【剣機】情報2:9月30日の状況

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はあ~っ!? リンドヴルムが二体ですか!?
バルトアンデルスに出現したのは分裂した半身って……。
帝都に戦力が集中している以上、対応出来るのは……。
ったく、しょうがねーですね!
手が空いてる奴は準備を完了し次第、グライシュタットに出撃!
戦いはまだ終わってねーですよ!

タングラム(kz0016
 
 

オープニング(9月30日)

『剣機の片割れが向かっているのは、グライシュタットである』
 帝都防衛の為に現地に駐留していた第五師団の面々。だが、その情報を聞いては心中穏やかではいられない。団員たちは、すぐさまグライシュタットへ戻る準備を行い……
「僕達は帝都防衛任務の最中だ。ここを離れるわけにはいかない」
 それを、団長であるロルフに止められた。
「おいおい団長……冗談だろ? そりゃ帝都だって大事だろうが、それで俺達の帰るところがなくなっちまったら……」
 帝都においてロルフに割り当てられていた部屋では、随伴してきていた兵長の一人、オットー・アルトリンゲンがロルフを説得しているところだった。
「一応対応策は考えているし、ユウ……第九師団がカバーに入ってくれている。グライシュタットはそう簡単に落ちはしないさ」
「けどよぉ……」
「それに、グリフォンの大部隊が一斉にグライシュタットにとんぼ返りしたら、帝都の住人はどう思う?」
「それは……」
 実際第五師団の兵力は数の上ではそこまで大きいものではないから、防衛力が大幅に落ちるということは無いだろう。だが、グリフォンの集団が飛び去っていくのはどうしても目立つ。
「それが、民心にどういう影響を与えることになるか……分かるだろ、オットー」
 説得するつもりが、逆に説得されてしまったオットーは、もう黙るしかなかった。
「団長の方針は分かりました。では……」
 変わって、もう一人の兵長、サラ・グリューネマンが前に出る。
「では、第九師団と当地の防衛部隊に任せて私たちは何もしないと……そういうことでよろしいですか?」
「いや、向こうにも援軍を出す。少数であれば、先程言ったような住人への影響は少ないだろうし、帝都の防衛力も落ちない」
「なるほど、そう言う事なら話は早い! ここは俺が……」
「僕だ」
 やる気を出したオットーの声を遮るように、ロルフは言った。
「僕一人なら数的にも影響は皆無だしね」
「い、いやでも団長がいなくなったら指揮とかは……」
「指揮系統に関してはむしろ主力の第一師団に一本化したほうがいいぐらいだからね。抜けても問題ないよ」
「いやしかし……」
「まぁいいじゃねェか」
 それでも食い下がるオットーだったが、話を切ったのは意外な人物だった。
「オズワルドさん!?」
「なかなか話が纏まらなさそうなんでな。勝手に入らせてもらったぜ。そこの二人も団長が決定してるんだ。従うより他ないだろ?」
 そう言ってニヤリと笑うオズワルド。恐らくは、ロルフの為に助け船を出してくれているのだろう。
「……まぁ、そういうことで。以後二人に団の指揮は任せるから、帝都防衛という枠から外れない範囲で、他の師団と協力してやってくれると助かる」
 まだ納得していないと言った表情のオットーだったが、兵長である以上団長二人がこういうのであれば従わざるを得ない。それは、サラも同様だ。
「……仮に団長の方針に従った結果グライシュタットが陥落した場合、どうなさるつもりですか?」
「あまり、考えたい状況じゃないけど、まぁなんらかの責任は取らないといけないだろうね」
「それさえ分かっているならば結構です……その言葉忘れないでくださいね。行きましょう、オットー」
「……あぁ、分かったよ」
 去り際にそんなやり取りをして、二人は部屋を出ていく。扉が閉められたところで、やっとロルフは息を吐いた。
「苦労してるみたいだな」
「実力に大きな差は無いのに僕だけ兵長から団長ですからね。それでまぁ色々……ところで、何か御用だったのですか?」
「まぁな。グライシュタットにはいつ発つんだ?」
「急いだ方がいいでしょうし、今すぐ出ますよ」
「やっぱりか。そう思って準備してきて正解だったな」
「……準備?」
 そう言えば、特に敵襲があったという話もないのに、オズワルドは愛用の槍を抱えていた。それに、小脇には小さめの鞄。
「あぁ、これは道中食うための弁当だ。俺も一緒に行くからな、グライシュタット。グリフォンなら二人乗るぐらいの余裕は十分あるだろ?」
「えぇ!? ちょっと待ってください、第一師団の指揮はどうするんですか?」
「エイゼンシュテインとシグルドがいるからな。任せて大丈夫だろ」
「ですが戦力的に……」
「ゼナイドもいるんだぞ? 大体、お前が言ったんだろうが。『数的に影響は皆無』ってな。一人が二人になったところで誤差の範囲……そうだろ?」
 再び、ロルフは溜息を吐いた。もう何を言っても無駄だろう。
「分かりましたよ……口論してる時間も惜しいですし、行きましょう」
 そう言ってロルフは窓を開ける。外には、はばたくグリフォンの姿があった。

 帝国軍第五師団の擁する都市、グライシュタット。二体に分離した剣機の片割れは、何の前触れもなくこの街を襲撃した。
 上空から投下されたコンテナが民間人も暮らす都市へゾンビを放つ中、グリフォンライダー達は勇敢に剣機へと立ち向かう。
「なんだってグライシュタットを襲うんだ!?」
「わからんが、援軍が来るまでは俺たちだけで持ち堪えるしかない! 行くぞ!」
 腐った翼を広げ大空を舞うリンドヴルムへ天空の騎士たちが果敢に挑んでいく。しかし帝都防衛の為主戦力が欠けた今の彼らに四霊剣は手に余る相手だ。
 次々に傷つき倒れていく戦士たち、そして逃げ惑う民衆……。そんな狂乱の最中、上空の戦いを眺める一人の女の姿があった。
「やっぱり所詮は出来損ないねぇ……あんな鳥相手に何をモタモタしてるのかしらぁ?」
 女は黒いローブで全身をすっぽり包んでいる。その様相はまるで太陽の光を遠ざけたがっているかのようだ。
「あんなので四霊剣だなんて……一緒くたにされる身にもなってほしいわぁ。人間ってほぉんと、見る目ないわよねぇ……?」
 溜息を零す女へ、近くのゾンビを殲滅しながら第五師団の兵士たちが迫る。それを察知し女はくるりと振り返った。
「なんだあいつは……何故こんな戦場の真っ只中に……?」
 女の傍には控えるようにして大型のゾンビが傅いている。即ちあれは“人間”ではなく――。
「折角楽しく観戦していたのに……無粋ねぇ。弱い人間に興味はないんだけど……」
 ずるりと、ローブの内側から剣が抜かれた瞬間、重くどす黒い瘴気が場を支配していく。
「“つまみ”くらいには……なるわよねぇ?」
 唇を舐めながら女が笑う。その刃が光を放った刹那、血飛沫と共に悲鳴が空へと舞い上がった。

                オープニング:植田真/神宮寺飛鳥

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しっかし、分離するなんてアリか?
流石の騎士皇様もここまでは予想していなかったって事かねェ。
あるいは……これさえも想定の内なのか。
まあいい。ちっとばかし状況を整理しておくか。
そこから見えてくる事もあるだろうぜ。
……おいロルフ、もう少しゆっくり飛んでくれ! 弁当がこぼれる!
いや、急いでるのはわかるんだけどよ……うおっ!?

オズワルド(kz0027

 
 

9月30日の状況

■バルトアンデルスの戦況
 元々剣機はバルトアンデルスへ襲撃する事が予想されていました。
 それは帝都にこそ帝国のあらゆる機能が集権しているからであり、帝都以外の都市を潰したところで
帝国を崩す事は出来ないからです。前回に出現した剣機、トウルスト型も最後には帝都を目指した事から、
帝都に防衛網を敷いた事は自然な流れだったと言えます。
 分離した剣機は他のゾンビを率いてゆっくりと帝都へ進軍を開始した為、守りを固める時間は十分に
ありました。しかしその結果グライシュタットの守りは手薄になり、分離した剣機の襲撃を受ける事に
なってしまいます。
 グライシュタットを襲撃した理由は見当もつかない状況で、ただ目についたから襲っただけなのでは?
という説さえあります。そもそもこの剣機だけで帝国を覆すような状況を生み出す事は最初から不可能で
あり、“何の為の襲撃だったのか”は現在も議論の最中にあります。
 どちらにせよ要塞都市として盤石の守りを敷いたバルトアンデルスは集められた帝国軍により頑強に
守り抜かれる事でしょう。

■グライシュタットの戦況
 剣機の片割れが襲撃したグライシュタットは、帝国領南部に位置する都市です。
 王国や同盟との国境近くにあったため、それらの国との中継地点として重要な役割を担っていました。
ですが近年、ピース・ホライズンの活性に伴い特に王国からやってくる人々が減り、その重要性は失われつつあります。
 都市の管理は帝国第五師団、通称ヒンメルリッターが行っています。
 ヒンメルリッターは全員がグリフォンライダーで構成された航空専門部隊です。機動力に優れ、拠点防衛や索敵、伝令等、戦局に応じて多様な活躍を見せます。ただ、グリフォンは希少な幻獣であるため損失が補い難く、その為戦力の絶対数が非常に少ないという弱点も抱えています。
 現在グライシュタットでは主力の欠けたヒンメルリッターが訓練中のグリフォンも動員し剣機の迎撃に当たっていますが、戦況は劣勢となっています。また、コンテナの投下を止めることは出来ず、相当数のゾンビが都市内に入り込んでいます。ゾンビたちは乗るべきグリフォンを持たない団員が迎撃を行っていますが、全くと言っていいほど手が足りていません。
 また、一部強力な個体が存在しているようで、それによる被害も小さくは無いようです。

■帝国軍と師団長
 帝国軍は十の師団からなる軍隊であり、全ての師団の頂点に君臨する騎士皇の下に十人の師団長が集い、各々が師団都市と自らの師団を統治しています。師団長はそれぞれが帝国の地方にある中規模の都市を任され、国政にも口を出す立場であると同時に、帝国に存在する十の切り札です。
 今回の剣機迎撃作戦では第十師団マスケンヴァル、第九師団フリデンルーエン、第五師団ヒンメルリッターが
招集され参戦しています。帝都防衛は本来ならば第一師団シルバリーヴァントの任務ですが、四霊剣への対応に彼らが駆り出されたのは当然の流れでした。

 第十師団長であるゼナイドは直接戦闘力に長けた“囚人の女王”であり、対剣機直接殲滅の任を受けています。
 そして天空の騎士が集う第五師団の長、ロルフ・シュトライトは飛行能力を持つ剣機から制空権を奪う為に。
 救護部隊である第九師団はこの戦いの中で仲間達の被害を最小限に抑える為、師団長ユウ=クヴァールを派遣しています。
 剣機が分離したと発覚した後、帝都には第一師団と第十師団が残り、グライシュタットには第九師団と第五師団が対応へ向かう事になります。

 敵の主戦力は帝都に集中していますが、帝都には帝国最強と謳われる騎士皇ヴィルヘルミナ・ウランゲルが参戦しており、戦力の不足は補われています。師団の動きは勿論の事、帝国の戦力はこうした特記すべきワンマンアーミーをいかに運用するかにかかっていると言えるでしょう。

■帝国歌舞音曲部隊
 歌舞音曲部隊とは、第一師団内に設立されている“アイドル”と呼ばれる人材を育成する為の部隊です。
 皇帝ヴィルヘルミナの承認を受けた立派な特務部隊の一つであり、現在は唯一のアイドルであるグリューエリン・ヴァルファーが活動を行っています。あくまでも軍属であり、彼女の任務は戦場において兵士を鼓舞する事。この剣機騒動が初陣となったのも当然の流れであったと言えるでしょう。
 歌と踊りはマテリアルを浄化する手段として未発達ながら俄かに注目を集めており、今回はそれらが戦場でどのように効果を発揮するのかという実験も兼ねています。

 錬魔院院長のナサニエル・カロッサは、「僕はなんだかよくわからないのでもうちょっと様子を見たいです」との事で、現在は錬金術師組合の協力を受けています。中立な立場の錬金術師組合ですが、特にサポートを行っているリーゼロッテ・クリューガーは、あくまでも軍の兵器としてではなく公平な浄化技術の一旦として力添えを行っています。
 尤も、そんな彼女の中に練魔院院長への対抗心が燃えていないかと言うと、微妙なところですが……。
 帝国軍からの彼らに対する反応は様々で、前向きに受け入れる者もいれば冷ややかな眼差しを向ける者も少なくはありません。だからこそ危険な戦場に出て活動の成果を示すという重責においても、少女は間違いなく“アイドル”で居続けなければならないのです。

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