ゲスト
(ka0000)
静まれ、暴れ川!
マスター:竜桐水仙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/20 19:00
- 完成日
- 2018/05/28 08:10
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●とある河川のほとりにて
その川は、近隣では暴れ川として有名だった。
春が終われば長雨ではんらんし、夏になれば嵐によってはんらんする。
近隣住人からすればたまったものではない。
空が曇るたびに雨が降りはしないかと怯え、雨が降ったあかつきには夜中だろうと川をしょっちゅう覗きに行く。
挙げ句、それで川に呑まれて死傷者が年に2,3人は出るという有様だった。
そんな川を渡ろうと、旅人でありハンターでもある中年男――エイソスは、雨に降られながら、川沿いに足を止めていたのである。
比較的整った顔立ちをしているが、その下半分は薄い髭で覆われている。
雰囲気は若いものの、見た目は中年じみた感じのする、年齢不詳の男だった。
商売道具でもある猟銃を抱え、ごま塩髭を撫でながら、立ち尽くしている。
ひとえに川を渡れないせいだ。
はんらんが起きるほどの勢いで流れる川には、橋など架けようがなく、頑張って架けても雨が降るたびに流されてしまう。とうとう架けようとする人間もいなくなった。
すると交通手段は船で川を渡してもらうということになるのだが、これもやはり雨のせいで船が出せなくなることがしょっちゅう。
結果、多くの旅人が立ち往生することになる。
ハンターであろうともその例に漏れず、ちょうど時期悪く雨もやまないので、足止めを食らっているところだった。
しばらく川を眺めていたエイソスだが、唐突に銃を担ぎ直し、きびすを返す。
元来た道に足を踏み出し、誰にともなく呟いた。
「よし、治水工事だ」
その日のうちに川の手前にあった村で筆記用具を揃え、川沿いをくまなく歩き回り始める。
ふちを辿って川上にのぼっていくと、川が大きくS字を描いて流れていることがすぐに分かった。
さらに川がきれるのは必ずカーブを描いているところだということも、住民への聞き取りで突き止めた。
あとはそれらのことを、猟撃士の備える目利きの能力を無駄に発揮して、地図と注釈という形で紙に描き起こしていく。
エイソスのフットワークをもってすれば、治水工事の企画指示書など、雨に打たれながらでも、ものの数日の仕事だった。
●ハンターオフィスにて
「はぁ?? 治水工事ぃ?」
エイソスが受付に肘をつくなり、バサリと投げた書類の数々に、受付の女性職員は唖然とする。
「おーう。詳しいことはそこの企画書に書いてあるんだけどな」
エイソスは書類をぞんざいに指差しながら、ペラペラとのたくる。
「あの川、すぐに暴れて渡れなくなるんで、どうにもうざったかったんだよ。だから流れをもっと緩やかにして、水の勢いを弱めることにしたんだ」
S字を縦に潰したような軌道で川が流れていたために、カーブで勢いがつき、水の勢いを殺しきれずに決壊してしまっているらしい。
「ま、そのことはこの工事を監督してくれる人間に確認したんで間違いはないんだがな」
「それで……、なんのためにハンターオフィスへ? その口ぶりでしたら、もう既に工事をする人間は確保しているんでしょう」
話が見えないと、長々と続きそうなエイソスの言葉を遮る職員。
エイソスが鼻の頭を掻いた。
「んま、その通りなんだけどな……。いかんせん人手が足んねえんだよ」
魂胆が読めてきたと、職員は手を擦り合わせる。
「つまり、工事を一緒にしてくれるハンターを募集したいと?」
「その通り!」
エイソスは手を打ち合わせた。
「オレもさっさと向こう岸に渡りたいんでね、早急に工事を終えたい。業者にも協力取り付けたんで、報酬は高めに出せるぜ」
「ほう、報酬が多いのですか」
「それだけじゃねぇ。朝昼晩とメシ付きで、宿もおさえてある。みんなで汗を流して、親睦を深めようぜって狙いさ」
「ほほう。そう言ってグループを確保する魂胆ですね?」
「……思うんだけどさ。あんた、ちいとオレにシンラツすぎない?」
「まさか。真面目にやれば能力が高いのに、いい年してブラブラ遊んでばかりいるダメな人だなんて、これっぽっちも思っておりませんとも」
「まーた本音なのか冗談なのか分かりづらい路線を攻めてくるねぇ……」
とにかく、とエイソスは話を締めにかかる。
「一緒に工事してくれるハンターを募集しておいてくれや。一緒に身体動かしゃ隣のハンターと仲良くなれるだろうし、近所の村人は川がはんらんしなくなって大いに喜ぶ。この時期じゃ雨が降ることもあるだろうが、雨具なんかはこちらで用意するから問題ない」
笑みを浮かべて言う。
「どうよ、やり甲斐のある依頼だろう?」
その川は、近隣では暴れ川として有名だった。
春が終われば長雨ではんらんし、夏になれば嵐によってはんらんする。
近隣住人からすればたまったものではない。
空が曇るたびに雨が降りはしないかと怯え、雨が降ったあかつきには夜中だろうと川をしょっちゅう覗きに行く。
挙げ句、それで川に呑まれて死傷者が年に2,3人は出るという有様だった。
そんな川を渡ろうと、旅人でありハンターでもある中年男――エイソスは、雨に降られながら、川沿いに足を止めていたのである。
比較的整った顔立ちをしているが、その下半分は薄い髭で覆われている。
雰囲気は若いものの、見た目は中年じみた感じのする、年齢不詳の男だった。
商売道具でもある猟銃を抱え、ごま塩髭を撫でながら、立ち尽くしている。
ひとえに川を渡れないせいだ。
はんらんが起きるほどの勢いで流れる川には、橋など架けようがなく、頑張って架けても雨が降るたびに流されてしまう。とうとう架けようとする人間もいなくなった。
すると交通手段は船で川を渡してもらうということになるのだが、これもやはり雨のせいで船が出せなくなることがしょっちゅう。
結果、多くの旅人が立ち往生することになる。
ハンターであろうともその例に漏れず、ちょうど時期悪く雨もやまないので、足止めを食らっているところだった。
しばらく川を眺めていたエイソスだが、唐突に銃を担ぎ直し、きびすを返す。
元来た道に足を踏み出し、誰にともなく呟いた。
「よし、治水工事だ」
その日のうちに川の手前にあった村で筆記用具を揃え、川沿いをくまなく歩き回り始める。
ふちを辿って川上にのぼっていくと、川が大きくS字を描いて流れていることがすぐに分かった。
さらに川がきれるのは必ずカーブを描いているところだということも、住民への聞き取りで突き止めた。
あとはそれらのことを、猟撃士の備える目利きの能力を無駄に発揮して、地図と注釈という形で紙に描き起こしていく。
エイソスのフットワークをもってすれば、治水工事の企画指示書など、雨に打たれながらでも、ものの数日の仕事だった。
●ハンターオフィスにて
「はぁ?? 治水工事ぃ?」
エイソスが受付に肘をつくなり、バサリと投げた書類の数々に、受付の女性職員は唖然とする。
「おーう。詳しいことはそこの企画書に書いてあるんだけどな」
エイソスは書類をぞんざいに指差しながら、ペラペラとのたくる。
「あの川、すぐに暴れて渡れなくなるんで、どうにもうざったかったんだよ。だから流れをもっと緩やかにして、水の勢いを弱めることにしたんだ」
S字を縦に潰したような軌道で川が流れていたために、カーブで勢いがつき、水の勢いを殺しきれずに決壊してしまっているらしい。
「ま、そのことはこの工事を監督してくれる人間に確認したんで間違いはないんだがな」
「それで……、なんのためにハンターオフィスへ? その口ぶりでしたら、もう既に工事をする人間は確保しているんでしょう」
話が見えないと、長々と続きそうなエイソスの言葉を遮る職員。
エイソスが鼻の頭を掻いた。
「んま、その通りなんだけどな……。いかんせん人手が足んねえんだよ」
魂胆が読めてきたと、職員は手を擦り合わせる。
「つまり、工事を一緒にしてくれるハンターを募集したいと?」
「その通り!」
エイソスは手を打ち合わせた。
「オレもさっさと向こう岸に渡りたいんでね、早急に工事を終えたい。業者にも協力取り付けたんで、報酬は高めに出せるぜ」
「ほう、報酬が多いのですか」
「それだけじゃねぇ。朝昼晩とメシ付きで、宿もおさえてある。みんなで汗を流して、親睦を深めようぜって狙いさ」
「ほほう。そう言ってグループを確保する魂胆ですね?」
「……思うんだけどさ。あんた、ちいとオレにシンラツすぎない?」
「まさか。真面目にやれば能力が高いのに、いい年してブラブラ遊んでばかりいるダメな人だなんて、これっぽっちも思っておりませんとも」
「まーた本音なのか冗談なのか分かりづらい路線を攻めてくるねぇ……」
とにかく、とエイソスは話を締めにかかる。
「一緒に工事してくれるハンターを募集しておいてくれや。一緒に身体動かしゃ隣のハンターと仲良くなれるだろうし、近所の村人は川がはんらんしなくなって大いに喜ぶ。この時期じゃ雨が降ることもあるだろうが、雨具なんかはこちらで用意するから問題ない」
笑みを浮かべて言う。
「どうよ、やり甲斐のある依頼だろう?」
リプレイ本文
●打合せ
エイソスは、依頼を受注してくれたハンターたちを集め、早速打ち合わせを開いた。場所はハンターオフィスからすぐ近くにある喫茶店だ。
「よう、オレは依頼を出させてもらった、ハンターのエイソスだ。まずは受けてくれてありがとよ」
参加者6人に向けて、順繰りに視線を向ける。
「まずは自己紹介をしてもらおうかね。……つっても、雰囲気からしてだいたい知り合いか? この中で初対面だってヤツはどんくらいいるよ」
すぐに手が上がったのは1人だけだった。
「んじゃとりあえず、あんただけは自己紹介してもらおうかな。あとは追々、依頼の最中に仲良くなってもらうことにしよう」
エイソスに促されて、受注者では唯一の男、Gacrux(ka2726)が口を開く。
「Gacruxです、よろしくお願いします」
マリエル(ka0116)やレイア・アローネ(ka4082)などがきちんと挨拶をしたそうに尻の座りを悪くさせている他は、おおむね問題なく受け入れられていた。
エイソスはその場で両手を叩き合わせる。
「生憎時間がないんだ。申し訳ねぇが、これが終った後に各自で挨拶するようにしてくれ」
合わせた手をそのまま顔の前に持って行く。すぐに手を机上の資料に落とした。
「早速詳細について擦り合わせていくぞ。だいたい依頼書の確認になっちまうがな」
依頼について、行程に沿って一通りの説明を加えていく。言った通り、依頼書以上の情報はない。説明にはさほど時間がかからなかった。
「何か質問があるヤツはいるかい?」
エイソスの言葉に最初に手を上げるのはGacrux。
「立ち退き説得について、住人へ立ち退き料等の補償はあるんですか? 流石に着の身着のまま家を放り出されて、行く当てもなしでは、住民も不安だと思うんですよね」
「要望を聞いてみて、当てあがったりここがいいって心に決めてる場所があったりする場合は、できる限りの支援をしようと思ってる。具体的には金の工面だな。それに対して、当てがなくて家を移築したいと考えてる世帯には、もともと川が流れていた場所に新しく家を用意しようかって相談をしていた」
エイソスの回答になるほどと頷きながら、身体を椅子に預ける。
今度はエメラルド・シルフィユ(ka4678)が手を上げた。
「その立ち退き依頼について、家を回る担当などはもう決まっているのだろうか。少人数の方が、威圧感が少なくて良いと思うのだが。こういうことは禍根が残らない方がいいからな」
「ちょうどそれについて、次に話そうと思っていたトコだ。実は全体を通して、まだ細かいことは決めてない。そちらもいろいろあるだろうからと、これから決めていくことになってる」
「ふむ……。わかった」
「他には?」
だいぶ間が空いて、あっと声を上げながら七夜・真夕(ka3977)が手を上げる。
「ごはん出してくれるみたいだけど、わたしたちでお弁当作っていったりとかしても問題ないかな? 一緒に依頼を受けたんだから、仲良くなりたいじゃない?」
「あぁ、こちらとしてはメシは各自でじゃあ不親切だよなってことで出すだけだから、自分らで作るってんなら好きにしてもらって構わないぜ」
「やった! お弁当と言えばやっぱりおむすびかなぁ」
「私、炊き込みご飯のおにぎり作りたいです。現地に行く前にここで材料を買って行きます」
「いいねー!」
ミオレスカ(ka3496)も真夕の話題に乗っかる。エイソスは笑みを浮かべながら、話を本筋に戻した。
「他にはいいかな? そんじゃさっき言ってた担当分けについて……」
打ち合わせはどんどん進んでいき、結局その日は1時間程度で解散になった。
店から出てすぐ、エメラルドが一同に相談を持ちかける。
「これから私は、工事の安全を祈るため、教会に行こうと思う。一緒に行ってくれる者はいるだろうか?」
「いいですね。私は行きます!」
マリエルが目をキラキラさせながら、イの一番に同行を申し出る。
その他のメンバーも口々に賛同する。
特に反対する者もなく、そのまま全員で教会に向かい、工事の無事を光に祈った。
●説得
本格的に工事を始める前に、人員総出で住民の説得をしなければならない。
話し合いの結果等を踏まえて、エイソスはハンターを、真夕とマリエル、ミオレスカとエメラルド、Gacruxとレイアの3グループに分けた。さらにそれぞれ担当地域を割り振り、交渉役を担ってもらう。
雲が垂れ込めた嫌な天気の下、3グループはそれぞれに、担当地域へと散っていった。
「この家には、もう40年も住んでてねぇ。やっぱり出て行きたくはないねぇ」
手の甲を擦っていた手で、老婆は流れ落ちる涙をそっと拭った。
真夕とマリエルは、話を切り出した途端に涙をこぼしだした老婆を前に、じっと腰を据えている。
家への愛着は、流浪の民であるハンターには馴染みのない物。それでも2人は、その涙をばからしいとは思わない。真摯で温かい2人の視線を受けて、老婆は思わず、昔語りをこぼしてしまう。
「うちの人と一緒にこの町に移り住んできて、何もないゼロからのスタートだったわ。この家のレンガをね、1カ所だけうちの人と2人で積んだのよ。ちょうどあそこのところ。案外言われないと気付かないものよね、こういうのって」
「そんなことがあったのですね……」
止めどない涙を、老婆は親指と人差し指で拭い続ける。
2人はうんうんと相づちを打ちながら、じっと話を聴き続けた。
愛情と思いを言葉にして吐き出すように、老婆は思い出を話し尽くす。
「はぁ、愚痴に付き合わせてしまってごめんね。でも話を聴いてもらって楽になったわ。この家から出て行きます」
涙を流しながらも、老婆は微笑んだ。
咄嗟に思い浮かんだ案を、ポンと投げかける真夕。
「あそこの思い出のレンガ、あれを使って次の家を建てましょう。今回の依頼主が、そういうことをしてもいいと言っていたわ」
思いがけない言葉に、老婆は目を丸くした。目が細まり、堪えきれない笑いが口許に浮かぶ。
「ありがとう……」
先程とは違う種類の涙が、老婆の頬を濡らした。
ミオレスカとエメラルドの2人は、聖堂騎士たるエメラルドが説得にかかる利点を重視して、信心深いと有名な家を訪れた。
「こんにちは。わたしはエメラルドという。聖堂騎士として修行中の身だ」
「これは……! な、何もないところですが!」
ひどい慌てようで、若々しい奥方が2人を中へ通す。
旦那も出てきて、恐縮しながら話を伺う。早速、エメラルドは切り出した。
「川が切れて毎年被害が出ているのでな、治水工事を行うことにした。川の勢いから計算すると、この辺りを通すのがいいらしい。そこで、大変恐縮なのだが、この場所から移ってもらえないだろうか?」
一気に旦那と奥方の顔が曇っていく。
2人で顔を見合わせたかと思うと、うつむいてしまった。
論破して半ば無理矢理に言うことを聞かせるというのが最悪のシナリオだ。エメラルドたちはじっと相手の反応を待つ。
ぽつりぽつりと、夫婦は言葉をこぼしていった。
いわく、2人は結ばれてしばらく経つものの、最近になってやっと仕事が落ち着き、2人の時間が作れるようになったとのこと。ゆえにごく最近、新しく家財道具を揃え直したのだそうだ。この場所を移動するとなると、全ての家財道具を持って行くこともできないので、どうしても惜しい。未来の司祭様の言葉は金よりも重いものの、心理的にハードルが高いとのことだった。
その言葉を聞いていたミオレスカが、あっけらかんと切り出す。
「ちょうど表でお利口にしているところですが、私の相棒のひこさんなら、かなりの重量を運ぶことができますよ。依頼主さんにも許可は取ってあります。お引っ越し、お手伝いしますよ?」
表を見れば、大きな水牛がのんびりと路肩の草を食んでいる。
すかさず、エメラルドが頭を下げた。
「援助はする。この場所から、移動してはもらえないだろうか」
夫婦は顔を見合わせ、にっこりと顔を笑み崩した。
「いやだね」
Gacruxとレイアは、禿げ上がった頭を撫でるふくよかな老人ににべもなく突っぱねられてしまった。
予想通りの反応ではあるが、やはり正面から否定されると緊張感が高まる。
Gacruxを主として、2人は老人に交渉を仕掛けていく。
「最近は異常気象もよく見られます。今までは危険でなかったかもしれないが、これからはどうか分かりません」
「んなこと言ったって、これから先も危険はないかもしれないじゃないか」
「水死も確認されているんで、かなり危ない状況ですよ」
「オレはこの土地に骨を埋めるんだ! なんと言われようとここからは動かん!!」
理性的な対話は相性が悪く、老人は顔を真っ赤にして意固地になっている。
レイアは思わず、大きな声を出しながら勢いよく頭を下げた。
「頼む! 無理を強いれる道理はないということは承知している。しかしあなた自身も含め様々な人が、この工事により死なずに済むようになる。立ち退きに了承してもらえないだろうか?」
その熱量に、老人がひるむ。
なんとなくGacruxは口を挟まなかった。
さっきまで聞く耳持たずだった老人が、あごに手を当ててうなっている。
満を持して、Gacruxが口を開く。
「今なら引っ越すに当たってこちらから支援ができる。この場所から移動してはもらえないですか」
「……一晩待ってくれ。明日また来て欲しい。その時までに答えを出そう」
次の日、無事に老人も立ち退きに同意してくれた。
老人は、ビックリするほどの晴天の下に家族全員が写った家の写真を、大切に抱えて引っ越していったという。
●工事
説得を終え、無事全員が立ち退いてくれることとなった。
3日以降から、本格的に工事が始まることになる。
一番張り切っているのは、レイアだった。
「真夕などには荷が重いだろう。とくにこの掘り下げなど完全に肉体労働だからな。私が頑張らねばなるまい」
雨の降りしきる中、勢いつけてスコップを地面に突き刺す。
ハンターの誇る膂力に加えて、雨で地面が柔らかくなっている。ざっくりと地面が掘り返されていく。
話題に上った真夕は、愛用の杖であるヴァイザースタッフを持ち出し、レイアのその言葉に肩をすくめていた。
「確かに魔術師なんだから、こういう作業が得意とは言い難いわよね。でも考えてみて。範囲攻撃魔法であるファイアーボールを、地面に対して使用したら、どうなると思う?」
「……まさか!?」
「そんなこと私もやったことないから、試してみないと結果は分からないけどね~」
カクリと倒れるレイア。
「ちょっと離れてて」
真夕が杖を掲げ、スキルを発動させる。
赤々と火球が燃え上がり、地面に向けて一直線に飛んでいく。
炎が、爆発した。
目論見通り、爆発の衝撃で地面は抉れ、1メートル弱は深さのある穴が空いている。
レイアは唖然とした。
「へぇー、地面を対象にするとこういう風になるのねー。いつもは周りのものに影響与えないから、ちょっと新鮮。アースウォールに攻撃加えてる感じに近いかな? 流石に連発は出来ないけど、私もそれなりには貢献できそうね」
爆発に誘われて、ひこさんを連れたミオレスカや、ソリに乗ったマリエルが近づいてくる。
「わー、すごい! 魔法で地面に穴を開けるなんてことが出来たんですね!」
「ひこさん、ここの土、向こうの方にあつめていこうか」
この大穴に触発されたのか、マリエルが腕まくりしてふんすと鼻息を荒げる。
「これでも私、普段はウェイトレスの仕事をしてますので、力仕事はそれなりに得意なんですよ」
「おぉ、そうなのか。それなら是非一緒に頑張ろう」
「はい、レイアさん!」
早速穴掘りを進めていく。
みんなで穴を掘って溝を作っていく訳だが、やはり女子よりも男子であるGacruxの方が、平均的には仕事の能率がいいようだった。
エメラルドが、穴を掘る手を止めて、大きく息を吐き出しながらしゃべり掛ける。
「いやぁ、さすがは男だな! あのレイアといい勝負とは」
「持久力の一般スキルをつけていますから。それに唯一の男として、なんとなく女の人には負けられないですよね」
「あはは、それでこそ男だ! 私も負けてはいられない。……とは言っても、お互いに無理をしない程度で頑張ろう」
「そうですね」
共同作業は、順調に進んでいった。
しばらくそうやって作業していくと、ソリに乗ったマリエルが一同の間をすいーっと滑っていく。
「どうしたんだ、マリエル」
「もうお昼にしましょうって、エイソスさんが。向こうのテントでお弁当をいただきましょう」
「わかりました。エメラルドさん、行きましょう」
「そうだな」
Gacruxたちがテントをくぐると、真夕を筆頭に女性陣が作ってきたおむすびが広げられていた。
それからすぐに、エイソスが鍋を抱えて飛び込んでくる。
「ふえー、ひでえ雨だぜ。あ、コレなんだけどな、宿のおばちゃんから差し入れだそうだ。火から下ろしたばっかの豚汁モドキ。この雨ん中で身体冷えちまったろ。しっかり暖まりな」
「「「おぉーー!!」」」
各種おにぎりと豚汁で、つかの間の休息。
Gacruxなどは、露骨に筋肉を弛緩させ、幸せそうに豚汁をすすっていた。
ちなみに真夕は、激辛麻婆豆腐を幸せそうに食べているところを、周囲からドン引いた目で見つめられていたとかなんとか。
●宿泊
事故防止のため、一行は比較的早いうちから作業を中止して宿屋に戻る。
流石に男女で部屋を一緒にするわけにもいかないので、Gacruxだけが別部屋になった。
1人になったGacruxは、静かに軒先で煙草を一服している。
延々と降り落ちてくる雨粒を見上げながら、ふぅ、と紫煙を吐いた。
短くなった煙草を揉み消し、スッと立ち上がる。暖かい布団に潜り込み、早々に眠りについた。
それと対照的に女性陣は、きゃいきゃいと遅くまではしゃいでいる。元々仲が良い分、お泊まり会も盛り上がる。
今の話題は、いつも凜々しいエメラルドの寝間着が、ピンク色の可愛らしいものだということだ。そのギャップに、全員がにんまりと笑っている。
「こ、これは私の趣味ではなくてだな!」
「はいはい、自分で買ったらそれ着なくていいのよ?」
「でもそういう寝間着を着るエメラルドさんも、可愛くていいと思います」
「ふむ、そういう寝間着を一着持つというのも、悪くないかもしれないな」
「……エメラルドさん、可愛いです」
「むむむむむ……」
顔が真っ赤に染まり、なんとか目許を前髪で隠している。
夜は賑やかに更けていくのだった。
なお最後に、工事は万事上手くゆき、ハンターたちは近隣住民から大いに感謝されたことをここに記しておく。
エイソスは、依頼を受注してくれたハンターたちを集め、早速打ち合わせを開いた。場所はハンターオフィスからすぐ近くにある喫茶店だ。
「よう、オレは依頼を出させてもらった、ハンターのエイソスだ。まずは受けてくれてありがとよ」
参加者6人に向けて、順繰りに視線を向ける。
「まずは自己紹介をしてもらおうかね。……つっても、雰囲気からしてだいたい知り合いか? この中で初対面だってヤツはどんくらいいるよ」
すぐに手が上がったのは1人だけだった。
「んじゃとりあえず、あんただけは自己紹介してもらおうかな。あとは追々、依頼の最中に仲良くなってもらうことにしよう」
エイソスに促されて、受注者では唯一の男、Gacrux(ka2726)が口を開く。
「Gacruxです、よろしくお願いします」
マリエル(ka0116)やレイア・アローネ(ka4082)などがきちんと挨拶をしたそうに尻の座りを悪くさせている他は、おおむね問題なく受け入れられていた。
エイソスはその場で両手を叩き合わせる。
「生憎時間がないんだ。申し訳ねぇが、これが終った後に各自で挨拶するようにしてくれ」
合わせた手をそのまま顔の前に持って行く。すぐに手を机上の資料に落とした。
「早速詳細について擦り合わせていくぞ。だいたい依頼書の確認になっちまうがな」
依頼について、行程に沿って一通りの説明を加えていく。言った通り、依頼書以上の情報はない。説明にはさほど時間がかからなかった。
「何か質問があるヤツはいるかい?」
エイソスの言葉に最初に手を上げるのはGacrux。
「立ち退き説得について、住人へ立ち退き料等の補償はあるんですか? 流石に着の身着のまま家を放り出されて、行く当てもなしでは、住民も不安だと思うんですよね」
「要望を聞いてみて、当てあがったりここがいいって心に決めてる場所があったりする場合は、できる限りの支援をしようと思ってる。具体的には金の工面だな。それに対して、当てがなくて家を移築したいと考えてる世帯には、もともと川が流れていた場所に新しく家を用意しようかって相談をしていた」
エイソスの回答になるほどと頷きながら、身体を椅子に預ける。
今度はエメラルド・シルフィユ(ka4678)が手を上げた。
「その立ち退き依頼について、家を回る担当などはもう決まっているのだろうか。少人数の方が、威圧感が少なくて良いと思うのだが。こういうことは禍根が残らない方がいいからな」
「ちょうどそれについて、次に話そうと思っていたトコだ。実は全体を通して、まだ細かいことは決めてない。そちらもいろいろあるだろうからと、これから決めていくことになってる」
「ふむ……。わかった」
「他には?」
だいぶ間が空いて、あっと声を上げながら七夜・真夕(ka3977)が手を上げる。
「ごはん出してくれるみたいだけど、わたしたちでお弁当作っていったりとかしても問題ないかな? 一緒に依頼を受けたんだから、仲良くなりたいじゃない?」
「あぁ、こちらとしてはメシは各自でじゃあ不親切だよなってことで出すだけだから、自分らで作るってんなら好きにしてもらって構わないぜ」
「やった! お弁当と言えばやっぱりおむすびかなぁ」
「私、炊き込みご飯のおにぎり作りたいです。現地に行く前にここで材料を買って行きます」
「いいねー!」
ミオレスカ(ka3496)も真夕の話題に乗っかる。エイソスは笑みを浮かべながら、話を本筋に戻した。
「他にはいいかな? そんじゃさっき言ってた担当分けについて……」
打ち合わせはどんどん進んでいき、結局その日は1時間程度で解散になった。
店から出てすぐ、エメラルドが一同に相談を持ちかける。
「これから私は、工事の安全を祈るため、教会に行こうと思う。一緒に行ってくれる者はいるだろうか?」
「いいですね。私は行きます!」
マリエルが目をキラキラさせながら、イの一番に同行を申し出る。
その他のメンバーも口々に賛同する。
特に反対する者もなく、そのまま全員で教会に向かい、工事の無事を光に祈った。
●説得
本格的に工事を始める前に、人員総出で住民の説得をしなければならない。
話し合いの結果等を踏まえて、エイソスはハンターを、真夕とマリエル、ミオレスカとエメラルド、Gacruxとレイアの3グループに分けた。さらにそれぞれ担当地域を割り振り、交渉役を担ってもらう。
雲が垂れ込めた嫌な天気の下、3グループはそれぞれに、担当地域へと散っていった。
「この家には、もう40年も住んでてねぇ。やっぱり出て行きたくはないねぇ」
手の甲を擦っていた手で、老婆は流れ落ちる涙をそっと拭った。
真夕とマリエルは、話を切り出した途端に涙をこぼしだした老婆を前に、じっと腰を据えている。
家への愛着は、流浪の民であるハンターには馴染みのない物。それでも2人は、その涙をばからしいとは思わない。真摯で温かい2人の視線を受けて、老婆は思わず、昔語りをこぼしてしまう。
「うちの人と一緒にこの町に移り住んできて、何もないゼロからのスタートだったわ。この家のレンガをね、1カ所だけうちの人と2人で積んだのよ。ちょうどあそこのところ。案外言われないと気付かないものよね、こういうのって」
「そんなことがあったのですね……」
止めどない涙を、老婆は親指と人差し指で拭い続ける。
2人はうんうんと相づちを打ちながら、じっと話を聴き続けた。
愛情と思いを言葉にして吐き出すように、老婆は思い出を話し尽くす。
「はぁ、愚痴に付き合わせてしまってごめんね。でも話を聴いてもらって楽になったわ。この家から出て行きます」
涙を流しながらも、老婆は微笑んだ。
咄嗟に思い浮かんだ案を、ポンと投げかける真夕。
「あそこの思い出のレンガ、あれを使って次の家を建てましょう。今回の依頼主が、そういうことをしてもいいと言っていたわ」
思いがけない言葉に、老婆は目を丸くした。目が細まり、堪えきれない笑いが口許に浮かぶ。
「ありがとう……」
先程とは違う種類の涙が、老婆の頬を濡らした。
ミオレスカとエメラルドの2人は、聖堂騎士たるエメラルドが説得にかかる利点を重視して、信心深いと有名な家を訪れた。
「こんにちは。わたしはエメラルドという。聖堂騎士として修行中の身だ」
「これは……! な、何もないところですが!」
ひどい慌てようで、若々しい奥方が2人を中へ通す。
旦那も出てきて、恐縮しながら話を伺う。早速、エメラルドは切り出した。
「川が切れて毎年被害が出ているのでな、治水工事を行うことにした。川の勢いから計算すると、この辺りを通すのがいいらしい。そこで、大変恐縮なのだが、この場所から移ってもらえないだろうか?」
一気に旦那と奥方の顔が曇っていく。
2人で顔を見合わせたかと思うと、うつむいてしまった。
論破して半ば無理矢理に言うことを聞かせるというのが最悪のシナリオだ。エメラルドたちはじっと相手の反応を待つ。
ぽつりぽつりと、夫婦は言葉をこぼしていった。
いわく、2人は結ばれてしばらく経つものの、最近になってやっと仕事が落ち着き、2人の時間が作れるようになったとのこと。ゆえにごく最近、新しく家財道具を揃え直したのだそうだ。この場所を移動するとなると、全ての家財道具を持って行くこともできないので、どうしても惜しい。未来の司祭様の言葉は金よりも重いものの、心理的にハードルが高いとのことだった。
その言葉を聞いていたミオレスカが、あっけらかんと切り出す。
「ちょうど表でお利口にしているところですが、私の相棒のひこさんなら、かなりの重量を運ぶことができますよ。依頼主さんにも許可は取ってあります。お引っ越し、お手伝いしますよ?」
表を見れば、大きな水牛がのんびりと路肩の草を食んでいる。
すかさず、エメラルドが頭を下げた。
「援助はする。この場所から、移動してはもらえないだろうか」
夫婦は顔を見合わせ、にっこりと顔を笑み崩した。
「いやだね」
Gacruxとレイアは、禿げ上がった頭を撫でるふくよかな老人ににべもなく突っぱねられてしまった。
予想通りの反応ではあるが、やはり正面から否定されると緊張感が高まる。
Gacruxを主として、2人は老人に交渉を仕掛けていく。
「最近は異常気象もよく見られます。今までは危険でなかったかもしれないが、これからはどうか分かりません」
「んなこと言ったって、これから先も危険はないかもしれないじゃないか」
「水死も確認されているんで、かなり危ない状況ですよ」
「オレはこの土地に骨を埋めるんだ! なんと言われようとここからは動かん!!」
理性的な対話は相性が悪く、老人は顔を真っ赤にして意固地になっている。
レイアは思わず、大きな声を出しながら勢いよく頭を下げた。
「頼む! 無理を強いれる道理はないということは承知している。しかしあなた自身も含め様々な人が、この工事により死なずに済むようになる。立ち退きに了承してもらえないだろうか?」
その熱量に、老人がひるむ。
なんとなくGacruxは口を挟まなかった。
さっきまで聞く耳持たずだった老人が、あごに手を当ててうなっている。
満を持して、Gacruxが口を開く。
「今なら引っ越すに当たってこちらから支援ができる。この場所から移動してはもらえないですか」
「……一晩待ってくれ。明日また来て欲しい。その時までに答えを出そう」
次の日、無事に老人も立ち退きに同意してくれた。
老人は、ビックリするほどの晴天の下に家族全員が写った家の写真を、大切に抱えて引っ越していったという。
●工事
説得を終え、無事全員が立ち退いてくれることとなった。
3日以降から、本格的に工事が始まることになる。
一番張り切っているのは、レイアだった。
「真夕などには荷が重いだろう。とくにこの掘り下げなど完全に肉体労働だからな。私が頑張らねばなるまい」
雨の降りしきる中、勢いつけてスコップを地面に突き刺す。
ハンターの誇る膂力に加えて、雨で地面が柔らかくなっている。ざっくりと地面が掘り返されていく。
話題に上った真夕は、愛用の杖であるヴァイザースタッフを持ち出し、レイアのその言葉に肩をすくめていた。
「確かに魔術師なんだから、こういう作業が得意とは言い難いわよね。でも考えてみて。範囲攻撃魔法であるファイアーボールを、地面に対して使用したら、どうなると思う?」
「……まさか!?」
「そんなこと私もやったことないから、試してみないと結果は分からないけどね~」
カクリと倒れるレイア。
「ちょっと離れてて」
真夕が杖を掲げ、スキルを発動させる。
赤々と火球が燃え上がり、地面に向けて一直線に飛んでいく。
炎が、爆発した。
目論見通り、爆発の衝撃で地面は抉れ、1メートル弱は深さのある穴が空いている。
レイアは唖然とした。
「へぇー、地面を対象にするとこういう風になるのねー。いつもは周りのものに影響与えないから、ちょっと新鮮。アースウォールに攻撃加えてる感じに近いかな? 流石に連発は出来ないけど、私もそれなりには貢献できそうね」
爆発に誘われて、ひこさんを連れたミオレスカや、ソリに乗ったマリエルが近づいてくる。
「わー、すごい! 魔法で地面に穴を開けるなんてことが出来たんですね!」
「ひこさん、ここの土、向こうの方にあつめていこうか」
この大穴に触発されたのか、マリエルが腕まくりしてふんすと鼻息を荒げる。
「これでも私、普段はウェイトレスの仕事をしてますので、力仕事はそれなりに得意なんですよ」
「おぉ、そうなのか。それなら是非一緒に頑張ろう」
「はい、レイアさん!」
早速穴掘りを進めていく。
みんなで穴を掘って溝を作っていく訳だが、やはり女子よりも男子であるGacruxの方が、平均的には仕事の能率がいいようだった。
エメラルドが、穴を掘る手を止めて、大きく息を吐き出しながらしゃべり掛ける。
「いやぁ、さすがは男だな! あのレイアといい勝負とは」
「持久力の一般スキルをつけていますから。それに唯一の男として、なんとなく女の人には負けられないですよね」
「あはは、それでこそ男だ! 私も負けてはいられない。……とは言っても、お互いに無理をしない程度で頑張ろう」
「そうですね」
共同作業は、順調に進んでいった。
しばらくそうやって作業していくと、ソリに乗ったマリエルが一同の間をすいーっと滑っていく。
「どうしたんだ、マリエル」
「もうお昼にしましょうって、エイソスさんが。向こうのテントでお弁当をいただきましょう」
「わかりました。エメラルドさん、行きましょう」
「そうだな」
Gacruxたちがテントをくぐると、真夕を筆頭に女性陣が作ってきたおむすびが広げられていた。
それからすぐに、エイソスが鍋を抱えて飛び込んでくる。
「ふえー、ひでえ雨だぜ。あ、コレなんだけどな、宿のおばちゃんから差し入れだそうだ。火から下ろしたばっかの豚汁モドキ。この雨ん中で身体冷えちまったろ。しっかり暖まりな」
「「「おぉーー!!」」」
各種おにぎりと豚汁で、つかの間の休息。
Gacruxなどは、露骨に筋肉を弛緩させ、幸せそうに豚汁をすすっていた。
ちなみに真夕は、激辛麻婆豆腐を幸せそうに食べているところを、周囲からドン引いた目で見つめられていたとかなんとか。
●宿泊
事故防止のため、一行は比較的早いうちから作業を中止して宿屋に戻る。
流石に男女で部屋を一緒にするわけにもいかないので、Gacruxだけが別部屋になった。
1人になったGacruxは、静かに軒先で煙草を一服している。
延々と降り落ちてくる雨粒を見上げながら、ふぅ、と紫煙を吐いた。
短くなった煙草を揉み消し、スッと立ち上がる。暖かい布団に潜り込み、早々に眠りについた。
それと対照的に女性陣は、きゃいきゃいと遅くまではしゃいでいる。元々仲が良い分、お泊まり会も盛り上がる。
今の話題は、いつも凜々しいエメラルドの寝間着が、ピンク色の可愛らしいものだということだ。そのギャップに、全員がにんまりと笑っている。
「こ、これは私の趣味ではなくてだな!」
「はいはい、自分で買ったらそれ着なくていいのよ?」
「でもそういう寝間着を着るエメラルドさんも、可愛くていいと思います」
「ふむ、そういう寝間着を一着持つというのも、悪くないかもしれないな」
「……エメラルドさん、可愛いです」
「むむむむむ……」
顔が真っ赤に染まり、なんとか目許を前髪で隠している。
夜は賑やかに更けていくのだった。
なお最後に、工事は万事上手くゆき、ハンターたちは近隣住民から大いに感謝されたことをここに記しておく。
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治水計画 ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/05/20 17:23:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/20 02:13:20 |