が渡される事になったのだが――
「依頼主さん。これが荷物ですにゃー!」
 摩耶から木箱を受け取ったぽえむが嬉しそうにミス・エールに近付く。そして木箱を渡そうとした瞬間、信じられない事が起きた。
「おまた――ほげぇ!?」
 ミス・エールの手に木箱が触れた瞬間、ぽえむの足が何かに躓いた。

 ドガッ☆

 物凄い勢いでミス・エールの胸に飛び込んだぽえむ。
 対するミス・エールはぽえむが突撃した衝撃で転倒。しかも彼女が着けていたマスクとサングラス、それに帽子が吹き飛ぶオマケつきだ。
「はっ……お姉さんごめんなさい……だ、だだだいじょうぶですか!?」
 慌てて起き上がってオロオロするぽえむと、僅かに頭を抱える明影。舞に到ってはじっとミス・エールを見ているがその正体は分っていないらしく「どこかで見た事があるよう、な?」とのこと。
「ああの、あの! 本当にごめんなさい!」
「怪我もしていませんし大丈夫ですよ」
 ミス・エール――ことリーゼロッテはそう言ってぽえむの頭を撫でると、彼女を安心させるように微笑んで見せた。そしてこちらを見ているハンター達に目を向けて一言。
「えっと……とりあえず、私の正体も秘密の方向でお願いします♪」
 そう言って人差し指を唇の前に立てると、リーゼロッテはにっこり笑ってサングラスを掛け直した。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 輝きを求める者
    弥勒 明影(ka0189
    人間(蒼)|17才|男性|霊闘士
  • 光の水晶
    摩耶(ka0362
    人間(蒼)|15才|女性|疾影士
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • にゃーにゃーにゃー
    慈姑 ぽえむ(ka3243
    人間(蒼)|13才|女性|聖導士
  • 現代的なエルフ
    ユーノ・リリーベル(ka3344
    エルフ|18才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/20 07:57:58
アイコン 相談卓
慈姑 ぽえむ(ka3243
人間(リアルブルー)|13才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/10/23 06:59:41
アイコン 質問卓
慈姑 ぽえむ(ka3243
人間(リアルブルー)|13才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/10/22 02:50:36