帝国皇帝ヴィルヘルミナ・ウランゲル（kz0021）はサルヴァトーレ・ロッソ転移以降、リアルブルーの兵器に注目してきた。
　中でも空を飛ぶ船であるサルヴァトーレ・ロッソとCAMはクリムゾンウェストの現状を打破する切り札になると期待を寄せている。
　しかし大きな力はその扱い方を間違えれば各国のパワーバランスを崩しかねない。歪虚撃滅を命題とする帝国にとって、余計な諍いは望む所ではなかった。
　動力の問題でCAMの全力稼働が出来ない状況はむしろ問題を先送りにし、世界に馴染ませるという意味では好都合だったのだ。

　動力問題の解決に錬魔院院長ナサニエル・カロッサ（kz0028）はこれ以上なく適切な人材だが、錬魔院は軍属の兵器研究機関である。
　人格面にも問題のあるナサニエルにCAMの是非を任せるという判断は、受動的な物でなくてはならなかった。
　巡り巡って帝国は各国合意の上でCAMの神秘に迫る事となり、依頼を受けた以上はどれだけ積極的になろうとも問題にはならない。
　その技術は世界に貢献する物であると前提づけても、帝国がこの力に一歩踏み込んだ事実は得難い成果だと言えるだろう。

■魔導アーマーとは
　ワルプルギス錬魔院機導兵器開発室にて試作中の新型兵器。
　純粋なクリムゾンウェスト技術により作成されたロボットで、その外見は手足のついたトラックと呼ぶに相応しい。
　帝国のみならず各地で既に実用されている魔導トラックの技術を戦闘用に転用したもので、非覚醒者でも運転が可能だ。

　その外観は人型に囚われないが、試作機の外見が人を意識した形をしているのは、開発陣のCAMへの対抗心からだろうか。
　元々長い時間をかけ実用化させるプロジェクトとして立ち上がったこの兵器の現状は、完成形には程遠い。
　既に実戦で性能を証明しているCAMと比べれば、未だその全てが未熟である事は明白だ。
　現状生産されている試作機は、CAMの出現を受け急ピッチで外見を整えただけに過ぎない。
　帝国上層部の興味がCAMへと移る中、その在り方の証明が急がれている。

■魔導アーマー推進派について
　錬魔院機導兵器開発室にて魔導アーマーの研究開発を進めてきた一派がいる。
　帝国上層部の興味を横から掻っ攫ったCAMに強い対抗心を燃やしており、ナサニエルとの確執もあり今回の決定は承服しかねる物であった。
　留守番を言いつけられた研究者達が独自に行動を開始し、なんとか魔導アーマーの有用性を証明しようとしているのはある意味お国柄かもしれない。
　開発室の責任者であるヤン・ビットマンは自体の収拾に当たろうとするも、皇帝は「別にいいんじゃないか？」と楽観の決め込み。
　かくして二十機近い魔導アーマーとその開発者達は各々思いつく限りの手段でその有用性の証明に駆け回るのであった。

　一方、ヤンの指示を受け独自にこの騒動に待ったをかけようと開発室からブリジッタ・ビットマンが行動を開始。
　錬金術士組合のリーゼロッテ・クリューガー（kz0037）のエスコートに従い、試作型高性能アーマー「カオルクヴァッペ」と共に辺境へ向かう。
　かくして魔導アーマー推進派は何でもいいから会場に乗り込んでしまおうという連中とそこらへんで行き倒れる連中と、その後始末をする連中とに別れ、なんだかすったもんだありそうな感じなのでございました。