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【反影】ダモクレスの剣「クレバス調査」リプレイ

▼【反影】グランドシナリオ「ダモクレスの剣」(3/2?3/23)▼

 
 

作戦2:クレバス調査 リプレイ

劉 厳靖
劉 厳靖(ka4574
マクスウェル
マクスウェル
セルゲン
セルゲン(ka6612
ナディア・ドラゴネッティ
ナディア・ドラゴネッティ(kz0207
レイオス・アクアウォーカー
レイオス・アクアウォーカー(ka1990
神楽
神楽(ka2032
シガレット=ウナギパイ
シガレット=ウナギパイ(ka2884
ユリアン
ユリアン(ka1664
ラファル(グリフォン)
ラファル(グリフォン)(ka1664unit003
Gacrux
Gacrux(ka2726
クリスティア・オルトワール
クリスティア・オルトワール(ka0131
ヴァイス
ヴァイス(ka0364
グレン(イェジド)
グレン(イェジド)(ka0364unit001
藤堂 小夏
藤堂 小夏(ka5489
カレンデュラ
カレンデュラ
神代 誠一
神代 誠一(ka2086
ベクトル(R7エクスシア)
ベクトル(R7エクスシア)(ka2086unit001
ヴァルナ=エリゴス
ヴァルナ=エリゴス(ka2651
ルネ
ルネ(ka4202
はうんど(魔導トラック)
はうんど(魔導トラック)(ka4202unit001
ジェールトヴァ
ジェールトヴァ(ka3098
星空の幻
星空の幻(ka6980
紅薔薇
紅薔薇(ka4766
神城・錬
神城・錬(ka3822
フィーナ・マギ・フィルム
フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
Schwarze(ワイバーン)
Schwarze(ワイバーン)(ka6617unit002
アニス・テスタロッサ
アニス・テスタロッサ(ka0141
レラージュ・ベナンディ(オファニム)
レラージュ・ベナンディ(オファニム)(ka0141unit003
時音 ざくろ
時音 ざくろ(ka1250
ソティス=アストライア
ソティス=アストライア(ka6538
ソフィア =リリィホルム
ソフィア =リリィホルム(ka2383
天央 観智
天央 観智(ka0896
魔導型デュミナス射撃戦仕様(魔導型デュミナス)
魔導型デュミナス射撃戦仕様(魔導型デュミナス)(ka0896unit003
狭霧 雷
狭霧 雷(ka5296
ジーナ
ジーナ(ka1643
 劉 厳靖(ka4574)の馬車にマクスウェルの大剣が迫る。
 木っ端と破壊されるかと思ったその刹那、甲高い金属音とともに大剣が弾き上げられた。
「そう簡単に、壊させるかよ!」
 馬車に同乗していたセルゲン(ka6612)が身を呈して守ったのだ。大剣は軌道を逸れたが、セルゲンの肩を切り裂いていた。
「さすがは黙示騎士、やるじゃねえの」
 しかし、血を流しながらセルゲンは不敵に笑った。
「厳靖、走れ!」
「言われなくても!」
 馬車はマクスウェルを無視して、クレバスの方へ走り去ろうとする。
「とにかくわらわたちは、クレバスに辿り着かなければならぬ! 頼んだぞ!」
 厳靖の馬車にはナディア・ドラゴネッティ(kz0207)も乗っていた。
 馬車はこのままクレバスを目指して負のマテリアルに覆われた大地を突破する予定だ。
「あいよ!」
 厳靖は、馬車に接続したバイクを走らせていく。
『逃すか!』
 マクスウェルは、今度は衝撃波によって馬車の破壊を試みるが、馬車との間にトライアンフに搭乗したレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が立ちはだかった。
「トライアンフの全力稼動を見せてやる!」
 人機一体により強力になったトライアンフの剣が、マクスウェルを叩き潰すように振り下ろされるが、ひらりと躱されてしまう。
「まだまだァ!」
 だが、即座に、姿勢を整え、さらなる突きをレイオスは放つ。
「逃がさねっす!」
 レイオスが相手をしている隙に、背後から忍び寄っていた神楽(ka2032)が幻影触手を発動させる。触手がマクスウェルの足に絡みついて、その移動を封じた。
「冥途の土産に教えて欲しいんすけどあのクソでかい剣は何す?」
 神楽はいろいろ質問責めにして、時間を稼ぐ作戦だ。
「黙示騎士って邪神から生まれたんす? 何も知らない相手に殺されるのは嫌なんで教えてっす!」
『フン、教えてやる義理などないわ!』
 ぎちぎちとマクスウェルは無理やり触手を引きちぎろうとする。
「うげげ、やばいっす! 今のうちに囲むっすよ!」
「空には逃がさねェよ」
 空にはワイバーン、グラウに跨ったシガレット=ウナギパイ(ka2884)がいた。
 いや、シガレットだけではない。グリフォン、ラファルに乗ったユリアン(ka1664)や、ワイバーンに騎乗したGacrux(ka2726)が空を舞って上空への退避を防いでいた。
 そして、神楽のファントムハンドに捕まっているうちにみるみる包囲網は完成していく。
『そんなにこのオレと戦いたいというのなら、好きにするがいい……!』
 しかし、その時、マクスウェルからおぞましい光が照射されるかに見えた。
「させません!」
 だが、クリスティア・オルトワール(ka0131)のカウンターマジックによりその光は押さえ込まれ、大気中に霧散していくのだった。
『ええい、小癪な手を……!』
「黙示騎士マクスウェル、手合わせ願う!」
 マクスウェルに突進していく紅蓮の姿があった。燃え立つような真紅の毛並みを持つイェジド、グレンに跨ったヴァイス(ka0364)だ。
 ヴァイスは覚醒により自身も炎を連想させるオーラを纏っていた。烈火によって、さらに激しくオーラは燃え上がり、灯火でその手に持つ魔鎌「ヘクセクリンゲ」も暗闇を照らし出すほのかな光を放っている。まさに炎の化身が戦さ場を駆け抜けるかのようだった。
 マクスウェルは包囲されつつあるこの状況から、かつての戦いを思い出していた。
 このままでは過去の戦いのようにタコ殴りにされかねない。包囲網にわずかな隙を見出したマクスウェルは、ここからの脱出を試みる。
「行かせないぜ」
 しかし、グレンがその身を踊らせ、威嚇によって進路を妨害した。
「これでお互い動けないな?」
 このタイミングを逃さない……ヴァイスはこのチャンスに死力を尽くすつもりだった。
『そんなにこのオレと戦いたいか、ハンターめ!』
 ヴァイスに向かって、マクスウェルの大剣が大気を引き裂いて振るわれる。
 だが、それはヴァイスに直撃するかと思った刹那、不思議な力に引き寄せられ、軌道がそれた。
「いったぁ……、いい斬撃してるね。G」
 R7エクスシアに搭乗した藤堂 小夏(ka5489)がガウスジェイルを発動していたのだ。
『……ん? 今オレをGと呼んだか?』
「そうだよ。黒くて速い……台所の隅で黒光りする奴を思い出すからね。Gって呼ぶことにしたんだ」
『何!? Gとは何だ!?』
「教えてあげないー」
 小夏は雰囲気に反して、よく喋った。そして、小夏はカレンデュラを見やり、言った。
「おっとカレン、また会ったね。今回もよろしくー」
「うん、一緒にあのGとかいう奴を止めよう!」
 カレンデュラはマクスウェル妨害のために居残った仲間たちを見て笑顔で頷いた。
『誰がGか!』
 しかし、まともに名前も呼ばれないことに激昂したのか、プライドが傷ついたのか、マクスウェルは剣を振るうがその攻撃はやはりガウスジェイルによって引き寄せられてしまう。
 マクスウェルは自分の攻撃が目標をそれるのを内心苛立たしく思いながら、馬車の方を睨んだ。
「……!」
 その視線にセルゲンが気付いた。
「餅助、目くらまし頼む!」
 馬車にともに乗っていたユキウサギの餅助はセルゲンの言葉にこくりと頷いて、紅水晶でその視線を妨害した。
『小細工ばかり弄しおって……!』
 紅の光線により、馬車を目視することは厳しくなった。
 車輪の音だけがマクスウェルに聞こえてくる。その音は、どんどん遠ざかっていくのだった。
「行ったようですね」
 神代 誠一(ka2086)が言う。
 妨害班として残ったハンターたちも車輪の音を聞きながら、馬車が無事マクスウェルの手から逃れたことを確認していた。この先の道には多数のシェオル型歪虚たちがいることだろう。しかし、馬車の護衛としてついたハンターを信じるより他になかった。
 マクスウェルは完全に囲まれていた。
 包囲するように、誠一、ヴァルナ=エリゴス(ka2651)、ヴァイス、小夏が陣取り、さらにルネ(ka4202)のトラック、はうんどの荷台に乗ったカレンデュラがいた。
 空にはワイバーンやグリフォンに乗ったハンターたちがいた。
 先ほども幻影触手で足止めを成功させた神楽、味方のCAMに隠れるように位置どりをする回復スキルを多く持つジェールトヴァ(ka3098)に星空の幻(ka6980)もいる。
「それでは、皆さん。行きますよ……!」
 誠一が合図を出した。
 狙うのは下半身。マクスウェルの移動力を削ぐためだ。
 こうして、決死の妨害戦が始まった。


「とりあえずは振り切れたようかの?」
 馬車に乗ったナディアが後方を見ながら言う。
「妨害班を信じる他ないのう。総長は、クレバスの方に集中してほしいのじゃ」
 紅薔薇(ka4766)が連絡用の魔導スマートフォン、そしてセルゲンが双眼鏡をナディアに渡した。
「道中はまかせのるじゃ。ユッキー、護衛よろしく頼むの」
 紅薔薇もまたユキウサギを馬車に同乗させていた。ナディアを無事にクレバスまで護衛するためである。
「おーい、索敵はどうだ?」
 厳靖は神城・錬(ka3822)に呼びかける。この先、多数のシェオルの攻撃が予想される。馬車は可能な限り戦闘を避けて進む予定だ。
 護衛には、馬車に同乗したセルゲンと紅薔薇とユキウサギたち。そしてそれぞれユニットに乗ったハンターたちが、馬車を中心にして陣形を取っていた。
 錬やフィーナ・マギ・フィルム(ka6617)は主に索敵を担当していた。
 フィーナは上空400メートルをワイバーンのSchwarzeで飛行し、双眼鏡を使って上からの索敵を担っていた。
「進行方向右にシェオルの群れあり。いまからなら、迂回することで回避できます。その先……クレバス方面に多数のシェオルがいますこれは回避することはできないないでしょう。それでも、一番敵の少ない方へ案内します」
「了解した」
 錬はフィーナから受け取った情報を地上のハンターたちに中継する。
「地上での細かいルート選択は俺にまかせろ」
 錬は、ユニットの足を止めずに歪虚を探知できるスキル、マテリアルレーダーで、地上の索敵を担っていた。
 こうして、空からと地上の情報が合わされば、本当に敵の少ないルートを選ぶことが可能だった。
「オッケイ。じゃ、迂回しつつクレバスに向かうかね」
 厳靖がバイクを操り、馬車を迂回させていく。
「餅助、雪水晶を馬車にかけてくれ」
 セルゲンの指示の元、守護の光が馬車を包んだ。馬車は移動力に優れ、また荷台に数人をのせて運ぶことが可能な分、装甲が薄いのだ。
「ソードオブジェクト、飛来します!」
 フィーナから伝令があった。ダモクレスの方を見ると、確かにそこから黒く尖った物体が飛来していた。
「了解、撃ち落とすぜ」
 即座に、アニス・テスタロッサ(ka0141)がオファニム、レラージュ・ベナンディを狙撃状態に移行させる。
 プラズマキャノン「アースクレイ」はその長い射程で、すでにソードオブジェクトを捉えていた。
 弾丸が撃ち込まれ、オブジェクトが空中で砕け、塵に還元されていく。
 続いて、ダモクレスから、大型のオブジェクトが飛来した。
「ひとっ飛び行ってくる。地上は任せたぜ」
「わかった。安心して行ってきな!」
 レイオスもまたアースクレイを構えて迎撃態勢だった。
「通したくないんなら、通行止めの看板でも付けとけ!」
 ソードオブジェクトは、地上に刺されば無数のシェオルを生み出し、また突き刺さる衝撃がダメージを生むが、飛行中では割と脆い。ならば、空中で撃ち落とすのが最善の策だった。
 アニスの搭乗したレラージュ・ベナンディは装備した[SW]ウィングフレーム「ゲファレナー・エンゲル」によって空中へ舞い上がった。さらに、アニスはフーファイターを発動し、飛行時のペナルティを無効にする。
「……そこ、もらったぜ」
 次々と弾丸が撃ち込まれ、大型ソードオブジェクトは空中で制御を失いくるくる回転して砕け、地上に落ちる前に霧散した。
 アニスは、次々と飛んでくるオブジェクトを破壊しつつ、カレンデュラのことを考えていた。
「最後、ね。始まれば終わりが、出会えば別れが……そーいうこったな」
 物思いにふけりながらも、引き金は容赦なく引かれる。
「とにかく、ここを切り抜けなくちゃな」
 アニスは下を、馬車の行方を確認した。
「チッ、随分敵がいるじゃねぇの……」
 馬車はそろそろフィーナが言っていた無数の敵のいる地点へ入ろうとしていた。
「ちょっと荒っぽい運転になるかもしれん。総長、酔うなよ?」
 厳靖が焦りを見せず、冷静にバイクを走らせる。
「安心せい。この程度で酔うほどヤワではないわ」
「そいつはよかった。……まあ、何とかならぁ」
 厳靖が泰然と言った。
 さらに、シェオルの群れへ入る直前、時音 ざくろ(ka1250)が静かに、それでもナディアに聞こえるように、力強く宣言した。
「任せて、総長は絶対にざくろ達が護るから……そして一緒にあの先を見よ」
「うむ。信じておるぞ」
 その言葉をきくと、ざくろは少女のような顔でにっこり笑った。そして、凛として、前方のシェオルを見つめ、自身が騎乗するリーリー、大陸疾風『ロードランナー』の首を優しく撫でた。
「……行くよ、この先にあるものをこの目と心に焼き付ける大冒険だ!」
「目指す場所はただ一つ! とっとと行って戻るぞざくろ!」
 リーリー、ラギアに乗ったソティス=アストライア(ka6538)もざくろと一緒に駆け抜ける。
「さぁ始まったハンター・歪虚対抗クレバス耐久レース! ハンターは敵を蹴散らし無事総長をクレバスに送り届けることができるのか!?」
 そして、ついに、一行はシェオルの群れへ突入する。
 その中で先行するのは、グリフォンに騎乗したソフィア =リリィホルム(ka2383)だ。ソフィアは自身がドワーフであることの隠密性を活かし、狙撃銃で進路上の邪魔になる敵を倒していた。上空を飛んでいることや、後続の馬車組に多くの人間がいることもあり、ソフィアまでは気が回らないならしい。
「そこ、邪魔!」
 ソフィアは、進路上にいるシェオル・タンクを狙った。主に角や脚を狙うことで範囲攻撃や、移動を困難にさせることが目的だ。
 しかし、自分を狙われれば、シェオルとはいえ人間以外を狙ってくる。タンクの爆撃じみた範囲攻撃が、ソフィアに浴びせかけられる。だが、加護符のおかげで、ダメージ自体は大きく無い。
「厄介なその角、潰してやるよ!」
 猛スピードで戦場をかけながら、ソフィアは狙撃を繰り返す。
 そこへ、ソフィアの背後から援護射撃があった。
 高速の弾丸が、タンクを貫いて行く。
 天央 観智(ka0896)だ。彼は魔導型デュミナス狙撃仕様に搭乗し、さらにプラズマシューターで長い射程を得て、タンクへの砲撃を可能にしていたのだ。
「前回といい、今回といい、タンクは厄介ですね」
 プラズマシューターにより、武装は紫電を纏っていた。バレル内で二次加速した弾丸は威力を上乗せされ、目標へと飛んで行く。
「にしても、故事を考えると……ダモクレスの剣って呼称は、どうなんでしょうね? とも、思いますが……大精霊クリムゾンウェストの頭上を脅かして、復旧を阻害している……という意味、なんでしょうか? まぁ、クレバスの中次第?」
 そんなことを考えつつも、タンクを撃ち落としておく観智だった。
 先行したソフィアの攻撃と観智の狙撃、錬の索敵により、それでも敵の少ない方面を馬車一行は進んでいた。
「みんな、こっちだよ!」
 さらに、リーリーに乗ったざくろが敵の少ない地点へ馬車を先導する。また範囲攻撃、拡散ヒートレイで邪魔なシェオルを薙ぎ払っていた。
 ソティスはラギアでリーリージャンプを繰り返し、馬車に接近してきそうな敵に向けてグラビティフォールを放ち足止めする。敵により密集する戦場をジャンプで行ったり来たり。
 その攻撃を支援するように、前の空間に紅薔薇の攻撃によって白い薔薇が咲いた。
 紅薔薇は今、馬車の幌の上にいた。狭い馬車の中での戦いを避け、上に登って居たのだ。
「ふむ、少々前に出る必要があるようじゃの」
 迫り来る敵を見て、紅薔薇が言う。
 そして、紅薔薇は、
「ちょっと失礼するのじゃ」
 華麗にジャンプして、味方のユニットに飛び乗った。スキル壁歩きにより壁であれ自在に登ることができ、[SA]グラヴィティブーツ「カルフ」によって、スキル発動中の攻撃も可能にしているのだ。
 こうすれば、高速移動中でも自在に戦闘ができる。紅薔薇は工夫によって自由に戦場を駆け回った。その姿はまさに、戦場に咲き誇る紅い薔薇の様だった。
 そして、前方からシェオル・ブリッツが、進撃してきた。が、ブリッツは魔法の腕に掴まれて、引っ張られて行く。
 狭霧 雷(ka5296)がブリッツへ向けてファントムハンドを発動したのだ。
「ただの足止めスキルではないですからね。有効活用しなければ」
 位置がずらされたことにより馬車の通る道が開いた。しかし横から迫っていたもう一体のブリッツが馬車に向かって、その角を突き立てる。
「させるかよ!」
 しかし、セルゲンがその角から馬車を守った。さらに、リジェネーションにより自身の体力を回復し、コンバートライフによって馬車へその回復力を流し込む。
「時間がかかっただけ戦況は悪化します。兎に角、足を止めないように。道は開きます」
 雷が言う。
「わかってるって。……錬、進路はどうだ?」
 厳靖が問いかける。
「……そのまま直進してくれ。左右からの敵は振り切れそうだ。だが、正面にいるシェオルは突破しなければならない」
「ここは任せてもらおうか。ドワーフらしく大穴を開けるだけだ!」
 そこで、ジーナ(ka1643)が飛び出した。
 イカロスブレイカーにより、プラヴァー、タロンの脚部にはマテリアルエネルギーが溢れ、光の翼のようだった。タロンの白い塗装がより一層目にも鮮やかだ。
「そこ、邪魔だ!」
 スキルトレースにより筋力充填を用い、タロンにマテリアルの力が満ちる。そこから繰り出された、ワイルドスラッシュはいまだ残存している敵を粉々に砕いていった。
 馬車は護衛の働きもあって、スピードを落とさず、進んでいた。
 ソードオブジェクトもアニスやレイオス、ソフィアの活躍によって増加を抑えられていた。
 馬車はクレバスに向かって疾駆する。


「行かせないよ」
 光の杭がマクスウェルと貫いた。ジェールドヴァがブルガトリオを発動したのだ。その杭はそのまま地面にマクスウェルを固定し、移動を許さない。
『小癪ッ!』
 しかしマクスウェルの抵抗も高く、すぐに引き剥がされてしまう。
 だが、移動しようにも、ハンターたちの包囲網がある。
 マクスウェルの脳裏によぎるのは過去の戦い。触覚をへし折られた、屈辱的な戦いのことだ。
 瞬間、マクスウェルの姿が消えた。
「ワープか……! 奴はどこへ!?」
 ヴァイスが頭をめぐらす。
 なんと、ワープによってマクスウェルは包囲網を突破していたのだ。
『フハハ、その程度の包囲、痛痒せんわ!』
 そう言って、マクスウェルは馬車を追おうとする。
「一騎当千の黙示騎士ともあろう者が、敵に背を向けるとは情けないですね」
 しかし、その背中にヴァルナの言葉が突き刺さる。
『……何だと?』
「情けないと言っているのです。よもや怖気付いた訳ではありませんね?」
「いやいや、もしかしたらそうかもしれないよ?」
 ジェールドヴァも言葉の支援射撃を行う。
「『貴様らの小細工程度』も無視できなくなった? それとも、またタコ殴りにされるのは屈辱なのかな」 『ぐぬぅ!』  マクスウェルは足を止めた。このままここにいれば、前回の戦い同様タコ殴りにされかねない。しかし、この言葉を聞いて黙っているマクスウェルでもない。
『おのれェ、ちょっと足止めに成功したからといって、調子にのるなよハンター共……?』
 マクスウェルは未だハンターたちに背を向け俯いたたままだ。
『フハ、フハハハハハ……!』
 しかし一転、空を見上げ、高笑いをはじめたではないか。
「Gの奴、どうしちゃったの……?」
 カレンデュラも不審がる。
『そうかそうか、そんなにこのオレと戦いたいか……なら、立ち向かえるものは立ち向かってくるがいい!!』
「……!」
 クリスティアがいち早く反応した。
 マクスウェルから再びおぞましい光が照射されようとしていたのだ。
 クリスティアはまたカウンターマジックを用い、魔法の相殺を試みるが、それはすでにマクスウェルも警戒済みだ。
 カウンテーマジックを打ち破って、恐慌の光が照射される。
 それは、マクスウェルを中心として放射状に起こるバッドステータス恐慌を付与するものだ。恐慌を受けたものは、マクスウェウルから逃げたくなる、あるいはマクスウェルに攻撃したくなる、このどちらかの行動制限を受けることになる。
 とはいえ、所詮は光。遮られれば、つまり浴びなければ効果はなかった。
 今回はCAMに搭乗している、ヴァルナ、誠一、小夏がそもそも恐慌の光を警戒し、壁になるように展開していたのと、イニシャライザーによって味方の抵抗値を上げたため、地上に大きな被害はなかった。CAMに搭乗していない者も、その後ろに隠れるなどしていたからだ。
 しかし、空は違った。何の遮蔽物もなく、光をまともに浴びざるを得ない。そして、その光は並大抵の抵抗で抗えるものではないのだ。
 空にいたのはユリアン、Gacrux、シガレットの三人。彼らは今、恐慌に陥り、空の包囲網は瓦解してしまった。
 ユリアンはマクスウェルから距離を取り、Gacruxとシガレットの2人は闇雲な攻撃を仕掛けていた。騎乗しているワイバーンやグリフォンも光を浴びたために、バッドステータスに侵されていた。
『フハハハハハ、追ってこられるなら、追ってくるがいい、ハンター供!』
 マクスウェルはそう言ってマントを翻しながら、馬車を追って行った。
「カレン、大丈夫?」
 小夏が背後のカレンデュラに呼び掛ける。
「うん、おかげさまでね」
 光が照射された時、小夏はまずカレンデュラを守った。小夏は、絶対にカレンデュラに光を浴びせないと決めていたのだ。
 カレンデュラはその甲斐もあり、また事前にマクスウェルの恐慌の光に対して何人かのハンターが助言していたこともあり、事なきを得たのだった。
 カレンデュラは心配そうに空にいるものたちを見た。
「かれん、あいつ、追うよ!」
 トラックを運転しているルネが言う。
「彼らのことは任せなさい」
 それでも、恐慌の光を浴びたものたちを心配そうに見るカレンデュラにジェールドヴァが声を掛ける。
「きみは自分のやるべきことをやるといい。回復はまかせておくれ」
「……そうだね。あとはよろしく」
 カレンデュラは表情を引き締め、剣を握り直した。
「行こう、ルネちゃん!」
「もちろん。移動はまかせて。かれんは、戦闘にせんねんして」
「うん! 信じてるよ!」
「俺たちも追いますよ!」
 誠一が恐慌の光をくぐり抜けたものたちに呼び掛ける。
「回復したらすぐに追いつくから、そっちは頼んだよ」
 ジェールドヴァはキュアを発動し、味方の恐慌解除を試みる。
「行こう!」
 ハンターたちも駆け出した。
 それは持てるスピードの全てをつぎ込んだ追走劇だった。

 マクスウェルは悠々と馬車を追っていた。
 馬車は本来のスピードより遅く走行していた。なぜなら全速を出してしまうと護衛の味方たちが追いつけないからだ。馬車は装甲が薄いこともあり、単独になるのは得策ではない。
 マクスウェルは、馬車を一瞥して自分の最速より遅いことを確認していたのだ。
 こうして走っていればいつかは馬車に追いつく。そう思っていたのだが、彼は背後に気配を感じた。
 後ろを振り返ると、
「待ぁぁぁぁぁぁぁぁてえええええええええ!」
 猛スピードで追走してくるルネの運転するはうんどの荷台に乗ったカレンデュラが見えた。
 ターボブーストによりさらに加速したトラックがみるみるマクスウェルに迫る。
『ヌオオッ!? さっきオレの攻撃を防いだ時といい、今といい、どうして付いてこれるんだ!?』
「それは……」
 カレンデュラの髪がたなびく。服もばたばたと鳴っている。その中で、カレンデュラは、すっくと立っていた。
 ついに、マクスウェルにカレンデュラが追いついた。
 カレンデュラが歪虚化した左腕を大きく振りかぶった。
「みんなが居てくれるからだよ!」
 そして、渾身の力で、マクスウェルの横っ面を殴りつけた。
 鈍い音とともに、マクスウェルが吹っ飛んでいく。
 その隙に、進路を妨害するようルネはトラックを回り込ませた。
 しかし、またもマクスウェルはワープでそれをすり抜けていく。
「逃がさなよ、G!」
『Gではないと何度言ったらわかるのだ!』
 トラックが火花を散らしながら、方向転換をし、マクスウェルに食らいつく。
 たまらずマクスウェルも大剣でカレンデュラを迎え撃った。
 カレンデュラのサーベルと大剣が組み合った。戦いは鍔迫り合いに発展するが、両者は止まる気配はなく、どんどん進んでいく。
 先に動いたのはマクスウェルだ。彼は大剣を一度引くとそのまま、カレンデュラの剣を上から叩き折るように、振り下ろした。
 カレンデュラも即座に半身になってそれを避ける。そして敵が武器を振りきった隙に、首を狙った斬撃を放った。
 こうして、カレンデュラがマクスウェルと剣を交わしている間に、ほかのハンターたちも追いついてくる。
 あとちょっとで追いつくと思った刹那、再びマクスウェルはワープを用い先へ先へと進んでいく。
 そして、その先にはついに馬車の姿が見えて居た。

 後方を警戒して居た餅助がセルゲンの手を引っ張って危険を知らせる。
「あいつ、包囲網を突破してきやがったのか……!?」
「アホじゃから対抗できるが、ワープとかできるからのう……」
 乾いた笑いを浮かべるナディア。まだ距離があるが、マクスウェルは確実に馬車に近づいてくる。
「クレバスへの距離は?」
「まだ半分ってところかね」
 その質問に厳靖が答える。
「なら、妨害班が来るまで、持ちこたえるほかあるまいの」
 そう言うのは紅薔薇だ。
「なんとしても食い止める!」
 レイオスも馬車とマクスウェルとの間に機体を滑り込ませ、迎撃態勢だ。
『その勇気だけは讃えてやろう!!』
 しかしレイオスと一太刀交わしただけで、マクスウェルはまたもワープを用い一瞬で馬車の背後についた。
『フーハハハハハ! これで終わりだハンター共!!』
 大剣を大上段に構え、渾身の一撃を叩き込もうとするマクスウェル。
「いや、おまえはここまでだ」
 その、静かな声とともに、セルゲンから魔法の腕が伸びてマクスウェルの足を捕まえた。
『何!?』
 ファントムハンド。移動不能を付与するスキルだった。
 馬車はこの隙にまたマクスウェルと距離を取る。
 マクスウェルは、それでも衝撃波を放ち、馬車を破壊しようとした。
 だが、それよりも先に、マクスウェルの上に蒼い薔薇が咲いた。
 ……次元斬『蒼薔薇』。
 幾重にも重なった薔薇の花弁をなぞるように次元の断層が出現し破壊の渦に巻き込む紅薔薇の攻撃だった。
『ええい、この程度の攻撃で……!』
 マクスウェルはそれでも大剣を振り抜いた。しかし、衝撃波は飛ばされなかったのである。
『何故だ!?』
「うむ。効果があって何よりじゃ」
 紅薔薇は微笑んだ。
 そう、先ほどの次元斬には、ソードブレイカーの呪いがかけられて居たのだ。
 しばらくの間、マクスウェルは武器を使うスキルは使えない。
『……ならば、貴様らも、我が光を受けるがいい!!』
 だが、それは武器に限ったもの、魔法スキルは行使することができる。
 そして三度目の、恐慌の光が放たれた。これをまともに食らえば、戦線の壊滅は避けられない。
「ユッキー!」
 しかし、紅薔薇がユキウサギのユッキーに合図を出す。
 するともくもくと煙が立ち上り、光を遮ってしまった。
 煙水晶。このために用意して居たユキウサギのスキルだった。
 移動不能にされ、武器を使うスキルも封印、恐慌の光も遮られたとなれば、もう、マクスウェルに打つ手はなかった。
『おのれェ……、おのれ、おのれおのれ……!』
 煙で馬車の姿は見えなくなった。聞こえるのは車輪の音ばかり。
 あとから追いかけてきた妨害班のハンターたちは偶然にも、マクスウェルがレイオスを追い越したことにより、トライアンフが盾となり、恐慌の光を防いでいたのだ。
 そして、妨害班のハンターたちが再びマクスウェルを包囲する。
「それにしても、……黒くて、触覚が生えてて、高速移動して、たまに空を飛ぶ……まるでGですね」
 馬車とともに走り去る、レギンに乗った雷もそんなことを言うのだった。


 フィーナは高所を飛んでいることと、種族がエルフなこともあり、敵に追いかけ回されることもなく、彼女は無傷だった。
 魔導カメラを取り出し、次回の戦いに備えて、写真も撮っている。クレバスまでもう少し。たどり着いたらクレバスの中も写真に収める予定だ。
「あれは……?」
 そして、ついにフィーナはクレバスの中を覗きこんだ。
「ソティス姉さん、聞こえる?」
 エレメンタルコールによって、フィーナはソティスを呼び掛ける。
「いま、クレバスの中を確認したのだけど……」
 フィーナは報告した。
 クレバスは黒い闇で封鎖されている、と。
「……なんだって?」
 ソティスはナディアにいち早くそのことを伝えた。
「黒い闇、じゃと……?」
 クレバスの中はまだ地上からは見えない。
「そろそろ、3分の2ってところか……」
 厳靖が前方を確認しつつ言う。
「よし、ここから先は一気に突破する。ざくろとソティスはついてこれるな?」
 リーリー乗りの2人は頷いてこたえた。
「そんじゃ、いっちょふかしていくかね……!」
 そして、スモークカーテンを使用し、一気に馬車はスピードを上げていく。
「ざくろ、たまにはこう言うのも気持ちいいな!」
 髪をなびかせて、ソティスが楽しそうにざくろに言う。
「そうだね! この奥にあるものをこの目と心に焼き付ける大冒険だ!」
 最後の道程を、一行は最速で駆けて行く。

「おかわり、お断りだっつの!」
 先行して居たソフィアは飛来するソードオブジェクトを、運動強化に解放錬成、そして強化弾薬で破壊しながら進んで居た。
 そして、ソフィアもついにクレバスに到着する。
「なんだ、こりゃ……」
 そこにはフィーナが報告したように、闇が広がっていた。
「こいつは参ったな……総長が来るまで待つとするか」
 そして、しばらくして、馬車が到着した。
 ナディアは早速馬車を降りて、クレバスの中を覗き込む。
 ざくろも双眼鏡を用い、下を覗いてみるが、やはり暗闇があるばかりでなにも見えなかった。
「底に近づけば、何か感じられると思うのじゃ」
 それら様子を見て居た紅薔薇はそう言った。
(しかし、これはなんだというのじゃ……?)
 ナディアは考える。
(ここまできた以上、なんの成果もなしに帰るわけにはいかん。それに……)
 再び、クレバスに広がった闇を見るナディア。
(これは、虚無、かの?)
「どうすんだい、総長」
 悩んでいる風のナディアにソフィアが問いかける。
「……うむ。あの闇……おそらく虚無だと思われるもの中に入ってみようと思う。そういうわけで、グリフォンに乗せて欲しいのじゃ!!」
「そういうことね……わかった、乗りな」
 ナディアはソフィアの風月の後ろに乗せてもらった。
「じゃあ、総長のことは任せたぞ。俺は群がってくるシェオルどもを食い止めてるからよ」
 厳靖はバイクを降り、じわじわと集まって居たシェオルと対峙して居た。
「うむ。馬車は任せたのじゃ! 一瞬行って見て来るだけのつもりじゃから、すぐ戻って来る。それではクレバスの中へレッツゴーなのじゃ!!」
 こうして、ナディアと、その中について行くことにした紅薔薇は、クレバスの中へ降りていった。


 一瞬、視界が闇に包まれた。そして、にわかに光が降り注ぐ。
「ここは……?」
 虚無の中に到達したハンターたちが見たのは、どこまでも広がる花畑だった。
 負の大地からは考えられないほど静謐で暖かい空間だった。馥郁たる花の香りが肺腑いっぱいに広がる。
 そして、その花畑の中心には一本の剣が刺さっていた。
 同行した紅薔薇は内部の状況を写真に納めて居た。
「ここは、異界、かの?」
 紅薔薇が魔導スマートフォンを操作しながら言う。
「いまは詳しいことはわからん。けれどここまで来られただけでも収穫じゃ。長居はできぬ。……戻るぞ」
 ナディアたちは再び虚無の外へ出る。

「おや、戻って来ましたね」
 雷が言った。雷はクレバス到着後も戦場を駆け回り、復路のために道を切り開いていたのだ。
「中はどうでした?」
「うむ。詳しいことは帰ってからじっくりと話すつもりじゃ。とにかく、目的は達成できたのじゃ。キャンプまで戻るとしよう」
「了解。じゃ、また馬車で案内するぜ」
 厳靖が再びバイクに跨る。
「うむ。復路もよろしく頼むぞ」
 そして、厳靖はシグナルバレットで目標達成の合図を打ち上げた。


 恐慌状態だったユリアン、シガレット、Gacruxもすでに無事回復している。
「このままやられたままでは終われないな」
 ユリアンがラファルで空を飛びながら言う。
 そして、急降下でマクウウェルに襲いかかった。
 ラファルの爪を、マクスウェルは大剣で弾く。
 さらに、Gacruxが背後から忍び寄り、渾身撃でマクスウェルを打ち据えた。
「せいやぁ!」
 カレンデュラの剣もマクスウェルを斬りつける。
 トラックを運転するルネもミサイルを放ち応戦する。
『お、のれェ!!』
 マクスウェルもオーラを纏わせた大剣でハンターたちを薙ぎ払った。
「悪いが、回復は使い切った……!」
 シガレットは空中から回復していた。しかし、マクスウェルの高火力を前に、すでにスキルは使い果たしていたのだ。だが、戦闘不能者は出したものの、重体者を出すとこなく戦い続けられたのは、シガレットやジェールドヴァの回復があったからこそなのだ。
 甲高い、金属音がした。マクスウェルが振り返ると、そこには味方のCAMに隠れつつ射撃をしている星空の幻がいた。
 弾丸はマクスウェルの肩などに当たり、次々と飛来する。
「逃がさないの……」
『ええい、小賢しい……!』
「行かせません!」
 星空の幻に斬りこもうとするマクスウェルにクリスティアのジャッジメントが突き刺さる。しかし、移動不能には至らない。
「そう簡単に抜かせるものですか!」
 続いて立ちはだかるのは、R7エクスシアに搭乗したヴァルナだ。武器を振るい、マクスウェルの突進を妨害する。
「ありがとうなの……これで安心して銃が撃てるの……」
 星空の幻は引き続き射撃を続けていた。
「やっぱり質問には答えてくれないんすか!? それともあんたも何も知らないんすか?」
 馬車が走り去った方を背にした神楽が問う。もし包囲網がまた突破されることがあればいつでも幻影触手で止めるとこができる態勢だ。
『知らないのではない知る必要がないのだ! そういうのはシュレディンガーの役目よ! ……おのれ、この程度で!』
 だが、マクスウェルには答える余裕は無いようだ。それもそのはず。包囲された状態で集中攻撃を食らっていれば、累積したダメージは馬鹿にはできなかったのだ。
「もう一度行くよ、ラファル!」
 ユリアンは再び急降下して、ラファルの爪でマクスウェルを引っ掻いた。
 さらにGacruxが飛翔しながら槍を突き出す。
「グラウ!」
 グラウの攻撃が、マクスウェルの鋼鉄の体をかすめ火花をあげた。
『小賢しく空など飛びおって……!』
 その時、空からの攻撃が鬱陶しくなったのか、マクスウェルは足を撓めた。
『叩き落としてくれる!!』
 が、その時、マクスウェル向けて涙のような星が降り注いだ。
「あっ……あの時の……なんだっけ……」
 星空の幻の星の泪だった。
 そして、すかさず放たれたヴァルナの強撃がマクスウェルを撃ち落とした。
「あまりそこから動かないでいただけますか?」
 立ち上がりざまのマクスウェルに、さらに航空部隊の攻撃が浴びせられる。
「そーら、さっきのお返しだぜェ」
 シガレットのグラウから放たれたレイン・オブ・ライトがマクスウェルの脚を焼き尽くす。
 再三狙われた脚の損害は激しかった。
『おのれ、おのれェ……!』
 それを素早く誠一は見て取った。そして、マクスウェルの意識が空に向いていることも。
「皆さん、もう一度仕掛けますよ……!」
 誠一が再度地上の味方に合図する。
 そして誠一は瞬脚からランアウトでマクスウェルに回り込むように移動して、マテリアルブレードで直線上に敵を斬り裂いた。
『この程度、見切れぬと思ってか……!』
 マクスウェルはマテリアルブレードの長大な刃を、大剣で受け流す。
 攻撃は躱されてしまった。だが、誠一に焦りはない。
 そして、不敵ににやりと笑った。
「ええ、貴方ならそうくると思っていました……!」
 影祓によって、繰り出されたもう一つの攻撃が、マクスウェルの太腿を切り裂いた。
『何だと!?』
「今です!」
 そこにヴァルナが飛び込み、ハルバードを振り上げ大上段に構えた。
「これで、どうです!」
 心の刃に乗せて放たれるハルバードの一撃は回避困難だった。
 しかし、それでもマクスウェルは、大剣を掲げて、防御を成功させる。
 だが、それは致命的な隙だった。
 ガラ空きになった胴体へ、グレンに乗ったヴァイスが迫る。
「もらったァ!!」
 鋭い鎌がマクスウェルに強襲する。
 今度こそ避けることも防御することもできなかった。
 一瞬すべての音がかき消えるような凄絶な斬撃の後、響くのはマクスウェルの声だった。
『……何だと……まさか、このオレが、このような……たかがハンター風情にィ……!』
 続いて、ごとり、と重い音がした。
 落ちてきたのは黒い装甲の脚。……つまりは、マクスウェルの右足だった。
 ヴァイスは先ほどの攻撃で、マクスウェルの足を切断することに成功したのだ。
 そして、その時、クレバスの方向から調査成功の合図が上がった。
「黙示騎士マクスウェル、この人数相手に最後まで立っていた貴方に敬意を」
 ヴァイスは一人の戦士として、マクスウェルに敬意を表するが、彼はあまりの事態にその言葉も耳に入らないようであった。
「あちらも成功したようですね……」
 Gacruxは馬車から打ち上げられた合図を、他のハンターたちにも拡散するように、発煙手榴弾を投擲する。
「……撤退しましょう。これ以上は今の俺たちには無理でしょうから」
 マクスウェル妨害班も撤退を開始することにした。
『おのれ……待てェ……!』
 マクスウェルはハンターたちを追いかけようとするが、脚を失ったショックもあってか、そこまで熱心に追いかけてくることはなかった。
「殿は任せろ」
 ヴァイスが言った。
「では、俺は道を切り開きますよ」
 Gacruxはワイバーンで味方のためにドラゴンブレスで道を拓く。
 遅れてきた馬車組の錬が負傷者回収の準備をしていたため、戦闘不能者も無事キャンプへ届けられた。
 味方に大きな損害もなく、クレバスの調査を成功させ、黙示騎士マクスウェルに大打撃を与えることに成功した。これ以上の戦果はないだろう。

執筆:ゆくなが
監修:神宮寺飛鳥
文責:フロンティアワークス

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