• 戦闘

からくり屋敷の奇妙なオバケ

マスター:芹沢かずい

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/08/18 12:00
リプレイ完成予定
2015/08/27 12:00

オープニング


 控えめなドアノッカーの音と、招き入れる声。ドアは古いが、手入れが行き届き、静かに客人を招き入れた。
「悪いね、わざわざ来て貰って」
 そう言って迎えたのはこの家の女主。
 肘掛け椅子にゆったりと座り、片足はスツールに乗せている。傍らには松葉杖。
「依頼を出したいそうですが」
「まあね。まさか自分が依頼者になるとはね。あんた、ハンターかい?」
「いえ、僕は。オフィスの受付を」
「そうかい」
 女主・パトリシアは椅子を勧めると、一つ息をついてから依頼内容を伝えた。
 近所にある屋敷に現れた化け物を退治してくれ、と。
「……え、あの、えっと……」
「ふふふ……さすがに不親切だね、これじゃ」
「はあ……」
 来客の反応を楽しんでいるように見えるが、子供や孫を見守っているような雰囲気を持っている。
 からかうのを止め、パトリシアは順を追って改めて語る。
「この家の裏手にちょっとした屋敷があってね。そこの主が二年程前に亡くなったんだけど、その死んだ爺さんが変わり者でね、屋敷中からくりだらけなのさ」
「……そこに化け物が現れた、と?」
 頷くパトリシア。
「この二年は誰も管理してなかったからね。屋敷ごと吹っ飛ばしても」
「いやそれはちょっと」
「まあ最後まで聞きな」
 遮った来客を怒るでもなく、あくまで静かに語る。
 屋敷の主だった爺さんは子供好きで、村の子供達はよく遊びに行っていた。それは主が亡くなってからも変わらず、『からくり屋敷』は子供達にとって恰好の遊び場だ。
 仕掛けはちょっとした悪戯程度のものが多く、子供達は『探険』の結果をパトリシアにも報告に来ていた。子供達の目当ては、パトリシアが作るお菓子だと言っても過言ではなく、事実彼女はいつも子供達のためにパイやお菓子を用意していた。
 話は子供達から聞いたもので、巨大な箱が突然開き、気味の悪い人形が動き出したと大騒ぎして報告に来たのだという。
「アタシは見たわけじゃないけどね。どうやら時計仕掛けで開くようになってたらしい。爺さんはびっくり箱のつもりだったんだろうが、人様に危害を加えるような凶悪な代物を作る人じゃなかったからね。気になるのは子供達が見たっていう黒い靄さ。歪虚や雑魔の可能性も有るだろう? それでハンターさんに依頼を出したってわけさ」
 彼女が子供達の話をする時、その表情はとても柔らかいことに気付く。
「成る程……屋敷はそのまま残した方が良さそうですね。その化け物を退治することになっても、建物への被害は極力避けるようにと……」
「あんた、話が分かるじゃないか」
「ありがとうございます。ところで、ここに来る時子供達を見かけましたよ」
「懲りずに来てるんだよ、追い返したけどさ。だけど……」
 言いながらちらりと窓の外に目を向け、すぐに視線を戻して付け加える。
「子供達がヤンチャしないように、あんたらからも釘を刺してくれないかい?」
「?」


 不思議な顔のままで家を出たのだが、すぐに合点がいった。
 窓の下で小さくなっている三人の子供。
「逃げろっ!」
 誰かの声で走り出す。が、一人が躓いてべちゃっと転ぶ。少女が振り返って助け起こす。二人に気付いた少年が戻って来た所に、来客が立っていた。
「僕は言いつけたりしないよ? 話、聞いてたの?」
 問いに、リーダー格の少年・レオが観念したように頷く。
「パト婆から頼まれたんだろ? 俺たちがあんなもの発見したから……からくり屋敷を壊すのか?」
「え? じゃあ化け物を発見したのって君たちなのかい?」
 会話が噛み合わないが、全く気にしないで少女・ディアナが話し出す。
「あたし達、いつも三人でお屋敷を探険してたのよ。玄関ホールに三つのドアがあって、いつも左端から入るの。狭い廊下を通り抜けると、広いホールがあって。そこの鐘が突然が鳴って、そしたら」
「開いたんだ! 箱が! 今まで何をやっても開かなかったのに!」
 少女の言葉を引き継いだのは、転んで泥だらけのグーマー。
「いきなり開いた箱から、出て来たんだ。でっかい人形!」
「人形?」
 来客の質問に答えるのは、レオ。
「うん。じっくり観察したわけじゃないけど、天井に頭をぶつけてそのまま天井を擦ってた。二本ある手は短くて、足は無かったと思う。箱に入ったままだったよ。口から牙が二本生えてて、鞭みたいな爪だったぜ」
「ネズミと人形が合体したみたいな感じよ! 箱に入ったままで動かなかったけど、口から何か吐き出してるのも見たわ!」
 子供達の話をメモに記すのを見て、グーマーが泣きそうな声を出す。
「屋敷を壊されたら、遊ぶ場所が……爺ちゃんの思い出もいっぱいなのに!」
「大丈夫、屋敷を壊すようには頼まれてないよ。ただ、化け物は退治しなきゃならないから、場合によっては……かな」
「そうか……。パト婆だって屋敷を壊したくないよな。パト婆も爺さんの思い出は大事だろうし」
 レオは腕を組んで、年齢よりも大人びた口調で他の二人に目をやって言う。
「お爺さんとはいつも楽しそうに喧嘩してたしね」
「婆ちゃんが意地悪になったのも、あの話してからだし……退治できたら元に戻ってくれるよね?」
「うん、きっとそうよね」
 例の話をしたのが一週間程前、それから彼女の態度が豹変したのだという。
 屋敷には近付くな、この家にも金輪際入るなとまで言うようになり、話しかけても知らんぷり。
「パト婆は俺たちを心配してるんだろうな。意地悪くしてたら近寄らないと思ってるんだろうけどさ、俺たちにはお見通しだよ」
「お婆さん、本当は凄く優しいの。元ハンターだから、他の人よりもお話が面白くて、勉強になるのよ」
「おやつも美味しいんだ。僕また婆ちゃんのおやつ食べたいな」
「ハンターも来るし、屋敷はなるべく傷つけないように言っておくから、君たちはパトリシアさんに心配かけないように、待っててくれるかい?」
 三人は、顔を見合わせると無言で頷き、一枚の紙を差し出した。
「これは?」
「俺たちが書いたんだ。役に立つと思う」
「ふむふむ……玄関ドアは開かないから裏口から入る、入った先にはまたドア、五つあるね。これは右端か。廊下を抜けると玄関側に行くんだね。回れ右してドアに向き直り、出て来たドアの左隣のドアが大広間に続く、と。中々良く出来てるね。うん、ハンターに渡しておくよ」
「うん。俺たちは行っても邪魔になるから、宜しくお願いします」


「ハンターさんですかっ?」
 パトリシアの家の裏手で、依頼を受けてやって来たハンターが呼び止められた。
「あのっ、緊急事態なんです!」
 ディアナはかなり混乱しているようだ。代わりにレオが説明する。
「友達のグーマーが、どうやら屋敷に入っちゃったみたいなんだ! 一人だとすぐ迷子になるくせに。……グーマーも見つけてくれませんか?」
 見ると、レオが指差す先にはパンの食べカスが点々と道標を作っていた。

解説

『からくり屋敷に出現した化け物退治』です。

●敵について
化け物と呼んでいますが、屋敷に入り込んだ小動物が雑魔化し、爺さんが作っていた人形に入り込んだのでは、と推測されます。
子供達からの情報では、口から牙、手から鞭のような爪。かなり大きめの尻尾である事が考えられます。
巨大であることから、数匹の雑魔がいることも予想されます。手や胴体など、分断して中身を確認する事も、手段の一つとして考えられそうです。
大切な友人である子供達のためにも、屋敷はできる限り荒らさず、敵だけを討伐するのが理想的です。敵の強さや攻撃パターンなども分かりませんので、ある程度の建物の被害は、依頼者側も納得しています。

●屋敷内部
外観は二階建ての広いお屋敷の見た目とは裏腹に、子供騙しの悪戯のようなからくりが仕掛けられています。
見取り図のルートにない扉を開けると、行き止まりだったり落とし穴があったり、扉が回転したり、汚いモップがぶら下がった釣り天井が落ちて来たりと、嫌がらせのような悪戯が繰り広げられます。
目的のホールは、三十人ほどがダンスパーティを行える広さがあるようです。中央に例の箱が置いてあり、小さな椅子やテーブルが壁際に数脚ずつ有る程度です。天井までは五メートルはあります。

マスターより

 今回はからくり屋敷に出現した雑魔退治。
 いくら子供達が心配とはいえ、パト婆さんのやり方ですと、相手も自分ももやもやした気分に苛まれるんじゃないかなー……とか思いながら書いてます。
 元ハンターならではの楽しいお話もあるでしょうし、聞きにくる子供達の笑顔も想像に難くありませんね。
 無事『化け物』退治した暁には、これまでのように、『探険』を楽しむ子供達と、それを穏やかに迎える優しいお婆さんの姿が戻っている事でしょう。
 ……ひょっとしたら、現役ハンターに触発されて、子供達がハンターを目指したり、パト婆がハンターに返り咲いちゃったり?! それよりもまず、パト婆さんの美味しいお菓子を頂きたいですね!
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/08/25 22:31

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 森の戦士
    シャリファ・アスナン(ka2938
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士

  • ダガーフォール(ka4044
    人間(紅)|25才|男性|疾影士
  • 狭間へ誘う灯火
    レオナルド・テイナー(ka4157
    人間(紅)|35才|男性|魔術師

  • スティード・バック(ka4930
    人間(紅)|38才|男性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
スティード・バック(ka4930
人間(クリムゾンウェスト)|38才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/08/17 23:38:22
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/17 09:26:19