ゲスト
(ka0000)
山の麓の慰労会
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/08 07:30
- 完成日
- 2018/05/11 10:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
先日、イスルダ島を奪還して歓喜に湧く国内ではあったが、システィーナ・グラハム王女の戴冠、それに伴う王国諸侯の動きなど、まだ落ち着いたとは言いがたい状況が続く。
しかしながら、王国北東部から喜ばしい知らせが入る。
王国北東部のとある山を根城としていたトカゲ雑魔、及び歪虚を討伐したとの知らせがハンターズソサエティに届いたのだ。
北東部は山岳地帯となっており、一時期、とある山全域がトカゲ雑魔達による支配を受けていた。
それらの生息域は麓にまで及び、山の南側の集落が襲われ、集落民が古都アークエルスにまで避難する事態となっていた。
雑魔どもによる襲撃したのを機にこの地へとエルフの男性達、アルウェス、ルイス、ドミニクの3人が常駐し、入れ代わり立ち代わり訪れるハンター達と協力してトカゲ雑魔を撃退し、集落を守っていた。
また、トカゲ雑魔の脅威は山北東、湖畔の集落にも及ぶ。
集落民にとってこの地は、山菜などが生育する山と後方の湖と合わせて命育む大事な地。全ての住民がこの場所を立ち去ることを良しとすることはなかった。
だが、こちらは遅れる形で聖堂戦士団メンバーが駆けつけ、最後まで集落民を守り通した形だ。
長き戦いの末、ようやくハンター達は雑魔を生み出す強欲の歪虚グラフを討伐。
それもあって南の集落民達はようやく、生まれ育った集落へと戻ることができた。
残念ながら、集落民がアークエルスに避難する際、命を落とした者もいたが、彼らを弔う事ができると涙ながらに語る者もいた。
二つの集落はさほど大きな関係はなかったのだが、今回の1件を契機に交流も深まったようで、湖畔の集落民も南集落の復興に関しても助力を行うとのことだ。
古都から必要物資を運び、これから改めて集落民達が集落の復興をというタイミング。
この集落を最後まで守ってくれたハンター達の多くがこの地を去ってしまうと集落民達が知ったのをきっかけとして、エルフやハンター達の慰労会の開催が決まった。
各地で起きる事件で、ハンターズソサエティもハンターをそちらへと回したい実情がある。
普段はハンターとして活動するエルフ達も、平穏の訪れたこの地を去ることに決めていた。
彼らも半年ほど滞在したこの地に名残惜しさは感じていたものの、雑魔の脅威に晒される場所がまだ各地にあること、また、一度地元の森に顔を出したいとも考えていたらしい。
また、湖畔の集落民も20名ほど、さらに聖堂戦士団メンバーもまたこの慰労会に参加するようだ。
山の幸はこの半年手づかずということもあって、採り放題。
さらに、湖畔の民が湖の魚なども持ち寄ってくれ、古都から運んできた食べ物、飲み物が溢れて食材は豊富だ。
2つの集落民達はここぞと調理の腕を見せ、ハンター達に美味しい料理を振る舞うと豪語している。
こうして、女性達が調理した様々な食べ物が外の広場に集まり、宴会の準備は万全とのこと。
話を聞いて、集落民の要望に応えたハンター達がこの場に参加していた。
長かったトカゲ雑魔との戦いにおいて募る話もあり、また、たらふく食べられるからと参加する者もいる。
めでたい席ということもあり、場を盛り上げようと一芸を披露する為にやってきたメンバーもいたようだ。
日が暮れかけた頃に準備は整い、慰労会が始まる。
雑魔からの解放を祝した、楽しい楽しい宴が。
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
先日、イスルダ島を奪還して歓喜に湧く国内ではあったが、システィーナ・グラハム王女の戴冠、それに伴う王国諸侯の動きなど、まだ落ち着いたとは言いがたい状況が続く。
しかしながら、王国北東部から喜ばしい知らせが入る。
王国北東部のとある山を根城としていたトカゲ雑魔、及び歪虚を討伐したとの知らせがハンターズソサエティに届いたのだ。
北東部は山岳地帯となっており、一時期、とある山全域がトカゲ雑魔達による支配を受けていた。
それらの生息域は麓にまで及び、山の南側の集落が襲われ、集落民が古都アークエルスにまで避難する事態となっていた。
雑魔どもによる襲撃したのを機にこの地へとエルフの男性達、アルウェス、ルイス、ドミニクの3人が常駐し、入れ代わり立ち代わり訪れるハンター達と協力してトカゲ雑魔を撃退し、集落を守っていた。
また、トカゲ雑魔の脅威は山北東、湖畔の集落にも及ぶ。
集落民にとってこの地は、山菜などが生育する山と後方の湖と合わせて命育む大事な地。全ての住民がこの場所を立ち去ることを良しとすることはなかった。
だが、こちらは遅れる形で聖堂戦士団メンバーが駆けつけ、最後まで集落民を守り通した形だ。
長き戦いの末、ようやくハンター達は雑魔を生み出す強欲の歪虚グラフを討伐。
それもあって南の集落民達はようやく、生まれ育った集落へと戻ることができた。
残念ながら、集落民がアークエルスに避難する際、命を落とした者もいたが、彼らを弔う事ができると涙ながらに語る者もいた。
二つの集落はさほど大きな関係はなかったのだが、今回の1件を契機に交流も深まったようで、湖畔の集落民も南集落の復興に関しても助力を行うとのことだ。
古都から必要物資を運び、これから改めて集落民達が集落の復興をというタイミング。
この集落を最後まで守ってくれたハンター達の多くがこの地を去ってしまうと集落民達が知ったのをきっかけとして、エルフやハンター達の慰労会の開催が決まった。
各地で起きる事件で、ハンターズソサエティもハンターをそちらへと回したい実情がある。
普段はハンターとして活動するエルフ達も、平穏の訪れたこの地を去ることに決めていた。
彼らも半年ほど滞在したこの地に名残惜しさは感じていたものの、雑魔の脅威に晒される場所がまだ各地にあること、また、一度地元の森に顔を出したいとも考えていたらしい。
また、湖畔の集落民も20名ほど、さらに聖堂戦士団メンバーもまたこの慰労会に参加するようだ。
山の幸はこの半年手づかずということもあって、採り放題。
さらに、湖畔の民が湖の魚なども持ち寄ってくれ、古都から運んできた食べ物、飲み物が溢れて食材は豊富だ。
2つの集落民達はここぞと調理の腕を見せ、ハンター達に美味しい料理を振る舞うと豪語している。
こうして、女性達が調理した様々な食べ物が外の広場に集まり、宴会の準備は万全とのこと。
話を聞いて、集落民の要望に応えたハンター達がこの場に参加していた。
長かったトカゲ雑魔との戦いにおいて募る話もあり、また、たらふく食べられるからと参加する者もいる。
めでたい席ということもあり、場を盛り上げようと一芸を披露する為にやってきたメンバーもいたようだ。
日が暮れかけた頃に準備は整い、慰労会が始まる。
雑魔からの解放を祝した、楽しい楽しい宴が。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国北東。
山岳地帯にあるとある山の麓、南側にある集落。
トカゲ雑魔との前線基地ともっていたその場所は再び人が住む事のできる土地に戻り、この地の集落民も避難先の古都アークエルスから戻ってくることができた。
本格的な復興作業の前にし、まずはこの地を去り行くハンターの為にと、この地の集落民は山北東にある湖畔の集落民を呼び、ささやかながらに慰労会を開くこととなる。
「今まで戦ってきたのは住民も同じ。これから夏になるとはいえ、慰労会でそこから蓄えを奪うわけにはいかないわ?」
準備段階ですでに、カーミン・S・フィールズ(ka1559)は大張りきり。
刻令ゴーレム「Gnome」のゲー太にたくさんの物資を積みこみ、彼女はわざわざ古都から運び入れを行う。
宴会で使う物資、食材はもちろんのこと。
これからの集落再建に必要な道具、備蓄などもカーミンは運んでくれていた。
最後まで至れり尽くせりだと感じながらも、集落民は感謝を込めてハンター達を労うべく設営、料理と会場準備を整えていく。
そこに、幻獣に跨って集落へとやってくるハンター達の姿がちらほら。
「一先ず、無事に討伐完了出来て一安心かな?」
イェジド、オリーヴェに乗ってやってきたユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239) は、活気付く集落を煽いで。
「それに、こういった宴に参加するのは久しぶりな感じだからね」
そして、空からもワイバーンを駆るメンバーの姿があった。
白っぽい鱗を持つ龍、ウイヴルに乗ってやってくるUisca Amhran(ka0754)は、この場で是非やっておきたいことがあった。
「歪虚さんたちのせいで竜についた悪いイメージを、少しでも払拭するのですっ」
トカゲ雑魔の極大サイズ、そして、それらを操る歪虚グラフはドラゴンを思わせる姿をしていた。
それもあって、Uisca はできる限り集落民の龍に対する印象を良くしたいと考えていたのだ。
「せっかくの慰労会だ、楽しもうぜ!」
これから始まる大騒ぎに乗っかり、思いっきり楽しもうと岩井崎 旭(ka0234) は考える。
そして、旭は自分の目で確かめたいものがあった。
――守ったもの、そして、勝ち取ったものを。
調理を行う集落民に紛れ、ハンターの姿もある。
「安堵の笑み……痛みを乗り越えた者達の笑みか……」
長期の避難生活から生まれ育った故郷へと帰り、喜ぶ集落民達の表情を眺め、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は微笑を浮かべて。
「さて、幾らタダじゃと言おうと何もせぬと言うものう……。軽く肴でも作ろうかの」
蜜鈴はまず、目の前にある山で採れた山菜でおひたしを手早くつくる。
同時並行して、下味をつけた鶏肉を炒めて山椒をふりかけた一品、そして、白身魚を根菜と合わせて煮付けたものを蜜鈴は皿によそう。
また、牛肉をニンニクと塩コショウで表面を焼き、叩いていく。後はじっくりと用意されたかまどで焼くこととなる。
そうして蜜鈴はしばらく、肴となる品数を増やしていた。
「タダメシはありがたいが、トカゲ退治に参加してないからな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は一連の事件には参加してなかったようで、ここは料理人として参加するようだ。
「せっかく、地元の良い素材があるんだ。旨い料理に仕上げないとな」
ここには、折角、山の幸や湖の魚が集められているという。
山菜などはものによってはクセがあり、好き嫌いが分かれるところ。
それも、揚げてしまえば食べやすくなると、レイオスはフリッターを作ることにしていた。
フリッターはリアルブルーにおけるイギリスやアメリカの揚げ物料理だ。
レイオスは肉や、湖で取れる魚、エビといった生物まで揚げていた。
挙げたものは串に刺し、手に取りやすくする配慮も忘れない。
「衣に缶ビール使ってるから、冷めてもカリッとしてるんだ。でもどうせなら、揚げたてのを食ってくれよ」
作った料理を、レイオスは会場内のテーブルへと片っ端から並べていく。
まだ、会は始まっていないが、集まるハンター達は並ぶ料理に興味津々。
慰労会が始まる直前になると、ハンター達が手に取りそうになっている状況となっていた。
さすがにこれ以上、ハンターを待たせるわけにはいかないと判断した集落民は、設営作業をそこそこにして切り上げ、慰労会の開始を集落の長から告げることとなる。
挨拶の締め、参加者は皆、グラスを手にして。
「それでは、我が故郷の無事に……、ハンター達の勝利に、乾杯!」
「この地の勝利を祝して、乾杯!」
レイオスも調理しつつ、参加者と共に声を上げた。
会場には、たくさんの美味そうな料理が並んでおり、参加者達が手をつけ始める。もちろん、レイオスの料理も例外ではない。
「全品味あわせてもらうぜ」
衣となる缶ビールなどの材料が尽きてから、レイオスも片っ端からそれらの料理を食べていこうと考えていたようである。
●
本格的に始まる慰労会。
ユグディラのシトロンと共に会場を訪れていたのは、鞍馬 真(ka5819) だ。
彼はトカゲ雑魔との交戦経験はあれど、決戦に参加していないと考えており、それまでの戦いもハンターとして当然のことと考えていた。
その為、労わられる立場ではないと考える真は、シトロンと共に会場のBGMを担当することにしていた。
真はフルートを、シトロンはリュートを吹き、協奏を行う。
1人と1匹で主旋律と伴奏を入れ替え、心地よいハーモニーが集落に響く。
控えめながらもうっとりとするその音色に、会場を訪れた人々はしばし聞きほれていた。
「……こうやって、シトロンと一緒に思いっ切り演奏するのは久しぶりだしな」
折角の機会ということもあり、真は場の空気を楽しむこととしていたようだ。
そんな中で、調理に当たるジャック・エルギン(ka1522)。
「オウ、お疲れさん。飲んで食ってるかい?」
彼は狩猟犬を連れて狩ってきた、山に生息する鳥、獣の肉を使ったワイルドな男料理をと考えていたのだが……。
「ハンターの調理風景は、なかなかお目にかかれないんじゃない?」
カーミンは刻令ゴーレム「Gnome」のゲー太に搭載されたKモードを起動させる。
すると、ゲー太を中心としてキッチンが展開していき、元々その場で調理をしていたジャックが完全に見世物状態となってしまう。
最初はこの状況に面食らっていたジャックではあったが、集落民にワイルドな男料理が好評なこともあり、気を良くしていたようだ。
様々な人が行き交い、語らう慰労会。
集落民が礼を告げに訪れる中、ハンター達も思い思いの時間を過ごす。
浅生 陸(ka7041)は同行する姫2人の為に、肉や魚、麦酒、果実酒などを山盛りで確保しており、BBQセットを借りて食材を焼いていた。
「こういう笑顔が見れるのはいいな」
時折、視線を周囲に向ける陸。
沈む行く空の下には、平和を詠う民の姿があった。
「なに焼いてるニャス? なに飲んでるニャス?」
苺酒を飲むミア(ka7035)は同行する2人が手をつけている料理や飲み物に興味を示す。
白藤(ka3768)はミアや陸の為、会場に並ぶいくつかの酒からカクテルを作っていた。
ミアには、シャンパンベースにオレンジジュースを注いだミモザ。
そして、陸にはカルーア・ミルク。こちらは文字通り、コーヒーリキュールのカルーアを、牛乳で割ったカクテルだ。
それぞれ、白藤が2人の為に見繕った一杯。
「カクテルもいただくニャス!」
嬉しそうにミアがそれを飲み始めると、陸もある程度食材を焼いたところでカクテルを手に取る。
「美味い。いろんな一面があるんだな」
そのカクテルの色に感心した陸は、グラスの中身を口に含む。
ほのかな甘さと、リキュールの香りが口内へと広がっていった。
(うちからすれば、二人にピッタリなお酒やで♪)
ただ照れくさいのか、白藤がそれを口に出すことはなかったようだ。
ハンター達が集落民と共に中央で楽しく語らい、食べている脇では、控えめに参加する聖堂戦士団メンバーの姿がある。
そこに近づいてきたのは、シレークス(ka0752)、サクラ・エルフリード (ka2598) のコンビだ。
「酒が飲めるとあっては、行かざるをえねーですねぇ」
決戦のみ参加の2人だったが、シレークスは楽しそうに参加している。
「良いですか、サクラ。エクラ教徒たるもの……!」
普段、破戒修道女のシレークスは気を良くして教義を説くのだが、サクラはいささか不服な様子。
「せっかく、調理の腕を見せる機会でしたのに……」
先ほど、調理を希望したところ、シレークスと頭の上に鎮座するユグディラ、ヤエに全力で止められてしまったのだ。
もっとも、シレークスでなくとも、『包丁は苦手ですが、剣でならそれなりに出来る』と主張する人に調理を任せられるはずもないのだが。
事実、シレークス曰く、彼女の料理の腕は壊滅的らしい。
しょうがないと、サクラは並ぶ料理を食べようと手をつけていく。
「にゃにゃ~」
サクラの頭の上のヤエが魚や肉を食べていると、同じくシレークスのユグディラ、インフラマラエが料理を差し出しつつ、友達になるようアピールする。
ヤエはそれを受け取りはするものの、取ってくれたから食べる程度の淡白な反応でしかない。
「にゃにゃにゃ」
インフラマラエはヤエの様子に、諦めないと意気込んでいたようだ。
「久しぶり、戦術指南の時以来だから大分経ってるけど、元気そうで良かった」
その聖堂戦士団メンバーの所へ、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が歩み寄ってくる。会いに相手は、その小隊長、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
彼女の成長にユーリは目を細めつつ、聖導士達を労う。
「こうして一緒に依頼参加したのは実質初めてだったけど、お互い無事に帰ってこれて本当によかったよ」
ファリーナが「はい」と返事してみせると、会をゆっくりと楽しんでいた夢路 まよい(ka1328)も駆け寄ってきて。
「グラフやっつけるのお疲れ様~!」
トカゲ雑魔との決戦には、ファリーナのツテもあって参戦したというまよい。
ジュースと甘いお菓子を傍に置き、まよいはファリーナにじゃれつく。
戸惑いを見せるファリーナは隊員の目を気にしつつも、しばし、迷いと楽しく会話していたようだ。
ところで、サクラは果実酒に手をつけていたようで。
「シレークスさん、このお酒美味しいですよ……?」
「――って、サクラぁっ!? おめーはそれ以上、飲むんじゃねぇっ!」
聖堂戦士団メンバーと宗教談義を行っていたシレークスだったが、酒癖の悪いサクラがほろ酔いになっているの見て、全力で駆け寄ってくる。
「えぇ……、もっと飲みましょう……?」
「おめーが酔うと、脱いだり脱がせようとしやがるです!」
サクラの酒癖の悪さもあり、シレークスは剛力を使ってまで全力で止めに入る。
周囲の笑いのタネとなりつつも、シレークスに抑えつけられたサクラはまたも止められて口を尖らせてしまうのだった。
●
会はまだまだ始まったばかり。
「お疲れ様でした。慰労会に参加させてもらえるとは、感激です」
壇上に上がったミオレスカ(ka3496)が、この場の人々へと頭を下げる。
会場の中心には特設ステージが設けられており、そこで一芸が披露できるようになっていた。
「森、空からの脅威に続いて、まだまだ危険があるかもしれませんが、今はこのときを楽しく過ごしましょう」
新たな危険が襲い来る可能性がないとは言えない。
それでも、この集落の人々は自分達の喉元にまで迫った脅威がなくなったことを、素直に喜んでいたようだ。
一通り挨拶を済ませたミオレスカは、集落民数名と一緒にこの地に伝わる楽曲演奏に参加させてもらうことにしていた。
安らかな旋律に乗せたメロディ。
さほど詳しくはない曲だったこともあり、ミオレスカもできる範囲でリズムをとり、竪琴で伴奏を行う。
曲が終わり、大きな拍手が巻き起こる中、壇上の演者からミオレスカに自身の得意な曲をとリクエストがあった。
そこで、ミオレスカは1人、育った北方の辺境の曲を披露してみせる。
鳴り響く竪琴の音色はどこか切なく、それでいて力強さを感じる歌。
短いながらも一曲終えた彼女は再び丁寧に頭を下げ、巻き起こる拍手の中、壇上から降りて行った。
代わりに壇上に上がったのは、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だ。
彼女は、一風変わった手品をこの場で披露する。
「ルンルン忍法イッツショウタイム♪」
彼女はまずボールを放り投げて観客の気を引きつつ、手にするシルクハットから、光り輝く鳥を放つよう見せていた。
感嘆と溜息が漏れる中、ルンルンはさらに辺りを照らす火球を発してみたり、地の精霊の力を借りて畳返しをしたりして、場を沸かせる。
まだまだ、ルンルンの手品はこれからといったところ。
そのタイミング、集落の長と話をしていたのは、アリア・セリウス(ka6424) 。
彼女はこの後の余興の為、何やら長の了承を取っていたようだ。
一芸を披露する者がいれば、たらふく飲んで食べるものもいて。
「酒だ! 飯だ!! あんだァ? 遠慮なく食ってイイたァ随分太っ腹だなァ!!」
柊羽(ka6811)は片っ端から飲み食いするハンターを見つけ、ニカッと笑いながら飲み比べをするよう誘いかけていた。
そんな柊羽は度々相手を変えていたが、彼は集落を囲む濠の近くで飲み食いしていた3人のエルフの男性達を見つけ、声をかける。
「大蜥蜴ねェ……。エルフの兄チャン達も大変だったみてェだな」
柊羽がこの地を訪れたのは初めてだったが、この集落民が皆、ハンター達に感謝している姿に、彼は気を良くしていた。
「めでたいな、祝杯を私からも上げさせてくれ」
トカゲ雑魔どもを打ち破ったと聞き、討伐依頼に参加経験のあるレイア・アローネ(ka4082)もまた、エルフに挨拶へとやってくる。
濠の外側にはレイアの愛龍も控えており、酒を与えていたようだ。
「あの時は色々世話になった」
思い返すように、レイアは自身の参加した依頼について語る。
一度話し出せば、雑魔と交戦時の思い出が場を飛び交う。
「極大トカゲは色々と厄介だったな」
そこで、演奏を止めてふらっとこの場に現れた真が、石化睨みを行う非常に大きな敵との戦いについて語る。
「今後の戦いに役立てたいところだ」
彼が持ちかけたその話が、今度はこの場でクローズアップされていた。
そして、レイアが雑魔討伐に出た仲間達を労う。
特に、浅からぬ縁であるルンルンから聞く話を、酒の肴にしていたようだ。
「今度戦う時は、出来れば私も一緒に戦いたいな」
一芸披露し終えたルンルンは楽しそうに、飲食しながら語らう。
彼女もまた、この村の人々が安心して暮らせることがとても嬉しく、笑顔を浮かべていた。
ミオレスカも一緒になり、話に参加しつつ料理を口にする。
そのそばには、アバルト・ジンツァー(ka0895)の姿があった。
「……ようやく、ここの問題も一段落が付いた」
度々この一件に関わってきていたアバルトもまた、感慨に浸る。
ここの集落民達もまだまだ苦しい中で、ハンターに気遣いを見せてくれているのだ。
「気を使って貰ってかえって心苦しいが、せっかくの好意だ。その好意を受けさせて貰う事としよう」
そうして、集落民、ハンターらと交流をはかっていたアバルトは、脇で飲み食いしているエルフ達を目にして。
集落民が雑魔襲撃から避難する時からずっと、彼らはこの地に滞在していた。
しかし、エルフ達は自分達の功績を辞し、ひっそりとこの会を楽しんでいたのである。
(彼らこそ、一連の英雄だと認めさせるべきだ)
アバルトは自分に誤解が降りかからぬよう、エルフ達の功績を語る。時には直接、エルフ達を連れて。
「彼らこそ、本当の英雄だ」
エルフ達の活躍をアバルトが丁寧に説くと、集落民達もエルフ達に感謝と労いの声をかけ始めていたようだ。
「お疲れ様」
「約束通り、ちゃんと生き残ったわね?」
話を止めた真がエルフ達を労うと、ゲー太を調整しつつお茶を飲んでいたカーミンもこの場に現れ、エルフ達が無事なことに微笑んで。
「皆もお疲れ様……っと、そうだ」
カーミンは交友関係のあるメンバーの姿を見かけて慰労の言葉を交わしつつ、集まる集落の奥様方にもエルフ達の活躍を吹き込むなど、忙しなく動いていたようだ。
「アンタらも出発すんだってな」
偵察、そして決戦に参加していたジャックも、エルフ達の下へと歩み寄ってきて。
「あまり話せなかったが、気が向いたら同盟にも寄ってくれよ」
アルウェス達に対して別れの挨拶を行うと、彼らはまたどこかで会えるとよいなと握手を求めていた。
この場に集まるたくさんの人々を、アリアは眺める。
「関わったのはほんの僅かだけれど、本当に沢山の人が関わったもの、ね」
私にできたことは少ない。
これから先、さらにこの場をどう使って明日へ、勝利へ、理想へと繋げていけるかは……。
「それはまた別のお話、ね」
改めて、アリアは一芸披露の準備を進めるのである。
●
「うわー、おいしい!」
「ハンターさん、すごーい。こんなの初めて食べた!!」
この場には、集落民の子供の姿も見受けられる。
避難先で、窮屈な想いをしながら過ごしてきた子供達。
それがトカゲ雑魔が原因だと彼らは理解していたはずだが、意外にもワイバーンに興味を持っていたことにUisca は喜びつつ。
「あそこにいる飛竜のウイヴルちゃんも、歪虚退治にがんばってくれたんですよっ」
竜も悪い竜だけではないとアピールをし、歪虚退治にも活躍したのだとUisca は胸を張ってアピールする。
「今、飛竜のウイヴルちゃんとふれあいたいって人はぜひ来てくださいね」
すると、特に子供が目を輝かせ、触りたいと挙手していた。
そうして、Uisca は幾人かを集落外まで子供達を連れ出す。
「ウイヴル、よろしくねっ」
一声鳴くウイヴルに協力してもらい、触ってもらったり、食べ物を与えたりと子供達と触れ合いを始める。
それは、ちょっとしたアトラクション感覚。
最初は恐る恐るといった態度の子供達も少しずつ、ウイヴルと打ち解けていく。
非常に晴れやかな表情で、子供達も慰労会を存分に楽しんでいたようだ。
(まぁ、飯食って酒飲んで騒いでる真ん中までは連れてけねーよな)
そばには、ワイバーンのロジャックの姿がある。
集落内から食べられそうなものを確保し、運んでいた旭は同じワイバーンと触れ合う子供達を見て考えていた。
トカゲ雑魔との戦いで前線拠点へと変わったこの集落もそうだが、これからどんどん変わり行く集落はあるのだろう。
「せっかくだし、守った集落を空から眺めるってのもいいんじゃねーか?」
そうして、旭は空に興味を持つ子供達をロジャックの背に乗せ、夜空を舞う。
子供達が落ちないよう鞍に鐙にガッチリ固定するなど旭は対策を怠らないが、ロジャックが姿勢制御することでカバーしてみせる。
いざとなれば、覚醒して自身に翼を纏うことでサポートを考える旭だが、その心配はなさそうだ。
ウイヴルだけではワイバーンとの交流が足りないと感じていたUisca にとって、これは助けに船ならぬワイバーンといったところ。
より多くの人々に、ワイバーンと触れ合う場を提供できそうだ。
「一緒に空を飛んだり出来て楽しいですよ~」
彼女も子供達を乗せ、少しの間空中遊泳に連れ出す。
それを見上げるユーリはイェジドのオリーヴェと一緒に、がっつりと確保した料理を食べていた。
しばらくの間は2人で会話していたユーリだったが、声をかけていたファリーナが隊員を連れてやってくる。
「お誘い、ありがとう」
しばしの間、ユーリは聖堂戦士団団員達と交流して笑顔を浮かべ、オリーヴェと楽しい一時を過ごすのだった。
●
再び、集落内に視線を向けると。
「むぅ、もう少しお酒を飲んでいたかったのですが……」
ほろ酔いになっていたサクラだったが、シレークスやヤエから調理に続いて飲酒まで止められたこともあって、仕方なく立ち上がる。
「せっかくですし、私達も何か出し物しましょうか……。ヤエ、楽器持ってきてますよね……」
彼女はそのまま壇上に上がり、一芸を披露することにしていた。
サクラの頭の上が定位置のヤエもぴょこんと降り立ち、彼女の足元で回り始める。
そうして、サクラもリュートを使って演奏を始め、小さく口を開いて歌う。
「にゃーにゃー」
一方、ユエは琵琶を弾きつつ、楽しそうに歌う。
その顔が真っ赤になっているのは、酔いのせいではなく。
「歌は恥ずかしいので、聞かなかった事にしてください……。え、演奏だけで……」
一曲終え、サクラははにかんで一言観客につげたが、彼女の弾き語りに集落民は見とれ、拍手を送る。
演奏はともかく歌も絶賛されたことで、サクラはより一層顔を真っ赤にしてしまうのだった。
その演奏の傍ら、陸はギターを響かせ、楽しい話に花を添える。
白藤、陸、ミアの3人はとりとめなく語らいを続けていて。
「あ! 蜜鈴ちゃんニャスー♪ 頭撫でてーニャス♪」
そこにやってきたのは、扇と煙管を手に顔見知りの姿を見つけてやってきた密鈴だ。
「ミアも白藤も息災な様で何より」
彼女はミアの頭を撫でつつ、挨拶する。
「そちらの殿御は陸と言うたか……遠慮せず喰らうが良いよ」
陸も軽く頭を垂れ、そのまま飲み食いと話を再開させた。
3人が食べる姿を眺め、密鈴は微笑む。
「えっと、ほーよーりょくのある人? とか、いいニャスよネ♪」
いつしか、話題は互いの恋の話に。ミアは自身がわんぱくだと自覚していたようである。
「でも、一緒にわんぱくやれる人とかも、ミアにとっては貴重ニャスなぁ」
やや悩むミアの横で、白藤が頭上を見上げつつ昔の男を思い浮かべてポツリと一言。
「好み、か……浮気せん人、かな……」
そして、代わるように別の人物の姿を脳内に思い描く。
首を振った彼女は困惑しながらも、片手で真っ赤になった顔を隠しつつその場に突っ伏す。
痛みと抵抗を感じる複雑な感情。それを白藤は認められずにいた。
「恋バナ? 男にはハードル高い話だな……」
とはいえ、2人が話した後では陸も言わないわけにはいかず、麦酒を煽ってから彼女達を微笑ましげに見つめて。
「そうだな、我儘でいいから、一生懸命で優しい子が理想かな」
――悲しまなくていいように、護ってやれたらいい。
陸はそんな理想を語ってから、2人が先ほど話した『相手』に想いを馳せつつ問いかける。
「なあ、最近相手に何をされて、一番嬉しかったんだ?」
「たくさんあるニャスけど……最近だと、ミアの“居場所”が増えたことかニャぁ」
皆との縁を繋いでくれたサーカス団には、感謝だとミアは語る。
白藤はそこで不意にミアと顔を見合わせてから、一緒に陸の顔を覗き込んで。
「うちとミア……どっちがお好み?」
「えっ!?」
「なぁんて、ね」
思いもしない行動に陸が驚いたところで、白藤は赤薔薇を思い浮かべつつ身を引いてくすりと笑う。
「ミアの心に、灯りは灯っとるやろか?」
話題を変えて白藤が尋ねると、ミアはオカリナを手にして音を奏でる。
「……みんな、心に幸せな灯りが灯ればいいニャぁ」
「皆の心が温かければ、それが一番えぇな」
そんな会話を、傍で聞いていた蜜鈴。
「ふむ……、春に開く花弁の様に良き笑顔じゃ」
果実酒を片手にする彼女は、彼らの様子を肴とするのに勿体無さすら覚えてしまうのである。
●
縁もたけなわとなったタイミングで、一芸の準備を整えたアリア。
白雪のようなマテリアルを舞わせた彼女は、事前にある程度開けてもらった集落内の通路をイェジドで駆けていた。
プレリュードとでも言うべく、彼女は明るい歌で無数の蝶が舞うような幻想的な歌をそらんじる。
そして、そのまま彼女は勝利を祝う為、そして、この地の平和をもたらしたことへの祝勝の歌を響かせて。
演奏はリュートで。移動に関してはほとんどコーディに任せ、アリアは弾き語りを行う。
「さあ、この戦を歌い語るも、ひとつの祝いよ。集って得た、勝利を」
歌うは凱歌。この場での戦いの噺を歌詞とし、アレンジを入れつつ美声を響かせた。
(絢爛舞踏ともいかずとも、それはいずれ)
さらに、高まったマテリアルを練り上げ、アリアは共鳴させていく。
そして、変調によって落ち着いた旋律とし、最後までこの場の人々ほとんどを彼女に釘付けとしてしまう。
まさに、勝利に相応しき一曲。
人々は割れんばかりの拍手とおひねりを、アリアへと送っていた。
その横を通り過ぎたレオナ(ka6158)も拍手を送りながら周囲を眺め、この集落民の笑顔を見て思う。
「私も及ばずながら、集落の皆様や暮らしを守るために、役に立てたようで嬉しいです」
復興はこれからといったようだが、集落民達の士気は高い。
その様子に、レオナは一安心していたようだった。
拍手を送った集落の女性達の中には、後片付けに当たる者へと当たろうとするものもいたが、カーミンは自身のゲー太を指差して。
「大変でしょ? せっかくの慰労会なんだもの。片づけはコイツに任せて、楽しみましょ?」
準備段階でも、食器を花柄のキッチンクリップで留めるなど、持ち主へとスムーズに返却できるよう、リスト化、セットにするなど対応している。
作業の数がかなり減ったこともあり、集落民達も大いにカーミンへと感謝していたようだ。
ただ、仕切り屋さんと言う集落民からの言葉には、彼女も困惑してしまっていたらしい。
「イイねェ、人の笑顔を肴に酒が飲めるってェのは」
美味い飯、美味い酒。笑顔の肴に嬉し涙のデザート。
これだけついていれば、さすがの柊羽もお腹一杯とのことだ。
「イイねイイねェ。やっぱ人生ってのァこうで無くっちゃなァ」
彼は満足気に大の字になって、草の上に寝転がるのである。
慰労会はまだ続く。
人々の興奮は夜が更けてもなお、収まる様子を見せぬようだった。
グラズヘイム王国北東。
山岳地帯にあるとある山の麓、南側にある集落。
トカゲ雑魔との前線基地ともっていたその場所は再び人が住む事のできる土地に戻り、この地の集落民も避難先の古都アークエルスから戻ってくることができた。
本格的な復興作業の前にし、まずはこの地を去り行くハンターの為にと、この地の集落民は山北東にある湖畔の集落民を呼び、ささやかながらに慰労会を開くこととなる。
「今まで戦ってきたのは住民も同じ。これから夏になるとはいえ、慰労会でそこから蓄えを奪うわけにはいかないわ?」
準備段階ですでに、カーミン・S・フィールズ(ka1559)は大張りきり。
刻令ゴーレム「Gnome」のゲー太にたくさんの物資を積みこみ、彼女はわざわざ古都から運び入れを行う。
宴会で使う物資、食材はもちろんのこと。
これからの集落再建に必要な道具、備蓄などもカーミンは運んでくれていた。
最後まで至れり尽くせりだと感じながらも、集落民は感謝を込めてハンター達を労うべく設営、料理と会場準備を整えていく。
そこに、幻獣に跨って集落へとやってくるハンター達の姿がちらほら。
「一先ず、無事に討伐完了出来て一安心かな?」
イェジド、オリーヴェに乗ってやってきたユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239) は、活気付く集落を煽いで。
「それに、こういった宴に参加するのは久しぶりな感じだからね」
そして、空からもワイバーンを駆るメンバーの姿があった。
白っぽい鱗を持つ龍、ウイヴルに乗ってやってくるUisca Amhran(ka0754)は、この場で是非やっておきたいことがあった。
「歪虚さんたちのせいで竜についた悪いイメージを、少しでも払拭するのですっ」
トカゲ雑魔の極大サイズ、そして、それらを操る歪虚グラフはドラゴンを思わせる姿をしていた。
それもあって、Uisca はできる限り集落民の龍に対する印象を良くしたいと考えていたのだ。
「せっかくの慰労会だ、楽しもうぜ!」
これから始まる大騒ぎに乗っかり、思いっきり楽しもうと岩井崎 旭(ka0234) は考える。
そして、旭は自分の目で確かめたいものがあった。
――守ったもの、そして、勝ち取ったものを。
調理を行う集落民に紛れ、ハンターの姿もある。
「安堵の笑み……痛みを乗り越えた者達の笑みか……」
長期の避難生活から生まれ育った故郷へと帰り、喜ぶ集落民達の表情を眺め、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は微笑を浮かべて。
「さて、幾らタダじゃと言おうと何もせぬと言うものう……。軽く肴でも作ろうかの」
蜜鈴はまず、目の前にある山で採れた山菜でおひたしを手早くつくる。
同時並行して、下味をつけた鶏肉を炒めて山椒をふりかけた一品、そして、白身魚を根菜と合わせて煮付けたものを蜜鈴は皿によそう。
また、牛肉をニンニクと塩コショウで表面を焼き、叩いていく。後はじっくりと用意されたかまどで焼くこととなる。
そうして蜜鈴はしばらく、肴となる品数を増やしていた。
「タダメシはありがたいが、トカゲ退治に参加してないからな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は一連の事件には参加してなかったようで、ここは料理人として参加するようだ。
「せっかく、地元の良い素材があるんだ。旨い料理に仕上げないとな」
ここには、折角、山の幸や湖の魚が集められているという。
山菜などはものによってはクセがあり、好き嫌いが分かれるところ。
それも、揚げてしまえば食べやすくなると、レイオスはフリッターを作ることにしていた。
フリッターはリアルブルーにおけるイギリスやアメリカの揚げ物料理だ。
レイオスは肉や、湖で取れる魚、エビといった生物まで揚げていた。
挙げたものは串に刺し、手に取りやすくする配慮も忘れない。
「衣に缶ビール使ってるから、冷めてもカリッとしてるんだ。でもどうせなら、揚げたてのを食ってくれよ」
作った料理を、レイオスは会場内のテーブルへと片っ端から並べていく。
まだ、会は始まっていないが、集まるハンター達は並ぶ料理に興味津々。
慰労会が始まる直前になると、ハンター達が手に取りそうになっている状況となっていた。
さすがにこれ以上、ハンターを待たせるわけにはいかないと判断した集落民は、設営作業をそこそこにして切り上げ、慰労会の開始を集落の長から告げることとなる。
挨拶の締め、参加者は皆、グラスを手にして。
「それでは、我が故郷の無事に……、ハンター達の勝利に、乾杯!」
「この地の勝利を祝して、乾杯!」
レイオスも調理しつつ、参加者と共に声を上げた。
会場には、たくさんの美味そうな料理が並んでおり、参加者達が手をつけ始める。もちろん、レイオスの料理も例外ではない。
「全品味あわせてもらうぜ」
衣となる缶ビールなどの材料が尽きてから、レイオスも片っ端からそれらの料理を食べていこうと考えていたようである。
●
本格的に始まる慰労会。
ユグディラのシトロンと共に会場を訪れていたのは、鞍馬 真(ka5819) だ。
彼はトカゲ雑魔との交戦経験はあれど、決戦に参加していないと考えており、それまでの戦いもハンターとして当然のことと考えていた。
その為、労わられる立場ではないと考える真は、シトロンと共に会場のBGMを担当することにしていた。
真はフルートを、シトロンはリュートを吹き、協奏を行う。
1人と1匹で主旋律と伴奏を入れ替え、心地よいハーモニーが集落に響く。
控えめながらもうっとりとするその音色に、会場を訪れた人々はしばし聞きほれていた。
「……こうやって、シトロンと一緒に思いっ切り演奏するのは久しぶりだしな」
折角の機会ということもあり、真は場の空気を楽しむこととしていたようだ。
そんな中で、調理に当たるジャック・エルギン(ka1522)。
「オウ、お疲れさん。飲んで食ってるかい?」
彼は狩猟犬を連れて狩ってきた、山に生息する鳥、獣の肉を使ったワイルドな男料理をと考えていたのだが……。
「ハンターの調理風景は、なかなかお目にかかれないんじゃない?」
カーミンは刻令ゴーレム「Gnome」のゲー太に搭載されたKモードを起動させる。
すると、ゲー太を中心としてキッチンが展開していき、元々その場で調理をしていたジャックが完全に見世物状態となってしまう。
最初はこの状況に面食らっていたジャックではあったが、集落民にワイルドな男料理が好評なこともあり、気を良くしていたようだ。
様々な人が行き交い、語らう慰労会。
集落民が礼を告げに訪れる中、ハンター達も思い思いの時間を過ごす。
浅生 陸(ka7041)は同行する姫2人の為に、肉や魚、麦酒、果実酒などを山盛りで確保しており、BBQセットを借りて食材を焼いていた。
「こういう笑顔が見れるのはいいな」
時折、視線を周囲に向ける陸。
沈む行く空の下には、平和を詠う民の姿があった。
「なに焼いてるニャス? なに飲んでるニャス?」
苺酒を飲むミア(ka7035)は同行する2人が手をつけている料理や飲み物に興味を示す。
白藤(ka3768)はミアや陸の為、会場に並ぶいくつかの酒からカクテルを作っていた。
ミアには、シャンパンベースにオレンジジュースを注いだミモザ。
そして、陸にはカルーア・ミルク。こちらは文字通り、コーヒーリキュールのカルーアを、牛乳で割ったカクテルだ。
それぞれ、白藤が2人の為に見繕った一杯。
「カクテルもいただくニャス!」
嬉しそうにミアがそれを飲み始めると、陸もある程度食材を焼いたところでカクテルを手に取る。
「美味い。いろんな一面があるんだな」
そのカクテルの色に感心した陸は、グラスの中身を口に含む。
ほのかな甘さと、リキュールの香りが口内へと広がっていった。
(うちからすれば、二人にピッタリなお酒やで♪)
ただ照れくさいのか、白藤がそれを口に出すことはなかったようだ。
ハンター達が集落民と共に中央で楽しく語らい、食べている脇では、控えめに参加する聖堂戦士団メンバーの姿がある。
そこに近づいてきたのは、シレークス(ka0752)、サクラ・エルフリード (ka2598) のコンビだ。
「酒が飲めるとあっては、行かざるをえねーですねぇ」
決戦のみ参加の2人だったが、シレークスは楽しそうに参加している。
「良いですか、サクラ。エクラ教徒たるもの……!」
普段、破戒修道女のシレークスは気を良くして教義を説くのだが、サクラはいささか不服な様子。
「せっかく、調理の腕を見せる機会でしたのに……」
先ほど、調理を希望したところ、シレークスと頭の上に鎮座するユグディラ、ヤエに全力で止められてしまったのだ。
もっとも、シレークスでなくとも、『包丁は苦手ですが、剣でならそれなりに出来る』と主張する人に調理を任せられるはずもないのだが。
事実、シレークス曰く、彼女の料理の腕は壊滅的らしい。
しょうがないと、サクラは並ぶ料理を食べようと手をつけていく。
「にゃにゃ~」
サクラの頭の上のヤエが魚や肉を食べていると、同じくシレークスのユグディラ、インフラマラエが料理を差し出しつつ、友達になるようアピールする。
ヤエはそれを受け取りはするものの、取ってくれたから食べる程度の淡白な反応でしかない。
「にゃにゃにゃ」
インフラマラエはヤエの様子に、諦めないと意気込んでいたようだ。
「久しぶり、戦術指南の時以来だから大分経ってるけど、元気そうで良かった」
その聖堂戦士団メンバーの所へ、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が歩み寄ってくる。会いに相手は、その小隊長、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
彼女の成長にユーリは目を細めつつ、聖導士達を労う。
「こうして一緒に依頼参加したのは実質初めてだったけど、お互い無事に帰ってこれて本当によかったよ」
ファリーナが「はい」と返事してみせると、会をゆっくりと楽しんでいた夢路 まよい(ka1328)も駆け寄ってきて。
「グラフやっつけるのお疲れ様~!」
トカゲ雑魔との決戦には、ファリーナのツテもあって参戦したというまよい。
ジュースと甘いお菓子を傍に置き、まよいはファリーナにじゃれつく。
戸惑いを見せるファリーナは隊員の目を気にしつつも、しばし、迷いと楽しく会話していたようだ。
ところで、サクラは果実酒に手をつけていたようで。
「シレークスさん、このお酒美味しいですよ……?」
「――って、サクラぁっ!? おめーはそれ以上、飲むんじゃねぇっ!」
聖堂戦士団メンバーと宗教談義を行っていたシレークスだったが、酒癖の悪いサクラがほろ酔いになっているの見て、全力で駆け寄ってくる。
「えぇ……、もっと飲みましょう……?」
「おめーが酔うと、脱いだり脱がせようとしやがるです!」
サクラの酒癖の悪さもあり、シレークスは剛力を使ってまで全力で止めに入る。
周囲の笑いのタネとなりつつも、シレークスに抑えつけられたサクラはまたも止められて口を尖らせてしまうのだった。
●
会はまだまだ始まったばかり。
「お疲れ様でした。慰労会に参加させてもらえるとは、感激です」
壇上に上がったミオレスカ(ka3496)が、この場の人々へと頭を下げる。
会場の中心には特設ステージが設けられており、そこで一芸が披露できるようになっていた。
「森、空からの脅威に続いて、まだまだ危険があるかもしれませんが、今はこのときを楽しく過ごしましょう」
新たな危険が襲い来る可能性がないとは言えない。
それでも、この集落の人々は自分達の喉元にまで迫った脅威がなくなったことを、素直に喜んでいたようだ。
一通り挨拶を済ませたミオレスカは、集落民数名と一緒にこの地に伝わる楽曲演奏に参加させてもらうことにしていた。
安らかな旋律に乗せたメロディ。
さほど詳しくはない曲だったこともあり、ミオレスカもできる範囲でリズムをとり、竪琴で伴奏を行う。
曲が終わり、大きな拍手が巻き起こる中、壇上の演者からミオレスカに自身の得意な曲をとリクエストがあった。
そこで、ミオレスカは1人、育った北方の辺境の曲を披露してみせる。
鳴り響く竪琴の音色はどこか切なく、それでいて力強さを感じる歌。
短いながらも一曲終えた彼女は再び丁寧に頭を下げ、巻き起こる拍手の中、壇上から降りて行った。
代わりに壇上に上がったのは、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だ。
彼女は、一風変わった手品をこの場で披露する。
「ルンルン忍法イッツショウタイム♪」
彼女はまずボールを放り投げて観客の気を引きつつ、手にするシルクハットから、光り輝く鳥を放つよう見せていた。
感嘆と溜息が漏れる中、ルンルンはさらに辺りを照らす火球を発してみたり、地の精霊の力を借りて畳返しをしたりして、場を沸かせる。
まだまだ、ルンルンの手品はこれからといったところ。
そのタイミング、集落の長と話をしていたのは、アリア・セリウス(ka6424) 。
彼女はこの後の余興の為、何やら長の了承を取っていたようだ。
一芸を披露する者がいれば、たらふく飲んで食べるものもいて。
「酒だ! 飯だ!! あんだァ? 遠慮なく食ってイイたァ随分太っ腹だなァ!!」
柊羽(ka6811)は片っ端から飲み食いするハンターを見つけ、ニカッと笑いながら飲み比べをするよう誘いかけていた。
そんな柊羽は度々相手を変えていたが、彼は集落を囲む濠の近くで飲み食いしていた3人のエルフの男性達を見つけ、声をかける。
「大蜥蜴ねェ……。エルフの兄チャン達も大変だったみてェだな」
柊羽がこの地を訪れたのは初めてだったが、この集落民が皆、ハンター達に感謝している姿に、彼は気を良くしていた。
「めでたいな、祝杯を私からも上げさせてくれ」
トカゲ雑魔どもを打ち破ったと聞き、討伐依頼に参加経験のあるレイア・アローネ(ka4082)もまた、エルフに挨拶へとやってくる。
濠の外側にはレイアの愛龍も控えており、酒を与えていたようだ。
「あの時は色々世話になった」
思い返すように、レイアは自身の参加した依頼について語る。
一度話し出せば、雑魔と交戦時の思い出が場を飛び交う。
「極大トカゲは色々と厄介だったな」
そこで、演奏を止めてふらっとこの場に現れた真が、石化睨みを行う非常に大きな敵との戦いについて語る。
「今後の戦いに役立てたいところだ」
彼が持ちかけたその話が、今度はこの場でクローズアップされていた。
そして、レイアが雑魔討伐に出た仲間達を労う。
特に、浅からぬ縁であるルンルンから聞く話を、酒の肴にしていたようだ。
「今度戦う時は、出来れば私も一緒に戦いたいな」
一芸披露し終えたルンルンは楽しそうに、飲食しながら語らう。
彼女もまた、この村の人々が安心して暮らせることがとても嬉しく、笑顔を浮かべていた。
ミオレスカも一緒になり、話に参加しつつ料理を口にする。
そのそばには、アバルト・ジンツァー(ka0895)の姿があった。
「……ようやく、ここの問題も一段落が付いた」
度々この一件に関わってきていたアバルトもまた、感慨に浸る。
ここの集落民達もまだまだ苦しい中で、ハンターに気遣いを見せてくれているのだ。
「気を使って貰ってかえって心苦しいが、せっかくの好意だ。その好意を受けさせて貰う事としよう」
そうして、集落民、ハンターらと交流をはかっていたアバルトは、脇で飲み食いしているエルフ達を目にして。
集落民が雑魔襲撃から避難する時からずっと、彼らはこの地に滞在していた。
しかし、エルフ達は自分達の功績を辞し、ひっそりとこの会を楽しんでいたのである。
(彼らこそ、一連の英雄だと認めさせるべきだ)
アバルトは自分に誤解が降りかからぬよう、エルフ達の功績を語る。時には直接、エルフ達を連れて。
「彼らこそ、本当の英雄だ」
エルフ達の活躍をアバルトが丁寧に説くと、集落民達もエルフ達に感謝と労いの声をかけ始めていたようだ。
「お疲れ様」
「約束通り、ちゃんと生き残ったわね?」
話を止めた真がエルフ達を労うと、ゲー太を調整しつつお茶を飲んでいたカーミンもこの場に現れ、エルフ達が無事なことに微笑んで。
「皆もお疲れ様……っと、そうだ」
カーミンは交友関係のあるメンバーの姿を見かけて慰労の言葉を交わしつつ、集まる集落の奥様方にもエルフ達の活躍を吹き込むなど、忙しなく動いていたようだ。
「アンタらも出発すんだってな」
偵察、そして決戦に参加していたジャックも、エルフ達の下へと歩み寄ってきて。
「あまり話せなかったが、気が向いたら同盟にも寄ってくれよ」
アルウェス達に対して別れの挨拶を行うと、彼らはまたどこかで会えるとよいなと握手を求めていた。
この場に集まるたくさんの人々を、アリアは眺める。
「関わったのはほんの僅かだけれど、本当に沢山の人が関わったもの、ね」
私にできたことは少ない。
これから先、さらにこの場をどう使って明日へ、勝利へ、理想へと繋げていけるかは……。
「それはまた別のお話、ね」
改めて、アリアは一芸披露の準備を進めるのである。
●
「うわー、おいしい!」
「ハンターさん、すごーい。こんなの初めて食べた!!」
この場には、集落民の子供の姿も見受けられる。
避難先で、窮屈な想いをしながら過ごしてきた子供達。
それがトカゲ雑魔が原因だと彼らは理解していたはずだが、意外にもワイバーンに興味を持っていたことにUisca は喜びつつ。
「あそこにいる飛竜のウイヴルちゃんも、歪虚退治にがんばってくれたんですよっ」
竜も悪い竜だけではないとアピールをし、歪虚退治にも活躍したのだとUisca は胸を張ってアピールする。
「今、飛竜のウイヴルちゃんとふれあいたいって人はぜひ来てくださいね」
すると、特に子供が目を輝かせ、触りたいと挙手していた。
そうして、Uisca は幾人かを集落外まで子供達を連れ出す。
「ウイヴル、よろしくねっ」
一声鳴くウイヴルに協力してもらい、触ってもらったり、食べ物を与えたりと子供達と触れ合いを始める。
それは、ちょっとしたアトラクション感覚。
最初は恐る恐るといった態度の子供達も少しずつ、ウイヴルと打ち解けていく。
非常に晴れやかな表情で、子供達も慰労会を存分に楽しんでいたようだ。
(まぁ、飯食って酒飲んで騒いでる真ん中までは連れてけねーよな)
そばには、ワイバーンのロジャックの姿がある。
集落内から食べられそうなものを確保し、運んでいた旭は同じワイバーンと触れ合う子供達を見て考えていた。
トカゲ雑魔との戦いで前線拠点へと変わったこの集落もそうだが、これからどんどん変わり行く集落はあるのだろう。
「せっかくだし、守った集落を空から眺めるってのもいいんじゃねーか?」
そうして、旭は空に興味を持つ子供達をロジャックの背に乗せ、夜空を舞う。
子供達が落ちないよう鞍に鐙にガッチリ固定するなど旭は対策を怠らないが、ロジャックが姿勢制御することでカバーしてみせる。
いざとなれば、覚醒して自身に翼を纏うことでサポートを考える旭だが、その心配はなさそうだ。
ウイヴルだけではワイバーンとの交流が足りないと感じていたUisca にとって、これは助けに船ならぬワイバーンといったところ。
より多くの人々に、ワイバーンと触れ合う場を提供できそうだ。
「一緒に空を飛んだり出来て楽しいですよ~」
彼女も子供達を乗せ、少しの間空中遊泳に連れ出す。
それを見上げるユーリはイェジドのオリーヴェと一緒に、がっつりと確保した料理を食べていた。
しばらくの間は2人で会話していたユーリだったが、声をかけていたファリーナが隊員を連れてやってくる。
「お誘い、ありがとう」
しばしの間、ユーリは聖堂戦士団団員達と交流して笑顔を浮かべ、オリーヴェと楽しい一時を過ごすのだった。
●
再び、集落内に視線を向けると。
「むぅ、もう少しお酒を飲んでいたかったのですが……」
ほろ酔いになっていたサクラだったが、シレークスやヤエから調理に続いて飲酒まで止められたこともあって、仕方なく立ち上がる。
「せっかくですし、私達も何か出し物しましょうか……。ヤエ、楽器持ってきてますよね……」
彼女はそのまま壇上に上がり、一芸を披露することにしていた。
サクラの頭の上が定位置のヤエもぴょこんと降り立ち、彼女の足元で回り始める。
そうして、サクラもリュートを使って演奏を始め、小さく口を開いて歌う。
「にゃーにゃー」
一方、ユエは琵琶を弾きつつ、楽しそうに歌う。
その顔が真っ赤になっているのは、酔いのせいではなく。
「歌は恥ずかしいので、聞かなかった事にしてください……。え、演奏だけで……」
一曲終え、サクラははにかんで一言観客につげたが、彼女の弾き語りに集落民は見とれ、拍手を送る。
演奏はともかく歌も絶賛されたことで、サクラはより一層顔を真っ赤にしてしまうのだった。
その演奏の傍ら、陸はギターを響かせ、楽しい話に花を添える。
白藤、陸、ミアの3人はとりとめなく語らいを続けていて。
「あ! 蜜鈴ちゃんニャスー♪ 頭撫でてーニャス♪」
そこにやってきたのは、扇と煙管を手に顔見知りの姿を見つけてやってきた密鈴だ。
「ミアも白藤も息災な様で何より」
彼女はミアの頭を撫でつつ、挨拶する。
「そちらの殿御は陸と言うたか……遠慮せず喰らうが良いよ」
陸も軽く頭を垂れ、そのまま飲み食いと話を再開させた。
3人が食べる姿を眺め、密鈴は微笑む。
「えっと、ほーよーりょくのある人? とか、いいニャスよネ♪」
いつしか、話題は互いの恋の話に。ミアは自身がわんぱくだと自覚していたようである。
「でも、一緒にわんぱくやれる人とかも、ミアにとっては貴重ニャスなぁ」
やや悩むミアの横で、白藤が頭上を見上げつつ昔の男を思い浮かべてポツリと一言。
「好み、か……浮気せん人、かな……」
そして、代わるように別の人物の姿を脳内に思い描く。
首を振った彼女は困惑しながらも、片手で真っ赤になった顔を隠しつつその場に突っ伏す。
痛みと抵抗を感じる複雑な感情。それを白藤は認められずにいた。
「恋バナ? 男にはハードル高い話だな……」
とはいえ、2人が話した後では陸も言わないわけにはいかず、麦酒を煽ってから彼女達を微笑ましげに見つめて。
「そうだな、我儘でいいから、一生懸命で優しい子が理想かな」
――悲しまなくていいように、護ってやれたらいい。
陸はそんな理想を語ってから、2人が先ほど話した『相手』に想いを馳せつつ問いかける。
「なあ、最近相手に何をされて、一番嬉しかったんだ?」
「たくさんあるニャスけど……最近だと、ミアの“居場所”が増えたことかニャぁ」
皆との縁を繋いでくれたサーカス団には、感謝だとミアは語る。
白藤はそこで不意にミアと顔を見合わせてから、一緒に陸の顔を覗き込んで。
「うちとミア……どっちがお好み?」
「えっ!?」
「なぁんて、ね」
思いもしない行動に陸が驚いたところで、白藤は赤薔薇を思い浮かべつつ身を引いてくすりと笑う。
「ミアの心に、灯りは灯っとるやろか?」
話題を変えて白藤が尋ねると、ミアはオカリナを手にして音を奏でる。
「……みんな、心に幸せな灯りが灯ればいいニャぁ」
「皆の心が温かければ、それが一番えぇな」
そんな会話を、傍で聞いていた蜜鈴。
「ふむ……、春に開く花弁の様に良き笑顔じゃ」
果実酒を片手にする彼女は、彼らの様子を肴とするのに勿体無さすら覚えてしまうのである。
●
縁もたけなわとなったタイミングで、一芸の準備を整えたアリア。
白雪のようなマテリアルを舞わせた彼女は、事前にある程度開けてもらった集落内の通路をイェジドで駆けていた。
プレリュードとでも言うべく、彼女は明るい歌で無数の蝶が舞うような幻想的な歌をそらんじる。
そして、そのまま彼女は勝利を祝う為、そして、この地の平和をもたらしたことへの祝勝の歌を響かせて。
演奏はリュートで。移動に関してはほとんどコーディに任せ、アリアは弾き語りを行う。
「さあ、この戦を歌い語るも、ひとつの祝いよ。集って得た、勝利を」
歌うは凱歌。この場での戦いの噺を歌詞とし、アレンジを入れつつ美声を響かせた。
(絢爛舞踏ともいかずとも、それはいずれ)
さらに、高まったマテリアルを練り上げ、アリアは共鳴させていく。
そして、変調によって落ち着いた旋律とし、最後までこの場の人々ほとんどを彼女に釘付けとしてしまう。
まさに、勝利に相応しき一曲。
人々は割れんばかりの拍手とおひねりを、アリアへと送っていた。
その横を通り過ぎたレオナ(ka6158)も拍手を送りながら周囲を眺め、この集落民の笑顔を見て思う。
「私も及ばずながら、集落の皆様や暮らしを守るために、役に立てたようで嬉しいです」
復興はこれからといったようだが、集落民達の士気は高い。
その様子に、レオナは一安心していたようだった。
拍手を送った集落の女性達の中には、後片付けに当たる者へと当たろうとするものもいたが、カーミンは自身のゲー太を指差して。
「大変でしょ? せっかくの慰労会なんだもの。片づけはコイツに任せて、楽しみましょ?」
準備段階でも、食器を花柄のキッチンクリップで留めるなど、持ち主へとスムーズに返却できるよう、リスト化、セットにするなど対応している。
作業の数がかなり減ったこともあり、集落民達も大いにカーミンへと感謝していたようだ。
ただ、仕切り屋さんと言う集落民からの言葉には、彼女も困惑してしまっていたらしい。
「イイねェ、人の笑顔を肴に酒が飲めるってェのは」
美味い飯、美味い酒。笑顔の肴に嬉し涙のデザート。
これだけついていれば、さすがの柊羽もお腹一杯とのことだ。
「イイねイイねェ。やっぱ人生ってのァこうで無くっちゃなァ」
彼は満足気に大の字になって、草の上に寝転がるのである。
慰労会はまだ続く。
人々の興奮は夜が更けてもなお、収まる様子を見せぬようだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/08 01:47:41 |
|
![]() |
相談卓 Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/05/08 02:57:49 |