• 東征
  • 無し

【東征】隠の半藏/異食の狂悦者

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在7人 / 4~7人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/07/08 22:00
リプレイ完成予定
2015/07/17 22:00

オープニング

※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。


 歪虚要塞ヨモツヘグリを包む尋常ならざる砂嵐を遠景に見る影が――樹々の上に、三つ。
「なーんにも見えないね、ユエ」
「あの腐れ竜、邪魔だね、イエ」
 うち二つから不満げな声が零れた。その姿も、声もよく似ている二人であるが微笑みに縁取られた瞳の色はそれぞれ金と銀と差異がある。
 忍び装束に身を包んだ二人の後方には、女。天女、と見紛う程の美女だ。薄絹の如き羽衣を纏うた女は、眼前の二人と遠方の砂嵐を前に不快げにその柳眉を細めた。
「これじゃ、偵察にならないわ」
 吐息にすら艶がある女だ。男であれば、誰だってお近づきになりたいに違いあるまい。そんな美女をイエとユエは見やり、その頬を釣り上げて嗤った。
「偵察、だって。ユエ。桔梗門の婆さん、巫山戯てるのかな」
「織姫婆さんはおかしいね、イエ。今だって、隙さえあれば山本の糞爺を殺そうとしているのにね」
 婆呼ばわりされた織姫は何も語らない。ただ、その髪がぞわりと蠢く。
「怒らせちゃった。やばいよ、吹き飛ばされちゃう」
「ふふふ、悪路の糞鬼みたいに見境ないんからなあ」
「でも、どうしよう。手ぶらじゃ御庭の皆に叱られちゃうよ」
「なら、探そうか、人を。織姫婆さんも一緒にどうだい」
 そのまま、ひょうい、と影達は跳んだ。重力に捕らえられて加速し、そのまま枝を蹴り、跳ねるように森の中を抜けていく。
「速く速く! 桔梗門の婆さん!」
「急いでよ、織姫婆さん!」
 樹木を抜けて届いた声に、織姫と呼ばれた女は双眸に激憤を滲ませて二人の後を追うことにした。元人間でありながらも、正しく憤怒の歪虚らしい破裂寸前の激情を宿したまま。

「……気色の悪い子たち。『半藏』の出だからと図にのってるのかしら」

 怨嗟の篭った声と共に、自らの怒気を和らげる。堪えなければならない。解き放つにはまだ早い。担当する領域が近しいことも相まって、織姫はあの双子の事を良くは知らない。だが、偵察や調査は『半藏』の得意のする所だということは知っていた。

 人間の頃の記憶に引きずられた判断だった。

 ――それが過ちだと解った頃にはもう遅かった。



「あの竜、なんだってあんな事したんだろうね」
「なにか隠してるのかもしれないね。九尾のお方に逆らうつもりかな」
 関係、ないけど。くすくすと笑い、樹上を抜けながら、影が『重なった』。
 物理的に。存在として、『二人は一つ』になる。体積も何もかも、ただ一人の『半藏』に。先ほどよりも強く撓る枝を支点に加速する『半藏』の口元から、荒く、小刻みな吐息が零れた。

「――あ、あ」
 気持ちいい、堪らない。爛れた情欲を溢れさせ、散らしながら疾駆する。
 ユエでも、イエでもなくなった存在は、口の端から涎を垂らしながら、前へ、前へ。
「やっ……ぱり、最高、……っだ……っ」
 これまでに取り込んだ異能をもって、最も近しい『人』の気配へと、加速、加速。

 ヒトツニナリタイ

      アワサリタイ

    キモチイイ

 キモチイイ、キモチイイ、キモチイイ、キモチイイ、キモチイイキモチイイキモチイイ!!

 瀑布の如き悦楽に、理性が弾け飛んでいく。

 その、最後の一片が爆ぜる前に。

「……ま、ダ……まだ、駄目」

 強欲と共に。あるいは、狂気と共に。
 悦楽に浸りながら。快楽の先にある『終わり』に、激怒が湧く。
 完全に”合った”ら終わり。そんなこと、イエには、ユエには、赦せるわけがない。

「タベナクチャ」

 一片残った理性だけ残して、『半藏』は往った。
 獲物は、すぐそこに居た。


「ッ…………」
 一瞬、だった。ヨモツヘグリ攻略のための中継地点の紹介櫓へと飛び込んで来た『そいつ』は――小さかった。
「あ、が……っ、ぎ、ィィィィィィィィ、痛い、痛……ッ!」
 だが、瞬後には爆散するように体積を増し、哨戒役の一人を呑み込んだ。瞬後に声が絶たれ、圧潰する。そのまま、一塊となって塀から広場に落ちた。粘質な音が、異質な沈黙をひたりと打ち付ける。
「……ん、」
 悲鳴を聞きつけて東方の兵達とハンター達がすぐに広間へと駆けつけた時、泥は忍び装束に身を包んだ一人の少年――あるいは少女のような姿に転じようとしていた。人一人を呑み込んだとは思えぬ程に小さいそれが姿通りの存在でない事は明らかだが、幼い顔立ちに苦痛を刻み込んで震えている。
 そこに。
「もう一体居る……! 逃げるぞ!」 
 惨状に目を取られていたが、何かに気づいたのか。生き残った哨戒役が声を張る。
「どんなやつだ!」
「女です、ソウエン殿! 速い!」
「……ち、ィ!」
 現場の指揮を担う武人ソウエンは逡巡する。眼前のバケモノの始末に注力するか、否か。
 凶悪な個体には違いないが、ソウエンには女が逃げた理由が気になった。中継地点である此処を落とす戦略的意義が無いわけではない。此処はヨモツヘグリを攻略出来なかった場合の、防衛線にもなりえる。勿論、次回の足がかりにも。
「なぜ逃げた」
 女に、逃げるべき価値が、果たすべき何かがあるのか。ヨモツヘグリの威容。あのような札が、これからも切られようとしているのか。
 ――これから、我々は反転攻勢に移るのだ。
 独語する。
 無明の果てに、漸く、光を見出して。だから。
「ハンター達よ。数名で良い、あの女を追え!」
 自らも刀を抜きながらソウエンは声を張る。逃げた敵――恐らく密偵よりも眼前の異容こそが脅威と断じて。そして、あの女の影を無視できぬと判じて。
「こんな場所で死ぬなよ! 必ず生きて帰って参れ!」


 ハンター達がすぐさま追走し、残ったハンター達と兵士達は未だ煩悶する闖入者を取り囲むように移動した、その時だ。
「――ヒッ!?」
「逃げろ、ゼン!」
 歪虚の身体から凝固した泥が分かたれ、『跳んだ』。黒々としたそれはすぐにその母体と似た身体に転じ、至近にある斥候櫓を駆け上がる。警戒はしていただろうが、虚を突かれた斥候の対応が僅かに遅れた。数瞬。その間隙を縫うように影は殆ど垂直の櫓を登りきり、見下ろしていた斥候の首をその手の苦無で刈り取った。
 遅れて溢れだした血を無視した『ソレ』は『もう一つ』へと陶然とした眼差しを送り、艶やかに、笑った。
「……は、ぁ……気持ち、よかったね、ユエ」
「うん、苦しかったけど、よかったね、イエ」
 ユエ、イエと呼ばれたソレらは恍惚と視線を交わすと、夫々に一同へと向き直る。
「……貴様ら」
 ソウエンの声も、刀を持つその手も、震えていた。戦慄は、強力な歪虚に対して――では、ない。
「その技、『半藏』の……何故貴様らが……!」
「あぁ……なんだおじさん、武門の人なの? めんどくさいねえ、ユエ」
「そうだねイエ……まあ一緒だよ。殺して呑み込んじゃえば、さ。イエ」
 方や地上。方や櫓の上に立ち、円前と笑う、イエとユエ。金と銀の瞳が、次の獲物を前に目を細めて嗤った。

解説

●目的
 中継地点を襲う歪虚、イエとユエを撃退もしくは討伐せよ。

●解説
 日中 天候は曇天
 中継地点でもあり物資集積所でもある同所を強襲してきた歪虚は下図左上側から来襲
 同所を護衛していた武人達とハンター達が対応しています

●簡易MAP
塀塀塀塀塀塀塀塀  1Sq=6m
塀※□□□□■塀
塀□□□武□□塀  塀:高さ2メートル程の木製の塀
塀□ユ□□□□塀  ■:高さ10メートル程の櫓
塀□□□ハ□□塀  ユ:ユエがいる場所 平地
塀□□□□□□塀  ※:イエがいる馬祖 櫓の上
塀□□□□□□塀  □:種々の物資が各所に積み上げられており足場や視界は良好とはいえない
塀■□□□□■塀  武:ソウエン  その他武士達は各所に散っています
塀塀塀塀塀塀塀塀  ハ:ハンター達 

●味方戦力
 ソウエン:舞刀士。実力は中堅。攻勢には強いが、持久力に欠ける。
 その他武人:非覚醒者が多めの後方支援要員。10名程。覚醒者は2名。いずれも舞刀士。実力はさほど。

●敵戦力
1.(半藏) ユエ
2.(半藏) イエ
双子にしか見えない瓜二つの忍者。忍系の武門である『半藏』の技を使う。詳細不詳。
その身が黒い泥のようなものに変じ覆い尽くすことで瞬く間に捕食する姿が目撃されている点から、その危険度は高いと想定される。
また、もともと一人だった所から二人に分かれているが、分身の術でも『半藏』の技でもなく、この歪虚固有の異能だと思われる。

武門『半藏』について:立体機動、投擲、暗殺、二連撃といった疾影士系統の技を修めています。

PL情報だがユエはアレが付いておらずイエはアレが付いてる。


※※注意※※
当依頼はグランドシナリオの裏側、のシナリオになります。
そのため、矛盾を払う意味でも、また、グランドシナリオの結果による不利益を防ぐ意味でも、
グランドシナリオ、および同時間軸と指定されている依頼にご参加の方は参加をお控えくださいませ。

マスターより

お世話になっております、ムジカ・トラスです。
グランドシナリオと同時間軸上の、SideBシナリオです。藤山なないろMSと背景をべっとりと共有しています。

誰とは申し上げませんが陰陽師の技を使う歪虚もいるのならば――、と。
此度の敵は武門の技を用いる歪虚。皆様もよく知る『技』を用い、歪虚の異能をも併せ持つ人外を相手に、その武を尽くしてください。
これからに続く、その先駆けとなる依頼です。

彼らの異能についての情報は、まだまだ不足しております。
――喰われてしまわぬよう、ご注意くださいませ。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/07/14 02:42

参加者一覧

  • 炎からの生還者
    櫻井 悠貴(ka0872
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • ノブリスオブリージュ
    リーリア・バックフィード(ka0873
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • 六水晶の魔術師
    レイレリア・リナークシス(ka3872
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 心に鉄、槍には紅炎
    逢見 千(ka4357
    人間(蒼)|14才|女性|闘狩人

  • 鬼揃 絢戌(ka4656
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 狐火の剣刃
    遠火 楓(ka4929
    人間(蒼)|22才|女性|舞刀士

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
逢見 千(ka4357
人間(リアルブルー)|14才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/07/08 21:23:09
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/04 19:27:25