• 戦闘

小さな狩人のSOS

マスター:朝海りく

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/04/25 09:00
リプレイ完成予定
2015/05/04 09:00

オープニング

●泉のほとりで
「今日もおれの勝ちだ!」
 捕まえた獲物が築く小さな山を前にして、イルクが槍を突き上げ、飛び跳ねた。
「あーあ、また負けちゃったぁ」
「くっそぉ、あと一匹つかまえてれば……」
 切り株に腰を下ろして頬杖をついていた少女、ティトが小さく溜息をつき、その隣では、彼女の兄であるダルムが悔しげに眉根を寄せている。
「みんな、すごいなぁ」
 それぞれの前に並ぶ獲物の山を見渡しながら、間延びした声でオルオが呟いた。彼の前に築かれたそれは、お世辞にも山とは言えないほどちんまりとしたものである。
「あいかわらずだな、オルオ。そんなんじゃ『かりゅうど』にはなれないぞ」
「そうだぜ。女に負けるなんて、なさけねぇ」
 びしっと指を差すイルクに続き、ダルムがわざとらしく肩をすくめる。その言葉に顔をしかめたのは、ティトだった。
「なによぉ。女だって、立派な『かりゅうど』になれるんだから」
「へっ、おまえじゃムリムリ」
「……ふんっ。いっつもイルクに勝てないくせに」
「なんだと!!」
「なによぉ!!」
「まぁまぁ落ちつきなよ、二人ともぉ」
 顔を突き合わせ、今にも取っ組み合いの喧嘩を始めそうな兄妹を笑顔でなだめるオルオ。途端に、鬼の形相で二人が振り返った。
「え……?」
「なんでおまえが落ちついてんだよ。あそこまで言われたら、もっとくやしがれよ!」
「そうよ、男のくせになさけないんだから!」
「ええええ?」
 オルオは困惑の声を上げた。完全なるとばっちりである。
 そんな三人のやり取りに、イルクは思わず笑ってしまった。
 なんの変哲もない、日常の一端。この日常の一端こそが、イルクにとっては何よりも好きで、何よりも大切にしている時間だった。
 彼らは、砂地に小さな集落を構える狩猟民族の子供たちだ。
 気の置けない友人と、子供だけで行う狩りの真似事。安全な森を選んで小さな獲物を狙い、その数に応じて勝った負けたを繰り返す。ちょっとした諍いがあったって、彼らはすぐにさっぱりと忘れて、またいつものように笑い合えるのだ。
 麻袋の中に獲物の山を突っ込んだイルクが、汚れた手を洗おうと泉に近付いた時だった。
「……あれ?」
 異変に、気が付いた。一か所だけ水が濁っている。
「どうしたの? イルク」
 水面を覗き込んでいると、ティトが隣にしゃがみこんだ。それに続いて、ダルムとオルオが二人の後ろに並ぶ。
「なんか、ここだけ水の色が……」
 四人が顔を突き出した瞬間、水面が不自然に歪んだ。飛沫が上がる。
「うわあ!」
「きゃあっ!」
 少年達は、慌てて飛びのいた。ぼたぼたと地面に落ちたそれが土を焦がし、臭気を纏う煙が立ち上る。
「な、なんだ?」
 のそ、のそ、と泉から這い出てくる二つの半透明の物体。濁った色をしたそれは、定められた形を持たぬようにうようよと不気味にうごめいている。
「なにあれ!? ねぇ、なにあれ!? なんなのあれ!?」
「わかんないよぉ!! ダルムー!!」
「お、おれが知るかよ!!」
「イルクー!!」
「おれだって……」
 それがスライムと呼ばれる魔法生物であることを、少年達はまだ知らない。
 近付いてくるその不気味な物体に、イルクが慌てて体勢を立て直した。
「よ、よくわからないけど……よ、よし。みんなで攻撃して、たおせそうだったらたおしていくぞ。無理だったらすぐに逃げ……」
 振り返ったイルクの声が、途切れた。
 三人は取るものも取らずに一目散に走り出していた。普段からは考えられないような猛スピードで、土煙を上げ、スライムから、イルクから、すたこらさっさと遠ざかっていく。
「え……、うそ……」
 気の置けない、自由気ままな友人達。その関係性が心地好いと感じたことは多々あれど。でも、しかし、だからといって。
「置いていくかよ、ふつう――――――――!!!」
 彼の悲痛なツッコミが、小さな森にこだました。

●友のためにいざ行かん
 森を全力で駆け抜けた少年達は、木々の間から飛び出すなり力尽きたようにその場に倒れ込んだ。
「び、びっくりしたぁ」
「なんだったんだ、アレ……」
「いままで、あんなの見たことないよ」
 肩で息をしながら顔を見合わせた三人は、そこで初めて違和感に気が付いた。
「……あれ? イルクは?」
 オルオの言葉に、二人が慌てて周りを見回した。その姿がない。てっきり、一緒に逃げてきているものと思っていたのに。
「ちょ……ちょっと……イルクのこと、置いてきちゃったの!?」
「ヘ、ヘーキだろ。あいつ足はえーし、すぐに追いついてくるって」
 三人は森を振り返った。しかし、そこからイルクが飛び出してくる様子はない。影も見えず、音も聞こえず、人の気配すら感じられなかった。
 風にあおられた木々が、ざわざわと音を立てる。
「これって……まずい、まずいよ……」
「ど、どうしよぉ!? 村にもどって大人たちに……」
「いまからじゃ日が暮れちまうよ!」
「もし……そのあいだに、イルクがあのブヨブヨしたやつの仲間にされちゃったら……」
 三人の脳裏によぎる、槍を持って飛び跳ねる凛々しい黒眉スライムの、不可思議な姿。
 全員の顔が、一気に青ざめた。しかし、どうすることも出来ない。
 どうしようどうしようと、ただただ慌てふためく少年達の中で、オルオが不意に声を上げた。
「そうだ、ぼく、聞いたことある! ここから一番近い町に、『なんとか』っていう悪いやつらとたたかう人たちの『なんとか』があるって!」
「わかんねぇよ、なんだよそれ!!」
「ぼくだってわかんないよ!!」
 珍しく強い口調で声を荒げるオルオに、ダルムは思わず口をつぐんだ。
「でも……きっと、たすけてくれる。なんとかしてくれるよ」
「…………わかった。オルオ、ティト。おまえらで行ってこい」
「え? ダルムは……?」
「おれは、もどる。イルクが、あのブヨブヨの仲間にされねぇように、たすけに行く」
 森へと向き直ったダルムが、震える拳を握りしめた。滲んだ汗が強張る頬を伝い、落ちる。
 そんな兄の様子をじっと見つめていたティトが、同じように森へと身体を向けた。
「あたしも行く」
 きっぱりと言い放ったティトに、ダルムが驚いた様子で振り返った。
「おまえな、女はおとなしく……」
「あたしだって『かりゅうど』の娘だもん! 弓のウデなら、二人にだって負けないわ」
「…………たすけてやらねぇぞ」
「たすけなら、オルオが呼んできてくれる。ね、オルオ」
「うん。ぜったいに……すぐに、もどるよ」
 三人は顔を見合わせて強く頷くと、一斉に駆け出した。
 ダルムとティトは、窮地に陥っているであろう友の元へ。
 そしてオルオは、ハンター達の集まる、小さな町のソサエティ支部へと――――。

解説


●依頼内容
スライムの討伐、子供たちの保護。

●敵情報
・70cm程度の大きさのスライムが二体、うねうねしています。
・軟体生物であるため、物理ダメージが半減します。
・戦闘開始時は時々程度にしか攻撃してきませんが、生命力が半分以下になった段階でターン開始時に再生を行い、体内で生成された酸を飛ばして反撃してきます。
※再生……最大生命力の10%を回復。
・生命力20%以下になると分裂し、泉の中に逃げ込もうとします。

●同行NPC情報
オープニングに登場した、少年狩人四人組となります。
・イルク(12歳)
 四人組で一番のしっかり者。武器は槍。
・ダルム(12歳)
 負けん気の強いやんちゃっ子。武器は短剣。
・ティト(10歳)
 紅一点の強気系女子。ダルムの妹。武器は弓。
・オルオ(11歳)
 気弱だけど実はインテリ。武器は槍。

ハンターが駆け付けた時点で、並列するスライム二体に対しイルクとダルムが前衛、ティトが後衛で奮闘中。
大きな怪我はありません。そもそもスライムに相手にされていない様子。

●地形
森の奥にある、小さな泉のほとりでの戦闘となります。
・泉は直径6mほどの円形。深さは60cm程度。
・周囲は泉を囲むように開けており、直径20mほどの広場となっています。足場良好。

マスターより

こんにちは、朝海りくです。

今回はブヨブヨ……ではなく、スライムに襲われた子ども狩人、ドタバタ四人組を救っていただくシナリオとなっております。
彼らは狩猟民族の本能と誇り?を持って(オルオのみ渋々)戦闘への参加を希望しますが、基本的には皆さんの指示に従います。子供なのでほぼ戦力外ですが。
大人しくさせておくもよし、途中まで一緒にスライムと遊ぶもよし、最後まで共に戦うもよし。
名指しでも、全員まとめて扱って頂いても構いませんので、希望があればプレイングへ記載していただけると幸いです。

それでは、みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/04/30 00:22

参加者一覧

  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 名バッター
    アンフィス(ka3134
    人間(紅)|18才|女性|霊闘士

  • イグレーヌ・ランスター(ka3299
    人間(紅)|18才|女性|猟撃士
  • そよ風に包まれて
    来未 結(ka4610
    人間(蒼)|14才|女性|聖導士
  • 兜の奥の、青い光
    No.0(ka4640
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 百年目の運命の人
    弓月・小太(ka4679
    人間(紅)|10才|男性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談場
No.0(ka4640
人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/04/23 22:20:44
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/22 01:52:14