• 聖呪
  • 戦闘

【聖呪】消失せし罪人は嗤い、愚者は惑う

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―

難易度
不明
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/06/12 19:00
リプレイ完成予定
2015/06/21 19:00

オープニング

※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。


 常ならば涼風が流れる王都の夜は、この日ばかりは違った。日中の熱が王都を包み込み、誰しもが恨み言と共に眠れぬ夜を過ごしていた頃、ある一室に、一人の男が訪れようとした。
 エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)。甲冑は外している。襟元を寛げてはいるが男の肌には薄く汗が滲んでいた。凡夫とは程遠いこの男にしても、熱篭もる夜は過ごしにくいものであるらしかった。あるいは、目元に滲む疲労も少なからず影響しているのかもしれない。何せ、人々は寝静まろうとする頃までこの男は書類と向き合っていたのだから。
 ノックをする前に戸が開いた。
「や、遅かったね」
 陽気な口調でヘクス・シャルシェレット(kz0015)。絹のシャツを纏ったヘクスは薄い笑いを浮かべた。部屋には窓一つ無いが、不思議と風の流れを感じる。換気口は在るのだが、それだけでなく冷気が包んでいた。如何なる魔導具を用いているかはエリオットにはわからぬが、只ならぬ金が動いていることは知れた。
「もう少し、内装にも手をかけたらどうだ」
「エリーはそういうの、苦手じゃない? 必要なら取り寄せるけど……ま、座って」
 部屋の造りも。進められた椅子もどうにも安っぽいのだが、それすらも誂えたものかも知れない。追求を諦めたエリオットは深く息を吐いて座す。
「それで。今回はどうした」
「ふふ、決まってるじゃないか」
 つ、とワイングラスを掲げて、言う。
「漸く辺境から帰ってこれたんだ。色々片付いたし、久しぶりに親交を深めようと思ってさ」
「……」
 どうにも胡散臭いものを感じながらも、グラスを掲げ。
「ご苦労だったな」
 と言うあたり、この男の人の善さが知れようものだった。



「で、何か聞きたいことはない?」
 酒が巡り始めた頃に飛び出した言葉に、エリオットは眉を潜めた。
「どうした、急に」
「いやぁ」
 つ、とワインで口元を湿らせてから。
「これからちょっと、暫く雲隠れするからさ。その前に聞きたいことないかな、って」
「……」
 つ、と。エリオットの目が細められる。脳裏ではどのような思いが巡っているだろうか。騎士団長の元に集う情報は多い。それらを踏まえると、眼前の男の動向には幾つか疑わしい点はある。
 だが。
「……無いな」
 酒を呷ったエリオットはそう言い切った。
「何処に往くにしても、必要なことなのだろう。ならばそれをしたらいい」
「おやまあ」
 心底愉快げにくつくつと笑うヘクスだったが、
「それじゃあ、そうしようかな」
 無言で再び掲げられたグラスに触れるか触れないかの距離で合わせて、笑みを深めたのだった。


 ――いやぁ。あんなに可愛げがある事をされちゃうと、なぁ。
 数日後。ヘクスは森の中にいた。伴も連れず、ただ一人で。
 いや。
「どうしたの?」
 正しくは、その眼前には一人の少女がいた。細やかな動きに合わせて、少女の赤い髪が、揺れる。
「え? ああ、いや」
 笑みを引っ込めると、努めて緊張した面持ちを作ってみせたヘクスはこう言った。
「お会いできて光栄です。麗しき歪虚のお姫様」
「……下らない。とっても下らないわ」
 クラベル、である。王位継承権を有する旧い貴族であるヘクスは今、ベリアルの配下と言葉を交わしていた。
「本心から、なんだけどなあ」
 クラベルは取り合わなかった。鋭く睨みつける。
「わざわざ私を呼び出した理由は、何」
「違うよね。君の方こそ、僕に用があった筈だよ。だから”わざわざ”姿を晒し、ほどほどの所で立ち去った」
「……」
「思っていたよりも長かったけど、ね」
 押し黙るクラベルに、今度こそヘクスは明確に、笑った。
「時が来たんだろう? ならば、今こそ、貴女達に利する事が出来ると思う」
「……気に入らないわ」
「おや、どこがだい?」
 その笑みが、とは、クラベルは言わなかった。常に笑っていた半身と違う、じりつくような違和感がクラベルの胸中に不満を生んでいた。
 再び生まれた沈黙の中で、ヘクスは胸中でこう呟いた。
 ――君を困らせたくなってしまうよ、エリー。

「……それじゃあ、行こうか」
「どこに?」
「ベリアル様の元に、さ」


 識者の言を借りればリベルタースの大疎開と呼ばれる、僻地の村落からの大移動が行われていた。もはや存続が叶わぬ村々からの移動は騎士団だけでなく、ハンター達の手をも借りて大々的に行われている。
 それも、佳境に差しかかろうとしていた。今や街道は輸送の馬車と下取りの商人達が行き交い、難民たちの列をハンターや騎士達、聖堂戦士団の戦士たちが護衛にあたる。数百人規模で行われる大移動だが、数も重なると至極速やかに行われるようになっていた。
 そんな折の事だった。
 下取りで買い叩き過ぎたが故に商品が積みきれない――そんな事態に巻き込まれた者達が居た。
 彼らはハンター達を雇って人々が去った道を戻り、その村へと辿り着いた。

 荷馬車一杯に、人々の生活の残滓をくみ上げていかんとする商人の名は青年ネスティとエルフの少女エアリィ。行商人である。
 知っている者は少ないが、疑っている者は大勢いるかもしれない。

 駆け出しの、密偵だった。

 そんな彼らは今、同道していたハンター達の喚起の声に身を潜めていたのだった。

 ネスティは天を仰いだ。茫然としているのか、無表情になった青年はこう告げた。
「最悪だ。商品の集荷に戻ったら歪虚と鉢合わせするなんて」
「……誰かに説明してるつもり?」
「僕なりに受けとめようとしてるんだよ」
 青年は手元へと視線を落とした。手元には無線機がある。スイッチが”入っていないこと”を確認して、こう零す。
「ハンター達は?」
「別の建物にいるわ」
「そ、か」
 その事に、少しだけ緊張を解いて、続ける。
「あの二体、だけど」
「……間違いないわね。騎士団が接触した歪虚」
 その二体のうち一体が≪黒蹄≫と呼ばれる存在であることを、二人は知っていた。もう一体のトカゲの脅威についても、また。
「もー最悪。何でこんなところにいるのよ……」
 エアリィの声には怯えが籠っていた。この場にいるのは、エアリィとネスティに加えて、数える程度のハンター達しかいなかった。馬や自分たちの存在がバレて、殺されてしまうのは想像に難くない。

 遭遇を、エアリィは偶然と考えているようだが、青年は違った。
 買い付けられるだけの商品を買い付けろ、という命令と共に多額の資金を渡されて、今、彼はここにいる。そして荷馬車に詰める量には限界がある。

 ――ポチョム様達はいったい何をしようとしてるんだ……?

 何か巨大な意図が裏で進行しているのではないか――と、青年は空寒いものを感じていたのだった。


 一方その頃。
「何だ此処は」
「……オイ黒蹄」
「……」
「オイオイオイ」
「……メェ」
「誤魔化してんじゃねえよ!」
 ビシィ、と地図を奪い取ったトカゲ男は、
「道に迷ってんじゃねェか……クソったれェ!」
 絶叫していた。

 

解説

●目的 この場からの生還

●解説
 晴天。15時頃。廃村になりたての村で集荷中に歪虚の気配に気づいて各員隠密中。
 状況は下図参照。
 左上から時計回りに1~6、とすると、ネスティ達は1の民家におりハンター達はそれ以外の場所にいる。場所はどこでもよい。屋内でなくても良い。

▼歪虚
 黒蹄:全身を黒い鎧に包んだ巨体。羊系。右手に棍棒、左手に長銃を携える。意外と足が速いが地図は読めない。すごくタフでかなり強い。前衛としての能力はクラベルに遜色しない。慇懃ではあるが「私ほどではないですが」と台無しにする系前衛。

 トカゲ(名前不明):エクラ教風味のカソックに身を包んだ聖職者風のトカゲ。いちいち喧しい。メイスと大盾を装備。範囲ヒール。範囲攻撃魔法。単体攻撃魔法を使うのが確認されている。下手な銃より射程は長いのだが実はコイツも地図は読めない。

●味方NPC
 ネスティ:人間。非覚醒者。無線機を持つ。家の中にいる。
 エアリィ:エルフ。覚醒者かどうかは不明。家の中にいる。
 馬:乗用馬より足の早い馬。見るものが見ればゴースロンと知れる。家の裏手で草を食む。
   ※ハンター達が馬を伴っている場合、同じ場所にいる。

●地図

□□馬□□□□□□□□□□□□□□□□  
□□□■■■□□■■■□□■■■□□□  ■■■
□□□■■■□□■■■□□■■■□□□  ■■■:民家
□□□□□□□□□□□□□□□←歪□□   歪:歪虚
□□□■■■□□■■■□□■■■□□□   ←:進行方向
□□□■■■□□■■■□□■■■□□□


●その他/補足
『黒蹄』、『トカゲ』についてはリプレイ『デュニクス騎士団 第三篇『生贄』』を、
『ネスティ』、『エアリィ』については『デュニクス騎士団 第二篇『難民』』をご参照ください。

マスターより

お世話になっております、ムジカ・トラスです。
藤山なないろMSと中身は全く連動していませんが、王国内のSide-Bを引き続き描いていきます。

目的は明確。故に、選択は自由な依頼です。

【黒祀】連動でクラベル達を追い詰めた『あの日』から続く、物語です。
この世界に生きるNPCはハンター達の掴んだ結果に強く影響を受けて行動し――世界は変わっていきます。
それらはいずれ色々な可能性を持った物語となっていき、一つだけの物語に収束していく。
その瞬間を、僕はとても愛しています。

今、新しく物語は動いています。
王国北部から溢れるゴブリン達。北西部の歪虚の動き。そして東方――。

それらの行く末が、今から楽しみでなりません。

関連NPC

  • ガンナ・エントラータ領主
    ヘクス・シャルシェレット(kz0015
    人間(クリムゾンウェスト)|34才|男性|猟撃士(イェーガー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/06/21 20:56

参加者一覧

  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人
  • 絆の雷撃
    ヒースクリフ(ka1686
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイド(ka2106
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 真摯なるベルベット
    アルルベル・ベルベット(ka2730
    人間(紅)|15才|女性|機導師
  • いつか、が来るなら
    イブリス・アリア(ka3359
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • Philia/愛髪
    Leo=Evergreen (ka3902
    人間(紅)|10才|女性|疾影士
  • 差し出されし手を掴む風翼
    クィーロ・ヴェリル(ka4122
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 窮地からの生還相談卓
ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/06/12 18:39:01
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/09 23:53:16