深緑の侵略

マスター:春秋冬夏

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/05/24 12:00
完成日
2018/06/01 17:20

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「今日もいい天気だなぁ……」
 のんびりとした農家の男性は、吹き抜けていく風に大きく伸びをする。晴れ渡る空の下、遠くを見やれば同じ風に揺れる緑があり……農夫は首をかしげる。その視線は、すぐ足元。
「あれ、なんか、いつもより雑草が多いような……いや、そんなことあるわけないか」
 特に気にも留めずに作業を続けていた農夫だったが、翌日。
「……あれ?」
 晴天の下、愛情を込めて育てた野菜、きれいに整えた畝、そして繁茂する雑草。
「なんか、育つの早くないか……?」
 雑草そのものは毎日のように見かける。良い野菜を育てるために土壌に拘っていることの副作用とでもいえるだろう。それにしたって早すぎる気もするのだが、かといって何かがおかしいかと言われるとそれほどでもなく、今日も気にせず仕事を終えるのだが、その翌日。
「いやいやいやいや」
 明らかに雑草が伸びすぎている。ここまで来たら、さすがにのんびり屋の農夫といえど危機感を抱かざるを得なかった。

「というわけで、ものすごい速さで雑草が広がってるんだ!」
 件の農夫から話を聞いて、ハンターたちは疑問符を浮かべる。現場を見ていないため、イメージがしづらいのだろう。
「このままじゃ育てた野菜が栄養不足で育たなくなる……助けてくれ!何とかしてくれたら、報酬に採れたてのキャベツも振る舞うから……!」

リプレイ本文

●まずは草を毟るのです
「結構量があるな……これは……普通に四人で草むしりするだけでも一仕事じゃないか?」
 レイア・アローネ(ka4082)が見たのは小さな草原かなってくらい背の高い雑草が繁茂したキャベツ畑。農家さんいわく、最初はただの雑草だったのに、抜く度に少しずつ大きくなって今に至るとのこと。
「雑草は剣で斬っても大丈夫かな? 高さもあるし、良い素振りになりそうだ」
「いやダメでしょう。ちゃんと根を抜かないとまたすぐに生えてきますよ?」
「えー……がっくん頭かたーい」
「なんで俺のせいみたいになってるんですか!?」
 Gacrux(ka2726)は事実を述べただけなのに、鞍馬 真(ka5819)は不満そうに唇を尖らせたが、渋々腰を下ろして手でぷちぷち。
「雑草が異常に伸びる、か……雑魔でも潜んでいるのか、或いは草そのものが雑魔化しているのか……って、草が雑魔化してたらもう襲いかかって来てるよな」
「ったくよ~……もっとこう、バーッと一気にやりてぇぜ」
 考察しながら地道にプチる真に対して、やや不満そうにチマチマと雑草をむしるボルディア・コンフラムス(ka0796)。
「雑草は刈るよりは引っこ抜いた方がいいのかな?」
 雑草の根元を掴んで引き抜くレイアだが、ブチッ。
「あっ、根が切れてしまった……」
 脳筋女子に程々の力加減は難しかったようだ。
「誰が脳筋女子だ!?」
「しかし、妙ですね……」
 Gacruxはむしった草を改めて見つめる。
「事前に聞いた話では、他所の農家に妙な薬を撒かれた可能性は皆無。土も見た所手入れが行き届いて上々にして、これはいつもの事だといいますし……となると、何故こうも雑草が伸びるのでしょうか?」
 むぅ、小さく唸りながら根を見ていると、こっちも千切れている。
「これ、随分と細かく根が張っていたようですね……雑草は根強いものですが、それにしても……」
「そ、そうか、そうだよな。根が深すぎたんだよな。私のせいじゃないよな!」
 レイア、自分が抜いた雑草とGacruxが抜いた雑草を見比べてみろよ。根の長さが全然違うだろう? つまり、そういう事だ。
「……!」
 ぷるぷると震えるレイアはさておき、Gacruxの方は何かに気づいたようだ。
「もしや、この雑草はただの雑草ではなく、土の下に何かが……?」
「あー、なんだ。地面の下に何かいるのか? よっしゃ任せろ! 俺の斧で地面ごとズタズタに……」
 ボルディアが斧頭になんか赤い光がチカチカしてるデッカイ斧振りかざしてる! 誰か止めろ! 色々台無しになるぞ!!
「ボルディアさん待って! そんなおっきいの振り回したらキャベツも巻き込んじゃう!!」
「……え、ダメなのか?」
 真に止められコテンと首を傾げるボルディア。地面ごとっていうか、畑のキャベツごと周囲一帯が更地のようにきれーに刈られてしまう事態は真によって阻止された。
「しかし地面の下が怪しいのも事実……一度掘ってみた方がいいかもしれませんね」
「ふむ、地面の下か……えい」
 トスッ。レイアが試しに長剣を刺してみると、なんかサクッていった。
「ん? 今手ごたえが……」
「きゅー!?」
 レイアの剣を吹っ飛ばし、地面の下から小さなモグラっぽいモノが現れた!

●キャベツ畑でもぐら叩き、キャベツは叩いちゃダメよ?
「な、なんだこいつは!?」
「背中に雑草が生えてる……そうか、こいつらは背中に草を生やして、それで光合成をしてたんですね」
 戸惑うレイアがモグラを観察。どう見ても精霊の類ではなさそうなそれを、Gacruxが冷静に分析。
「という事は、こいつらを倒さないと畑は元に戻らない、という事ですかね」
「え、だとしたらあれってこの畑中にいるって事? 数多すぎない? 地面に剣とか刺しまくるって結構大変だと思うんだけど……」
「よし、今度こそ任せろ!」
 遠い目をする真にボルディアがニヤァ……と口角を上げて、さっき止められた武器を振りかざし。
「ボルディア? 一体何を……」
「オラァ!!」
 何となく嫌な予感がしたGacruxの目の前でボルディアが大斧で畑をドーン!!
『きゅー!?』
 畑中からポコポコとモグラっぽい生き物たちが飛び出した! 数にして十匹前後だろうか。数はいるが、先ほどレイアが剣を刺してしまった時の様子を見る限り、それほど危険な相手というわけではなさそうだ。
「残ってる雑草もあるって事は、こいつらは擬態の為に周囲に雑草を伸ばすのでしょうか……」
 Gacruxは場合によっては緑の再生に役立つんじゃないかなー、なんて思ってもいたようだが、雑草しか生やさない上に、こういう場所に現れるって事は畑を荒らすだけだろうから役に立たないな、とちょっぴりガッカリ。
「んー……?」
 どしたの真?
「さっきモグラが飛び出した時、衝撃が強すぎてキャベツも一緒に跳ねたような……」
 HAHAHA、マンガじゃないんだからそんなはずないだろ! ……俺にもそう見えたけど。
「なんにせよ、敵が現れたのなら後は戦うだけだ!」
 などとレイアがマテリアルを燃やし、人間蝋燭のようにオーラを纏うのだが。
「よし、どこからでもかかって……ひゃん!?」
 そりゃね、弱いったって数がいるもん。タゲ集中なんかしたら包み込まれて押し倒されるわな。しかも形態がモグラだから体毛があって微妙にくすぐったい。軽戦士スタイルのレイアでは肌の露出が大きく、違う意味で大ダメージに!
「これは困りましたね……」
「味方の体にたかってるのに、武器を投げるのはなぁ……」
 カウンタースタイルで戦えばキャベツは無事だろうと思っていたGacruxは、本当にキャベツ『は』無事な状況に陥ってしまって苦笑し、攻撃しづらい敵なら武器投げればいいかなって思ってた真は刃を持たない柄を手の中で弄んで様子見。
「じゃあ俺の出番だな!」
 ボルディアは拳をゴキリ、ゴキリ……。
「行くぞ!」
「来るのか!?」
 殴りかかって来るんじゃないか!? って気配のボルディアの鉄拳がレイアに降り注ぐ! まぁ、実際にはモグラを剥してくれてるだけだからそんなに気にしなくていいんだけどさ。
「しかしこれは一体……」
 Gacruxはこのモグラっぽい生物は意思疎通が図れる何かだったりしないだろうか、とじっと見つめてみたり、指先を近づけてみたり、喉元を撫でてみたりしてみるのだが、彼の手についた土の香りに反応してすり寄ってくると、鼻をふんふん。土の匂いに安堵したのか、それともそれで土に潜ったつもりなのか、彼の手に頭を乗っけて寝てしまった。
「見た所危険性などはなさそうですが……」
「じゃあどっかにそのまま捨ててくるか?」
 ドサッとボルディアが置いたのは巨大な籠。
「それどっから持ってきたんですか!?」
「最初に借りたんだよ。草むしった後、ここに溜めてまとめて捨てに行こうと思ってたからな。で、どうすんだよ?」
 ぽいぽいとモグラっぽいモノを籠に突っ込んでいくボルディア。回収を終えた彼女が籠を背負った所で真がポツリ。
「近くに逃がしたくらいじゃすぐ戻って来るんじゃないか? ある日突然ここに住み付いてたって感じだったし」
「じゃあちょっくら遠くまで行ってくるか……つーわけで、後はよろしく!」
 不敵な笑みを残してダッシュで去っていくボルディア。残されたハンターはまだ結構生えてる雑草を見て口の端をヒクつかせて、レイアがポツリ。
「もしや、私達は残りの仕事を押し付けられたのでは……?」

●食事の仕方って個性がでる
「やはり生で出てきましたか……」
 無事に雑草を抜き終えて、畑に何が起こったのかを説明した後、依頼主の自宅に招かれて、出されたのはキャベツ(採りたて)。依頼主が調理している間にまずは採れたてを味わってほしいと出されたのだが。
「塩振って食べると美味いぞ?」
『えっ』
 既に塩だけかけてバリボリしてるレイアに、他三名がちょっと引いてた。
「な、なんだその反応は!? 新鮮な野菜だから歯ごたえはいいし、シンプルな味付けだって結構いいものだぞ!?」
「いや、塩を使うにしてもよぉ……」
 ボルディアが、そう、考えなしに振り回すから楽って理由だけで斧を気に入って女子力から遠く離れた雰囲気のある、いかにも脳筋感の漂うボルディアが、袋に一口大にざく切りしたキャベツを突っ込み、塩と昆布を加えてシャカシャカ振って味をなじませてからお皿にあける。
「これぐらいはやろうぜ……? いや、俺も手抜きだから偉そうなこと言えねぇけどさ……」
「ぐぬぬ……」
 同じ塩味だけでも出来栄えが全く違う様子にレイアが唸り、見入ってしまう。
「キャベツオンリーというのも、ちょっと寂しいですし……」
 Gacruxはキャベツを千切りにしてボウルによそうと、じゃが芋のマッシュを添えて、スライスオニオンは水で辛味を抜いてから和える。そこに千切り人参で彩を添えて、砕いたポテトチップスを散らせば……。
「パリパリ食感のサラダ、完成です」
「菓子をサラダにするのか……!」
 信じられない物を見た、という顔でレイアがじーっと見つめている間にお湯を沸かしてカップラーメンを調理。鍋に中身をあけてお湯をいれ、少し時間が経ってから千切りキャベツを加えてもう少し待つと。
「これでキャベツヌードルに……」
「んー、酒には合わなそうか?」
「ヘルシーヌードルですから……って、もう飲んでる!?」
 料理が出そろう前に飲み始めてたボルディアに苦笑するGacruxの傍ら、真はキャベツ、じゃが芋、玉ねぎ、人参を大きめに切ると水とコンソメ、塩、胡椒、ソーセージを加えて煮込み始める。
「まぁ、野菜の味を活かすならポトフかな?」
 大鍋がテーブルに運ばれた所でレイアがじっとテーブルの上に並ぶ料理の数々を凝視。
「え、何、何か気に入らなものでもあった……?」
 不安そうに確認する真に、レイアは真剣な眼差しのまま。
「自分でいうのもなんだが、私はあまり料理しないからな……参考にさせてもらおうと思ったんだ」
 そう語るレイアの目がシャレになってないあたり、彼女はきっと色んな意味で不器用な女の子なのでしょう……。
「まぁ何はともあれ、今日はお疲れ!」
「あなたもう飲んでるでしょう……」
 ボルディアの乾杯の音頭を前に、Gacruxは苦笑するのだった。

●しっかり味を覚えて帰るんですよ?(作れるようになるとは言ってない)
「一仕事終わった後の酒はやっぱ最高だな!」
 酒の器を空にしたボルディアは塩キャベツを頬張り、ジャクジャクと噛み砕き野菜の繊維質独特の食感を楽しみながら、噛めば噛むほど染み出してくるキャベツの甘味に舌鼓を打つ。塩を昆布を加えた事で、食感に緩急が生まれて退屈せず、塩味によってキャベツの味が引き立てられながら、昆布の旨味が味わいに奥行きを持たせつつ、総合的にやや濃い目の味付けを前に舌が、喉が、次の酒を求めさせる。
「つまみも美味いし……ま、ここんとこ世界の裏側行ったり大精霊と喧嘩とかしたし、たまにゃあこうやってゆっくりするのも悪かねぇなあ……」
「ふふ、殺伐とした戦いの日々ばかりでは、心が飢えてしまいますからね……」
 サラダやヌードルを小鉢に取り分けて、Gacruxは自分も料理を口にする。
「やはりポテトチップスを使って正解でした」
 季節の野菜を用いたサラダは小ざっぱりした仕上がり。キャベツと人参で軽快な歯ごたえの音色を響かせて、マッシュポテトでボリューミーに。そしてそれらによる野菜本来の甘味が香る中、ポテトチップスの塩味が野菜の味をより鮮明に浮き彫りにして、パリッとした食感は耳にも楽しい。しかしそんなお菓子のような物で終わらないのがこのサラダ。新玉ねぎ特有の刺激的な辛味を程々に残しておくことでピリッとしたアクセントを添える事を忘れない。
「こちらも麺が伸びてしまう前に……」
 軽く冷ましてからすする麺は独特の縮れを持つヌードルだが、ここに千切りキャベツを加えると……あまり変化がない。そう、野菜を一緒に食べているというのに、大きく変化がないのだ。細く切った野菜に火を通して柔らかくすることでヌードルのような程よい柔らかさを得ることができ、かつ麺に絡まってまるで麺の部分が増えたかのようにさえ感じる事ができる。さらに、加熱したことでキャベツの甘味が変化し、スープに滲みだすため味がマイルドに仕上がってくれる。もちろんラーメンという人によってはややヘビーな料理が、野菜でかさましすることでヘルシー志向な変身を遂げるという点も大きい。
「こうしてみると、キャベツも色々作れるものだね」
 真は並ぶ料理を見ながらポトフを口に。大きく切った野菜は加熱に時間がかかるものの、しっかり芯まで火が通れば野菜本来の味をこれほど引き出せるものは中々ない。コンソメと塩、胡椒でシンプルな味付け故に、多くの野菜と相性がいい今回のポトフはもちろんキャベツとも仲が良く、やや透き通って見えるキャベツはしっかり味が染みた証。甘味はもちろんだが噛みしめる度にスープの味が口一杯に広がる一品。一緒に煮込んだ土物野菜は逆に表面にのみ味がついて、中に行けばいくほどホクホクとしたこれらの野菜特有の食感と旨味が顔を出す。食べるものによって表情の変わる一品だ。
「……むぅ」
 そんな発想が出てすら来なかったレイアは今後の参考に……としっかり学ぼうとするのだが、同時に自分の考えを深く否定されたようでちょっぴりむくれていて。
「レイア、食べ物に対してあんたと近い考えの奴もいたみたいですよ」
「む、そうか?」
 示されて彼女が見たのは、Gacruxの愛犬がキャベツを一心不乱にムシャムシャしている姿で。
「私の考え方は野生児だと言いたいのか!?」
 ほんのり涙目になるレイアに笑い出すハンター達。依頼人が用意してくれたロールキャベツを食卓に迎えて、穏やかな時間はもう少し続くのだった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン おいしいキャベツ料理がたべたい
Gacrux(ka2726
人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/05/24 01:26:57
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/24 08:06:24