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「遺跡防衛戦」 イニシャライザー展開B(北西) リプレイ

 
 

作戦2:イニシャライザー展開B(北西) リプレイ



オウカ・レンヴォルト
オウカ・レンヴォルト
ka0301
万歳丸
万歳丸
ka5665
真田 天斗
真田 天斗
ka0014
狭霧 雷
狭霧 雷
ka5296
仁川 リア
仁川 リア
ka3483
七夜・真夕
七夜・真夕
ka3977
牡丹
牡丹
ka4816
シェラリンデ
シェラリンデ
ka3332
イレーヌ
イレーヌ
ka1372
エルバッハ・リオン
エルバッハ・リオン
ka2434
レイス
レイス
ka1541
マリィア・バルデス
マリィア・バルデス
ka5848
シェリル・マイヤーズ
シェリル・マイヤーズ
ka0509
星輝 Amhran
星輝 Amhran
ka0724
Uisca Amhran
Uisca Amhran
ka0754
エリス・ブーリャ
エリス・ブーリャ
ka3419
十色 エニア
十色 エニア
ka0370
アシュリー・クロウ
アシュリー・クロウ
ka1354
ロニ・カルディス
ロニ・カルディス
ka0551
アイビス・グラス
アイビス・グラス
ka2477
キャリコ・ビューイ
キャリコ・ビューイ
ka5044
夕凪 沙良
夕凪 沙良
ka5139
米本 剛
米本 剛
ka0320
ボルディア・コンフラムス
ボルディア・コンフラムス
ka0796

「今回はイニシャライザーを破壊してください」
「破壊するとみんなみーんな死んじゃうの?」
「はい、人類はイニシャライザーの力を借りなければかの地では生きていることはできません」
「わかったー☆ みんなが苦しんで死ぬの楽しみー☆」


 その時、24人のハンター達は北西に向かって突き進んでいた。その中心に居るのは5匹の青いワイバーン達。それらは逆V字型の編隊を組み、空を駆けている。
「皆、乗り切るぞ……!」
 ワイバーンの右下側に位置取り、共に歩を進めるオウカ・レンヴォルト(ka0301)が双眼鏡で目指す先を覗き、そして皆に声をかける。
 大きく広がって位置取ったハンター達の目的は一つ。この5匹のワイバーンを目指す位置に送り届け、その背に乗せたイニシャライザーを設置することだ。そのために彼はこの位置から全体を見て、各人に指示を飛ばしていた。ハンター達とワイバーン達、彼らが見ているのは1キロ先。そこに持ち込めるかが、これからに繋がる。
「未来の大英雄様のお通りだコラァ!」
 そんな中、万歳丸(ka5665)は馬を駆っていた。彼は露払いとなるべく先を急ぐ。そんな彼の懐にはかなり大きな龍鉱石がいくつか入っていた。これが彼にとってのとっておきだった。
 馬を走らせ先を急ぐ万歳丸。その眼にこちらへ向かって突進してくるリザードマン達の姿が見える。その頭上には赤いワイバーンの姿も確認できた。尖兵の登場を確認した彼はすかさずアサルトライフルを取り出し発射する。これが開戦を知らせる音となった。
「元SOTの腕の見せ所ですね。皆さんよろしくお願いします!」
 時と場合に合わせて対応する遊撃部隊として集まったハンター達が、ニ、三言言葉をかわして最終確認を取り戦場に散っていく。そこに最後まで残っていたのが真田 天斗(ka0014)だった。彼の指揮と判断で、遊撃班は動くことになる。
 狭霧 雷(ka5296)は温和なその表情を保ったままリザードマンたちの中に飛び込み、一喝する。その声に一瞬怯んだ歪虚をその剣で斬り裂くことなど造作も無いことだった。
「強そうなのは任せたよ、僕は僕で出来るだけ撃破数稼ぐからさ。」
 仁川 リア(ka3483)はスピードを上げ戦場を駆け抜けていく。一気にリザードマンたちとの前線に飛び込み、そのまま走り去る。するとやや遅れて血飛沫が飛び、リザードマン達が倒れていく。速度を生かしすれ違いざまに放たれる斬撃を歪虚達は見切ることができなかった。
 だが、それでリザードマン共が止まるわけではない。数にあかせて波のように押し寄せ、仁川を押し戻そうと試みる。
 しかし、そこに吹雪が吹き荒れた。冷気が一帯を覆う。急速に下がった気温はリザードマン達の動きを鈍らせる。
 魔術により生み出されたこの吹雪を放ったのは七夜・真夕(ka3977)であった。
 そして彼女が生み出した吹雪が晴れた刹那、そこに牡丹(ka4816)が飛び込んでいく。
 後は牡丹が刀を振るえば、リザードマン達は次々と刀の錆と化していった。そんなパートナーの無双の活躍を双眼鏡で確認しつつ、真夕はトランシーバーで連絡を取る。交信相手はオウカ。こまめに連携を取り、この戦場をコントロールするべく動く。
「折角築いた拠点を守るためにも、負けられないよね」
 そのオウカの元へ向かうリザードマンを迎え撃つべくシェラリンデ(ka3332)が立ち向かう。向かってくるリザードマンをその手の刀で切り伏せていく。一進一退の攻防。しかし、彼女はまだここでは技を用いなかった。彼女の眼の片隅に、赤いワイバーンの姿が見える。このリザードマンは前座であり、本命はその後に居る。その時のために彼女は切り札を温存していた。
 さらにそこにはもう一人、イレーヌ(ka1372)が居た。小柄な体躯を目いっぱいに使い、手にした杖を振り抜く。振りぬく瞬間に己のマテリアルを杖に集め、強烈なインパクト音と共にリザードマンの頭に叩きつけた。哀れ、頭部を潰され地に伏せるリザードマン。  しかしそのような派手な戦いをしていればこの戦場でも注目を浴びないわけがない。仲間を倒された事に怒ったのか、不快な鳴き声を上げながらリザードマンが押し寄せる。しかしそれこそ彼女の狙いだった。
 イレーヌの後ろにはオウカ。つまりこの一帯を指揮するもの、言い換えるなら総大将だ。彼にこの中でも冷静に判断させる、それなら己が敵を引き受ければいい。リザードマン達の波状攻撃を彼女は己の体より遥かに大きな盾で持って受け止める。
 そして、オウカはこの戦況を見つめ、的確に各地に指示を伝えていた。そんなオウカの指示を受ける少女が同じように双眼鏡を覗いていた。彼女の名はエルバッハ・リオン(ka2434)。彼女はオウカとはまた逆のワイバーン達一団の端に陣取り、そこから戦場の様子を確認する。双眼鏡の先には敵の姿がよく見える。空中を赤いワイバーンが羽ばたき、口から炎の息を吹き出す。
 だが、そこに横からバイクが急ターンしつつ飛び込んできた。バイクの上にまたがったレイス(ka1541)は片手でスロットルを捻りながら、もう片方の手で壱の槍を振るう。それで地上で群れていたリザードマン達は散らされていく。
「――疾れ、我が槍」
 更にその勢いのまま、彼は参の槍を抜き、限界までマテリアルを込めて投げ放つ。その槍に込められたマテリアルは飛びながら散らされ、光輝き周囲にしたリザードマン達をまとめて払っていく。そして勢いを増しながらワイバーンの尻尾に刺さる。その姿は、あたかも戦場に一筋の流星が流れたようであった。
「ここから先に行かせるつもりはありませんので、これ以上、進もうとするなら死ぬだけですよ」
 そしてエルは先手の一撃を放つ。彼我の間合いを素早く見極め、迷うこと無く口内で呪文を転がす。そのワイバーンに向かって集中しながら詠唱を完成させる。すると風の刃が放たれその身を斬り裂く。
 衝撃を受け風に煽られた木の葉のようにゆらゆらと揺れるワイバーンの体。しかし偽の一文字を冠に付けられることもあるとは言え、竜である。この一撃でその身は地に墜ちる事は無く、大きく一ついななくともう一度羽ばたきその身を再び空中へと浮かせた。
「射程74m……私の手持ちじゃこの子が1番強いのよね」
 そのワイバーンを、マリィア・バルデス(ka5848)が狙っていた。彼女が抱える、と言っていいのか、用いようとしていた武器はマシンガン「プレートスNH3」。本来はCAMなどに装備して使う代物である。当然人の腕で御しきれるようなものではない。そのためここまで乗り運んできたバイクを銃架の支えとし、強引に地面に据え付ける。この状態ではもし敵に襲われたとして立ち向かう術は無い。だが、それでもやる価値があるという彼女の判断だった。
 照準を飛び回るワイバーンに素早く合わせると、マリィアはためらわずトリガーを引く。次の瞬間轟音と共に、暴れ馬の様に銃弾がバラ撒かれる。とてつもない反動が彼女の腕に襲い来る。しかし、それを受け止め、狙った獲物へと銃口を向ける。発射される銃弾には彼女のマテリアルのサービス付き。
「ワイバーンスレイヤーって称号も悪くないわよね……あれも竜種のうちには違いないでしょ、ふふ」
 その加速度を増した弾丸に貫かれ、ワイバーンはもはや空を飛ぶことは叶わず、地面に墜ちていく、はずだった。だが、次の瞬間彼女が眼にしたものは、重力に引かれ墜落するワイバーンの姿ではなく、なにか強い力を受けて地面に文字通り叩きつけられる竜の姿だった。
「みんな、お待たせー☆」
 墜落中のワイバーンを踏み台にして、空を舞うピンク色の髪の少女。場違いな可愛らしい姿と、その身を覆う濃厚な血の匂い。
「今日は特別に、ナナのパフォーマンスをみんなに見せちゃうぞ☆」
 その少女の名はナナ・ナイン。災厄の十三魔の一人だった。


 当然ハンター達も災厄の十三魔を見て、何もしないわけが無い。すぐさま動く。
「……79も……心……思い出すときが……あるのかな……人の産み出した闇は……人が……払う……だから、戦う……」
 トランシーバーでナナ出現の情報を取得したシェリル・マイヤーズ(ka0509)がナナの元へと急ぐ。彼女はナナとやりあった経験がある。無闇な手出しがどうなるかはその身を持って知っている。だから彼女のファーストチョイスはこの戦線を維持することだった。
 そしてナナの元へ向かうのは彼女だけではない。戦場を二台のバイクが駆ける。それに乗るのは星輝 Amhran(ka0724)とUisca Amhran(ka0754)の姉妹。
「トリッキーさはエルちゃんの専売特許よ!」
 さらにそれまで近くのリザードマンとやりあっていたエリス・ブーリャ(ka3419)もナナの元へと向かう。彼女達もまた、皆が皆ナナとの交戦経験を持つもの達だった。だから迷いは無い。幸い、こちらには武器が一つある。青いワイバーンの背に乗せられたそれ――龍鱗イニシャライザー。その影響下に置き、鈍ったナナを撃退する。考えは一致していた。
 だが、想定とは一つ違うことがあった。ナナは全く迷いが無かった。人には不可能な距離を飛び跳ね、迷うこと無く青いワイバーンの先頭へ、つまり龍鱗イニシャライザーの元へと向かう。ハンター達の考えは設置したイニシャライザーの影響下に置くことだ。これではそれが起動する前にナナはたどり着いてしまう。
「ねぇ……わたし達と、踊らない? きっと楽しいと思うよ」
 ならば食い止めなければならない。十色 エニア(ka0370)は己の魔力を冷気に変え、ナナの居るその場所へと吹き付ける。今ナナに向かっている他の仲間達を巻き込まず、ナナだけを食い止めるために。その思いは届き、冷気はナナを襲う。
 しかし、ナナはそれより早かった。
「邪魔だよ☆」
 ナナは着地する直前、そこに居た者を踏みつける。そこに居たのはハンター達の攻撃を受け傷ついていたリザードマン。それをまるで邪魔な小石が落ちていると言わんばかりに蹴り飛ばし、再び宙を舞う。十三魔に蹴り飛ばされたそれは無残にも頭が潰れ地面に崩れていた。彼女の目的はただ一つ。イニシャライザーの破壊だった。彼女に敵味方という概念は無かった。あるのはナナと、それ以外。
「どーもどーもー! 清廉潔白なる小説家、アシュリー・クロウですよー!」
 しかし、そんなナナを待ち構える者が居た。アシュリー・クロウ(ka1354)だった。彼女は先頭に居るワイバーンとイニシャライザーを守るべくここに居た。設置までは何としても持ちこたえなければならない。
「最前線でのイニシャライザー防衛……これはいいネタが拾えそうな舞台ですねぇ!」
 だからこそ彼女はここに立っていた。そのためには耐えなければならない。彼女は攻撃を捨て、回避に集中するべく構えを取る。そして最大の警戒心で持ってナナの元へ近づく。小説家を目指し、売出し中の彼女はこの時も、少しだけではあるが取材の事を考えていた。
「これはナナ・ナインさん! ちょぉっと取材させていただいて」
「う、る、さ、い☆」
 だが、彼女の言葉はナナによって断ち切られた。人形のような可愛らしい十三魔の姿が、あっという間に真っ赤に変わっていく。それが己の体から吹き出した血であることをアシュリーが認識するときには、もはや彼女の意識を保つ力は残されていなかった。彼女は回避のために最大限の努力をしていた。しかし、その一撃はそれよりも遥かに早かった。ナナが腹部に突き刺した手を抜くのと、アシュリーが血の海に沈むのは同じタイミングだった。
「邪、魔、だ、よ♪」
 そしてナナは一瞬振り向きつつ歌うように言葉を紡ぎだした。いや、歌った。そう、歌ったのだ。その歌声は風に乗り、刃と化してナナを足止めすべく向かっていた者達に明確な殺意と共に襲いかかる。
 シェリルを襲う。彼女は足を止めず動くことを意識していたことが幸いした。ギリギリの所で駆け抜けたその後ろを歌声の刃が斬り裂いていく。
 姉妹を襲う。アクセルをひねり、エンジンを回転させ急角度にターンを切る姉妹。イスカは回避するが、キララはかわしきれなかった。刃は彼女の腹部を斬り裂く。血が滲む。姉のその姿に妹は一瞬顔色を変えるが、姉は心配無用であることを示した。この程度なら彼女にとってはかすり傷だった。
 エリスを襲う。その身を斬り裂かれ、血飛沫が宙に散る。その血を浴びナナと同じく桃色の髪をどす黒い赤色に染めながらも、彼女は走っていた。為すべきことを為すために。
 そしてエニアを襲う。一帯ごと斬り裂く様な風の刃をかわすことは彼には叶わなかった。ザックリと大きな傷がその身に走る。強烈な衝撃、襲い来る痛み。その傷の深さに視界が霞む。だが倒れるわけには行かなかった。一息だけ呼吸を整えると、再び呪文の詠唱を開始する。その時のために。そして彼はもう一度ナナをその視界に収めた。
 その時、ナナは歌い踊る様にくるりと一回転し終えたところだった。その勢いのまま、狙うはただ一点。先端にいるワイバーン、その背に乗ったイニシャライザー。ナナは再び飛び上がり狙おうとする。だが、それを一人護る者が居た。ロニ・カルディス(ka0551)だった。
 ロニはナナの接近を確認次第、迷わず聖句を唱える。それは彼を中心に広がっていき、自然の理から外れたものを容赦なく焼く。ナナに取ってはかわすことは容易いことだった。だが、その光の中に入ることもまた叶わぬことだった。
「もう、この子達と遊んでてよ☆」
 そこでナナはパチンと指を鳴らす。するとナナを縮小コピーしたような人形達が現れ、動き始める。今までもナナと共に動き露払いの役を果たして来たナナ人形達。
 だが、今回は少しだけ違った。ナナは放たれた人形達を一撫でする。すると、いつの間にか衣装が赤色へと変わっていた。それが意味する事は。
 ナナの顔をそのままそっくりコピーした笑顔で、赤く変わった人形達はナナを追いかける者達の元へ迫る。交戦経験を持つ者達はその人形の正体を分かっていたが、だからといって避けるにはもはや間に合わなかった。
「その偽りの笑顔を吹き飛ばしてやる!」
 その時、エリスが動いた。彼女はナナを追いかける者達をかばうように前に出ると、人形達を受け止めるように構える。次の瞬間、耳をつんざく爆発音。それによって生まれた爆風は容赦なくハンター達を傷つける。しかしエリスが受け止めたことで、その威力は随分と軽減されていた。
 だが、だとするとエリスは……爆発が巻き起こした土煙は、すぐに風に吹かれて晴れる。そしてそこには、爆発をまともに受け虫の息ながらも、確かに立つ彼女の姿があった。そしてこうやって彼女が立てた理由を知らせるものは、ナナの元へと飛んでいた。

 その光景を見ても、ロニは敵を通すつもりはない。大鎌を構え道を塞ぐ。それを見てナナも交戦を避けられぬと悟ったか。一瞬の内に飛びかかる。
 一撃、二撃……どんな人間よりも早い連撃を、しかしロニはかわしていた。果たしてそれは神の加護だったのか。しかし、歪虚はそれをあざ笑う様に、全く予測不能の角度から一撃を差し込む。そしてそれは彼の腹部をえぐっていた。
 痛烈なダメージに一瞬意識が遠くなるロニ。ナナにはそれで十分だった。そのまま避けてワイバーンを襲おうとする。だが、そこに赤い人形が飛んできた。エリスが咄嗟に防壁を展開し、弾き飛ばした人形。それが生み出したものの体にくっつき、次の刹那爆発する。
「もう、痛ったーい☆」
 爆発に巻き込まれ、派手に吹き飛ぶナナ。彼女自身もダメージを受けたはずだ。しかし、その表情は現れた時と同じ笑顔のまま。そのまま空行く青きワイバーンの元まで吹き飛ばされると、手刀を一つ振るう。それで十分だった。それだけで、イニシャライザーが一つ砕けていた。


 ナナがイニシャライザーを一つ砕いた時、最前線でリザードマンと殴りあっていた万歳丸はその足裏にかすかな振動を感じていた。
「来やがったな、デカブツ!」
 程なくして、ハンター達の前に縄のようなそれが姿を現した。ミミズに手足を生やしたような外見のそれは圧倒的に大きく、遅いながらもその巨体をズルズルと這わせてこちらに向かってくる。今ナナが暴れまわっているこの戦場にこれ、アースワームが参戦することはすなわちハンター達の敗北を意味していた。
 そこで万歳丸は切り札を切った。懐から龍鉱石を取り出し、それを地面に置く。それだけの事だったのだが、アースワームはゆっくりとながらその身をねじり、その龍鉱石の元へと這いずって行く。
 アースワームは目も耳も持たず、ただ正のマテリアルを感知しそれを破壊するためだけに動く。そんな歪虚に取って、彼の仕掛けた物をイニシャライザーと区別することなど無理なことだった。読み通りだった。
 万歳丸は行き掛けの駄賃にリザードマンを一匹殴り飛ばし、そのまま馬に跨ってアースワームを大きく迂回するように駆ける。
 さらに、その巨体を食い止めるために動いた者達がこちらへ集まってくる。
 リザードマン達に囲まれていた牡丹は突如、一体の敵の懐へ飛び込む。受け流し斬り返そうとするリザードマン。しかし、その時彼女の姿はもうそこには無かった。舞刀士ならではの足運びで掻い潜って見せる。
 そして取り残されたリザードマン達の一団に雷鳴が轟き、稲妻が降り注ぐ。真夕が産みだしたそれが敵を撃ち抜けば、あとは牡丹の独壇場だった。前後左右に動きながら、舞い踊る様に刀を震えばリザードマン達はすべて斬り伏せられていた。そして彼女はそのまま一気にアースワームの下へ突進する。スピードを乗せて繰り出される突き、その後に斬り払いをも一呼吸で食らわせていたことを見切れた者は果たして居たのか。
 そこにシェラリンデが飛び込む。全身にマテリアルを巡らせ、速度を増してその刃を振るう。目にも留まらぬという言葉がピッタリな程の速度でありながら、その刃は彼女の意思をそのまま伝えてアースワームの巨体を刻んでいた。
 彼女の狙いはアースワームの動きを止めること。その刃が体皮を傷つければ、伸縮を繰り返して蠢いたいたその動きは鈍くなっていく。もう一息。
 そこで彼女はすかさず逆手に持ったワイヤーを振るい、アースワームの体に引っ掛ける。傷を受け鈍くなっているとはいえこの巨体である。恐らくしばらくすればそのワイヤーは引きちぎられ、彼女はままならず振り回されるであろう。しかし、それを考える必要は無かった。
 アースワームの正面には、万歳丸が仁王立ちで立っていた。
 種としての本能でその者を踏み潰そうと巨体を最後の力でのそりと動かすアースワーム。
 しかし、その体が万歳丸に触れた瞬間、その体は180度横に捻られていた。寸刻前まで地面にくっついていた器官が天に伸ばされ空を切っている。それは天地開闢という名の彼が編み出した技であった。
「ヒトもバケモンも同じってな。覇亜亜亜亜ッ!」
 万歳丸は気を練り上げ、丹田から全身を巡らせ、そしてそれを両手に集める。次の瞬間見たものは、彼の両手から放出された気が青龍の姿を取り、アースワームを食らう姿だった。
 青白い光が晴れた時、そこには体の真ん中に綺麗に一本の穴を開けられ筒状になったアースワームの姿があった。


 一つ目のイニシャライザーの破壊に成功し、ご満悦なナナ。しかし、程なくして彼女は何か疑問に思う様に小首をかしげていた。
「ナナ、どうしたの?」
 そこに彼女は立っていた。アイビス・グラス(ka2477)はナナの前に立ち、構えを取る。
「ナナ、あの時の借りは返させてもらうわよ……!」
 彼女のその言葉と同時に、その体に淡い緑色の風が纏われる。そして次の瞬間、彼女は緑の風となってナナに吹きつけた。
 左パンチ、右パンチ、そこから左ローキック、流れるようなコンビネーションで攻めこむ。それをナナはありえない角度に体をひねりながらかわしつつ、己の疑問を投げかけていた。
「ねーねー、どうしてみんな苦しんで死なないの?」
 ナナはイニシャライザーを破壊すれば人は死ぬものと思っていた。そのとおりに成らなかった事に対する疑問に、アイビスは下段、中段、上段に連続で放たれる蹴りで答える。
「わかったー、もっと壊せばいいんだね☆」
 ナナはバク転でその連続蹴りをかわすと、そのまま次のイニシャライザーへ向かおうとする。
「待ちなさい!」
 もちろんアイビスはそれを許しはしない。再び風となってナナの元へ吹き付ける。邪魔だとばかりに振るわれた手刀を身を低くしてかわし、そのまま水面を払う様に後ろ回し蹴り。そして上段へ横蹴りを繰りだそうとした時だった。
「もう☆」
 ナナの手が、アイビスの急所を二度えぐっていた。
 そしてナナは己の手を突き刺したまま、邪魔なものを振り払うように腕を振るう。それだけで、ナナの細腕でアイビスの体は持ち上げられ、投げ飛ばされていた。
 再び届かなかった己の力に対する悔しさを胸に抱くアイビスの意識は、その少し後に断ち切られた。


 次のイニシャライザーへ向け笑顔のまま戦場を駆けるナナ。
「こいつは厄介だな……だが、俺のやるべきことは変わらない……」
 その姿を見る二つの影があった。キャリコ・ビューイ(ka5044)と夕凪 沙良(ka5139)だった。
 沙良はスナイパーライフルを構え、スコープを通して素早く動くナナの姿を視界に捉える。その事にナナは気づいていただろうか。しかし、代わりに前線から漏れ出てきたリザードマンたちが向かってきた。
「余計な手間を取らせるな……」
 そこに対してキャリコが腰だめに構えたマシンガンを発射する。巧みにトリガーを引き、生み出された弾幕が的確にリザードマン達を蹴散らしていく。しかしながら、余計な弾丸は発射されていなかった。それはまさにプロの技であった。
「距離115m。左の風、風速7m。……照準、下にプラス3ミル。 右にマイナス4ミル」
 キャリコは余計な尖兵を払うと、ナナの観測情報を沙良に伝える。そして彼女は誤差を修正し、風の量まで計算に含めて照準を合わせる。
「さて……久々ですが本領発揮と行きましょうか……狙い撃つ……」
「……ファイア」
 沙良はここまで息を殺し、その身を隠してきた。それもすべて初撃で標的を仕留めるため。それは彼女の狙撃手としての矜持だった。
 弾丸にマテリアルを込め放たれた銃弾は銃のカタログスペックを超える距離を飛び、ナナの息の根を止める死神となって襲いかかる。そしてそれが十三魔を打ち砕く、はずだった。
 しかし、ナナは己の身に銃弾が迫った瞬間、一切の予備動作無しに突如として宙を舞った。回りにアピールするかのようにクルリと回って着地する。その狙撃に気づいていたというのか。
 一瞬あっけに取られる二人だったが、このまま戦いを辞めるわけには行かない。
「行きます!」
 ナナの行く手に真田が飛び込んできた。彼は十三魔をここで食い止めるつもりだ。ならば出来ることがある。
「続いては乱れ撃ってみましょうか」
 キャリコの観測情報を聞いて沙良は銃弾を再び放つ。これを避けた所に真田が攻め込めば……そんな彼女の思いは通じたか、彼は武器を構え全速力で踊る様に駆け抜ける。
 だが……十三魔はそれを超えてきた。ほんの僅かな差に合わせてナナは跳び、あっさりと二つの攻撃をかわしてみせる。さらに
「ざんねーん☆」
 すれ違いざまに、真田の腹部に手刀を差し込んだ。痛撃を受け足がもつれる姿に全く興味を持たず、ナナは飛び出していった。狙うは左側を飛ぶ青いワイバーンのその背にあるイニシャライザー。
「さて、防衛任務という事だが……別に倒してしまっても構わんのだろう?」
 次にそこに立っていたのはレイスだった。彼は槍を構え、ナナを迎え撃つ。
「あっち行って☆」
 しかし、レイスが槍を振るう前にナナはもう懐に入ってきていた。何の躊躇いもなく振るわれる手刀が一撃、二撃。
 レイスは槍を巧みに扱い攻撃をさばく。だが体を奇妙に捻じ曲げ放たれた三撃目が脚を斬り裂いていた。
 思わず膝を尽きそうになるレイスだったが、それを堪えると槍を突き返す。
 だが、腹部に何かが刺さっていたのはレイスだった。槍をかわしつつカウンターの手刀を差し込む。
 崩れ落ちるレイスの体を飛び越え、ナナはそのままエルバッハに襲いかかった。もう間に合わない……。
「……状況は悪くないですね」
 しかし、それを防いだ者が居た。米本 剛(ka0320)だった。
 筋骨隆々とした大柄な体躯を誇る米本だが、普段はおっとりとした平和主義者であった。しかし、今の彼は武者鎧を身にまとい、まさに鬼神と化していた。その体でエルバッハの姿を隠し、ナナの攻撃を受け止める。相当に固く守ったつもりだったが、それでもその攻撃は己の胴を傷つけていた。十三魔の一人、ナナの持つ恐るべき攻撃力を初めて知り、いろいろと納得したが、しかし耐え切れないものではなかった。いや、この状況耐えきらなければ成らなかった。
 米本はこの状況でもはやこれ以上倒れるものが居ないよう、壁となっていた。そして確かに今、その壁はナナという災厄をその場に押しとどめていた。
 そして、その壁の前にもう一人、入ってくるものが居た。巨大な捻くれた戦斧を振り回し、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が辿り着いた。
「オラ、かかって来いよ!」
 ボルディアは軽く手招きすると、間髪入れずその斧を左から右へ、右から左へと二度振り回す。彼女の前に立つものすべてをなぎ払うようなその連続攻撃、並の歪虚ならばひとたまりも無く喰らい倒れていただろう。しかし彼女の前に立っていたのはナナ。理不尽が姿を取ったような存在だった。ひらり、ひらりと襲い来る刃をかわすと、その隙間に己の手を滑りこませる。ただの手だが、その手は多くの人の血を吸ってきた存在。しかも今や妖刀『龍鳴』の力が取り込まれた存在だった。
 その危険を知っているシェリルは、さらなる犠牲者が生まれるのを防ごうと刀を上段に構え飛び込む。上から下へ、脳天を砕くような一撃を振り下ろす。しかし、彼女が見たのは相変わらずの笑顔のままでその刀をかわし、そしてボルディアの土手っ腹に手刀を突き刺していたナナの姿だった。
 ボルディアが持っていた戦斧はクルクルと回転しながら明後日の方向へ飛んで行く。それは持ち主がそれを握る力を失ったことを意味していた。
 もっと早ければ。後悔の念を一瞬残し、振り向いて今度こそナナを止めようとしたシェリルが見たものは、だが全く想像のつかないものだった。
「歌だけじゃなく、握手もしてこそアイドルだよな?」
 ボルディアはナナの細腕を掴んでいた。力を込め握りしめる。
「うん☆ それじゃあ、特別にバラバラにしてあげる☆」
 ナナはボルディアの言葉を素直に受け止め、力を加える。それは彼女の体を引きちぎるだけの力が込められていた。
 しかし立っていた。ボルディアは立っていた。彼女が流す血はその身を伝い、やがて彼女の心を表すかの様に燃え上がりその身を包む。並の者なら数回死んでお釣りが来る様な攻撃を受け止め、その身でナナをその場にとどめていた。そして、これは千載一遇の好機だった。ナナの元へと集まっていた者達は誰一人それを見逃すようなものではなかった。
 イスカが飛び込んできた。彼女は構えた盾を押し付けるようにナナにぶつけ、その身を引き倒そうとする。それが上手く行ったかどうかを確認する前に、キララが上から降って来ていた。
 さらに、姉妹とボルディアをかわすように、そしてナナだけは捉えるように間を縫って冷気が吹き付ける。エニアはこの時を待っていた。その時に備えていた呪文を完成させ、産みだした冷気の嵐を巻き起こす。
「これが私達とイニシャライザーの多重奏……いえ、多龍奏ですっ」
 その時何が起こっているかを知ることが出来る者は誰も居なかった。イスカの体を翡翠色の光が包む。その光は龍の姿へと変わり、急速に広がって一帯を包んでいた。邪なるものを焼き尽くす光が、その一帯を覆っていた。


 光が晴れたとき、ハンター達が見たものは想像もつかない物体だった。ナナは確かにいた。表情は変わらず、笑顔のまま。しかし手足の関節はありえない方向にねじ曲がり、見るだけで吐き気を催しそうな不気味な姿となっていた。
「こんなになるのって聞いてないよ……カッツォのバカー!!!」
 そして、次にハンター達が聞いたのは思いもよらなかったナナの叫び声だった。
 その時、イニシャライザーは、ナナが破壊を狙っていたそれは地面にセットされ展開されていた。目標地点よりは200メートルは手前だろうか。
 オウカは状況を頭に入れ、一瞬の判断を下していた。このまま無理やり目標地点までイニシャライザーを運べば、恐らくあと一つ、いや、もう二つは破壊されるだろう。それにハンター達にもこれ以上の重体者が生まれる。それならば当初の予定通り、囮の一つが壊されただけでイニシャライザーを展開できる方がいい。そんな判断を下していた。
 そしてその判断は的確だった。イニシャライザーは稼働を開始し、一帯に正のマテリアルを広げる。それはナナに確かに少なからぬ影響を与えていた。そしてナナはそのようなことが起こることを知らなかった。
 ナナはねじ曲がった己の体をひねる。妙な音とともに、関節は動きナナの姿は元の人形に戻っていく。そしてナナは高く高く飛び上がると、そのまま落ちてこなかった。空中で転移門に飛び込み、逃亡したのだろう。それはハンター達が恐るべき十三魔を撃退したことを意味していた。それに比べればリザードマン達はおまけにもならなかった。
 捨て駒まで含めた冷静な判断がもたらした結果がこれだった。展開されたイニシャライザーが作り上げる結界。これが戦況にどのような影響を与えるのかは蓋を開けて見なえればわからない。今はただ、上手く行くことを祈ることがハンター達に出来る唯一の事であった。

担当:cr
監修:高石英務
文責:クラウドゲート

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