• 日常

紅の水音 ホリーの受難

マスター:真柄葉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
サポート
現在1人 / 0~5人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2016/10/26 09:00
リプレイ完成予定
2016/11/04 09:00

オープニング

●ハンターオフィス辺境支部
 今日も今日とてハンターオフィスには沢山の人が訪れている。
 仕事を求め掲示板に列をなすハンター達。そのハンター達に仕事を斡旋するオフィス職員。そして、悩み事や仕事を持ち込む依頼者達。
「んあぁーー! ようやく休憩だぁ!」
 一時的に窓口を閉める昼休み。オフィスの受付嬢の一人ケイトは誰の眼もはばかることなく大きく伸びをした。
「ねえ、ホリー、今日は何食べる? 侍亭は昨日行ったし、ちょっと足を延ばして市場まで行ってみる?」
 と、ケイトは伸びをした体勢そのままに、同じく受付の業務につく同僚ホリー=アイスマン(kz0204)を見やる。
「……」
 しかし、ケイトの期待したような返事は返ってこなかった。
「ちょっと、ホリー。聞いてるの?」
「……」
「…………無視とは上等ね。揉むわよ?」
「んー、あー、うん。……うん?」
「……どうしたのよ。ちょっと変よ、大丈夫?」
「…………」
「って、寝るな、オイ!」
 座ったままこくこくと舟をこぎ始めた同僚を、ケイトはゆさゆさと揺する。
「……あ、おはよう、ケイト? ……なに?」
「はぁ、一体どうしたのよ。随分と疲れてるみたいだけど?」
 腰に手を当て横に立ったケイトは、いつもにも増してキレの無い同僚の顔を覗き込んだ。
「それがねぇ、昨夜、息子君が突然熱出してさぁ、お医者さん探して町中走り回ったんだけどさぁ、夜で開いてるところないしさぁ」
 今にも閉じてしまいそうな瞼を気合で持ち上げながら、ホリーは昨夜の大事件をぶつぶつと語ってゆく。
「結局さぁ、息子君はさぁ、おんぶして走り回ってる間にぃ、寝ちゃってぇ、仕方ないから帰ったのぉ」
 ふぁっと大きな欠伸を噛み殺し、ホリーの語りはまだ続く。
「それでも心配じゃないぃ、だからずっと様子見てたんだけどぉ、朝になって起きてみればぁ、きれいさっぱり忘れたように元気なのよぉ……もぉ、私の心配返してぇぇ! って、叫びそうになったわぁ」
 話すだけ話したホリーは、そのままカウンターへ突っ伏した。
「子持ちは大変ねぇ。で、どうする? お昼休みの間、寝ておく?」
「うん~、そうするぅ」
「そ。じゃ私はお昼行ってくるわ」
「は~い、お土産よろしくね~」
 ひらひらと手を振るホリーの見送りを背に、ケイトは街へと繰り出した。


 昼休みも終わり、午後の受付業務が始まった。
 午前中ほどの賑わいは見せないものの、それでも数多くの人々が訪れていた。
「今日もたくさんあるわねぇ」
 受付業務を引き継ぎ、三階の事務所で依頼書の整理をしていたケイトは書類の山を前にうんざりとため息をつく。
「さて、さっと片付けますか」
 捲る袖はないが仕草だけ真似たケイトは、山の一番上にある書類をつかみ取った。

「……うん? んん?? なに、この依頼」
 山も半ば制覇した頃、ケイトは一枚の書類に目を止めた。
「ヴルツァライヒ辺境支部<極北の番人>が聴衆を前に行う高遠な理想を語る集会に参加されたし……って、これハンター達にデモに参加しろって事じゃない!?」
 その突拍子もない依頼内容に、ケイトはわなわなと手を震わせながら文字を追っていく。
「……こんなのいったい誰が……って、ホリィ……」
 依頼書の最下、勇ましく殴り書かれた依頼人のサインの下に、受領者として見知った同僚のサインを見つけ、ケイトはがくりと肩を落とした。
「とにかく支部長に報告しないと」
 気を取り直し、依頼書を握りしめたケイトは奥に座る壮年の男の元へと駆け寄った。


「話は聞いたよ」
 他のものより少しだけ造りのいい椅子に深く腰掛けた男は、ふぅと息を吐いた。
「ホリー君」
「は、はい……」
「やってしまったことは仕方がない。だけど、この件をこのままにはできない」
「……はい」
 ケイトと共に支部長の前に立つホリーは恐縮のあまり肩を縮めている。
「これはハンターズソサエティの信用にかかわる事になる。依頼を受けた君が直接赴いて、取り消しの交渉をしてきなさい」
「うっ……はい……」
 その後、何点かの小言を挟んだ支部長は話は終わりだと二度手を振る。二人は一礼して事務所を後にした。
「まぁ、誰にでも失敗はあるって」
「うぅ……」
「上には報告しないって言ってくれたんだからさ。まぁ、取り消せたらだけど」
「うっ……」
 ケイトの一刺しに、再びしゅんと肩を落とすホリー。
「それで、どうするの?」
「どうするって……そりゃ行ってくるよ?」
「一人で?」
「私だって一応覚醒者なんですぅ」
「まぁ、人より丈夫だってのは認めるけど、あんた、今日寝てないんでしょ?」
「さ、さっきちょっと寝たよ?」
「ふーん……」
 と、明らかに寝不足だとわかるホリーの虚勢に、ケイトはジトっと視線を向ける。
「はぁ、しゃーない」
 ケイトは、目の下に濃いクマを作るホリーの手を取ると、階下へ駆け降りた。
「お休みの所ごめん! ちょっと手伝ってくれる人いないかな?」
 降りた先は二階の休憩室。英気を養っていたハンター達に向け、ケイトは手刀を切る。
「お金はそんなに払えないけど、足りない分はこの子が精神的に払うからさ」
 そう言って、理解の追いついていないホリーをハンター達の前に差し出した。

●???
 一昨日の雨で増水したのか、壁越しに聞こえる水音が今日は幾分賑やかな気がする。
「おお、同志! 首尾はどうであるか!」
「うむ、同志! ハンターズソサエティは我々の要求を受け入れ、賛同者招集への力を貸すと宣言した!」
 独特の符丁から始められる会話。
「流石は音に聞こえしハンターズソサエティ! 我らが崇高な目的の真意を悟り、その門戸を開いたというわけか!」
「うむ! 辺境を我が物顔で跋扈する歪虚どもを駆逐したる力を持ったハンター達が我が陣営に加われば、様に鬼に金棒、駆け馬に鞭よ!
「ああ! これで我々の理想にも一歩近づこうというものだ!」
 ただでさえ湿度の高い室内が熱気を伴って吐き出される人の息に霞む。
「辺境を我らが手に取り戻さんがために!」
『取り戻さんがために!』
 唱和と共に集団のシンボルカラーである赤のバンダナを撒いた右腕が高々と挙げられた。

「客人! どうだ、我等の決意と硬さと団結の力は!」
「素晴らしい! 辺境の事などまるで解らぬ新参の者である私でも、大義を掲げるに足る力と情熱をひしひしと感じ、胸が熱くなっております」
「おぉ! わかってくれるか客人! いや、同志よ!」
「……ええ、理想の成就の為に。我々も惜しみない助力をお約束いたします」
「聞いたか、同志達よ!」
『おおっ!』
「無用の長物と成り果てた長城撤去という壮大な悲願の成就の為に! 辺境の民の真なる解放を謳う我等<極北の番人>の理想を掲げる為に! 新たなる同志、遠き隣人の理解ある行動と助成に――乾杯!!」
 響き渡るガラスを打つ音が、ゆっくりと石に染み入る。
「はい、乾杯」
 ジョッキの影に隠された口元には、薄らと笑みが浮かんでいた。

解説

●目的
間違って受けてしまった依頼の取り消しの為、依頼者を探し出してください。

●場所
ノアーラ・クンタウの外れにあるダウンタウン。
歪虚に襲われた辺境から逃れてきた部族の民や、帝国からの流民などが自然と集まり作られた街で、比較的貧しい住民が肩を寄せ合い暮らしています。
道は狭く、建物は密集し、お世辞にもきれいな街とは言い難いものの、治安そのものは審問隊『ベヨネッテ・シュナイダー』が目を光らせているので悪くはありません。
民家がほとんどですので、これといった見どころはありませんが、街の中心にちょっとした噴水があります。

●依頼者
ヴルツァライヒ辺境支部<極北の番人>の構成員を名乗る若い男。
大きな目印は短く切りそろえた緑の髪と、右腕に巻かれた赤のバンダナ。
身長は170~180cm。筋肉質で目が細かったとの事。
依頼書のサイン欄には、男の名前で『ザイデルX(テン)』とありました。

●目撃情報
酒場の看板娘:「お昼から飲んでることも多いんだけど、今日は来てないよぉ。お友達と遊んでるんじゃない?」
商店の丁稚:「え? 緑髪の人? この辺りで見たことはありませんけど……。配達の人なら何か知ってるかもしれません」
路傍の浮浪者:「……おいそこの人、酒持ってねぇか酒! ああん? 緑髪の赤バンダナ? あぁ、こいつなら……いやぁ、知らねぇな(ニヤニヤ」
噴水で佇む老人:「緑髪の男のぉ……うーん、知らんのぉ。毎日ここにおるが、見たことないのぉ」
路地裏のごろつき:「あぁん、なぁに見てやがんだぁ! 怪我したくなかったら、とっととあっちに行きな!」
酒場のごみ箱を漁っていた野良犬:「わぅ! わんわわんんわんわん!!」

●補足
・間違って受けてしまった責任を感じているホリーも同行します。
・現在の時刻(ダウンタウン到着時)は15時です。
・依頼人とあった後、相手の出方次第では説得が必要となる場合もあります。

マスターより

お世話になっております。真柄 葉(まがら よう)と申します。
今回の依頼は人探し!
間違って受理してしまった依頼を取り消すために、オフィス職員のホリーと共に依頼人を探してください!

ダウンタウンに消えた依頼者は、ヴルツァライヒの構成員を名乗ってたそうです。
何やらきな臭い香りがしたりしなかったりしますが、このシナリオは日常依頼……のつもりです(小声

最近、ノアーラ・クンタウで活動を活性化してきたお騒がせ集団のお話、第二弾!
お気に召しましたらご参加くださいませ!

…………あ、ホリーのお話でした(

関連NPC

  • ハンターオフィス職員
    ホリー=アイスマン(kz0204
    人間(リアルブルー)|28才|女性|聖導士(クルセイダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/10/29 22:21

参加者一覧

  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師

  • 火々弥(ka3260
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 双星の決刀
    叢雲・咲姫(ka5090
    人間(紅)|18才|女性|舞刀士
  • 双星の兆矢
    叢雲 伊織(ka5091
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士
  • 細工師
    金目(ka6190
    人間(紅)|26才|男性|機導師

サポート一覧

  • ジュード・エアハート(ka0410)
依頼相談掲示板
アイコン 依頼人を探そう【相談卓】
エアルドフリス(ka1856
人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/10/26 07:45:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/10/25 07:36:00
アイコン 質問卓兼雑談卓inカフェテラス
ホリー=アイスマン(kz0204
人間(リアルブルー)|28才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/10/26 07:54:05