小さな湖のアハイシュカ

マスター:大林さゆる

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/05/28 09:00
完成日
2018/06/03 01:13

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 自由都市同盟、ヴァリオス近郊の街道。
 ラキ(kz0002)は、魔術師スコットが運転する魔導トラックの助手席に座り、周囲を見渡していた。
「もうそろそろ、湖が見えてくるよ」
 後部座席に座っていたオートマトンの少年、ディエス(kz0248)は窓際から外の景色を眺めていた。
「森の中に入ったね。ここら辺に、馬がいるの?」
「魔術師協会広報室からの報告では、1週間前から、毛並の良い馬が2匹、湖の辺りに生えている草を食べているという情報が多発していたようだ。誰かが飼っていた馬が逃げ出したのか、それとも……あまり言いたくないが、捨てられたとか」
 スコットが、依頼の説明をしてくれた。
 まずは目撃された馬を見つけ出し、具体的な対策を考えねばならない。
 小さな湖が見える場所まで魔導トラックが走っていると、美しい白馬が二頭、湖の手前で地面に生えている草を食べているのが見えた。
「綺麗な馬だね。確かに毛並も良いし、誰かが飼ってた馬なのかな?」
 動物が好きなディエスは、興味津々な瞳で、馬たちの姿に見惚れていた。
 少し離れた場所に魔導トラックを停車させ、ラキたちは湖に向かって歩いていく。
 しばらくすると、旅の商人が現れ、やはり白馬を見つけて、湖と言うより、馬が気になったのか、近寄ってきていた。
「これは素晴らしい馬だな。どれどれ」
 商人の男性は、白馬に接近……どことなく、うれしそうに嘶く白馬たち。
「お、人懐こいな」
 商人は背負っていた荷物を地面に降ろし、白馬たちの首を撫でていた。
「おまえら、そんなに懐くと、私が湖に落ちてしまうよ」
 冗談交じりに言う商人。
 白馬たちは、商人の腕を口で銜えたまま、なかなか離そうとしない。
 スコットたちが、湖に辿り着いた頃、何やら商人が騒いでいた。
「た、助けてくれーっ!! こいつら、俺の腕を引っ張って、言うことを聞かないんだ!」
「あの白馬……水棲馬だ」
 スコットが、杖を構える。
「スイセイバ?」
 ディエスは、聞き覚えのない名前に、怪訝な顔をしていた。
「アハイシュカとも呼ばれている。湖を住処にした馬の姿をしたヴォイドだ。やつらに捕まると、湖に引き摺りこまれるぞ」
 スコットの言葉に、ラキがチャクラムを取り出す。
「だったら、あの商人さん、助けないと大変だよ」
 このまま野放しにしておけば、商人はアハイシュカの餌食になるだろう。
「ボクは、皆の援護をするよ」
 ディエスの表情は、いつからだろう……どこか果敢にも見えた。
 果たして、ハンターたちは、この窮地から脱することができるのだろうか。

リプレイ本文

 ハンターたちは、ヴァリオス近郊の小さな湖を目指していた。
 茂みを潜り抜けると、二頭の白馬…アハイシュカが商人を湖に引き摺り込もうとしているのが見えた。
「まずは、商人を助けねーとな」
 ジャック・エルギン(ka1522)はバスタードソード「アニマ・リベラ」で『守りの構え』を取り、アハイシュカと湖の間に入り込もうと試みた。『ガウスジェイル』を発動させるジャック。
 ディーナ・フェルミ(ka5843)がエクウスに騎乗し、廻り込むように駆け抜け、湖とアハイシュカたちの間に割り込むことができた。
「商人さん、落ち着いてなの」
 慌てている商人を宥めるディーナ。
 デストリアに騎乗したセイ(ka6982)が愛馬を走らせ、アハイシュカに接近……どうやらセイは、湖で綺麗な水の精霊に出会ってラブロマンス…を夢見ていたが、来てみれば、馬の姿をした歪虚……セイは激怒していた。
「俺はメイシュイみたいな美人の水の精霊に会いたくて来たんだぞ!」
 アハイシュカに対して、怒りを顕にするセイ。間合いを取りながら、次の攻撃に備える。心の刃を発動させるには、メインとなる攻撃が必要なのだ。
 トリプルJ(ka6653)はエクウスに騎乗して、アハイシュカの手前まで走ると、愛馬から飛び降りた。
「チッ、ケルピーくらい見た目からして分かりやすけりゃ簡単だったのによ」
 唇を噛みしめるトリプルJ。
 キヅカ・リク(ka0038)は、ディエス(kz0248)を連れてアハイシュカたち目掛けて駆けていく。
「馬が本物だったら、動物の保護施設に預けることもできたけど…あれをどうにかしないとね。見計らって、商人を救出しよう」
 リクの言葉に、ディエスが頷く。
 このタイミングで攻撃を繰り出せば、商人も巻き込む恐れがある。
 ジャックが察して、聖盾「コギト」を構えて、アハイシュカが目から放った粘液を受け払う。本来ならば商人を狙った攻撃であったが、ジャックのガウスジェイルに引き寄せられたのだ。
 盾が粘液でベタ付き、ジャックは閃いた。
「こいつは…毒の可能性がある。気を付けろ!」
「分かったなの。アハイシュカの動きを止めてみせるの」
 ディーナはエクウスに騎乗したまま、『プルガトリオ』を解き放った。敵だけを的確に貫く無数の闇の刃によって、アハイシュカ2体は空間に縫い付けられるように串刺しとなり、移動不能にさせることができた。
 トリプルJはファントムハンドで商人を引き寄せようとしたが、巨大な幻影の腕は目標を見失い、ユラユラと蠢いていた。トリプルJにとって商人は「助けるべき対象」であり、「敵」ではなかったからだ。
「ファントムハンドで引き寄せることができるのは『敵』だったな」
 舌打ちするトリプルJだが、すぐに体勢を整えた。
「この間合いなら、いける!」
 セイは『心の刃』を発動させたドールハンマー「ジオメトリカ」を振るい攻撃が命中すると、右側にいたアハイシュカを威圧して行動を阻害することができた。その反動で、商人の右腕からアハイシュカの口が離れた。
「よっしゃ、こっちもやってやる」
 ジャックは左にいるアハイシュカに接近すると、バスタードソード「アニマ・リベラ」による『強撃』を繰り出した。アハイシュカは転倒して身動きが取れなくなったが、口に銜えた商人の腕を離そうとはしなかった。
 その場で動けないアハイシュカ……だが、首を大きく振って、商人を湖へと投げ飛ばした。
「うわーっ?!」
 湖に落ちる商人。リクはとっさにロープを投げて商人を助けようと思ったが、距離的に届かないと判断して、湖に飛び込む。リクは懸命に商人の元へと泳いでいくが、水の抵抗で商人との距離が少しずつ離れていく。
 アハイシュカ2体を取り逃がさないように、ディーナは『プルガトリオ』を駆使して、さらに敵を移動不能にさせた。
「絶対に逃がさないの」
「いくぞ、デストリア」
 セイはドールハンマー「ジオメトリカ」を構え、デストリアに騎乗して走らせた勢いで『チャージング』を転化し、『ヒッティング』による精密な一撃を繰り出した。その衝撃で、アハイシュカ1体が砕け散り、消滅していった。
 トリプルJは『ファントムハンド』でアハイシュカを引き寄せ、『鎧徹し』を炸裂させた。凄まじい攻撃により、敵が消滅……その刹那、湖から這い上がってくる白馬がいた。
 見た目は美しい毛並の馬であったが、5体のアハイシュカが姿を現したのだ。
「出やがったな。俺様たちの邪魔をするつもりか……」
 湖に落ちた商人を助けようと思っていたトリプルJだが、アハイシュカ5体に取り囲まれていた。
 ジャックは、商人を救出することを優先し、すでに湖に飛び込んでいた。
「任せとけ。同盟の男に泳ぎの下手なヤツは居ねえよ」
 巧みに泳いでいくジャック。商人の元へと辿り着くと、先に助けにきていたリクがロープを持っていた。
「キヅカ、そのロープ、安全綱として使えそうだな」
 ジャックが、リクの持っていたロープを掴み、別の方向へと誘導していく。
 その先には、ラキ(kz0002)とスコット、ディエスたちが待機していた。
「ジャック! リクさん!」
 ラキの声を頼りに、ジャックとリクは連携して泳ぎながら商人を救出して、湖の辺まで辿り着いた。
 スコットとディエスが協力して商人を湖から引き上げ、ジャックとリクは全身ずぶ濡れになりながらも自力で立ち上がった。背後からは、新たに出没した3体のアハイシュカが近づいてきていた。
 アハイシュカたちが、続け様にジャックを狙って粘液を飛ばしてきた。
「やっぱり他にも隠れてやがったな。当たるかよ!」
 ジャックは攻撃を受ける寸前に『鎧受け』で粘液を受け流していく。金髪に滴り落ちる水が、ジャックの動きに合わせて飛沫となって煌めいていた。
 リクが振り向き、【ΔL】を発動……六芒星の文様が現れ、その頂点からレーザーの光が伸び、アハイシュカ3体を貫いていく。そのうちの2体は光のレーザーに貫かれ、その衝撃により消滅していく。
 残りの一体は、ジャックの『強撃』によって転倒したが、バスタードソード「アニマ・リベラ」による強烈な一撃に耐え切れず、軋む如く消滅していった。



 一方、ディーナは『プルガトリオ』による無数の刃で、アハイシュカ3体を移動不能にさせ、その攻撃を喰らって範囲内にいた敵が消滅していく。
「トリプルJさん、今なの」
「残り2体か、助かるぜ」
 トリプルJが『ファントムハンド』でアハイシュカを引き寄せ、『ワイルドラッシュ』の連撃を繰り出すと、その衝撃によってアハイシュカが砕け散り、消え去っていく。
「止めだ!」
 デストリアに騎乗したセイは『チャージング』からの『ヒッティング』を放ち、ドールハンマー「ジオメトリカ」が敵の胴部に命中……その攻撃によって、アハイシュカが消滅していった。
「いやあ、久しぶりにチャージングを堪能したぜ。楽しかったな、デストリア」
 達成感のある良い笑顔のセイであった。



 ジャックは商人の保護をラキとスコットに任せ、自身は湖の周辺を確認していた。
「念には念をいれるってのも、基本だからな」
 アハイシュカが湖に潜んでいないかと、ジャックが目を凝らすと、水面から氷矢が飛んできた。
 とっさに回避するジャック。
 案の定、アハイシュカが姿を現した。見つけては倒していくジャック。
 気が付けば、湖に隠れていたアハイシュカを全て退治していた。


 その頃、リクは『機導浄化術・白虹』を使い、アハイシュカが食べていた草むら周辺を浄化していた。周囲のマテリアル汚染を、専用のカートリッジに吸収していく。
 ディエスは、リクに呼ばれて同行していた。
「無理言って、ごめんね。どうしても、話したいことがあってさ」
「リクさん、話って何かな?」
「機導浄化術のこと。ディエスやエラルを助けたこの技術」
 リクは真っ直ぐな瞳で、ディエスに想いを伝えた。
「僕が諦めずに使うワケ…その技術は元々、帝国のエルフ、ホリィっていう女の子が得意としていたものだった。本当は負のマテリアルを自分の中に取り込む、そういう危険な技術。生まれた時から運命付けられて…最後は其れすらも受け入れて」
 どこか哀しげなリク。
 ディエスは真剣に、リクの話を聞いていた。
「諦めなかった。自分にできる事を。……呪わなかった。自分にしかできない事だと。帝国じゃ、神森事件って呼ばれてる。そんな中を必死に生きて、誰かの明日を願った。これにはその祈りが遺っている。僕は友達として、その事を知っている」
「大切な人なんだね」
 ディエスがそう言うと、リクは頷き、さらに告げた。
「ディエス、これだけは知っていて欲しい。明日を望む想いは、祈りは、国を、世界を超えてきっと届くから。どんな絶望が立ちふさがったって、その瞬間ですら、そんな祈りが、願いが、僕らを照らしてる。だから、僕は諦めない。想いは届くと信じてるから」
 リクに迷いはなかった。
 その姿を、ディエスは目指していたのだ。
 願いは、国境さえ、世界さえ超えるのだと……。



 商人を救出することができたが、ジャックが異変に気が付いた。
「商人の顔色が悪いな。ディエス、解毒頼む」
 緊張気味にディエスは、商人に『キュア』を施す。ジャックが明確に「毒」と判断したこともあり、ディエスのキュアは成功して、商人の状態異常を回復することができた。
「……助かった。ありがとな」
 気が抜けたのか、商人は地面に座り込んでいた。
 セイは、真顔で商人に話しかける。
「馬は値千金だからなあ。おっさんの気持ちも分かるけど。でも、名馬はそんじょそこらに落ちてるもんでもないからなあ。あんまり欲をかくと危ないぜ」
「はぁ、申し訳ない」
 商人が項垂れる。どうやら図星だったらしい。
 ディーナは、商人を宥めながら『フルリカバリー』を発動させ、彼の生命力を回復させていく。
「無事で良かったの。でも私達が来なかったらおじさんは死んでたかもしれないの、自分の持ち物じゃない動物には注意が必要なの」
 さらに、それとなく注意を促すディーナ。
「名馬は高いお金になるかもしれないけど、馴れ馴れしい川の傍の馬にはもっと注意しても良いと思うの」
「確かに、貴方たちの言う通りだ。すまない」
 商人は助けてもらったこともあり、ハンターたちに言われたことが胸に突き刺さったようだ。
「災難だったな、おっさん」
 トリプルJが、商人の肩を軽く叩く。
「普段は行方不明なり死人なりが出てから依頼があるわけだが、今回は魔術師協会が先に依頼を出した。そのおかげで未然に防げたって考えると、協会も捨てたもんじゃねえって思ってな……良かったな、ディエス」
 ニッと親しみに満ちた笑みを浮かべるトリプルJ。
 ディエスは、久し振りにトリプルJに会うことができて、安堵していた。
「はい。今回は皆さんが無事で良かったです。最近は激しい戦いが多かったから、依頼から戻ってくるまでは、ボク……本当に心配で……」
 だが、ようやく発見した白馬が歪虚だと判明して、ディエスは内心、落ち込んでいた。
 ディーナが、ディエスの気持ちに気付き、可愛らしい笑みで言った。
「馬は高い生き物なの。野生馬を捕まえて調教する職業もあるの。主人のいない馬を手にいれようとするのは結構普通のことかもしれないの…それに馬は随分、草を食べるから、管理は考える必要があるの。それで私達に依頼が来たんだと思うの」
「……動物を調教するお仕事? どこかで聞いたことがあります」
 穏やかな風が、ディエスの頬を撫でる。それはまるで、アリア・セリウスの優しさのようであった。
(望むもの、願う明日……いずれ聞きたいし、前の手帳の日記のように、記して伝えて欲しい……動物が好きな優しいディエスが、この後、触れ合えますように…)
 ディエスは、アリアと一緒に動物の世話をしたことを思い出した。
「ボク、動物が好きだから、いつかは、そういうお仕事もしてみたいな」
 ようやく明るい笑みを皆に見せるディエス。
 ディーナの微笑みは、ほんわかしていた。
「そうなの。ディエスなら、きっとやりたい仕事ができると思うの」
「ありがとう。ディーナさん」
 ディエスの心に、少しずつ自信が積み重なり、自分のやりたいことが具体的に見え始めていた。
 夢だと思っていたことが、やがて現実へと続く道となるように……。
 一歩ずつ、前へと進もう。
 そう願う仲間の声が、聴こえたような気がした。

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MVP一覧

  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギンka1522
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミka5843

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 死を砕く双魂
    セイ(ka6982
    ドラグーン|27才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/05/27 11:19:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/27 08:26:31