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【詩天】


更新情報(4月6日)
【詩天】グランドシナリオ「会者定離」のリプレイが公開されました!
憤怒王を名乗り、かつての領土と血を取り戻さんとする三条仙秋。
詩天の地と血を巡る戦いに挑んだハンターたちの結末は……?
長らく続いた【詩天】連動シナリオもグランドフィナーレ!
リプレイとその結果を受けたエピローグノベルをぜひご確認ください!
憤怒王を名乗り、かつての領土と血を取り戻さんとする三条仙秋。
詩天の地と血を巡る戦いに挑んだハンターたちの結末は……?
長らく続いた【詩天】連動シナリオもグランドフィナーレ!
リプレイとその結果を受けたエピローグノベルをぜひご確認ください!
▼グランドシナリオ「会者定離」(3/16?4/6)▼
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【詩天】ストーリーノベル「ひとまずの平穏」(4月6日更新)
●
何処までも続く青空。
照らす太陽は、いつにも増して輝くように見える。
若峰の街をいつものように巡回する『即疾隊』。
以前よりも歪虚の脅威が減ったの彼らのおかげなのだろうか。

「おはようさん」
巡回する壬生 和彦(kz0205)へ老婆が挨拶をする。
それほど親しい間柄ではないのだが、同じ巡回路を歩くうちに顔馴染みになってしまったのだ。
「おはようございます」
「早くから頑張ってるねぇ。帰りにうちへ寄りな。握り飯ぐらいは出してあげるよ」
老婆は洗濯の準備を進めながら、皺が多く刻まれた笑顔を浮かべる。
俺が握り飯。
九代目詩天が絡んだ千石原の乱で、父親や同門の士が倒れていった。
いつの日か九代目詩天への復讐を、と考えていた時期もあった。だが、気付けば若峰の市民を守るために街を巡回している自分がいる。
数奇な運命なのか。
はたまた選択の結果なのか。
ただ、明確な事は和彦自身がこの日常を悪くないと考えている事だ。
剣と義に執着する事もできた。
しかし、その果てに何が残る?
歪虚となり再会を果たした父は、将来の自分かもしれない。
――否。
「ありがとうございます。後程、伺わせていただきます」
和彦は、謝意を述べた後で再び歩き出す。
父と自分は、血を分けても別人だ。
歪虚となってしまった父と同じ道を歩むとすれば、それは自分の不徳だ。
もっとも、歪虚になりかけたとしても今回の戦いで出会った多くの者達が止めてくれるはずだ。
誰も一人では生きていけない。
誰かの背中に頼っても、良いのだ。
見上げた空は、いつもより少しだけ青く見えた。
●
新たな憤怒王を名乗っていた初代詩天、三条 仙秋が消えて数日。
蓬生も姿を消し、導き手を失った憤怒の残党達は、散っていって、いずれは数を減らして行くのだろう――。
「そうですか……。そういう事だったのですね……」



「はい。亡き父との約束とはいえ、長いことお柱様、及び立花院様を謀り大変申し訳ございませんでした。いかような罰も受ける所存です」
ふむ、と考え込む立花院 紫草(kz0126)に深々と頭を下げる三条 真美(kz0198)と水野 武徳(kz0196)。
九代目詩天とその軍師である2人は、憤怒王討伐の立役者として征夷大将軍である紫草に天ノ都に招かれ、憤怒王討伐の経緯と詩天での事件のこと……そして、長らく秘密にしていた真美の出生について話をしていた。
「……恐れながら征夷大将軍様に申し上げます。真美様は幼き身。先代様のお言葉に従うのも已む無きこと。どうぞご寛大な措置を願いたく」
「その件でしたら気にしないでください。嫡子がいない家が女子を男子として育てることは、よくあることですから。憤怒王討伐の立役者をそんな理由で叱ろうものなら、私が笑い者になりますよ」
そう言いにっこりと笑う紫草。その笑みに含みを感じて、武徳は身を固くする。
「あの、ですが……。本当に宜しいのでしょうか……。申し訳ない気がするのですが……」
「真美さん……いえ、真美姫とお呼びした方がいいのでしょうか。それでは一つお願いを聞いて戴いて宜しいですか?」
「はい。私で出来ることでしたら!」
「もし宜しければスメラギ様とお友達になって戴けませんか?」
「は……? え?」
ビシッと正座をし直して、紫草の言葉を待っていた真美。
にこやかに続いた言葉に、少女はキョトンとして……。
それに武徳が何かを感じたのか、紫草に鋭い目線を向ける。
「……立花院様、それはどういった意味合いでございますかな?」
「深い意味はありませんよ。詩天の国の頭首殿は優秀な符術師であると聞いています。しかも、憤怒王を討伐した力とあらばその実力は間違いない。そう言った方に近くにいて戴けたら、我が君にとても良いことですから」
「左様に御座いますか……」
「勿論断って戴いても構いませんが」
「あ、いえ……お友達は素敵です。お友達になるのは良いことだと思います」
「そうですか。武徳殿。真美姫は素直な良い方ですね」
「……は、有り難きお言葉に存じます」
「あの。立花院様。スメラギ様とお友達になるにはどうしたら宜しいでしょうか。確か今は西方にいらっしゃるとお伺いしたのですが……」
「近いうちに顔合わせの機会をご用意しましょう。折角ですからのんびりできるような場所がいいですね。その際は是非ご出席ください」
「はい。畏まりました」
深い笑みを浮かべる立花院に深々と頭を下げる真美。
武徳もそれに倣いつつ、何か腑に落ちぬものを感じていた。
「紫草様。あのようなことを言って宜しいのですか?」
「何がです?」
「九代目詩天様ですよ。スメラギ様とお友達などと……体の良い見合い話ではありませんか」
「……そこまで露骨でしたかねえ」

朱夏(kz0116)の指摘にははは……と笑いを返す紫草。
ふと、彼は真顔になって続ける。
「でも、真美姫が女子であったことは渡りに船だと思いませんか? 13歳と9歳。符術師同士。家柄も問題なく間違いなく実力もある。素晴らしいことです」
「それはそうかもしれませんが……」
「大体、見合いだなんて言ったら間違いなくスメラギ様は来ませんからね。お友達くらいが丁度いいんですよ」
朱夏に笑みを返して、お茶を啜る紫草。
流石子供の頃から育てただけあって、彼は帝の性格を熟知していた。
詩天の黒狗城。執務室に戻り難しい顔をする武徳。
――詩天の危機的状況は去った。
だが、国内はまだ歪虚の侵攻の傷跡が深く、落ち着いた状況には程遠い。
更にはその歪虚の被害のせいで国家としての財政も厳しい。
城内もお家騒動から家臣達のまとまりも宜しくない状況が続いている。
そんな折に湧き上がった真美とスメラギの話。
――先日の大輪寺での戦い。幸い、風待の親分が呪詛を破壊したことで幕府側からの表立った動きはないが、幕府が呪詛を破壊していたとなれば更なる要求があった可能性が高い。
この事情と、そしてこの状況で、幕府の手が伸びて来たとしたら……。
これはまた、別な意味での『危機的状況』なのかもしれない。
「ふむ……。これは、ちと不味いやもしれんな……」
武徳はしばし考え込むと、長和紙に筆を走らせ始めた。
照らす太陽は、いつにも増して輝くように見える。
若峰の街をいつものように巡回する『即疾隊』。
以前よりも歪虚の脅威が減ったの彼らのおかげなのだろうか。

壬生 和彦
巡回する壬生 和彦(kz0205)へ老婆が挨拶をする。
それほど親しい間柄ではないのだが、同じ巡回路を歩くうちに顔馴染みになってしまったのだ。
「おはようございます」
「早くから頑張ってるねぇ。帰りにうちへ寄りな。握り飯ぐらいは出してあげるよ」
老婆は洗濯の準備を進めながら、皺が多く刻まれた笑顔を浮かべる。
俺が握り飯。
九代目詩天が絡んだ千石原の乱で、父親や同門の士が倒れていった。
いつの日か九代目詩天への復讐を、と考えていた時期もあった。だが、気付けば若峰の市民を守るために街を巡回している自分がいる。
数奇な運命なのか。
はたまた選択の結果なのか。
ただ、明確な事は和彦自身がこの日常を悪くないと考えている事だ。
剣と義に執着する事もできた。
しかし、その果てに何が残る?
歪虚となり再会を果たした父は、将来の自分かもしれない。
――否。
「ありがとうございます。後程、伺わせていただきます」
和彦は、謝意を述べた後で再び歩き出す。
父と自分は、血を分けても別人だ。
歪虚となってしまった父と同じ道を歩むとすれば、それは自分の不徳だ。
もっとも、歪虚になりかけたとしても今回の戦いで出会った多くの者達が止めてくれるはずだ。
誰も一人では生きていけない。
誰かの背中に頼っても、良いのだ。
見上げた空は、いつもより少しだけ青く見えた。
●
新たな憤怒王を名乗っていた初代詩天、三条 仙秋が消えて数日。
蓬生も姿を消し、導き手を失った憤怒の残党達は、散っていって、いずれは数を減らして行くのだろう――。
「そうですか……。そういう事だったのですね……」

立花院 紫草

三条 真美

水野 武徳
ふむ、と考え込む立花院 紫草(kz0126)に深々と頭を下げる三条 真美(kz0198)と水野 武徳(kz0196)。
九代目詩天とその軍師である2人は、憤怒王討伐の立役者として征夷大将軍である紫草に天ノ都に招かれ、憤怒王討伐の経緯と詩天での事件のこと……そして、長らく秘密にしていた真美の出生について話をしていた。
「……恐れながら征夷大将軍様に申し上げます。真美様は幼き身。先代様のお言葉に従うのも已む無きこと。どうぞご寛大な措置を願いたく」
「その件でしたら気にしないでください。嫡子がいない家が女子を男子として育てることは、よくあることですから。憤怒王討伐の立役者をそんな理由で叱ろうものなら、私が笑い者になりますよ」
そう言いにっこりと笑う紫草。その笑みに含みを感じて、武徳は身を固くする。
「あの、ですが……。本当に宜しいのでしょうか……。申し訳ない気がするのですが……」
「真美さん……いえ、真美姫とお呼びした方がいいのでしょうか。それでは一つお願いを聞いて戴いて宜しいですか?」
「はい。私で出来ることでしたら!」
「もし宜しければスメラギ様とお友達になって戴けませんか?」
「は……? え?」
ビシッと正座をし直して、紫草の言葉を待っていた真美。
にこやかに続いた言葉に、少女はキョトンとして……。
それに武徳が何かを感じたのか、紫草に鋭い目線を向ける。
「……立花院様、それはどういった意味合いでございますかな?」
「深い意味はありませんよ。詩天の国の頭首殿は優秀な符術師であると聞いています。しかも、憤怒王を討伐した力とあらばその実力は間違いない。そう言った方に近くにいて戴けたら、我が君にとても良いことですから」
「左様に御座いますか……」
「勿論断って戴いても構いませんが」
「あ、いえ……お友達は素敵です。お友達になるのは良いことだと思います」
「そうですか。武徳殿。真美姫は素直な良い方ですね」
「……は、有り難きお言葉に存じます」
「あの。立花院様。スメラギ様とお友達になるにはどうしたら宜しいでしょうか。確か今は西方にいらっしゃるとお伺いしたのですが……」
「近いうちに顔合わせの機会をご用意しましょう。折角ですからのんびりできるような場所がいいですね。その際は是非ご出席ください」
「はい。畏まりました」
深い笑みを浮かべる立花院に深々と頭を下げる真美。
武徳もそれに倣いつつ、何か腑に落ちぬものを感じていた。
「紫草様。あのようなことを言って宜しいのですか?」
「何がです?」
「九代目詩天様ですよ。スメラギ様とお友達などと……体の良い見合い話ではありませんか」
「……そこまで露骨でしたかねえ」

朱夏
ふと、彼は真顔になって続ける。
「でも、真美姫が女子であったことは渡りに船だと思いませんか? 13歳と9歳。符術師同士。家柄も問題なく間違いなく実力もある。素晴らしいことです」
「それはそうかもしれませんが……」
「大体、見合いだなんて言ったら間違いなくスメラギ様は来ませんからね。お友達くらいが丁度いいんですよ」
朱夏に笑みを返して、お茶を啜る紫草。
流石子供の頃から育てただけあって、彼は帝の性格を熟知していた。
詩天の黒狗城。執務室に戻り難しい顔をする武徳。
――詩天の危機的状況は去った。
だが、国内はまだ歪虚の侵攻の傷跡が深く、落ち着いた状況には程遠い。
更にはその歪虚の被害のせいで国家としての財政も厳しい。
城内もお家騒動から家臣達のまとまりも宜しくない状況が続いている。
そんな折に湧き上がった真美とスメラギの話。
――先日の大輪寺での戦い。幸い、風待の親分が呪詛を破壊したことで幕府側からの表立った動きはないが、幕府が呪詛を破壊していたとなれば更なる要求があった可能性が高い。
この事情と、そしてこの状況で、幕府の手が伸びて来たとしたら……。
これはまた、別な意味での『危機的状況』なのかもしれない。
「ふむ……。これは、ちと不味いやもしれんな……」
武徳はしばし考え込むと、長和紙に筆を走らせ始めた。
関連NPC
立花院 紫草(kz0126) | |
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エトファリカ武家四十八家門、第一位立花院家当主にして「八代目征夷大将軍」。 スメラギが西方へと出向いている現状、エトファリカ連邦国の統治者の一人でもある。 |
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イラスト:KAXAK |
三条真美(kz0198)
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四十八家第四十位。詩天九代頭首。齢9歳。 幼い頃から周囲の期待を浴びる中で処世術に長け、年齢に対して大人びている。 頭首に就任した後、ずっと詩天の州都、若峰にいるものと思われていたが、身分を隠し、村を襲う泥田坊の事件に対応。 そこに同行したハンターに心を開き、自らの正体を明かすこととなった。 |
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イラスト:徒月トリ |
水野 武徳(kz0196)
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![]() |
三条家に仕える古参の武将。軍師。年齢は五十代。男性。 知略に長け、老いて未だ健在。人手不足の三条家において軍政だけでなく内政にも辣腕を振るうが、本人は激務でサボりたいと願っている。 朝令暮改が多く周囲の人間を振り回す傾向がある。 |
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イラスト:カラノハ |
朱夏(kz0116) | |
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![]() |
武家四十八家門第一位、立花院家に仕える舞刀士。 有事の際には幼き頃より磨いた剣技で敵を倒すが、普段は自らを制して礼儀を重んじている。 「八代目征夷大将軍」立花院紫草を上様と呼び深い敬愛を持っている。聖地奪還の折に東方より救援部隊として駆けつけた。 |
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イラスト:ゆらり |