ゲスト
(ka0000)
【幻兆】




ヘレのタメに、皆サンありがとうございマシタ……。
ヘレも感謝のキモチを、伝えたいミタイですヨ?
そしてコレからも、ワタシ達は皆サンの力になりたいデス。
皆サンの力があったからコソ、ヘレも成長するコトが出来ましたカラ。
リタ・ティトの巫女:リムネラ(kz0018)
更新情報(5月14日更新)
幻兆連動、ついに決着! 眠り続けるヘレを守る結界。襲い来る歪虚を退けたハンター達が、ヘレを目覚めへと導いた。
目覚めたヘレは、リムネラと再会。思わぬ事態に、リムネラは――。
そして、リムネラが覚悟していた別れの時が近づく時、ヘレはついに決断を下す。
辺境連動【幻兆】、エピローグが公開!
白龍と巫女が紡いだ物語の結末をお楽しみ下さい。
目覚めたヘレは、リムネラと再会。思わぬ事態に、リムネラは――。
そして、リムネラが覚悟していた別れの時が近づく時、ヘレはついに決断を下す。
辺境連動【幻兆】、エピローグが公開!
白龍と巫女が紡いだ物語の結末をお楽しみ下さい。
【幻兆】ストーリーノベル「そして、道は開かれる」(5月14日公開)

ヘレ

リムネラ
『龍のへそ』の中央、石舞台――ここには高濃度の良質なマテリアルがさながら温泉のように湧き出し、龍の傷を癒し、或いは幼い龍の成長を促し――そうやって大切にされてきた聖地。
青龍とのやりとりを思い出し、しかしそれ以上にこれまでヘレとともに過ごしてきた日々を思い出しながら、リムネラ(kz0018)は舞う。辺境に古くから伝わってきた祈りの謳と舞は、夜煌祭のときのものとも異なっていて、しかしその根本にあるものは恐らく近い。
定められた短い命数しか生きることのできない人間にその起源は既に判らないが、もし青龍そのひとが彼女の舞を見たら、或いは懐かしむこともあるのだろうか。古い古い言葉を口ずさみながら、素朴なステップと身体の動きを合わせていく。
静かな、ヘレを目覚めさせるための一人と一匹だけの儀式。
しかしこれにはリスクもあった。
青龍を唯一の存在として崇め、そしてその過激さゆえに龍園からも追放された龍騎士達がこの場を狙わないわけがない。と言うことで、四方に結界を張り、邪なるものを阻害せんとハンターたちにも手伝って貰っている。
結界の要石が半数も打ち破られれば、侵入を許してしまうだろう。中央に居るリムネラとしては、儀式の無事も祈るしか無かった。
●
それにしてもこの地のマテリアルは、肌で感じるだけでその良さがわかる、とリムネラは思う。龍の癒しの場というのもなるほど、納得のいく話だ。その場は何もなくとも不思議と温かいような心地さえ覚え、これならどれ程踊っても消耗は最小限に済みそうな気がしてくる。
とはいっても、ヘレが目覚めるまでどれ程の時間が必要か、それはわからない。
長引けば長引くほど、敵勢が結界を打ち破る可能性もある。
時間こそが最大の敵――なのかも知れなかった。
(……ヘレ)
リムネラは呼びかける。胸の中で、心の中で。
(早く起きて。元気な姿を見せて)
青龍の言葉を思い出さないわけではない。
それでも、リムネラにとっての一番の親友はこの小さな龍だった。ガーディナのリーダーとして様々な人と出会うようになっても、ヘレは特別な存在だった。
恋人、親友、ペット、どの言葉もヘレには当てはまらない。
一番近いのは、家族なのかも知れない。
幼いリムネラが家族を失って、その時に励ましてくれたのが、今も忘れられないのだ。
キイン。
聞こえるはずも無いのに、耳の奥に聞こえるような気がするのは、剣戟の音だろうか。
もしそれが真実ならば、ハンターたちが結界のもとで戦っている、その音に違いない。
リムネラは胸の中で祈る。どうか、負けないでと。
●
舞い始めてどれくらい経ったろう。
舞をはじめるとトランス状態に陥りやすいため、リムネラ一人では時間の感覚というのが読めなくなっている。
とくにこういう祈りを捧げる舞というのは時間制限のあるものではないので、過去にも丸一日以上舞い続けて倒れる寸前まで気づけなかったなんて言うこともあったほどだ。
リムネラ、いや多くの巫女は、舞う時に時間という枷から外れ、祈るために機能する星の一部と化すのである。
と――
とくん。
その音は、どこから聞こえたのだろうか。
とくん、とくん。
まるで心音のような、柔らかくあたたかな音。
近く、そして遠く――懐かしい感じさえする音。
リムネラははっとして、伏せていた目をわずかに開ける。
それは小さな小さな輝き。
マテリアルを一身に受けた、力の奔流。
まるで繭に包まれるかのようにその光に覆われたヘレは、その光の中でとくとくと、力を蓄えているのだろうか。拍動の如く、その光がとくとくと強くなり、弱くなりを繰り返す。
それでも、その謳を、舞を、やめてはいけない。リムネラは慌てて舞に再び集中する。鈴のついた足飾りが衣擦れの音とともに、さやさや、しゃらりしゃらリと音を立て、喉を通って出ていく声は透き通り、石舞台に響き渡る。
どうかこの声が、想いが、届きますように。
――早く、目を覚まして……!
リムネラの切なる祈りが、彼女を突き動かす。
● ――幼い龍は、眠っていた。
異世界で触れたマテリアルに、眠りを促されて。
時が来れば目覚めよと、そう言われるように。
けれど、その『時』とはなんだろう。
幼い龍には判らない。
ただ、時折感じる優しい温もり。
それはいつも傍にいた彼女のぬくもりだ。
そして彼女は、龍を呼んでいる。
眠っていても、知っている。
はるか北の大地まで来て、彼女が苦労してきた道のりを。
彼女に会いたい。
早く、彼女と話したい。
――目覚めたい!
そう、龍の子が強く祈る。
それは偶然か必然か、リムネラが強く祈りを捧げたその瞬間だった。
●
不思議な音が響く。
今までに聞いたことのない音だ。
リムネラははっとして、ヘレのほうを見やる。
すると――マテリアルの繭に包まれていたヘレが、ゆっくりと目を開けていくのが目に入った。
強くあたたかなマテリアルの奔流が、ヘレの身体に吸い込まれていく。
その力の強さにリムネラは一瞬眼を瞑り、そして目を開けた時にみたのは――それまでより一回りか二回り、大きくなったヘレの姿だった。
翼も大きくなったし、四肢もそれまでより随分立派になった。そして、今までも無論愛嬌のある顔立ちであったが、更に幼子のような可愛らしさが増したような気がする。
白い身体、白い鱗。少し虹色がかったそれと、やはり純白のたてがみとが美しさを際立たせ、確かにこの龍が並々ならぬ存在であることを示しているように感じた。
背中の翼を数度羽ばたかせ、けれどもまだずっと眠っていた直後であることや、急激な成長に体も心も追いついていないせいもあってか、ヘレは立ち上がろうとして前のめりにころびかける。
「ヘレ……!」
リムネラは慌てて、そんなヘレを助け起こす。ヘレは少し驚いたような顔をして見せたが、すぐに何度か瞬いて見せた。そして、今までとはまったく違う声音で、鳴いた……いや、しゃべったのだ。
『……あ、あー、あー』
「ヘレ……?」
『ん!』
リムネラが驚くのも無理はない。それまでのヘレはまるきり言葉を発するということをしなかった。それが、拙くはあるがたしかに、人間の使う言葉とよく似たそれを使っている。
幻獣とて、大幻獣と呼ばれるものでない限り、人間の言葉を使うことはできない。チューダやテルルがなんだかんだで一目置かれているのは、その大幻獣だからである。数多い幻獣の中でも、まだそれを確認できているのは数えるほどでしかない。
龍はまた特別な存在ではある。が、それでも龍種全体を考えれば、言葉を話せるのはやはり少ない。
これがどれだけ特別なことなのか、白龍の聖地にすまっていたリムネラには充分すぎるほどの理解できた。
まだ移動にはおぼつかないヘレをそっと抱きしめる。今までよりも大きくなって、簡単に持ち上げるなどは難しくなったけれど、それでもヘレはヘレで変わりが無い。
リムネラにとっての、大切な存在だ。
ふと気になって周囲を見回すと、敵襲の気配は……今のところ、ない。
それはつまり今回の儀式が滞りなく終わったことを示しており、リムネラも安堵で思わずヘレを抱いたままへたり込んでしまったのだった。
●

アルフォンソ

ブラッドリー

青龍
あの時の話をいろいろと聞くと、実は結界の要石も一箇所破られていたらしく、万が一の事態もあり得たというのだから本当にハンターや龍騎士の面々には感謝の言葉もない。
とくに今回の騒動で存在が明らかになったアルフォンソのような危険人物、更にその近くに潜む怪しげな存在・ブラッドリー(kz0252)……そう言った面々は、ソサエティにも把握して貰うべき敵対存在となるでだろう。
巫女であると同時にユニオンリーダーでもあるリムネラは、きゅっと胸元でこぶしを作る。
今はヘレを抱いてはいない。まだよたよたとではあるが、歩行にも慣れてきたヘレはリムネラの隣にちょんと立っている。そのさまが妙に可愛らしく、リムネラとしてもつい笑みが浮かぶのである。
しかし、すぐに顔を引き締める。
青龍との約束があったからだ。
『ヘレをこの龍園に――』
その言葉に、リムネラは『ヘレが望むのなら』と答えた。
ヘレはそれを知っているだろうか。
『……白龍の子は、つつがなく成長したようだな』
青龍はそう言って顔をぐっとリムネラたちに近づける。
「……はい。ヘレは、大きさもですが、ひとの言葉をあるていど把握できるように、なっているようです……まだそれを操るほどまで、身体はおいついていないみたいですが」 リムネラがそう言うと、青龍も満足そうに頷いた。 『ふむ、なるほど。しかしそれでも、意志を伝えることは出来るようになっていると言うことであるな。少なくとも、龍種同士のやりとりは出来るであろう』
確かに、青龍が語る言葉はさながら頭に直接響かせるようなかたちであり、人間の話し方とも異なる。青龍の生きてきた環境というのも影響があるのかも知れないが……。
すると、そこに突然やや高い声が響いた。
『はい、青龍様。こういうことでしょうか』
それはヘレの声――であるらしかった。小さな龍は、嬉しそうに目を細めている。
『利発な子であるな。人間と同じような生活をしていたのもその一因かも知れぬ』
青龍を前に、ヘレは臆することなく話している。人間と龍種の違い、と言うものなのだろうか。その真実は、判りかねるが――
『して、ヘレよ。そなた自身はどうしたいと思っているのだ? 我としては、ここで龍としての様々なことを教えていきたいと思うているのだが……』
――リムネラから離れて暮らすことについてだ。リムネラは、判っていても胸がちりりと痛んだ。
これにこたえるのはあくまでヘレ。ヘレがどんな答えを持っているか、リムネラや青龍や、世界のことをどう思っているか……ヘレの考えを、まだリムネラは知らない。
しかし、だった。
『ぼくは、リムネラといっしょにいたいと思っています』
ヘレは、そう言い放ったのである。
幼いヘレが、青龍の言葉を断ると誰も考えていなかった。青龍も、そしてリムネラも。
『……ほう。ヘレよ、もしよければその根拠を教えて貰えまいか』
青龍も驚いたようで、思わずヘレに尋ね返す。
『こんきょなんて、難しいことじゃありません。リムネラは、ぼくに助けてもらったって言うけれど、ぼくもリムネラになんども助けてもらいました。ぼくのために、きけんな道のりを歩いて、ここまでつれてきてくれたのも、そうです。ぼくにとっても、リムネラはとても大切な存在なんです』
ヘレの言葉遣いは幼さが残るものの、はっきりとしていた。そしてなにより、その内容はリムネラや周囲の者達を驚かせた。
『……人間と我らは命数が違う。そう思ってはいても、遅かれ早かれ、いずれにせよ別れは来るぞ?』
『はい。でも、ぼくはぼくのためにたくさん力をつくしてくれたリムネラのそばにいたい。ぼくにとってあっというまの時間かもしれないけれど、それが、ぼくにできる恩返しだし、それに、ぼくはリムネラのことがだいすきですから』
幼くとも、意志を感じさせる口調。ヘレという幼子の、強さなのかも知れない。
『……成程。そしてここまでしっかりした考え方を持つに至ったのも、人間の市井で暮らしていたゆえ……そう考えれば、ふむ、或いはその方が良いのかも知れぬな』
青龍はそう言うと、リムネラに向き直る。
『若き白龍の巫女リムネラよ。ヘレの意志は固そうだ。……ぬしと共に、暮らしていきたいと。我もそれなら、強制はすまい。何しろ、ここまでヘレを見守って育んできたのはそなたゆえ』
そう言って、そっと目を細めた。

アズラエル・ドラゴネッティ
青龍の言葉に、前回同様同席していたアズラエル・ドラゴネッティも頷く。
「ええ。龍園としても、白龍の聖地リタ・ティトともいずれもっと交流を深められればと思います。お互い、きっと失われた資料もあるでしょうし。……それに、あの龍騎士の面汚し……アルフォンソが、いつまたヘレ殿を狙うか判りませんからね」
なるほど、アズラエルの言葉も納得がいく。先の結界で要石を破壊した部隊にはそのアルフォンソがいたという話も聞いているし、他の六大龍がいつ狙われてもおかしくはない。
「ありがとうございます、アズラエルさん」
リムネラが頭を下げると、アズラエルも貴重な経験をしましたから、と和やかに応じてくれた。
リムネラとヘレの、別れはひとまず、まだ先のこととなった。
しかし青龍の言葉の通り、いつかは別れる時がくる。止めようもない、時間という大きな流れが二人をいつかは引き裂くだろう。
それでも、まだ時間はある。
ヘレの選んだ道、リムネラの選んだ道。
それが誤りでないことを祈りながら。
歩み続けることが出来る限り、ともに歩んでいこう――。
(執筆:四月朔日さくら)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)