月が満ちる前に

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2018/01/03 15:00
完成日
2018/01/10 06:19

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 年が変わる時期、ドワーフ工房では納品を無事に終えて皆で打ち上げをしていた。
 その辺りの火で調理を始め、出来上がると同時にすぐ食べられてしまい、次の料理を作るという無限ループが出来上がっている。
「賑やかだな」
 現れたのは男か女かわからない中性的な人物。服装はコートを着ているとはいえ、男性的衣装。切れ長の青紫の瞳に月の光もかくやといえる淡い金の髪がかかっており、白い肌は陶器のよう。
「ラスアルさんじゃない」
「ラス姉!」
 すぐに反応したのはカペラとフォニケ。
「久しいな。元気そうで何よりだ」
 ラスアルと呼ばれた人物は二人の歓迎に目を細めて喜ぶ。
「近くに来たものでな。挨拶がてら来た」
「少しはいるのか?」
 調理をしていたシェダルが手を休めてラスアルの方へと向かう。
「お前らは少しでも部族へ帰れ」
 呆れ顔のラスアルだが、この二人は帰る気はないようで、仕方ないなとラスアルは笑う。
「明日でいい、二人とも付き合え」
 イオタからカップを渡されたラスアルはもう飲む気満々でシェダルとフォニケに声をかけた。

 翌日、フォニケ達はラスアルと共に要塞都市ノアーラ・クンタウの町中を歩いていた。
 ラスアルの仕事の付き添いと、あまり会えないので少しでも一緒にいたいということでついてきている。
「聖地に戻るのっていつ頃? そろそろ満月よね」
「ああ、今の月が満ちたら聖地に戻る」
 ラスアルは白龍に仕える巫女だ。
 本来、巫女は聖地に詰めているが、一部の巫女は聖地から離れることもある。ラスアルが所属する『サルトス・ルーナ』は月の満ち欠けの周期で辺境各地を歩き、人々の言葉に耳を傾け、月が満ちれば、聖地に戻り巫女の務めを果たす。
 三人が向かっているのは郊外と言ってもいいほど中心部から離れているところ。
 迷路のように入り組んだ道を進んでいくと、その様相は変わっていく。
 ラスアルが周囲を見回すと、更に奥の道から男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「そいつを渡せば守ってやるんだよ!」
「や、やめてください……! これは娘の形見です……!」
 屈強そうな男が壮年の男の胸倉を掴み、金品を強奪しているようにしか見えない。仲間だろう男達が数人で囲んでいる。
「ごちゃごちゃうるせぇ!」
 娘の形見を無理やりもぎ取った男は掴んでいた胸倉を離し、地に叩きつける。
「まぁ、そこそこに売ってや……ん?」
 言葉を言い切る前に手の動きが止められた男が振り向くと、見慣れない男……シェダルが金品を持つ自分の手を掴んでいた。
「なんだ、テメェ」
 男が問うと、シェダルは腕を捩じり、男を地に膝を着かせる。
「痛てぇ!」
 無理な体勢を強いられ、痛みを叫ぶ男を見た仲間だろう男達は口々に「やっちまえ!」と叫んでいく。
 シェダルと男達の中へ割って入ってきたのはフォニケ。
「女、どけ!」
「売っちまうぞ!」
 フォニケは怒鳴る男の一人に掴みかかれると、口元を緩めるなり、地を蹴り、男の腹へ蹴りこんだ。
 蹴られた男はそのまま倒れると、男達がフォニケへと標的を変える。
 シェダルが装飾品を壮年の男に投げ返すと、フォニケに向かう男達へと駆け出す。
 男二人がフォニケとシェダルの蹴りが両端から繰り出され、二人は衝撃で抱き合うようにずるずると地に座る。
「強ぇえ……」
 茫然とする男達は自分達では敵わないと理解し、仲間を置いて逃げ出す。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、お願い……」
 辺境部族だろう少女がフォニケ達の前に立つ。
「あのひとたち、やっつけて……おかあさんからもらった石、とられた……」
 ぽろぽろと涙を零す少女にフォニケは笑顔で「オッケー」と返して、二人はすぐに駆け出す。 
 まだ血気盛んな弟、妹分を見送ったラスアルは乱暴された壮年の男に声をかける。
「大丈夫か、怪我は」
「ああ……巫女様……このような所へ」
「白龍のもと、君達の言葉を受け止めるのも我が務め。大変だっただろう……よく耐えた」
 殴られた箇所を見かけたラスアルはヒールで癒す。
 穏やかなラスアルの言葉に壮年の男はありがたく耳を傾ける。
「あの連中はこの周辺を仕切っている悪党か?」
 ラスアルの問いに壮年の男が頷く。
「この辺にいるのは、歪虚に家族や部族を殺された奴らばっかりだ……皆、行く当てもなく、ここにきた……」
 物陰に隠れていた老人が顔を出してラスアルに話してくれた。
 家族を歪虚に殺されてこの辺りに身を寄せた者達へごろつき達が「この辺りに歪虚が出る。自分達に金を出せば守ってやると」と言い出したという。
 実際は獣ですら出たことがないと他の住人達も言い出し始める。その声音には不満と怒りが混ざっていることをラスアルは感じる。
「……黙っていれば、言いたい放題……」
 昏倒していた男が目を覚まして起きだす。
「テメェらなんか、束になったって敵いやしねぇんだよ……」
 男の首元にトライバルタトゥーのような模様が光りだした。
「ふん、覚醒者か」
「聖導師が力で格闘士に……」
 構えをとる男にラスアルは容赦なく杖を男のみぞおちを突き、懐に飛び込んで痛みに身を屈ませる男の顎に拳を容赦なく叩きつける。
 見事に仰向けに倒れたごろつきに住民達は目を剥くのも束の間、更に奥から子供の鳴き声と悲鳴が聞こえた。
「なんかこっちに来るよぉ!」
 ラスアル達が見れば、向こうからバッファローが数体向かってきている。
「ほ、本当に来た……」
 ここは要塞の壁から外れたところであり、ここで暴れられたら被害が出るし、冬なので凍死者もでるやもしれない。
「嘘がまことになる瞬間か」
 はーっ、とラスアルは住人を守る為、前に出た。

 一方、ごろつきを追っていたフォニケ達は連中を追いつきに成功していた。
 フォニケが速度を上げて壁を蹴り、くるりと身を捩じって男たちの前に着地した。回り込まれたごろつき達は顔を顰める。
「おう、姉ちゃん、ウチのが何かしたのか」
 援軍登場とばかりにごろつきの仲間が出てきた。追われたごろつきは仲間の登場に喜んでいたが、それは束の間の喜び。
「何か騒ぎ……?」
 更に別の場所から出てきたのはハンター達であった。
「この人達、可愛いコの大事な物奪ったって」
 フォニケがしれっ、と言えば、ハンター達がごろつき達へと視線を向ける。
「俺達は住民を守るためにいるんだよ。タダじゃねぇ、それだけだ!」
 居直ったように言うごろつきに一人のハンターがため息をつく。
「守るために奪うって、矛盾してない?」
「うるせぇ! やっちまえ!」
 ごろつきの親分が叫べば、ハンター達へ殴りかかってきた。
「ねぇ、ごろつきの捕縛依頼ここでお願いするわー」
 後でハンターオフィスで申請しようとしているフォニケが呑気にハンターへ声をかける。
 ついでに報酬は期待しないでと付け加えて。
「あと、何人か奥にいるラスアルって巫女が住人の世話をしてるから手伝いに行ってくれ!」
 シェダルの叫びにハンターの数名が頷いた。

リプレイ本文

 その日、ハンター達は辺境の依頼に応えて仕事をしていた。
 パッチリとした目を瞬くのはアルカ・ブラックウェル(ka0790)。
「あれ……」
「どうかしたのか」
 足を止めるアルカの様子に気づいたリカルド=フェアバーン(ka0356)が尋ねる。
「今、ドワーフ工房の人達が歩いていたんだ」
「わふ、ドワーフですかっ」
 アルカの言葉を拾ったアルマ・A・エインズワース(ka4901)が勢いよく振り向いて反応した。
「そう、ヨアキムの工房にいる人達。久しぶりに話したいことがあるんだけどなぁ」
「お仕事が終れば会える時間もあると思うの」
 夢路 まよい(ka1328)の言葉にアルカも「そうだね」と頷いて仕事に戻ることにする。
「何かあったか?」
「いいえー」
 ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)の問いに星野 ハナ(ka5852)は思い出したようにハンター達の方へと駆け寄った。


 仕事は成功し、依頼人にはとても喜ばれてハンター達もやり遂げたことに安堵していた。
「じゃぁ、ボク……」
 アルカが先程見かけたドワーフ工房のメンバーに会いに行こうとすると、奥の通りから騒ぎが聞こえてくる。
「あら……」
 まよいもそちらの方へと顔を向けると、後ろにいたリカルドが眉をひそめていた。
「穏やかな騒ぎとは思えんな」
 男の怒声が混じっているのは霊闘士の超聴覚を使わずとも判別できるほど。
「行ってみましょう!」
 駆け出したハナとアルカを他のハンター達も追った。
 要塞都市内とは言い難い場所となっている所は道が狭く、人がすれ違うのもやっとなくらいの細さ。
 そこにいたのは長い茶の髪の女の後ろ姿。女は随分と柄の悪そうな男達のいく道を塞いでいるようであった。
「何をやっているの~?」
 銀の鈴が鳴るような可愛らしい声音に全員がその声の主であるまよいの方へと視線を向ける。
 振り向いた女の顔に見覚えがあったのはアルカだ。
「フォニケ!」
 目を丸くするアルカにフォニケは再会を喜んでいが、彼女はごろつき挟んだ向こうにいるシェダルとトラブルの真っ最中であり、いきなり依頼を頼んでくる始末。
「ドワーフさんではない?」
 かくり、と首を傾げるアルマはどこかしょんぼりしている様子である。
「もう少ししたら、イオタってドワーフが迎えに来ると思うわ。こっちもバタバタ時間くってて」
 ドワーフに逢えるということを理解したアルマは一気にやる気になった模様。
「ドワーフさんのお迎えがくるまでに、終わらせましょー」
 やる気が出たアルマは可愛らしい様子から、秀麗な顔を引き立てる凛々しい表情となっている。
「では、二手に分かれよう」
 ルナリリルの提案に皆が頷く。
「ありがとー。宜しく……」
 フォニケが言い切る前にごろつきが殴りかかってきて、ハナを守るように身を交わし、裏拳でごろつきの顎を殴った。
「ハナ、行こう!」
「行ってきますねーー♪」
 アルカが声をかけると、ハナが駆け出していく。
「ハンターは暇じゃないんです。悪さをするごろつきさんをさくさく倒してしまいましょう」
 二人が行ってしまうと、まよいがワンドをごろつきへ向けると、彼女のサファイアの如くの青い瞳が強く輝いた。
 彼女から湧き出るオーラは緩くウェーブが入った髪や服を遊ばせるように揺らす。
 まよいの肌が冷気に震わすと、中空に氷の矢が形成されていく。
「魔術師か!」
 ごろつきが叫ぶと同時にまよいは「あたり」と言わんばかりに口元を笑みに引き、アイスボルトが発射する。
 至近距離で飛ばされた氷の矢は容赦なく手近にいたごろつきへと叩きつけられた。衝撃で足元がふらついたごろつきは壁に頭をぶつけて意識を失う。
「な、なんてやつ……!」
 悪いやつらを倒そうとする無垢なまよいの行動は別の側面から見れば情け容赦のない攻撃に見える。
「自分達のしたことを省みて言えることか」
 冷静にツッコミを入れるルナリリルは跳躍し、男の腹を蹴って踏み台にしてごろつき達の間へ着地した。
「来たまえ」
 手を差し出したルナリリルは指を自分の方へと向かせ、『遠慮はするな』とジェスチャーをする。
 挑発と感じるのはごろつきの知性だろうかと、ルナリリルは紅い瞳を細めた。
「うらぁあ!」
 苛立ちを帯びた怒号と共に振り下ろされた一撃は杖で容易に受け止める。
 ルナリリルへの衝撃は自身が思った以上に軽いものであり、呆れてしまう。杖を押して跳ね返すと、ごろつきは足をよろめかせてしまう。
 更にルナリリルへ食いつこうとするごろつきだが、前に割って入ってきたリカルドに拳銃を突きつけられ、身動きを止める。
 ルナリリルの背後にいた疾影士が彼女の頭めがけて蹴り上げる。
「このっ!」
 杖を使って防御をしたが、防御に使われた杖へ足をかけた疾影士は地に着いていた足を蹴り上げ、ルナリリルへ追撃した。
「ほう」
 咄嗟に片手でカバーしようとしたが間に合わず、鎖骨に衝撃を受ける。甘んじて攻撃を受ける気はない。
 ルナリリルの腕と杖に黒い靄がかかり、その姿を隠していく。
 怪訝そうな顔になったごろつきは異変にすぐ気づき、わめき声をあげた。
 ルナリリルが持っていた杖が大きくなっており、小柄な彼女がそれを軽々ともっているのだ。
 躊躇うことなく、ルナリリルは巨大化した杖を男へと振り下ろされると男は気絶してしまう。
「私もまだまだなんだがな……あの犬青年は別件だが」
 ちらり、とルナリリルが視線をよこしたことに気づいたアルマは切れ長の目を瞬かせて首を傾げた。
 隙アリと見做されたアルマに剣を振り下ろしたごろつきは彼を護る光の障壁に顔を顰めた途端、自身が持っていた剣より電撃が走り、身体を震わせる。
「大丈夫!?」
 別のごろつき対応をしていたフォニケが声をかけた。
「あいつなら大丈夫だ」
 リカルドが自分と対峙していたごろつきから視線を外さずに応えると彼女も「あの電撃はヤバそうね」と頷くが、心配するのは性分のようだ。
 衝撃に膝をついてしまったごろつきにアルマはじっと見下ろす。
「だめですよー。おにーさん」
 おっとりと蒼い瞳を細めてアルマは告げる。
 能天気なアルマの様子に電撃を受けたごろつきは本能が警告を出しても、覚醒者である小さなプライドで立ち上がる。
「今のと装備で判断しちゃったです?」
 制止をしたというのに、まだ立ち上がるごろつきを見て、アルマは目の前に三つの光を発現させた。
 光が三角形を形成すると、頂点より光が伸びてごろつきの足元を焼く。
「これでもまだ『遊ぶ』です? 愚の骨頂って言うですよ、お兄ちゃんが言ってたですー」
 秀麗な美貌から想像できないほど無邪気な言葉と、杖から発せられている様子にごろつきは腰を抜かしてしまう。
「いい子、なのです」
 にっこりと笑ったアルマは逃げたらスキルを発動する事を示唆するように杖を突きつける。
「後ろー!」
 まよいがアルマへ声をかけると、背後からごろつきがアルマを狙う。細身の彼ならば、肉弾戦に持ち込めば何とかなると思ったのだろう。
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ!」
 まよいが青白いガスを発動すると、ごろつきは本能的に足を止めた。
「いけないんですよー」
 情け容赦なくアルマはエレクトリックショックを発動する。
 その火力は激しく、ルナリリルは「同情はしない」とだけ呟いた。
 ばたばたと戦闘不能になる仲間たちを見ていた残りのごろつきはリカルドに拳銃を突きつけられており、動きを封じられている。
「こちら側のハンターは基本的に加減ができない連中ばかりだからな本当に殺されっぞ」
 頑張って『加減している』のは分かるリカルドだが、火力自体はいつも通りなのは理解している。
「三下みたいな言い方だがこれ以上の思いつかん」
 嘆息と共に吐き出されるリカルドの真摯な対応だが、ごろつきには恐怖しかない。
 気を失ってしまえば楽になるかもしれない。そうもいかないのが三下悪党の性であるが、当人は理解してないのも悲しい現実だ。
「くそぉ!」
 自分を鼓舞するように叫んだごろつきは手にしていた二節棍をリカルドへ向けて振り下ろす。
 残念だ……と目を閉じて開くなり、リカルドは盾で攻撃を防ぎ、即座に拳銃のトリガーを引いた。撃ち出された弾丸は二節棍を持っていた右肩へ命中する。
 うめき声を、痛みを堪えきれず、ごろつきは地に膝をついた。
「向こうは何もないといいんだけど」
 地に転がっているごろつき達の上をぴょーんと跳躍して移動するまよいが呟く。


 一方、ラスアルの方へと行ったアルカとハナは怯えている住民の姿を見て何事かと顔を顰める。
「こんにちはぁ、大丈夫ですかぁ?」
「巫女様が獣と戦うって……」
 腰を抜かして逃げれない子供が巫女の心配をしており、ハナは健気な様子に口元を緩めてしまう。
「人の世の対極のようですねぇ」
 片方は覚醒者である威を使い、物を強奪する者……もう片方は無力ながらも誰かを気遣う者。
 ごろつき達に反吐が出そうと思いながらもハナは笑顔で子供を抱えて物陰に座らせた。
「お姉ちゃん達、危ないよ……」
 心配する子供の手をとったのはアルカだ。
「大丈夫! ハンターだからね」
「応援してくれたら、とぉっても頑張れちゃいますぅ」
 笑顔のハンターたちに子供は目を丸くして二人の背を見送る。
「こんにちは! ラスアルだよね」
 アルカがラスアルへ声をかけると、彼女はバッファローから視線を外さずに「そうだ」と返す。
「シェダルに言われて来たんだけど、お肉だよね、あれ」
「そのようですぅ」
 キラリと目を輝かせる二人のハンターにラスアルは秀麗な顔を崩して目を丸くした途端破顔一笑する。
「いやはや、活発な娘御の輝きは宝石のようだ。是非とも狩りの手伝いを頼みたい」
 頼んだ当のシェダルはごろつきの加勢がないか心配していたのだが、実際はその様子もなく、別のトラブルこと獣の来襲があっただけ。
 それでも住人にとっては混乱の状況だ。
「了解しましたぁ! お肉祭りですぅ。ひゃっはー!」
 テンションを上げたハナを追い抜いたのはアルカだ。
 彼女が手にしている物のピンを抜き、バッファローへと投げつける。
 煙がバッファローの周囲に広がり、足を止めているようだ。一体だけ煙から逃れており、アルカへと狙いをつけたように駆け出す。
「ハナ! 残りはお願い!」
「分かりましたぁ。すぐ援護しますよぉー!」
 アルカがランアウトで自分へ向かってくるバッファローの突進をかわした。
「と……っ!」
 バッファローの頭をすり抜けるように高く跳躍したアルカのタイミングを見たハナが五色光符陣を発動させる。
 アルカは肩越しにハナが発動させた光を浴びるバッファローを注視しつつ着地すると、すぐさま体勢を整えて視界を奪われた獣へ間合いを一気につめて止めを刺した。
 恙無くアルカが仕留めた姿を見たハナはすぐに煙に包まれているバッファローへと意識を向ける。
「さぁ、一気に行きますよぉ♪」
 意識を集中させたハナは中空に符を放った。
 符より紫電を走らせ、風雷陣を発動する。稲妻は瞬きより速くバッファローへ落ちていき、雷撃に耐え切れず、倒れてしまう。
 同胞が倒れた事に気づいた獣は煙の中を走り回り、あさっての方向へと走ろうとする獣の様子にハナは気づいた。
「逃がしませんよ! 今日のお肉祭の主役ですからぁ!」
 貴重なタンパク質なのだ。逃がす気は毛頭ない。的確に風雷陣を放つと同時に手榴弾の煙が晴れていき、バッファローは倒れていた。


 ごろつき対応組は衛兵を呼んで引き渡しをしており、騒ぎに気づいたドワーフがハンターというか、フォニケとシェダルの方へと駆けつけた。
「なんなんだ、お前らは……」
 ドワーフ工房所属のイオタが迎えに来たようだ。
 イオタの登場にアルマの顔が輝きだし、自己紹介をした上で「モフモフしていいですか」と言い出す。
「ああ? 後でな。まずはラスアルのところへ行くぞ」
 ハンター達を促しつつ、イオタ達はラスアルの迎えに行く。
 ラスアルの方へと行くと、ハナが住民達と手分けして獣肉の解体を行っていた。
「獣がいたのか?」
 柳眉を潜めるルナリリルが呟くと、アルカが彼らを見つけて手をぶんぶんと振る。
「お疲れー! あ、イオタ!」
 嬉しそうに再会を喜ぶアルカはリカルド達に獣の襲撃があったことを伝えた。
「嘘が誠になっちまったか。まぁ、奴らがきちんと仕事をするか定かじゃねぇが」
 リカルドが嘯きつつ、周囲を見回すがこれといった怪我をした者もいなかったので、よしと思い、解体の手伝いに入る。
「病気はしてないな」
 獣の内臓を確認していたリカルドは皆に断ってから心臓と肝臓を頂く。
 辺境部族の一部では内臓類は塩ゆでにして保存すると聞くが、危機を救ってくれたハンターなら喜んで了承してくれた。
 肉はじっくりと遠火で焼いていく。
 それだけではなく、ドワーフ工房からの差し入れの野菜も入れてスープも作成する。
「んー、いい匂い♪」
 住民のちびっ子達と一緒にいたまよいは料理の出来上がりを待ちわびていた。
「中々いい出来ですぅ♪」
 味見をしたハナが満足げに言えば、配膳が始まり皆で分け合っていく。
「ホッとするいい味わいだ」
 笑みを浮かべたラスアルはスープの出来栄えを素直に誉めている。
「殿方の胃袋を掴むのって大事じゃないですかぁ」
 ぐっと拳を握りしめて主張するハナにラスアルは一理あると同意の様子を見せた。
「おねぇさまの親族は美形が多そうですよねぇ。強くて尽くして料理もできる嫁、いりませんかぁ?」
 キラッと目を輝かせて婚活アピールをするハナ。
「こんなに出来る娘ならば、引く手あまただろうに」
「だったら、婚活してないですよぉ!」
 叫ぶハナにラスアルは「成程」と勘づく。
 一方、アルカはカペラがこの場にいなかったことを不満に思っていた。
「後で工房寄りなさいよ、喜ぶわ」
 フォニケが言えば、アルマも反応する。
「ドワーフさん、たくさん、います?」
 かくりと首を傾げるアルマにフォニケはくすっと微笑んで頷く。
「八割がドワーフよ。良かったら来る?」
「わーい! 行きます!!」
 目をキラキラ輝かせてアルマが喜ぶ。
「よかったら、工房に来て試着しない? 試作品の服があるのっ」
「迷惑だろうが」
 美少女のまよいとルナリリルに目を付けたフォニケだが、シェダルに脳天チョップをくらってしまう。
「まだスープあるぞ。食え、食え」
 自分の分をキープしつつ、リカルドが住民達におかわりを勧めていた。

 その後、久しぶりにドワーフ工房に訪れたアルカは結婚報告をして全員を驚かせた。

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参加者一覧

  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーン(ka0356
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人
  • 陽光の愛し子
    アルカ・ブラックウェル(ka0790
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 竜潰
    ルナリリル・フェルフューズ(ka4108
    エルフ|16才|女性|機導師
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
リカルド=フェアバーン(ka0356
人間(リアルブルー)|32才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/12/30 17:46:43
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/12/30 11:56:03