ゲスト
(ka0000)
【猫譚】




皆さまのおかげでユグディラとの友誼を結ぶことができました。ありがとうございますっ。
近いうちにソサエティの方にもユグディラが訪れると思いますので、
優しくしてあげてくださいね。
システィーナ・グラハム(kz0020)
更新情報(12月12日更新)
猫型妖精ユグディラと、それを狙う羊型歪虚が巻き起こす騒動を描く連動シナリオ【猫譚】(にゃんたん)。
ハンターたちの活躍によって、歪虚は退けられ、ユグディラと人間との関係にも変化が訪れたようです。
12月12日、【猫譚】エピローグノベルを更新!
次なる物語は、2017始動予定!!
ハンターたちの活躍によって、歪虚は退けられ、ユグディラと人間との関係にも変化が訪れたようです。
12月12日、【猫譚】エピローグノベルを更新!
次なる物語は、2017始動予定!!
【猫譚】ストーリーノベル「猫と羊の連奏曲」(12月12日更新)
●ガンナ・エントラータ/システィーナ・グラハム
言葉がなくたって 想いは伝わるよ
キミといる時間 集めたいから
そんな歌が風に乗って聴こえ、システィーナは微笑を漏らした。
まさしく言葉などなくても、この場においては女王とは想いを分かち合っている。
様々な旋律に身を任せていたい。
死にたがりな女王とは生死、巡礼陣という点では、おそらく今後も意見の相違は続く。しかしそれ以外の部分――たとえば音楽を楽しむだとか、もしかしたら食事を楽しむだとか、そういったことは充分すぎるほど分かり合える。
まずはそこから始めよう。そうして少しずつ理解していき、その間に巡礼陣のマテリアル問題を解決する。……あるいは、いっそ……。
《グラハム》《グラハムの娘》
「は、はいっ!?」
《妾は変わらぬ》《秘術のもとに消えても構わぬ》《……》《なれど》
僅かな逡巡。
ユグディラの長は疲れた表情で口を閉ざす。
いや、と思い直す。気怠げな所作の中で、その瞳には確かな光が宿っていた。見えない何かを見ているかのように。
《……》
それは、見えないそれは――未来、なのかもしれない。ヒトとユグディラの未来。女王と、お付きのチビ・デブ・ノッポ、その四人で王国を旅する未来。
《ヒトは》《ヒトはけものと共存しておるのだったな》《心持ちしけものと》
「……イェジドやリーリーといった隣人のことでしょうか? であれば、確かにそうです。ハンターのかたや遠く北の地の人々を中心に、深い契りを結んでいる人がいるそうです」
《……》《妾は変わらぬ》《なれどヒトを拒まぬ》
「わたくしたちもまた、あなたたちと仲良くしたいと思っています」
システィーナが言うと、女王は儚げに目を細めて、
《ユグディラもまた》《ヒトとの友誼を結ぼう》《失われたかつてのように》
宣誓するように、告げた。
《ハンターと言ったか》《あの者らにはよくしてもらった》《妾も》《そこの三人も》《それに》
言葉を区切り、女王が言う。少しだけ諧謔を含む声色で。
《グラズヘイムのヒトらにも》《この地に生きる同胞が常よりゴハンを分けてもらっている》
「……、そうですね。分けるのは吝かではないのですけれど、できればお声をかけていただけると助かります」
苦笑し、そして礼をした。
「ありがとうございます。よき隣人として、これからよろしくお願いしますね」
《昏きもの》
「え?」
《昏き――歪虚とヒトの呼ぶそれとの闘争》《それに協力してもいい》
「それ、は……嬉しいのですけれど、その、大丈夫なのでしょうか? ユグディラはお身体が……」
《戦える者を送り出そう》《鍛錬し、僅かなりと戦に耐えられる者を》
やたらと武人気質のユグディラなんているのだろうか。システィーナは想像を膨らませつつ再び感謝する。
外からは変わらず彩り鮮やかな音色が響いている。
これまでユグディラと根気強く付き合い、そしてベリアルの迎撃に成功した今だからこそ聴くことのできる音楽だ。
――今はただ身を委ねよう。巡礼陣も、ベリアルも、全て忘れて。
システィーナはその考えにどこか背徳的な解放感を覚えながら、音楽に耳を傾けた。
●リベルタース地方西部/ベリアル
「その名で、私を、呼ぶなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
無意識に腹に溜めたマテリアルを気勢と共に撃ち出す。 魔砲。多くのニンゲンと役立たずの部下を葬ってきたそれはしかし、メフィストの前に砕け散る。
無傷。いや、少しは損害を与えているようだが決定打ではない。
クソ、クソ、クソ忌々しい野郎メェ!!
「何用か!! 貴様の稚拙な謀が私のクラベルを殺したこと、私は忘れておらんぞ!!」
「稚拙。稚拙か……なるほど耳が痛い。最大の成果を上げられなかったのは事実です、が」
不意に、は! は! は! と途切れるような哄笑を上げ始めるメフィスト。ベリアルが訝しがって眉を顰めると、奴はぎょろりと下から覗き込むようにこちらを見上げてきた。
「だがそれは、お前ほどではない」
「何だと……?」
「愚かな欲望に突き動かされて軍を動員し、あまつさえ正面から人間に打ち破られる。許し難い失態です」
「貴様に許される筋合いなどない! それにこれから残る半数を呼び寄せて逆襲するのだ。何の問題もあるまい」
「いいや、必要ない」
なに、と言いかけたベリアルの機先を制するように、奴は告げた。
「必要ない、とあの方は仰せです」
「……、ま、さか……」
「出頭し、沙汰を待ちなさい。此度の失態はあまりに――重すぎたのです」
くらりと、意識が遠のいた。
――おお……私のクラベル……フラベル……。
最愛の配下の姿が脳裏に浮かび、そしてベリアルの身体は影に包まれた。
繊細で、伸びあがるような音色が空高らかに響き渡る。 システィーナ・グラハム(kz0020)が窓際に寄って街を見晴るかすと、あちらこちらから聴こえてくるのは色とりどりの旋律。二人の旅人が重なり合うようなハモニカを奏でれば、吟遊詩人が情緒豊かなリュートをかき鳴らす。いかにも楽しげなハンドベルの澄んだ音が波のように広がれば、にゃーんにゃんと謎の猫的な歌がやってくる。 此方で心震わす聖歌が歌われて、彼方で臓腑震わすヘビーな音楽が主張する。 街全体がステージとなったよう。 システィーナはどうしようもなく皆が歌い踊り奏でるその場に向かいたい思いに駆られ、けれど背後で寝台に横たわるユグディラの長のことを考えてはしゃぎたい欲求を堪えた。 「聴こえますか、女王さま」 《是》 言葉は少ない。静かな部屋の中に届く街の旋律。それに耳を傾けている。 システィーナは寝台の脇へと戻り、目を瞑って街の音楽に酔いしれる。 |
![]() システィーナ・グラハム |
言葉がなくたって 想いは伝わるよ
キミといる時間 集めたいから
そんな歌が風に乗って聴こえ、システィーナは微笑を漏らした。
まさしく言葉などなくても、この場においては女王とは想いを分かち合っている。
様々な旋律に身を任せていたい。
死にたがりな女王とは生死、巡礼陣という点では、おそらく今後も意見の相違は続く。しかしそれ以外の部分――たとえば音楽を楽しむだとか、もしかしたら食事を楽しむだとか、そういったことは充分すぎるほど分かり合える。
まずはそこから始めよう。そうして少しずつ理解していき、その間に巡礼陣のマテリアル問題を解決する。……あるいは、いっそ……。
《グラハム》《グラハムの娘》
「は、はいっ!?」
《妾は変わらぬ》《秘術のもとに消えても構わぬ》《……》《なれど》
僅かな逡巡。
ユグディラの長は疲れた表情で口を閉ざす。
いや、と思い直す。気怠げな所作の中で、その瞳には確かな光が宿っていた。見えない何かを見ているかのように。
《……》
それは、見えないそれは――未来、なのかもしれない。ヒトとユグディラの未来。女王と、お付きのチビ・デブ・ノッポ、その四人で王国を旅する未来。
《ヒトは》《ヒトはけものと共存しておるのだったな》《心持ちしけものと》
「……イェジドやリーリーといった隣人のことでしょうか? であれば、確かにそうです。ハンターのかたや遠く北の地の人々を中心に、深い契りを結んでいる人がいるそうです」
《……》《妾は変わらぬ》《なれどヒトを拒まぬ》
「わたくしたちもまた、あなたたちと仲良くしたいと思っています」
システィーナが言うと、女王は儚げに目を細めて、
《ユグディラもまた》《ヒトとの友誼を結ぼう》《失われたかつてのように》
宣誓するように、告げた。
《ハンターと言ったか》《あの者らにはよくしてもらった》《妾も》《そこの三人も》《それに》
言葉を区切り、女王が言う。少しだけ諧謔を含む声色で。
《グラズヘイムのヒトらにも》《この地に生きる同胞が常よりゴハンを分けてもらっている》
「……、そうですね。分けるのは吝かではないのですけれど、できればお声をかけていただけると助かります」
苦笑し、そして礼をした。
「ありがとうございます。よき隣人として、これからよろしくお願いしますね」
《昏きもの》
「え?」
《昏き――歪虚とヒトの呼ぶそれとの闘争》《それに協力してもいい》
「それ、は……嬉しいのですけれど、その、大丈夫なのでしょうか? ユグディラはお身体が……」
《戦える者を送り出そう》《鍛錬し、僅かなりと戦に耐えられる者を》
やたらと武人気質のユグディラなんているのだろうか。システィーナは想像を膨らませつつ再び感謝する。
外からは変わらず彩り鮮やかな音色が響いている。
これまでユグディラと根気強く付き合い、そしてベリアルの迎撃に成功した今だからこそ聴くことのできる音楽だ。
――今はただ身を委ねよう。巡礼陣も、ベリアルも、全て忘れて。
システィーナはその考えにどこか背徳的な解放感を覚えながら、音楽に耳を傾けた。
●リベルタース地方西部/ベリアル
「ちょっと待ってくれないかなぁ、偉大なる黒大公サマ?」 その胡散臭い声にベリアル(kz0203)が振り返ると、そこには一人のニンゲンがいた。 今はなきクラベルを通じてこちらに降り、メフィストめが多少使ったニンゲンだ。 「……、何かね、矮小なるニンゲンよ」 ベリアルはぐつぐつと煮え滾る激情を辛うじて抑え込み、尋ねる。 自らの号令を邪魔しただけでも万死に値する。それでも蹄でなく言葉で返すことができたのは、ニンゲンの声と顔の色に奇妙な愉悦が浮かんでいたからだ。 意図が分からない。だからそれを聞き出して、殺す。 「私は今、忙しいのだ、ニンゲン。いくら我が軍門に降ったとて許されぬことがあると知れ」 「いや、いや。卑小なるわたくしめにはかの英雄黒大公サマを邪魔立てする気など、とてもとても。……ただ、ねぇ」 「何だ! 早く言えい!」 軽薄そうな男は口角を歪め、言った。 「お客様が、ね、いらしてるんだよねぇ」 と同時、ニンゲンの影が不自然に盛り上がった。 影はみるみる形をなしていく。ベリアルにはそれが何なのか、考えるまでもなく理解できた。 メフィスト(kz0178)。 至高の御方に仕えし、忌々しい奴だ。 奴は音もなくニンゲンの前に顕現すると、開口一番、吐き捨てた。 「あのような醜態を晒してよく存在していられるものです、『豚羊』」 ……、何を言われたか、理解した瞬間、理性が吹っ飛んだ。 |
![]() ベリアル ![]() メフィスト |
無意識に腹に溜めたマテリアルを気勢と共に撃ち出す。 魔砲。多くのニンゲンと役立たずの部下を葬ってきたそれはしかし、メフィストの前に砕け散る。
無傷。いや、少しは損害を与えているようだが決定打ではない。
クソ、クソ、クソ忌々しい野郎メェ!!
「何用か!! 貴様の稚拙な謀が私のクラベルを殺したこと、私は忘れておらんぞ!!」
「稚拙。稚拙か……なるほど耳が痛い。最大の成果を上げられなかったのは事実です、が」
不意に、は! は! は! と途切れるような哄笑を上げ始めるメフィスト。ベリアルが訝しがって眉を顰めると、奴はぎょろりと下から覗き込むようにこちらを見上げてきた。
「だがそれは、お前ほどではない」
「何だと……?」
「愚かな欲望に突き動かされて軍を動員し、あまつさえ正面から人間に打ち破られる。許し難い失態です」
「貴様に許される筋合いなどない! それにこれから残る半数を呼び寄せて逆襲するのだ。何の問題もあるまい」
「いいや、必要ない」
なに、と言いかけたベリアルの機先を制するように、奴は告げた。
「必要ない、とあの方は仰せです」
「……、ま、さか……」
「出頭し、沙汰を待ちなさい。此度の失態はあまりに――重すぎたのです」
くらりと、意識が遠のいた。
――おお……私のクラベル……フラベル……。
最愛の配下の姿が脳裏に浮かび、そしてベリアルの身体は影に包まれた。