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(ka0000)
【審判】


更新情報(7月11日更新)
決戦シナリオ「【審判】ラストジャッジメント」の各作戦にてMVPとなったハンターを、NPCと共に描いた、
審判MVPピンナップが遂に公開!
グラズヘイム王国を蝕んだテスカ教団との戦いの日々を締めくくる2枚のイラストを、是非ご覧ください!
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完成! 【審判】グランドシナリオMVPピンナップ!
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【審判】エピローグ「堕ちた光のなかで」(5月18日更新)
●あの瞬間のジャック・J・グリーヴ(ka1305)という青年の思考について
「そこな騎士よ。哀れに逃げ帰り、伝えるがよいでしょう。この“メフィスト(kz0178)”の手によって、王国と教会の光は地に墜ちたと!」
気味の悪い尾を一閃。跪くジャックの顔を大地に叩きつけると、目の前で瞬間転移をし、その場から忽然と姿を消した。
上空を支配していた巨大な魔法陣や影の騎士たちはメフィストと名乗った歪虚の撤退に合わせて消失。残るキメラも、一斉に翼を羽ばたかせ、大空へと飛び立ってゆく。
──こうして、王都に迫る史上最悪の危機は去った。沢山の命と、そして一人の青年の心と、引き換えにして。
「全軍に告ぐ。ベリト……いや、敵首魁“メフィスト”が配下と共に王国より撤退を開始。戦は……終わった。我々の敗北を、以て」
王国の為、家族の為、たったひとり、周囲の目の中で頭を垂れ、歪虚に慈悲を乞うたジャックは、未だ唇を噛み締めたまま。
こうして、法術陣を巡る歪虚メフィストとの戦いは、王国軍の実質的敗北を以て、終幕を迎えることとなった──。
●死した全ての魂へ、祈りを捧げよ
「我が神よ。今、貴方の御元に戦で命を落としたこの者達の魂を送ります。
彼らは神の栄光と地上の平穏の為に、死を恐れず勇敢に戦いました。
どうか父なるエクラの御元で安息の日々を送られますよう、エクラの御名においてお願い申し上げます」
声は朗々と厳かに、涼やかな朝の空気を震わせた。
雲一つない空に祈りの唱和が伸び上がる。
良い日和だ。せめて雨雲の一つでもあればよかったのにと、
弔う人々は祈りの陰に暗澹たる想いを隠した。
●合同葬
彼の言葉は正しい。過去が苦難に塗れていたように明日からの未来も同じ、膝をつく心の余裕はありはしないのだ。
理解するからこそユーロスも言葉を帰さない。ただ黙って、拳を握りしめた。
「最悪な時こそ、小さな勝ちを拾う必要がある。明日を生きるためにな」
ヴァージルの言葉をどう受け取ったのかはわからない。
ユーロスは不機嫌そうな顔のまま、踵を返して人混みの中に消えていった。
偶然、近くで成り行きを見守っていたジェーン・ノーワース(ka2004)は、小さく息を吐く。
「放っておくのが正解だ」
「別に、元より構うつもりなんかないけれど」
ヴァージルもジェーンも、互いに視線を交わすことはなかった。
互いに祈り捧げる相手も、思いも、何もかも交わることなどない。
「私がここにいるのは、生者のエゴ。ほかならぬ私のエゴ。他者のエゴまで追う余裕なんてないわ」
ただ。もし思う事があるのだとしたら。
「……戦いは失敗に終わったわ。それでも、個人として精一杯出来得る全てを務めたと思うのならば、この結果を、自分自身を、そして未来を……否定して欲しくはないわ。それだけ」
この戦いで得たものは決して少なくない。
それでもなお、自分達は喪失のサイクルにとらわれている。
答えは出なくとも、それぞれが其々の在り方で今を受け止め、そしてそれでも足掻かねばならないと──多くの者が、理解していた。
そうでもしなければ、敗戦の中でただ一つ得たものを、失ってしまうような気がしていた。
晴れのち曇り、時に雨。多様な日々の中、時に光が翳る日もあるだろう。
だが、人々の心から希望が消えない限り、決して“真の敗北は来ない”。
昨日の敗戦を、明日の力に変えて。
光の千年王国は、今日を歩み出す。決して翳らぬ、強い意志をもって。
──考えてみりゃ、このクソ天使の襲撃があったからこそ、俺たちは法術陣ってもんを知ることが出来たワケだ。 先の王国北方動乱の折、最後に発動した法術陣について、騎士たちの反応を見てきた限りじゃ、どうも王国の内部にもこの術に関する仔細は伝わっていなかった。 ……これは、ゲオルギウスの爺の“密偵”として諜報活動を続ける傍らで気付いたことでもあったが。 ともかく、だ。ならばなぜ、歪虚がそれを知り得ていたのか? 可能性はいくつかある上に、最も馬鹿げた話だが、一番手っ取り早えのは王国から直接情報が流れることだ。 この状況下で思い出したのは、ある男の顔。 王国の放蕩貴族で、王家の傍流でありながら“異端審判にかけられた”……つまり“歪虚と通じた嫌疑”をかけられたあのふざけた男、ヘクス・シャルシェレット(kz0015)だ。 先の飲み会で接触した時、ヤツはベリト(kz0178)に対して【『それ』は知らない】と言った。 はッ、胡散臭ぇにも程がある。“他は知ってる”、とでも言いてぇのかよ。 ……冷静に考えろ。 「それ」「は」「知らない」というヤツの言葉を、そのニュアンスを、寸分違わず思い出せ。 あのクソムカつく、ニヤついた惚け顔ごとだ。 つまり、恐らく。 俺が都合よく受け取って構わねぇなら。あの言葉の意味を推し量るなら。 『ベリト』という存在は、一体どこから来やがった──? ●真実の、その答え あの時、あの瞬間、青年の心がどれほどの屈辱に塗れたか、言い表すことなどできはしない。 ジャックの理想は、誰より気高く、そして誰より強い志を持っていた。 この国を変えると、そう言いきって憚らない青年の見せる理想に、どれほどの人間が魅せられただろう。 ベリトにして“王国の理想の光の体現者”と言わしめるこの青年の想い、その全てが“その在り方”に詰まっていた。 跪き、頭を垂れ、慈悲を乞う──その苦渋の行動に。 「……はは……ふははは……!!」 異形は笑い声をあげ、そして口元に残虐なまでの愉悦をのぞかせて言い放った。 「金色の騎士よ、やはり貴方は賢い! よいでしょう。お前の懇願、この私が聞き届けて差し上げましょう」 その時、黒い騎士隊の壁を切り伏せて現れたのは──王国騎士団長、エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)だった。 「その姿……ついに、ふざけた皮を脱ぎ捨てたか」 エリオットの目の前には、見たこともない異形の歪虚と、それを前に跪くジャックの姿があった。 見渡す周囲のハンターたちもみな満身創痍の状態なのだが、そこには未だ折れない心で武器を握る者も居る。 「ジャック・J・グリーヴ!! てめえ……ッ!! 勝手な真似、してんじゃ、ねえ……ッ!!」 仲間の治療を受けながら、すり切れた体を気力だけで支え、それでもなお槍を構えようと噛み付くウィンス・デイランダール(ka0039)だ。 「まだだ、まだ……ッ! 俺は、やれる……! まだ……ッ」 ──けれど。それを、ほかならぬジャックが制した。 ウィンスも賢い少年だ。彼の頭では、既に事態について正しい理解がなされていたはずだ。 だからこそ、『想像を絶する嫌悪感に苛まれながら跪かざるを得なかった』ジャックの姿を前に、 「まだ終わっちゃいねえ」──その最後の言葉を、口にすることができなかった。 既に、“事は終わった”のだから。 未だ空には魔法陣から覗く黒刃が“取引不成立”の瞬間がこないよう戦場全ての生命に突き付けられている。 エリオットも、この事態を把握するのに時間を要さなかった。 そんな騎士に気付いた様子で、蜘蛛の異形は口元を歪めて笑う。 |
![]() ![]() グランフェルト ![]() ![]() ![]() ![]() |
気味の悪い尾を一閃。跪くジャックの顔を大地に叩きつけると、目の前で瞬間転移をし、その場から忽然と姿を消した。
上空を支配していた巨大な魔法陣や影の騎士たちはメフィストと名乗った歪虚の撤退に合わせて消失。残るキメラも、一斉に翼を羽ばたかせ、大空へと飛び立ってゆく。
──こうして、王都に迫る史上最悪の危機は去った。沢山の命と、そして一人の青年の心と、引き換えにして。
「全軍に告ぐ。ベリト……いや、敵首魁“メフィスト”が配下と共に王国より撤退を開始。戦は……終わった。我々の敗北を、以て」
王国の為、家族の為、たったひとり、周囲の目の中で頭を垂れ、歪虚に慈悲を乞うたジャックは、未だ唇を噛み締めたまま。
こうして、法術陣を巡る歪虚メフィストとの戦いは、王国軍の実質的敗北を以て、終幕を迎えることとなった──。
●死した全ての魂へ、祈りを捧げよ
「我が神よ。今、貴方の御元に戦で命を落としたこの者達の魂を送ります。
彼らは神の栄光と地上の平穏の為に、死を恐れず勇敢に戦いました。
どうか父なるエクラの御元で安息の日々を送られますよう、エクラの御名においてお願い申し上げます」
声は朗々と厳かに、涼やかな朝の空気を震わせた。
雲一つない空に祈りの唱和が伸び上がる。
良い日和だ。せめて雨雲の一つでもあればよかったのにと、
弔う人々は祈りの陰に暗澹たる想いを隠した。
●合同葬
重く響く大聖堂の鐘の音が、葬儀の終わりを告げた。 合同葬を終えたばかりのヴィオラ・フルブライト(kz0007)は、体に馴染まぬカソックをそのままに、死者の名が列記された帳簿を眺めていた。 そこにはヴィオラに馴染みのある名も含まれている。前線で戦った聖堂戦士団にも大きな被害が出ていたのだ。 それほどに苛烈な戦いだったのだと、今更ながらに思い知る。 幸いにも戦場の後処理を十分に行えた為に行方不明者は少なく、多くの遺体を遺族や率いていた兵団に返却する事ができた。 一方で民間人の被害はほぼ最小限といえる範囲で収まった。 黒大公ベリアルの襲撃以後に避難計画を策定しておいたおかげで、ほとんど市民が戦域の反対側に避難している。 城壁の被害は甚大ではあったが、市街は巨大なケンタウロスの歪虚に踏み潰された場所にのみ被害が集中していた。 多くの人の日常生活に影響はない。城壁も修復の準備が始まっており、現れた歪虚の規模に比して言えば奇跡的といえる範囲の小さな損害だ。 ここまでの話を、ヴィオラは全て終わった後から王国騎士団長エリオットと副長ゲオルギウスから聞かされていた。 戦況を時系列で説明する2人の話に、自分の話題がないのは久しぶりであった。 「……私は……これが恐ろしかったのですね」 ヴィオラは感情を噛み締めながら息を吐く。 ヴィオラはこの戦いの最中は法術陣の起動に掛り切りで、一歩も大聖堂の外に出ることはなく、戦いの場に出ることはなかった。 それは他の聖堂戦士達や騎士団を信頼してのことではあった。 同時に、自分が預かり知らぬところで人が死ぬ恐怖を、改めて思い知ったのである。 ただ、その一歩を踏み出したことは大きな進歩と言えるだろう。代償は、小さくはなかったが……。 関係者の懊悩を他所に、昼を過ぎても葬列は絶えなかった。祈りを捧げるのは民間人のみならず、居合わせた貴族や将兵たちも居る。 この国に住む者達が分け隔てなく、彼らの奮戦を讃え、彼らの死を悼んでいた。 葬列を見守る人だかりの中には、ユーロス・フォルケ(ka3862)の姿があった。 ユーロスは葬列に並ぶ人の顔を一人ずつ確認し、最後は苦い顔のまま俯いていた。 「まだ不貞腐れているのか?」 ユーロスは振り向かずとも後背より現れた声の主が誰かわかった。 ヴァージル・チェンバレン(ka1989)はユーロスとは違い、いつもと変わらない冷徹な目で葬列を眺めている。 「俺達は負けた。その結果がこれだ」 「そうだな。だが、それが何だというのだ。生き残ってしまったのなら、否応なく次が来るぞ」 |
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理解するからこそユーロスも言葉を帰さない。ただ黙って、拳を握りしめた。
「最悪な時こそ、小さな勝ちを拾う必要がある。明日を生きるためにな」
ヴァージルの言葉をどう受け取ったのかはわからない。
ユーロスは不機嫌そうな顔のまま、踵を返して人混みの中に消えていった。
偶然、近くで成り行きを見守っていたジェーン・ノーワース(ka2004)は、小さく息を吐く。
「放っておくのが正解だ」
「別に、元より構うつもりなんかないけれど」
ヴァージルもジェーンも、互いに視線を交わすことはなかった。
互いに祈り捧げる相手も、思いも、何もかも交わることなどない。
「私がここにいるのは、生者のエゴ。ほかならぬ私のエゴ。他者のエゴまで追う余裕なんてないわ」
ただ。もし思う事があるのだとしたら。
「……戦いは失敗に終わったわ。それでも、個人として精一杯出来得る全てを務めたと思うのならば、この結果を、自分自身を、そして未来を……否定して欲しくはないわ。それだけ」
この戦いで得たものは決して少なくない。
それでもなお、自分達は喪失のサイクルにとらわれている。
答えは出なくとも、それぞれが其々の在り方で今を受け止め、そしてそれでも足掻かねばならないと──多くの者が、理解していた。
そうでもしなければ、敗戦の中でただ一つ得たものを、失ってしまうような気がしていた。
晴れのち曇り、時に雨。多様な日々の中、時に光が翳る日もあるだろう。
だが、人々の心から希望が消えない限り、決して“真の敗北は来ない”。
昨日の敗戦を、明日の力に変えて。
光の千年王国は、今日を歩み出す。決して翳らぬ、強い意志をもって。
関連NPC
エリオット・ヴァレンタイン(kz0025) | |
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グラズヘイム王国が誇る最強の王国騎士団を率いる青年。
真面目だが柔軟性に欠け、懸命だが生きるには不器用。
芯が強く、一度信じたものは、最後まで信じ、守りぬきたいと願う。 テスカ教団襲撃事件に端を発した王国最大の危機を乗り切れたことを事実として受け入れているものの、その表情は硬い。 此度の戦いで大きな課題を抱える事になるが、“共に戦う者”の存在を認めることで一つ前に進むことができた。 |
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イラスト:藤井美雪 |
ヴィオラ・フルブライト(kz0007) | |
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聖堂教会の保有する聖堂戦士団を率いる女団長。教会における位は司教。
厚い信仰心、優れた判断力を持つ才女。 天使ベリトとの決戦以後は騎士団と重複の多かった業務を改め、協調を重視した体制へ移行するために関係各所の調整に奔走している。 |
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イラスト:神崎恭一 |
メフィスト(kz0178) | |
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“死を謳う天使”、ベリトと呼ばれていた歪虚。 美しい天使の姿をしていたが、此度の最終決戦でその真の姿が明らかになった。 この歪虚の名は、メフィスト。ここまでの交戦情報から「十三魔クラスに匹敵する力」をもつ「傲慢」の歪虚であることが判明。 人型で高貴さを漂わせる姿をしてはいるが、その姿はまるで蜘蛛の悪魔。 ハンターらによって「闇の属性を持つ歪虚」であることも明らかになった。 |
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イラスト:mati. |