ゲスト
(ka0000)
稲妻が轟く岩場
マスター:雨龍一

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/19 19:00
- 完成日
- 2015/02/12 15:59
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ひぃぃ……」
また、近くで雷が落ちた。
この近辺では、少しだけ雷が多い。そして今、空は暗闇に包まれてはいない。
「山が怒ったのかのぉ」
「それを言うなら空が、じゃないの?」
大きな都市が遠い村では、近くで起こった事すら情報が遅かったりする。
集める手段がないのだ。
「んじゃ、おいらがいってくる」
若者が一人立ち上がると、すぐさまそれに追従する者が現れる。
結局、村では雷がよく落ちると言われる岩山まで様子を見に行こうということになった。
「リブロ……大丈夫かなぁ」
村の中で代表で行ったリブロは、窓の外を眺めるグラシアの幼馴染だった。
一緒に行った者たちも、この村ではかかせない若者たちである。グラシアも行きたかったが、彼女には何も役に立てることがない。彼女ができることは、ただただ無事を祈る事ばかりである。
遠くで、また空が光った。雷が落ちたようだ。
突然、部屋の扉が開いた。
「グラシア……。落ち着いて、聞くのよ?」
悲壮な顔の母親が立っている。
一瞬、当たりの景色が暗闇に染まるように感じたが、ゆっくりと体を立て直しこくりと頷いた。
「ソニアが、戻ったわ」
リブロと一緒にいった、彼女の弟だ。
「ど、どうだったの? 他の人は?」
「……肩に大きく傷を受けて、戻ってきたわ。他の者たちはいないの」
今は手当てを受けていると聞くも、ずきり、胸が痛む。
「……何が、居たの?」
ソニアが気になる。そして、一緒に帰ってきていないリブロ達も気になる。
「それは――」
語られたのは、御伽噺に出てくるような――そんな代物だった。
また、近くで雷が落ちた。
この近辺では、少しだけ雷が多い。そして今、空は暗闇に包まれてはいない。
「山が怒ったのかのぉ」
「それを言うなら空が、じゃないの?」
大きな都市が遠い村では、近くで起こった事すら情報が遅かったりする。
集める手段がないのだ。
「んじゃ、おいらがいってくる」
若者が一人立ち上がると、すぐさまそれに追従する者が現れる。
結局、村では雷がよく落ちると言われる岩山まで様子を見に行こうということになった。
「リブロ……大丈夫かなぁ」
村の中で代表で行ったリブロは、窓の外を眺めるグラシアの幼馴染だった。
一緒に行った者たちも、この村ではかかせない若者たちである。グラシアも行きたかったが、彼女には何も役に立てることがない。彼女ができることは、ただただ無事を祈る事ばかりである。
遠くで、また空が光った。雷が落ちたようだ。
突然、部屋の扉が開いた。
「グラシア……。落ち着いて、聞くのよ?」
悲壮な顔の母親が立っている。
一瞬、当たりの景色が暗闇に染まるように感じたが、ゆっくりと体を立て直しこくりと頷いた。
「ソニアが、戻ったわ」
リブロと一緒にいった、彼女の弟だ。
「ど、どうだったの? 他の人は?」
「……肩に大きく傷を受けて、戻ってきたわ。他の者たちはいないの」
今は手当てを受けていると聞くも、ずきり、胸が痛む。
「……何が、居たの?」
ソニアが気になる。そして、一緒に帰ってきていないリブロ達も気になる。
「それは――」
語られたのは、御伽噺に出てくるような――そんな代物だった。
リプレイ本文
「一匹では終わらない可能性があるな……」
集めた情報を元に僅かながらの作戦を立てた後、岩場へと向かいながらヴァイス(ka0364)は溜息を零した。
村人の話では岩山で雷が落ちるのがいつものこと――というわけでもなさそうであるが。
「……それでも、可能性は否定できない」
雑魔であるなら問題はないが幻獣となると、もしかしたら棲家にしている可能性も否定できない。
現在確認されているのは一匹ではあるが、複数いる可能性もあることに身を引き締める。
歩き始めて40分ほどたったところだろうか、ソニアから聞いた現場の状況を書き込んだ簡易地図を片手にセレナ・デュヴァル(ka0206)とクリスティーネ=L‐S(ka3679)が話し込みながら歩いていると近くから轟音が響き渡ってきた。
どうやら近くに来たようである。
交わされていた作戦をもう一度確認し、現場である岩山へと近づいたのだった。
●
「まずはこっちに注意を引かせねぇとな」
柊 真司(ka0705)は手元のアサルトライフルを構えると、少し離れた位置のシュマ・グラシア(ka1907)に合図を出す。
蜥蜴は足元に転がる村人へは視線を向けていなかった。
囲まれた岩山の中央――やや高台へとなっている所で優雅に光を浴びているのだ。
「負傷してる一般人もいる事だし、早いとこ片付けねぇとな」
雷獣の注意を引いた隙を狙えと言っているようだ。
「……いざ、参る」
同じく囮を買って出ている蘇芳 和馬(ka0462)もまた走り出す。ニヤリと口角を上げているところを見ると、どうやらやる気が上回っているようだ。
そんな彼らの動きを見つつ、シュマは集中をしコトノハを紡いだ。
「スリープクラウド」
物音に反応したのか、光を浴びるのをやめ視界の隅に入った物体を追い始めた雷獣が、途端にバランスを崩す。
どうやら僅かながらでも効きがあるらしい。
チャンスを感じ、脇に控えていたセレナとクリスもまた飛び出した。
視界に捉えている村人の保護へと向かったのだ。
蜥蜴からは注目がないのが幸いし、どうやら息があるらしい。
幸い岩場への距離も遠くもないことから、意識が無いものを運び込むのは何とかなりそうである。
保護する現場とは反対側を位置取り、ヴァイスは警戒態勢をとる。
今はどうやら安全であるが、油断はできない。その時を考え、備えている。
無事にセレナとクリスが保護の元へと到着すると、素早く対象の状態を確認した。
幸い保護対象者自体はまとまっていたため、大きく移動することはない。
しかしながら、青年たちといえど気を失っている大人を4人。流れ出る血を止めながら、クリスはスリープが運び出す時間まで持たないだろうと考える。
先に動き出したのはセレナだった。
一人を担ぎ上げると、引き摺る様にと近くの死角へ動き出す。
その直後、暫し動きが止まったと見えた蜥蜴に異変を感じシュマがもう一度唱えようとするが、どうやらうまくいかないらしい。
蜥蜴の尻尾がまず動いた。
「もう回避はできないようだな」
ヴァイスは小さく息をつくと攻撃態勢へと入った。
次の瞬間、柊のアサルトライフルの音が周囲へと響き渡った。
雷と共に、衝撃を齎すブレスが飛び交う。
「弱点かどうかわからねぇが、すごく気になるんだよなぁ……とりあえず狙ってみるぜ」
額から出ている突起物は、どうやら僅かに光を帯びると雷を落としていくようなのだ。
「おー、暴れてまシュねー。暴れあばれアバレまくりでシュねー」
ニヤリとシュマの口角も上がる。
大きさ的には小さいかもしれないが、普通の刃よりも魔法による刃の方が確実にダメージを与えているようで、喰らうたびに大きく蜥蜴の体は揺れるのだ。魔法弾もよく効いているようである。
始まった戦闘は、既に普通の雑魔なら終わる時間を過ぎていた。
村人を運び出してから既に2人が回収され、今もまたクリスとセレナの小さなやり取りの中、一人が引きずるように回収されていく。
保護した先で、酷い傷については素早くクリスが応急処置を施していた。
すでに折れた腕には痛々しいほど包帯が巻かれている。ただ、意識は残念ながら戻っていない。
死角に村人が収まったことを確認し、セレナは攻撃へと体制を変える。
クリスは引き続きより安全な場所への移動を開始していく。
足元が悪いため、先程もそうだったが、やはり時間がかかるようだ。
そこから注目を避けるように、蜥蜴の近くへ近づきつつ攻撃をかわす蘇芳は時折刀で切り付けていく。
「……別に倒しても構わんのだろう?」
目的は囮だ。だが当りがある以上それは大きな攻撃へとなりうるのだ。
慎重に……だが楽しげに刀を振り回していく。
その対象が、時に蘇芳、また柊、ヴァイスへと移り変わっていく。
決して一か所ではなく複数へと散らすことにより被害は少なくなっていく。
また、シュマと攻撃へと転換したセレナによる魔法攻撃は大きく痛みを伴わせている。
死角をうまく利用しているが、喰らった後は確実にその方向への攻撃へと移るためだ。
単純な構造である頭を利用し、その直後に遠距離からの辺りを入れると、何をしようとしていたのだろうかと攻撃が一時中断し、再び衝撃が当たった方へと進んでくることを利用し、攻撃をかわしていく地味な持久戦へと変わりつつあった。
「あぶねぇ、防御障壁展開!」
保護した村人を運んでいるクリスに向かって襲いかかる尻尾を、柊はカバーに入る。
展開された防御壁が僅かながら反応が遅れていたクリスの背中を助けた。
「……その隙、貰った」
弾かれた衝撃でバランスを崩したところへ蘇芳の景幸が額の突起物へと痛恨の一撃を見合った。
金属音に近い音を響かせ、とうとう額の突起物が折れる。
その直後、凄まじい咆哮と共に蜥蜴は大きく仰け反った。
そして轟音が響き渡る。
雷獣が、倒れる音だった。
「げっとおーん」
小さく拳を握りしめたシュマはすぐにいろいろ考え始めた。
――目の前には巨大な獣。しかし蜥蜴……蜥蜴か――
焼いたら食べれるかなと思いつつも、あまり美味しくないかもと眉間に皺を寄せる。
でもでも……と、僅かながらに口腔内へと集まる水分を嚥下した時だった。
「いやでシュ!!!」
目の前で砂のように崩れ始める雷獣に思わず悲惨な声を上げる。
村人の介抱へと向かっていた他の者たちはそんなシュマを見つめ、そっと溜息をついたのだった。
●
「ありがとうございますっ」
雷獣の元から暫し、意識を取り戻させた村人たちに肩を貸し、一同は村へと戻った。
無事に戻ってきたことに、村人たちは深々とお礼をし、そして傷ついている身体をすぐさま手当しだす。
村長に雷獣を倒した経過と保護した村人たちの状況を説明すると感謝の言葉を貰い、暫し村で体を休めていくことを勧めらる。
その言葉に頷くと、細やかながら歓迎の宴が始まったのだった。
「んで、素材に出来るんでシュか?」
キラキラと光る突起物を片手に村長へと詰め寄ったシュマは、それまたキラキラと目を輝かせている。
どうやら雷獣を倒した後に現場に残ったものを持ち込んだようだ。
「へ……へぇ……。わしらの村では、確かに使えるやもしれませんが……ハンターさんたちには無理かと」
少し渋い顔で応える。
「ふぇ?」
かくりと顔を傾げると、後ろから小さく声がする。
「……加工が困難」
振り返ると、表情を動かさないセレナがいた。その言葉に村長もこくりと頷いた。
どうやら付近の村に似たようなものを扱える職人はいるようだが、加工には時間も手間もかかりそうなのだという。素材のまま持ち帰るにしても、微妙に帯電しており、転移門での移動や保管時に不測の事態が起こる可能性がゼロと言えないことを考えると、できれば避けたかった。
シュマの臨時収入は、どうやらお預けになったのだった。
「しかし、これが残ったということは幻獣……か?」
ヴァイスは繁々と残った突起物を見つめる。蜥蜴の身体は目の前で砕けるように消えていった。
残ったのはこれだけだったのだ。
「ふむ……報告しておくか」
幻獣であるならば、と。ヴァイスは目を細めてそれを見つめたのだった。
宴が終わり静まり返った中、そっと部屋の中をクリスは覗き見た。
先程とは違って、必死で縋り付くグラシアに戸惑っているリブロが、視線を逸らしつつもそっと頭を撫でている様子が見える。
――わたしもいつかあんな風に……
瞬時に真っ赤になりつつも、眩しいものを見るように光悦した眼差しを向けながらそっと扉を後にする。
なんだか恥ずかしく思いつつも、たまらない感じなのだ。
そんな彼女には、直後に聞こえた音も、「姉ちゃんから離れろっ!」と叫ぶ声も耳に入っていない。
既に彼女の中では、ハッピーエンドで終わっているようだった。
集めた情報を元に僅かながらの作戦を立てた後、岩場へと向かいながらヴァイス(ka0364)は溜息を零した。
村人の話では岩山で雷が落ちるのがいつものこと――というわけでもなさそうであるが。
「……それでも、可能性は否定できない」
雑魔であるなら問題はないが幻獣となると、もしかしたら棲家にしている可能性も否定できない。
現在確認されているのは一匹ではあるが、複数いる可能性もあることに身を引き締める。
歩き始めて40分ほどたったところだろうか、ソニアから聞いた現場の状況を書き込んだ簡易地図を片手にセレナ・デュヴァル(ka0206)とクリスティーネ=L‐S(ka3679)が話し込みながら歩いていると近くから轟音が響き渡ってきた。
どうやら近くに来たようである。
交わされていた作戦をもう一度確認し、現場である岩山へと近づいたのだった。
●
「まずはこっちに注意を引かせねぇとな」
柊 真司(ka0705)は手元のアサルトライフルを構えると、少し離れた位置のシュマ・グラシア(ka1907)に合図を出す。
蜥蜴は足元に転がる村人へは視線を向けていなかった。
囲まれた岩山の中央――やや高台へとなっている所で優雅に光を浴びているのだ。
「負傷してる一般人もいる事だし、早いとこ片付けねぇとな」
雷獣の注意を引いた隙を狙えと言っているようだ。
「……いざ、参る」
同じく囮を買って出ている蘇芳 和馬(ka0462)もまた走り出す。ニヤリと口角を上げているところを見ると、どうやらやる気が上回っているようだ。
そんな彼らの動きを見つつ、シュマは集中をしコトノハを紡いだ。
「スリープクラウド」
物音に反応したのか、光を浴びるのをやめ視界の隅に入った物体を追い始めた雷獣が、途端にバランスを崩す。
どうやら僅かながらでも効きがあるらしい。
チャンスを感じ、脇に控えていたセレナとクリスもまた飛び出した。
視界に捉えている村人の保護へと向かったのだ。
蜥蜴からは注目がないのが幸いし、どうやら息があるらしい。
幸い岩場への距離も遠くもないことから、意識が無いものを運び込むのは何とかなりそうである。
保護する現場とは反対側を位置取り、ヴァイスは警戒態勢をとる。
今はどうやら安全であるが、油断はできない。その時を考え、備えている。
無事にセレナとクリスが保護の元へと到着すると、素早く対象の状態を確認した。
幸い保護対象者自体はまとまっていたため、大きく移動することはない。
しかしながら、青年たちといえど気を失っている大人を4人。流れ出る血を止めながら、クリスはスリープが運び出す時間まで持たないだろうと考える。
先に動き出したのはセレナだった。
一人を担ぎ上げると、引き摺る様にと近くの死角へ動き出す。
その直後、暫し動きが止まったと見えた蜥蜴に異変を感じシュマがもう一度唱えようとするが、どうやらうまくいかないらしい。
蜥蜴の尻尾がまず動いた。
「もう回避はできないようだな」
ヴァイスは小さく息をつくと攻撃態勢へと入った。
次の瞬間、柊のアサルトライフルの音が周囲へと響き渡った。
雷と共に、衝撃を齎すブレスが飛び交う。
「弱点かどうかわからねぇが、すごく気になるんだよなぁ……とりあえず狙ってみるぜ」
額から出ている突起物は、どうやら僅かに光を帯びると雷を落としていくようなのだ。
「おー、暴れてまシュねー。暴れあばれアバレまくりでシュねー」
ニヤリとシュマの口角も上がる。
大きさ的には小さいかもしれないが、普通の刃よりも魔法による刃の方が確実にダメージを与えているようで、喰らうたびに大きく蜥蜴の体は揺れるのだ。魔法弾もよく効いているようである。
始まった戦闘は、既に普通の雑魔なら終わる時間を過ぎていた。
村人を運び出してから既に2人が回収され、今もまたクリスとセレナの小さなやり取りの中、一人が引きずるように回収されていく。
保護した先で、酷い傷については素早くクリスが応急処置を施していた。
すでに折れた腕には痛々しいほど包帯が巻かれている。ただ、意識は残念ながら戻っていない。
死角に村人が収まったことを確認し、セレナは攻撃へと体制を変える。
クリスは引き続きより安全な場所への移動を開始していく。
足元が悪いため、先程もそうだったが、やはり時間がかかるようだ。
そこから注目を避けるように、蜥蜴の近くへ近づきつつ攻撃をかわす蘇芳は時折刀で切り付けていく。
「……別に倒しても構わんのだろう?」
目的は囮だ。だが当りがある以上それは大きな攻撃へとなりうるのだ。
慎重に……だが楽しげに刀を振り回していく。
その対象が、時に蘇芳、また柊、ヴァイスへと移り変わっていく。
決して一か所ではなく複数へと散らすことにより被害は少なくなっていく。
また、シュマと攻撃へと転換したセレナによる魔法攻撃は大きく痛みを伴わせている。
死角をうまく利用しているが、喰らった後は確実にその方向への攻撃へと移るためだ。
単純な構造である頭を利用し、その直後に遠距離からの辺りを入れると、何をしようとしていたのだろうかと攻撃が一時中断し、再び衝撃が当たった方へと進んでくることを利用し、攻撃をかわしていく地味な持久戦へと変わりつつあった。
「あぶねぇ、防御障壁展開!」
保護した村人を運んでいるクリスに向かって襲いかかる尻尾を、柊はカバーに入る。
展開された防御壁が僅かながら反応が遅れていたクリスの背中を助けた。
「……その隙、貰った」
弾かれた衝撃でバランスを崩したところへ蘇芳の景幸が額の突起物へと痛恨の一撃を見合った。
金属音に近い音を響かせ、とうとう額の突起物が折れる。
その直後、凄まじい咆哮と共に蜥蜴は大きく仰け反った。
そして轟音が響き渡る。
雷獣が、倒れる音だった。
「げっとおーん」
小さく拳を握りしめたシュマはすぐにいろいろ考え始めた。
――目の前には巨大な獣。しかし蜥蜴……蜥蜴か――
焼いたら食べれるかなと思いつつも、あまり美味しくないかもと眉間に皺を寄せる。
でもでも……と、僅かながらに口腔内へと集まる水分を嚥下した時だった。
「いやでシュ!!!」
目の前で砂のように崩れ始める雷獣に思わず悲惨な声を上げる。
村人の介抱へと向かっていた他の者たちはそんなシュマを見つめ、そっと溜息をついたのだった。
●
「ありがとうございますっ」
雷獣の元から暫し、意識を取り戻させた村人たちに肩を貸し、一同は村へと戻った。
無事に戻ってきたことに、村人たちは深々とお礼をし、そして傷ついている身体をすぐさま手当しだす。
村長に雷獣を倒した経過と保護した村人たちの状況を説明すると感謝の言葉を貰い、暫し村で体を休めていくことを勧めらる。
その言葉に頷くと、細やかながら歓迎の宴が始まったのだった。
「んで、素材に出来るんでシュか?」
キラキラと光る突起物を片手に村長へと詰め寄ったシュマは、それまたキラキラと目を輝かせている。
どうやら雷獣を倒した後に現場に残ったものを持ち込んだようだ。
「へ……へぇ……。わしらの村では、確かに使えるやもしれませんが……ハンターさんたちには無理かと」
少し渋い顔で応える。
「ふぇ?」
かくりと顔を傾げると、後ろから小さく声がする。
「……加工が困難」
振り返ると、表情を動かさないセレナがいた。その言葉に村長もこくりと頷いた。
どうやら付近の村に似たようなものを扱える職人はいるようだが、加工には時間も手間もかかりそうなのだという。素材のまま持ち帰るにしても、微妙に帯電しており、転移門での移動や保管時に不測の事態が起こる可能性がゼロと言えないことを考えると、できれば避けたかった。
シュマの臨時収入は、どうやらお預けになったのだった。
「しかし、これが残ったということは幻獣……か?」
ヴァイスは繁々と残った突起物を見つめる。蜥蜴の身体は目の前で砕けるように消えていった。
残ったのはこれだけだったのだ。
「ふむ……報告しておくか」
幻獣であるならば、と。ヴァイスは目を細めてそれを見つめたのだった。
宴が終わり静まり返った中、そっと部屋の中をクリスは覗き見た。
先程とは違って、必死で縋り付くグラシアに戸惑っているリブロが、視線を逸らしつつもそっと頭を撫でている様子が見える。
――わたしもいつかあんな風に……
瞬時に真っ赤になりつつも、眩しいものを見るように光悦した眼差しを向けながらそっと扉を後にする。
なんだか恥ずかしく思いつつも、たまらない感じなのだ。
そんな彼女には、直後に聞こえた音も、「姉ちゃんから離れろっ!」と叫ぶ声も耳に入っていない。
既に彼女の中では、ハッピーエンドで終わっているようだった。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 4人 |
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参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
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相談スレッドはこちらです クリスティーネ=L‐S(ka3679) 人間(リアルブルー)|14才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/12/19 13:17:17 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/16 00:26:30 |