• 界冥

【界冥】月面都市宙空迎撃戦

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
5~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/09/21 19:00
完成日
2017/09/28 20:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 火星で発見された超巨大クラスタ。
 その火星クラスタの本格稼働に起因しているのかは定かではないが、月面に出没するVOIDの数がここ最近急激に増加していた。
 月面の『軍事ドーム』に駐留している地球統一連合宙軍の防衛部隊はVOIDの襲撃の度に出撃していた。
 VOIDは何処にでも現れた。
 『民生ドーム』を襲う事もあれば、『軍事ドーム』を襲撃してくる事もある。
 かと思えば、全く何もない場所に出現する事もある。
 日に数回出現する事もあれば、全く出現しない日もある。
 その行動パターンはチグハグで、全く予期する事ができない。
 今のところVOIDは全て撃退でいているが、兵士達の疲労は確実に蓄積していた。
 なかでもCAMの兵士は過酷であった。
 出撃すれば命懸けの戦闘で神経を擦り減らされる。
 生きて戻ってきても次の出撃命令が何時下るか分からないため、常に臨戦態勢が強いられる。
 満足に休めもしないまま、出撃、出撃、出撃……。
 CAMパイロットの疲労はピークで、指揮の低下が著しくなっていた。
「この戦い、何時まで続くんだ……」
「俺は地球生まれなんだぜ。月なんかで死にたかねぇよ……」
「地球に帰りたい……」
「でも地球でもVOIDは増えてるって言うぜ」
「結局どこでもドンパチか……」
「噂じゃ火星で見つかった超でかいクラスタが地球に向かってきてるらしいぜ」
「マジか?」
「なんでも衛星サイズらしい」
「嘘だろ……そんなのとどうやって戦えってんだ?」
「知るかよ。お偉いさんが何か考えてんだろ」
「ま、上が何考えてようが、俺たちゃ命令に従って言われた場所行って目標潰すだけさ」
「そうだな。俺達が気にしなきゃいけねーのは次の出撃でも生き残る事だ」
「次の出撃……か」
「次も……生き残れるかな」
「あったりまえだろ! こんなところで死んでたまっかっ!!」
「でも、怖いんだ。次は、自分の番なんじゃないかって……」
「大丈夫だ、無限に湧き出る敵なんていやしねぇ。ぶっ殺し続けてりゃ何時か終わりは絶対来る」
「そうだ。だからそれまで生きろ。いいな」
「うん……」
 だが兵士達は知っている。
 今の過酷な戦闘が続けば、いずれこの場に戻ってこれない者も出てくるだろう事を。
 事態を憂慮した月面防衛軍はハンターズソサイエティに協力を求めた。
 ソサイエティはCAMや魔導アーマーを持つハンターに呼びかけ、月面の防衛を手伝ってくれる者を募ったのだった。

「休暇っ! マジで!?」
「でも、VOIDはまだ連日現れてるよ。休んでて大丈夫なの?」
「防衛本部がクリムゾンウェストからパイロットを雇ったらしい。彼らが代わりに戦ってくれている間に休めってさ」
「うおおぉぉ!! クリムゾンウェスト人様々だっ!!」
「ありがてぇ」
「寝る! おれはとにかく寝る!!」
「おいおい待て待て! 全員じゃないぞ。休暇は順番だ」
「俺一番!」
「おい! 抜け駆けすんな!」
「騒ぐなっ! 順番発表するから聞け」
 こうして一部のパイロットには休暇が与えられたが、大半のパイロットは今日もVOIDの迎撃に出撃した。
「……俺、なんでまた今日も宇宙飛んでんだろ?」
「ぼやくな。順番制なんだから仕方ないだろ」
「ぜってぇー生きて帰ってやっからな! そして休暇を満喫してやるっ!!」
「死亡フラグ立てんじゃねーよ。それにお前らは明日休暇なんだからマシだろうが、俺らの小隊なんて4日後だぞ」
「へへ、ご愁傷様。もし3日後に敵の襲撃が止んだら完全に貧乏くじだな」
「嫌なこと言うんじゃねー!」
「でも、3日で止んでくれるなら、その方が嬉しいかな」
「だな」
「あぁ」
「とにかく今日を生き延びるぞ!」
「おぅ!」
 いつものように軽口を叩き合いながらも宇宙を飛ぶCAMパイロット達は、現場に到着し次第VOIDとの戦闘を開始した。

 月面防衛軍のCAM部隊が出撃した数十分後、防衛本部は別のVOIDの出現を探知した。
「こんな短時間に連続だと!」
 しかも先に出現したVOIDよりも明らかに数が多く、『民生ドーム』に向かっていた。
 本部内が俄にざわつく。
「先に出現した敵は囮でしょうか?」
「しかしVOIDにそんな戦術を使える知性があるとは思えません」
「意図したものだろうと偶然であろうと事態は変わらん。先に出撃した部隊は?」
「まだ敵と交戦中です」
「間に合わんな……。仕方ない、ハンターのCAM隊に出動要請だ」
「はい」
 こうしてハンター達に、月面都市に強襲してくるVOIDの迎撃の指示が下った。

リプレイ本文

 月面都市に襲来するVOID群に対してハンター達は二人一組のチームを組んで迎撃に出た。
「宇宙戦か……転移する前にもやってはいたが、勘を取り戻さないとな」
 R7エクスシアの【ストライト】に乗る対崎 紋次郎(ka1892)は宇宙を飛ぶ感覚を思い出しながら『アクティブスラスター』を吹かして前に出る。
 従来機と覚醒者用機では操縦系に少し違いがあるがすぐに慣れ、強襲型2体が直線上に並ぶ位置でマテリアルライフルを放つ。
 宇宙を斬り裂くようにマテリアルの光が走り、強襲型2体を貫く。
「……偶然か作戦か分からないが、僚友達の留守を狙うか。だが、あいにくと自分らが控えていた」
 デュミナスの【Falke】を駆るアバルト・ジンツァー(ka0895)は『マルチロックオン』を発動、ヘッドマウントディスプレイに照準器が2つ現れる。
 対崎の攻撃した強襲型2体を視点移動で捉えてロックオン。
「今も月面の何処かで共に戦っているパイロット達が安心して戻ってこられるように敵を全力で駆除する事としよう」
 トリガーを引くと200mm4連カノン砲が轟音を連続で響かせて砲弾を放つ。
 無重力ゆえ放物線を描かず直進した砲弾は強襲型を直撃し、四散させた。
 だが1体は距離が遠かったためか避けられた。
「む……マルチロックでの長距離砲撃では精密性に欠けるか」
 アバルトは仕留め損ねた強襲型に再び狙いを定めて砲撃。
 今度は確実に着弾させ、宇宙の藻屑とした。
 その頃、別の強襲型が対崎のR7に猛スピードで迫っていた。
 対崎は進行を止めようとCAMシールドで受け止める。
 強襲型の尖った先端部はシールドを貫通。
 左腕も突進の負荷に耐えきれず関節部が軋んでスパークを放つ。
 コクピットも衝撃で揺れ、振動が何時までも続いた。
 なぜなら強襲型はシールドに突き刺さったまま直進し続けていたからだ。
「わしごと月に突っ込むつもりか!」
 対崎は『スキルトレース』を介して『機導剣』を発動。
 R7の右手から伸びた光の剣で強襲型で斬り裂いた。
 深く刻まれた裂傷から吹き出した体液が後方に飛び散ってゆく。
 不意に強襲型の速度がやや衰えた。
「効いたか。ならもう一発」
 再び『機導剣』を発動しようとしたが、強襲型の体内から浮遊型が出現してきた。
 速度が落ちたのはこのためだ。
 現れた3体の浮遊型は強襲型を足場にしてレーザーを放ってくる。
 シールドを貫かれた状態で身動きの取りづらい対崎は避けられず、3発とも直撃。
 浮遊型を早く排除しなければ撃たれ放題になる
 だが強襲型はなおも進行中で月面がドンドン近づいている。
 浮遊型に対処していたら激突するだろう。
 解決策は1つ。
 R7の胸部装甲を展開。
 格納されていたマテリアルライフルを発射し、3体の浮遊型ごと強襲型を撃ち貫く。
 浮遊型はマテリアル光に焼かれて蒸発。
 強襲型も塵と化して霧散した。
 しかしR7は慣性で未だ月面へ降下中だ。
 対崎はスラスターを吹かして慣性制御を行い、スピードを殺した。
 機体が止まった所で後ろを見る。
 月面がかなり近くに見えた。

 一方、アバルトも別の強襲型へ砲撃を続けていた。
 だが強襲型のスピードは速く。自分達がいた地点をあっという間に通過した。
 機体を反転させ『マルチロックオン』で後ろから砲撃。
 今度は2体とも当たったが、まだ健在な上に速度が全く落ちない。
 進路予測しながら狙いを定め直す。
 すると片方が速度を落とし、浮遊型を放出した。
 照準器に浮遊型と強襲型が重なって狙いづらくなる。
「デコイのつもりか」
 構わず2体の強襲型に狙いを定めた。
 片方は射程がギリギリで、片方は浮遊型のデコイを連れている。
 『マルチロックオン』では外す可能性があった。
(どうする?)
 一瞬迷いが生じた。
 通常砲撃なら確実に仕留められるだろう。
 しかしその間にもう一体が射程外に逃れる危険性があった。
 『マルチロックオン』で2体同時に仕留めるしかない。
 だが不意に一条の光が走り、浮遊型ともども強襲型を貫いた。
 それは、月面付近まで降下させられていた対崎の放った『マテリアルライフル』だ。
 対崎の一撃でアバルトの迷いは消えた。
 射程ギリギリの強襲型にだけ狙いを定め、トリガーを引く。
 放たれた砲弾は狙い違わず命中。衝撃と爆発で強襲型は四散した。


「加護符を用意したので、エンブレムの保護は万端です」
 保・はじめ(ka5800)が魔導アーマー「プラヴァー」【特別仕様「三毛丸といっしょ」】のアーム装甲にペイントし直したエンブレムを見ながら呟く。
「ですが、足場がないのは、どうにも心許ないですね。天地がはっきりしないのも落ち着きませんし」
 無重力で対空砲CC-01を構えても踏ん張りがなく、しっくりこない。
「確かに、地面がないのは慣れないな」
 デュミナスの【バレル】に乗るジーナ(ka1643)も同意する。
 鬼族とドワーフ。どちらもクリムゾンウェスト生まれで宇宙には馴染みがない。
「写真はもっとしっかり固定しておくべきだったでしょうか」
 保は操縦席に貼った、共に暮らすユグディラの三毛丸の写真も気になるらしい。
 だが敵は既に射程内で、そんな場合ではない。
「はじめ、お互いに射撃重視だが、装甲や射程を考えて私とバレルが前方に展開する」
 ジーナが『アクティブスラスター』を吹かして保の前に出る。
「……要は全部撃ち落とせばいいわけだ」
 そして強襲型を射程に捉えるとマシンガン「コンステラ」を撃ち放った。
 無重力ゆえ薬莢が縦横無尽に飛び散り、飛来した銃弾が強襲型に弾痕を穿ってゆく。
 保もジーナの狙った敵を対空砲で砲撃。
 着弾した強襲型の胴体部が砕けた。
 しかし強襲型は傷を負いながらも速度を落す事なく進み続ける。
 保は追撃をかけるため符を抜いた。
 射程内にいる敵3体に『風雷陣』で稲妻を放つ。
 損傷していた強襲型はその一撃で体が崩壊した。
 ジーナは慣性制御で機体を止めると『マルチロックオン』で残る2体の強襲型に照準を合わせ、トリガーを引く。
 稲妻で焼け焦げていた強襲型に次土と銃弾が撃ち込まれてゆく。
 しかし2体の強襲型はボロボロになりながらも銃弾の雨を突破し、ジーナの射程外まで抜けた。
「すまない抜かれた」
「後はこっちで抑えます」
 だが、保が符を抜いて構えている間に強襲型は猛スピードで横を突破していった。
「予想通り、被害を気にせず早期突破を図ってきましたね」
 機体を旋回させて敵を見据える。
 幸いまだなんとか射程内だ。
 『風雷陣』で発生した稲光が敵を追って宇宙を走る。
 稲妻に打ち据えられた2体の強襲型は消し炭となって滅びた。


「留守を預かったからには綺麗なまま返さないとな……よっし突撃するぜ、ミズキ背中はまかせたー」
 ミリア・ラスティソード(ka1287)はR7エクスシア【しげお】の『アクティブスラスター』は敢えて使わず、強襲型に向かって一直線に飛んだ。
「背中は任されたー。ミリアさんは前だけに集中して、暴れちゃってー」
 軽い口調で応じた葛音 水月(ka1895)はR7エクスシア【フレイヤ】でミリアのやや後ろを飛ぶ。
 そして敵を有効射程に捉えるとMライフル「イースクラW」を発射。強襲型の前面眼球が撃ち抜く。
「ここは通さない!」
 ミリアはスラスターを吹かしつつ、スキルトレースを介した『突撃魂』を発動して増速。
  斬魔刀「祢々切丸」を水平に構えると、体当りするような勢いで『神速刺突』を放つ。
 刃は水月の潰した眼球痕に突き刺さり、そのまま鍔元まで深々と突き刺さる。
 3m以上もの刃で串刺しにされた強襲型は大量の体液を吹き出した後、塵となって崩れていった。
 それを見届けた水月は慣性制御で機体を止め、引き撃ちで敵を迎え撃とうとする。
「僕の故郷に続くここを守るためにも、突破はさせな――」
 しかし強襲型は予想以上に速く、あっさり自分達の横を突破していった。
 水月は機体を旋回させると後ろからMライフルで狙い撃つ。
 マテリアル光弾は胴体部を貫通したが、強襲型は構わず月面に向かっている。
「行かせるか!」
 ミリアが『アクティブスラスター』も使って全速で追いかけた。
 しかし距離が縮まらない。
 ミリアの武装は刀のみで、一旦引き離されたら攻撃する術がなかった。
 水月も追いながら200mm4連カノン砲で狙いを定めたが、既に射程外。
 強襲型を追うミリアのヘッドマウントディスプレイに月がドンドン迫ってくる。
「ダメだ。追いつけない……」
 月面ドームの周囲に設置された対空砲が稼働し、一斉に火を吹いた。
 強襲型に次々と弾痕が刻まれてゆく。
 着弾の度にボロボロになる強襲型はドームに辿り着く前に霧散したのだった。


 強襲型は全て撃墜できたが、後続の擬人型が既に視認できる所にまで迫ってきていた。
 アバルトはカノン砲をリロードすると接近してくる擬人型に先制砲撃を加えた。
 しかし擬人型は速度も落とさず回避した。
「強襲型より動きがいいな」
 縮まった距離で再砲撃。
 今度は命中。擬人型の左足が吹っ飛んだ。
 だが擬人型は一気に間合いを詰めてくる。
 武器をガトリングガンに持ち替えたが、既にガトリングガンすら当たらぬ近距離だ。
「こうもあっさり間合いを詰められるとは」
 無重力では重力下よりも数倍の速度が出せるため、容易を間合いを詰める事ができるのだ。
 咄嗟にバルディッシュを構えた直後、マテリアルソードで斬りかかられる。
 辛くも受け止めたが擬人型は打撃は重く、バルディッシュが弾かれる。
 続けて斬撃がきた。
 スラスターを吹かして回避しようとしたが間に合わず、右腕が切断された。
 右腕がガトリンガンと共に宙を漂う。
「くっ! 近接戦では分が悪いか」
 アバルトは斬撃後の隙を突いて擬人型の体を蹴り飛ばすと同時に『アクティブスラスター』を噴射。
 後ろ向きのまま飛んで距離を取りつつ残った左手でカノン砲を構えて照準を合わせる。
 だが、ヘッドマウントディスプレイの照準器が有効射程範囲外の赤色になっていてまだ撃てない。
 擬人型は今にも体勢を立て直しそうだ。
(まだか……)
 焦れる中、照準器の色が有効射程範囲内を示す白に変わる。
 それと同時にトリガーを引く。
 放たれた砲弾は擬人型の頭部を直撃。
 頭を完全に潰された擬人型だが、胴体の生体部から新たな目を生やした。
「化物め!」
 アバルトは接近される前に再砲撃。
 胴体を直撃した砲弾は新たに生えた目ごと体をグシャリと潰し、炸裂。
 体をズタズタにされた擬人型は塵となって消滅した。

 対崎も擬人型の進行を阻もうとロングレンジマテリアルライフルで狙っていた。
「エバーグリーンの兵器か? 何が起こっている……」
 エバーグリーンでの作戦時に現れた兵器がリアルブルーの宇宙を飛んでいる事に違和感を覚えた。
 『機導の徒』を発動させて敵のマテリアルライフルを注視する。
 その形状から核がある場所を推測し、そこを狙い撃った。
 しかし、そんな小さな目標を狙い撃たれるほど擬人型の機動性は低くなく、狙撃は外れた。 
 そして相手もマテリアルライフルを放ってくる。
 対崎はシールドで受けたが貫通し、そのまま左腕も貫いた。
 元々損傷していた左腕が完全に動かなくなった。
「くそっ! 余計な考えてたらこっちがやられる」
 精密射撃は諦め普通に狙い撃つ。
 敵も接近しながらマテリアルライフルを撃ち、両者の間でマテリアルの光が交錯する。
 擬人型の右肩を撃ち抜いたが、R7も右脚を撃ち抜かれた。
 だが敵は右腕が動かなくなったのか、左手でマテリアルソードを構えて突っ込んでくる。
 左腕は動かないが、シールドのある左側を前にして受ける。
 マテリアルの刃はシールドと左腕を絶ち、左脇腹に刺さったがそこで止まった。
 対崎は『機導剣』で右手に発生させた光の剣をカウンターで擬人型の生体部に突き入れる。
 擬人型の体が裂け、体液が飛び散る。
「もう一撃!」
 再度『機導剣』を発動させようとしたが、擬人型の体から触手が伸び、右腕を刺し貫かれた。
 触手はそのまま腕に絡みつき、R7は右腕も封じられる。
「ならば」
 胸部装甲を展開。
 擬人型は胸部に現れた砲門に気づいて逃げようとする。
「逃がすか!」
 右腕の触手を引いて逃さず、至近距離からマテリアルライフルを放った。
 光が擬人型の体を貫通する。
 体に風穴の空いた擬人型はそのまま塵に化し、ボロボロと崩れていった。
「以前よりも明らかに武装が増えていた……? まさか……エンドレスがエバーグリーンの兵器を強化している?」
 辛勝を喫した対崎は危惧を覚えるのだった。


「なーんか増援きちゃったっぽい?」
 水月はスラスターを軽く吹かせて機体を擬人型の方に向かせると、カノン砲で牽制射撃を行う。
 擬人型は真横にスライドするような機動で避け、真っ直ぐこちらに向かってきた。
 Mライフルの射程に入ったところでマテリアルでの攻撃に切り替えて攻撃。
 擬人型は左腕で受けた。
 左腕が半壊したが、擬人型もマテリアルライフルで反撃してくる。
 水月はパイルバンカー「フラクタリング」を眼前掲げて受けた。
 しかしマテリアルの光はパイルバンカーのシールド部を貫通し、頭部も貫いた。
 ヘッドマウントディスプレイがブラック・アウトする。
「あっ!」
 すぐにサブカメラに切り替わって映像が復帰したが、擬人型が見当たらない。
「あれ? 何処?」
 コクピット内に接近警報が鳴り、ディスプレイに下方を指す表示が出る。
 機体を下に向けると、擬人型が猛スピードで迫ってきていた。
 防御は間に合いそうにない。
 ディスプレイ一杯にマテリアルソードを振りかぶる擬人型が大写しになる。
 機体に衝撃が走った。
 だが、正面からではなく横から。
 ミリアが全速で月面近くから戻ってきて水月のR7を突き飛ばしたのだ。
 代わりにミリアのデュミナスが凶刃に晒される。
 しかしミリアは『マテリアルカーテン』を展開しつつ刀で受けた。
 重い衝撃を刃を通してコクピットにも伝わるが、機体にダメージはない。
 受けた刃と交差したマテリアルの刃がバチバチと光を飛び散らせる。
「ミズキ、攻撃を集中させろー。きっちり落ちてってもらう」
「りょうかーい」
 水月はミリアと鍔迫り合いになっている擬人型の背後に回り込む。
 擬人型は水月の動きに気づき、ミリアから離れようとする。
「その動きが命取りだ」
 だがミリアは離れる動きに合わせて『突撃魂』からの『神速刺突』で擬人型の胸を刺し貫いた。
 更に擬人型の背中に水月のパイルバンカーが突き入れられる。
「ふっとべー!」
 トリガーを引くと内部機構の炸薬が炸裂し、超速で射出されたパイルが擬人型を打ち貫く。
 前後から体を貫かれた擬人型はしばらく藻掻いた後、塵となって消滅した。
「僕がミリアさんの背中を守るはずだったのに、逆に僕が守られちゃいましたねー」
「月面都市で何か奢ってくれればそれでいいさ」
 苦笑いする水月にミリアは笑みで応じた。


 ジーナは接近してくる擬人型を迎撃するため、『アクティブスラスター』でまた前に出る。
「増援は本当にこれだけか?」
 過去の経験上、狂気型の行動を予測するのは難しいと思っているジーナは接敵までの間に魔導レーダー「テシスソストス」で周辺を索敵した。
 擬人型が5機。
 それ以外はレーダーで捉えられなかった。
 油断はできないが、今は目の前の敵に集中する。
 『マルチロックオン』で2機の擬人型にマシンガンを放つ。
 1機は避け、もう1機は腕を交差させて防いだ。
 腕の装甲が硬殻化しているのかダメージが薄い。
 その擬人型は腕を交差させたままこちらに接近してきた。
 構わずトリガーを引き続け、銃弾をバラ撒き続ける。
 接近されるまでに片腕を破壊したが、マシンガンの間合いの内に入られて銃撃が当たらなくなる。
 すかさず左手の[SW]ハンドガン「トリニティ」を向ける。
 しかし発泡するより先に擬人型にマテリアルソードで斬りかかられた。
 マントのようにして機体を覆っていたシールド「ウムアルメン」で受ける。
 しかしマテリアルの刃はマント部を切断し、機体も斬り裂いた。
「なんて高出力!」
 威力はかなり減衰させたが左胸部に裂傷を負い、マント部も少し短くなった。
 しかもこの間にもう1機の擬人型が脇を抜けてゆく。
「はじめ、1機そっちに行った」
 目の前の擬人型を抑えるのに手一杯なため、保に警告だけして任せた。
 この距離で戦えるのはハンドガンのみ。
 普通なら不利な状況だ。
「大丈夫だ。この距離でも支障はない」
 ハンドガンのモードを通常弾からプラズマグレネードに切り替え発砲。
 プラズマが弾けて凄まじい閃光とエネルギーが擬人型を焼く。
 至近距離だったためヘッドマウントディスプレイのモニターも一瞬ホワイトアウトする。
 モニターが正常に戻ると、体が焼けただれた擬人型が映った。
 明らかに深手だが、擬人型から幾つもの触手が伸びてきた。
「まだ生きてるのか」
 ジーナはシールドのマント部で機体を覆った。
 すると触手は全てマント部に刺さる。
 しかし擬人型は刺さった触手で無理矢理マント部を開いた。
 そうして防御ができなくしてマテリアルソードで突いてくる。
 咄嗟にシールドとのジョイントを解除して機体を捻る。
 マテリアルの刃は左肩部を貫通した。
 駆動系がやられたのか左腕が動かなくなる。
 ジーナは右手のマシンガンを捨てると左手からハンドガンをもぎ取った。
 擬人型が再びマテリアルソードで突いてきた。
 凶刃が迫ってくる中、銃口を向けてトリガーを引く。
 再びプラズマの閃光がモニターを焼き、ホワイトアウト。
 瞬時に復帰にしたモニターには、完全に焼けただれて原型を留めていない擬人型が映った。
「難敵だった……。やはり、狂気の行動は予測不可能だな」

 保は対空砲をリロードし、擬人型に撃ち放った。
 しかし擬人型は回避し、全速で迫ってくる。
 対空砲をリロードしている暇はない。
 保は符術で迎撃するため符を抜こうとしたが、残数が0になっていた。
 携帯品の四神護符を取り出すより、呪符「神柱黒陽」をリロードした方が早い。
 装填した符を抜き、構えたが、擬人型は既に眼前に迫っていてマテリアルソードを振り下ろしている。
 スラスターを真横に噴射して回避しようとしたが間に合わない。
 マテリアルの刃がプラヴァーに喰い込む。
 予め施してあった『加護符』も発動したが、機体は縦に両断され、左側3分の1が失われる。
 もちろんコクピットに貼った三毛丸の写真も3分の1が失われた。
「よくも!」
 保は怒りと共に『五色光符陣』を発動。
 擬人型の周囲に飛んだ符が陣を編み、形成された結界内が白色の光に包まれる。
 光で全身を焼かれた擬人型だが、炭化した体表の奥から幾つもの触手を伸ばす。
 触手は次々とプラヴァーを貫通してゆく。
 弾けたパーツが宙に飛び、衝撃で機体がガクガクと揺れ、ヘッドマウントディスプレイに深刻なダメージ情報がズラズラと表示されてゆく。
 そんな惨状の最中でも保は何とか符を再装填し、構えた。
 だが機体に喰い込んだ触手が更に伸び、コクピットの保自身にも突き刺さる。
「ぐはっ!」
 内臓をやられたのか口から血が吐き出され、ヘッドマウントディスプレイを汚す。
 保は赤く染まった視界越しに擬人型を見据え、『五色光符陣』を発動。
 白色の光に再び焼かれた擬人型は全身を炭化させて滅びた。
 すると保に刺さっていた触手も消え、不意にディスプレイに急激な減圧を示す赤ランプが点灯する。
 宇宙服の傷穴から空気が漏れ出したのだ。 
 宇宙で宇宙服に穴が開く事は致命傷に等しい。
 保の脳裏に死がよぎる。
「そんな……」
 だが同時に三毛丸の姿もよぎった。
「三毛丸が第二回超人運動会を期待しているんです! こんな所で死んでられません!」
 両手で穴を押さえると減圧は緩やかになった。
 だが止まった訳ではない。
 大精霊の加護を受けている覚醒者は真空でもすぐに死んだりはしないが、長く持つ訳でもない。
 それにこの状態では失血も止められない。
 目の前には氷となった自身の血が幾つも浮遊している。
 かなり危険な状況だ。
 両手が塞がっているので、脳波だけでプラヴァーを動かしてみた。
 右脚のスラスターが反応した。
 どうやらかろうじて大破は免れたらしい。
 戦況を見る。
 他の擬人型も仲間が全て倒してくれていた。
 月面に帰還するまでなら機体も体も耐えてくれるだろう。


 戦闘後、都市の安全が確認されて任務から解放されるとミリアと水月は月面都市に遊びに出かけた。
「月面にもゲームセンターはあったりするのかな? あ、その前に何か奢らないと。ミリアさん何食べたいですか?」
「う~ん、僕も月面都市は詳しくないからな……」
「こっちならではの食事とかあるんですかね?」
 水月とミリアで何を食べるか話していると。
「隊長、なんで基地に戻ったんですか? 今日は休暇ですよ」
「ドームの危機に自分だけ休んでられっか」
 そんな会話が耳に入ってきた。
「でも結局ハンターが倒したじゃないですか。せっかくの休日が半分おじゃんですよ」
 どうやら今日が休暇日のパイロットらしい。
「あの~すみません」
 水月はパイロット達に話しかけ、名物や美味しいお店の場所を尋ねる。
 パイロット達は気さくに教えてくれた。
「ありがとう。良い休日を」
「ん? あぁ、そっちもな」
 まさか目の前にいるのがVOIDを撃退したハンターだとは思いもよらないだろう。
 パイロットは不思議そうな顔をしながらも笑顔で応じてくれた。
 こうして別れた両者はそれぞれの束の間の休日を満喫したのだった。




 月面都市に多数のVOIDが強襲してきたが、月面の防衛兵器とハンターの働きで撃滅し、月面都市の平和は守られた。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    フォルケ
    Falke(ka0895unit003
    ユニット|CAM
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    シゲオ
    しげお(ka1287unit002
    ユニット|CAM
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    バレル
    バレル(ka1643unit001
    ユニット|CAM
  • 光凛一矢
    対崎 紋次郎(ka1892
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ストライト
    ストライト(ka1892unit001
    ユニット|CAM
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
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    フレイヤ(ka1895unit006
    ユニット|CAM
  • ユグディラの準王者の従者
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    鬼|23才|男性|符術師
  • ユニットアイコン
    プラヴァートクベツシヨウ
    特別仕様「三毛丸といっしょ」(ka5800unit002
    ユニット|魔導アーマー

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アイコン 質問卓
ミリア・ラスティソード(ka1287
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/09/16 09:04:00
アイコン 相談と宣言と調整と(
ミリア・ラスティソード(ka1287
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/09/20 21:30:00
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/16 22:14:18