ゲスト
(ka0000)
休業日でも猫と一緒に!
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2018/06/14 19:00
- 完成日
- 2018/06/21 19:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
港町「ガンナ・エントラータ」。
この裏通りの倉庫にちょっとした人気スポットがある。その店は、「ニャンドリーム」と看板を掲げていた。
そこは猫カフェとしてちょっと知られた場所で、王国内からだけではなく、最近はまれに帝国や自由都市同盟からわざわざ足を運ぶ者もいるのだとか。
それだけ、この店が猫好き達を満足させられる空間を提供しているということだろう。
店の隣には、店と同じくらいの大きさをした巨大三毛猫がおり、この店の存在感をアピールする。
雨よけ寒さ避けの為に作られた小屋に囲まれたこの猫は、基本静かにしている。その為、子供達がこの猫の周囲で遊ぶという一つの見所にもなっていた。
店内には、100匹近くの猫が詰めている。
開店当初に比べて少し増えているのは、子供を産む猫がいたからだ。それでも、来店する遠方客などが記念にと引き取ることもあり、微増に留まっている。
店のスペース、猫のストレスなども考慮し、猫達は日々交替で客を出迎えてくれる。
その愛らしい猫達は、来店する客をこの上なく癒してくれるのだ。
ニャンドリームでは猫達はきちんとしつけられており(一部、やんちゃな猫は相変わらず、悪戯ばかりだが)、ほとんど外を出歩かないのは港町にとって安心できているのはいいのだが……。
猫にとってはそうもいかない。外に出られないことでかなりストレスを抱える猫もいるのだ。
基本的にニャンドリームはほとんど休みなく営業している為、猫はローテーションで休ませ、あるいは10匹程度外へと連れ出して出歩かせている。
しかしながら、扱いに困るのが、全長3mほどある巨大三毛猫だ。
なかなか外に出すのも難しく、出したところでどう運動させたらよいものか。
元々、大人しい猫なので走り回らないのはよいのだが、だからといって運動させないというわけにはいかない。
スタッフ達はそんなことを考えつつも、巨大猫は一度も外に出せてはいない。
「ふむ……」
唸りこむオーナー、エンリコは忙しい。
この店もハンターに言われて始めたが、彼は元々流通業を行う身。あちらこちらへと出向いて店を開けることも珍しくなく、現在は別途スタッフリーダーに店を任せていることも多くなっている。
数日後、また店を開けるが、店は棚卸しのタイミングだという。
店内の大掃除も兼ね、店を臨時休業にしたいとリーダーから進言が出ていた。
では、その臨時休業の一日、猫達をどうするのか。特に、巨大三毛猫。
「久々になるが、依頼するとしようか」
個人では訪れてくれる者もいるようだが、ハンターに頼むのはかなり久々になるだろうか。
早速、エンリコは立ち上がり、店のスタッフへとハンターズソサエティまで使いを出させるのである。
そうして、ハンターズソサエティに出された依頼。
『とある日、港町の北に広がる平原で思いっきりニャンドリームの猫全てを遊ばせて欲しい』というもの。
ユニット参加もOKとのことで、どうやって猫達を遊ばせようかとハンター達は話し合う。
折角の機会だ。ハンター達自身も楽しむことを考えつつ、港町へと向かうのである。
港町「ガンナ・エントラータ」。
この裏通りの倉庫にちょっとした人気スポットがある。その店は、「ニャンドリーム」と看板を掲げていた。
そこは猫カフェとしてちょっと知られた場所で、王国内からだけではなく、最近はまれに帝国や自由都市同盟からわざわざ足を運ぶ者もいるのだとか。
それだけ、この店が猫好き達を満足させられる空間を提供しているということだろう。
店の隣には、店と同じくらいの大きさをした巨大三毛猫がおり、この店の存在感をアピールする。
雨よけ寒さ避けの為に作られた小屋に囲まれたこの猫は、基本静かにしている。その為、子供達がこの猫の周囲で遊ぶという一つの見所にもなっていた。
店内には、100匹近くの猫が詰めている。
開店当初に比べて少し増えているのは、子供を産む猫がいたからだ。それでも、来店する遠方客などが記念にと引き取ることもあり、微増に留まっている。
店のスペース、猫のストレスなども考慮し、猫達は日々交替で客を出迎えてくれる。
その愛らしい猫達は、来店する客をこの上なく癒してくれるのだ。
ニャンドリームでは猫達はきちんとしつけられており(一部、やんちゃな猫は相変わらず、悪戯ばかりだが)、ほとんど外を出歩かないのは港町にとって安心できているのはいいのだが……。
猫にとってはそうもいかない。外に出られないことでかなりストレスを抱える猫もいるのだ。
基本的にニャンドリームはほとんど休みなく営業している為、猫はローテーションで休ませ、あるいは10匹程度外へと連れ出して出歩かせている。
しかしながら、扱いに困るのが、全長3mほどある巨大三毛猫だ。
なかなか外に出すのも難しく、出したところでどう運動させたらよいものか。
元々、大人しい猫なので走り回らないのはよいのだが、だからといって運動させないというわけにはいかない。
スタッフ達はそんなことを考えつつも、巨大猫は一度も外に出せてはいない。
「ふむ……」
唸りこむオーナー、エンリコは忙しい。
この店もハンターに言われて始めたが、彼は元々流通業を行う身。あちらこちらへと出向いて店を開けることも珍しくなく、現在は別途スタッフリーダーに店を任せていることも多くなっている。
数日後、また店を開けるが、店は棚卸しのタイミングだという。
店内の大掃除も兼ね、店を臨時休業にしたいとリーダーから進言が出ていた。
では、その臨時休業の一日、猫達をどうするのか。特に、巨大三毛猫。
「久々になるが、依頼するとしようか」
個人では訪れてくれる者もいるようだが、ハンターに頼むのはかなり久々になるだろうか。
早速、エンリコは立ち上がり、店のスタッフへとハンターズソサエティまで使いを出させるのである。
そうして、ハンターズソサエティに出された依頼。
『とある日、港町の北に広がる平原で思いっきりニャンドリームの猫全てを遊ばせて欲しい』というもの。
ユニット参加もOKとのことで、どうやって猫達を遊ばせようかとハンター達は話し合う。
折角の機会だ。ハンター達自身も楽しむことを考えつつ、港町へと向かうのである。
リプレイ本文
●
港町「ガンナ・エントラータ」の裏通りへと集まるハンター達。
その日は、臨時休業だったが、倉庫を流用して営業を行っている猫カフェ「ニャンドリーム」前で、参加メンバーが集まってくるのを待つ。
銀髪のちびっ子騎士、サクラ・エルフリード(ka2598)はペットの猫2匹を連れ、頭の上にはユグディラのヤエを乗せている。
清楚な衣装を纏い気品漂わせる少女、夢路 まよい(ka1328)は店や倉庫から運び出される猫をすでにもふもふしていた。
スタッフがその多くを運搬していたが、ファリーナ・リッジウェイ (kz0182)も早めに訪れてその手伝いを行っている。
「猫ちゃん可愛い! でも、うちのトラオムも可愛いよ!」
まよいはこれ見よがしに、自身の連れたユグディラのトラオムをニャンドリームのスタッフらへと見せ付ける。
これから大仕事のスタッフ達も、トラオムの可愛さに頬を緩ませていた。
「100匹の猫の世話ともなると、大変ですね……」
『猫モテがっくん』なる称号も持つ黒髪の青年、Gacrux(ka2726)は次々に運び出されてくる猫に対し、迷子札、首輪などを確認していくが、その数にやや圧倒されてしまう。
それだけでも大変だというのに、さらに、店の隣には全長3mほどもある巨大猫ミケがいるのだ。
とある事件の煽りで巨大化してしまった猫を店で引き取り、名物としている。
このミケにも思いっきり羽根を伸ばしてもらえれば。それが「ニャンドリーム」スタッフ一同の願いだ。
「今日はミケと思いっきり遊んで、普段のストレスを解消させてあげたいな」
礼儀正しい立ち振る舞いをしたドラグーンのユウ(ka6891)も、同じ考えだ。
「こんにちは、ミケ。今日は宜しくね」
ユウがそうして挨拶を交わすと、ミケは一声「みゃおう」とやや低めの声で応じてくれた。
大通りまで魔導ドラックでやって来ていた、銀髪のエルフの少女、エルバッハ・リオン(ka2434)。
「今回はよろしくお願いします」
彼女は「ニャンドリーム」のオーナーであるエンリコやスタッフらと挨拶し、外出時の状況などを簡単に打ち合わせしていた。
「あと、やんちゃな猫達はどうしていますか?」
相変わらず、店にはスタッフも手を焼いている様子の猫が5匹ほどいる。
「ニャンドリーム」の立ち上げ時から、この猫達は有り余る元気で他の猫に悪戯したり、店から強引に出ようとしたりとやりたい放題な素振りが目立つとのこと。
それでも、年齢を重ねて少しは大人しくなったようだが……、相変わらずのやんちゃぶりにエルバッハは一つ嘆息して。
「自然の中で、厳しく躾けるとしましょうか」
エンリコの許可も出たことで、彼女はその猫達に目を光らせると、やんちゃ猫達に緊張が走っていた。
「猫カフェさん、繁盛しているようで、なによりです」
店の立ち上げから「ニャンドリーム」に携わってきている辺境出身のエルフ、ミオレスカ(ka3496) にとっても、店がうまく運営で来ているこの状況はとても喜ばしい。
「ラブリ達が楽しめるように、頑張らねーとな」
「うん!」
セーラー服姿のヤンキー娘、大伴 鈴太郎(ka6016)は店の人気猫、マンチカンのラブリを抱えて微笑む。
猫の世代も少し変わって新しい仔猫が生まれてはいても、ラブリの人気はまだまだ衰えない。
少し大きくなったスタッフ手伝いの少女、ライナと一緒に鈴太郎は猫の世話を今日一日楽しむことにする。
なお、ライナは店のスタッフではあるが、あくまでお手伝いということで、店内清掃及び棚卸し作業のスタッフからは外してもらっている。
「棚卸しですか、なるほど、猫さん達も羽を伸ばせるのですね」
店のスタッフから事情を聞き、改めて猫達の相手をとミオレスカは考える。
「ジータも一緒に行きましょう」
そんなミオレスカの呼びかけに茶色い毛並みのユキウサギ、ジータは目をぱちくりさせ、彼女の周りを二足歩行で元気に駆け回っていたようだった。
●
店は臨時休業とはいえ、町中で猫を野放しにするわけにもいかない。
猫というのは可愛らしい生き物ではあるが、躾がなっていなければ所構わず用を足してしまうし、暴れ回れば町で日常を過ごす人々に悪影響を及ぼし、「ニャンドリーム」の評価を落とすことにも繋がってしまう。
この為、メンバー達は街の北にある平原へと猫達を運び、そこで思いっきり遊ばせることにする。
ユウは先んじて町の外へと向かい、そこで待機してもらっていたワイバーンのクウに声をかけた。
「クウ、今日は猫さん達の事宜しくね」
一声鳴き、クウも返事してみせる。
予め、街の人に猫の移動について伝達してあったユウだったが、さすがにワイバーンを町中まで乗り入れるのは難しいとの判断があったようだ。
この為、ユウは町の外から平原まで、輸送の補助を行うことにする。
猫の輸送に当たっては、エルバッハと鬼の青年、鳳城 錬介(ka6053) がそれぞれ魔導トラックを運転して運ぶ。
錬介の魔導トラック『猫正宗』の荷台に巨大猫ミケを載せていた。
なかなかミケが動かったこともあり、錬介は用意していたクレーンを生かすことにする。
フックの所を毛布2枚重ねてロープでぐるぐる巻きにして猫じゃらしのように使い、ミケの気を引こうと考えたのだ。
「音がうるさいかな?」
確かに、金属のすれる音が周囲に響くが、ミケは元々大人しい猫だということもあり、ちょいちょい猫パンチしながらも荷台まで歩いてきてくれていた。
また、荷台を増設することで、彼は仲間達や他の猫も合わせて輸送できるようにと気遣いを行ってくれていた。
同じく、エルバッハは、鋼色の魔導トラック『スチールブル』に半数ほどの猫と仲間を合わせて輸送することになる。
普段の依頼では戦闘を想定した換装も行っているが、エルバッハは街の人を気遣い、外観は通常の魔導トラックへと戻していた。
その上で、荷台に檻を据え付け、他の檻よりもやや活発に動く猫を優先して載せる。
なお、彼女が気にかけるやんちゃな猫達は全員個別の檻に乗せ、喧嘩をしないようにと分けて輸送していたようだ。
そうして、トラックに乗ったメンバーは街を出て行く。
錬介にとっては相棒であるトラック『猫正宗』の増設した荷台で、黒髪のエルフである夜桜 奏音(ka5754)はユキウサギのノトスや猫と共に徒に猫と戯れていた。
その後ろの荷台には、この上なく猫をもふもふと堪能していたファリーナの姿もあった。
「そういえば……」
猫っぽいユグディラと猫は、通じ合うものがあるのではないだろうか。
別の荷台に乗っていたまよいがトラオムに猫と触れ合わせてみると、互いに寄り添うようにじゃれ合っていた。
「うん、これなら大丈夫だね」
今日一日、まよいも、トラオムも、思いっきり遊ぶことができそうだ。
エルバッハのトラック『スチールブル』の荷台には、Gacruxがいる。
彼は猫達だけでなく、猫の飲み水、それに自転車を載せていた。
それでも、荷台には猫の方が多く。
「猫が……猫が……平原はまだですか」
その圧倒的な数にGacruxは埋もれてしまいそうになりながら、平原の到着を待つのである。
●
見渡す限りの平原。
南に視線を向ければ、遠くに「ガンナ・エントラータ」の街と海が広がっている。
初夏とあって、日の出ている時間も長い時期。
ここでしばらく、ハンター達は猫を下ろして半日ほど過ごす。
「よっし! ライナも手伝ってくれっか?」
「うん、ライナは何すればいいの?」
鈴太郎は声をかけたライナや友人の錬介と共に、持参したテントを立てていく。
「じゃ、ペグを打ってもらっていいか?」
「ペグって、何?」
テントが飛ばないよう固定するのがペグだが、それはさておき。
初夏ともなれば、日差しはそれなりに強くなる。
「日陰があれば、のんびりしたい猫達も喜びますね」
徐々に形になっていくテントに、錬介も頬を緩めていたようだ。
そんな仲間達の様子を、まよいは魔導カメラで撮影していく。
何を撮ろうかと考えつつ、彼女はユグディラのトラオムと共に仲間達の様子を見て回る。
その対象として一番最初に目に入るのは、やはり巨大猫ミケだ。
最初のうちは、巨大猫もいきなり開けた場所に運ばれて戸惑っていた様子。
「巨大猫さん、ジータよりも、私よりも大きいですね」
見上げる大きさの猫をミオレスカは仰ぎ、とりあえず慣れるまではごろごろしていようと、ユキウサギのジータと一緒にミケと接する。
「とりあえず、猫と戯れますか」
奏音もまた、一緒になってユキウサギのノトス共に大きなミケの背に乗ってみる。
「巨大猫……、このモフモフ感がいいですね」
包まれるようなもふもふとした毛並みは、実に心地よいと奏音は感じていた。
彼らは数匹の猫と一緒にミケと戯れながら、しばらくのんびりとしていたようだ。
奏音は時折、猫の上から平原を眺める。
というのは、どこかに猫が行ってしまわないかと注意を払っていたのだ。
ただ、猫の動きを注視しているメンバーがいないわけではない。
管理の為、分割しての猫の解放を提案していたGacrux。
彼もその辺りの話は上手く詰められぬ部分もあり、ほとんどの猫を野原に解放した状態となってしまう。
とはいえ、鈴太郎が立てたテントへと入っていく猫も少なくなかったし、Gacruxが連れていたドーベルマンが群れから離れそうになる猫を、誘導してくれる。
「さて、特別訓練の時間です」
また、エルバッハはやんちゃな猫5匹を躾けるべく、鋭い視線を向けた。
ハンター達が「ニャンドリーム」の手伝いなどをするたびに、エルバッハはこの猫達の行いを注視している。
おかげでエルバッハが来ると、この猫達も妙にビシッと緊張した態度をみせるようになって来ていた。
躾を行う間、エルバッハもまた他の猫達を気がけ、勝手にどこかにいかないようにと周囲を見回す。
そして、サクラは自身のペットの猫、ロシアンブルーとメインクーンに「ニャンドリーム」と猫と一緒に野原を駆け回らせていたのだが。
「ヤエ、たまには遊んでくるといいのですよ……」
自身の頭の上から離れようとしないユグディラのヤエへと、彼女は呼びかける。
誘いかけてくれそうなユグディラが不在なこともあり、ヤエは動こうとはせずに、周囲の猫の観察を続けていた。
とはいえ、迷子になりそうな猫を見つければ、そこはしっかりと猫まっしぐらに走っていき、変な方に行かないよう止めてくれていた。
猫と戯れる仲間達の姿を、まよいはシャッターへと収めていく。
猫達が迷子になるのではないかと懸念していたGacruxだったが、それも杞憂に済んだようだ。
●
日は徐々に傾き始める。
港町「ガンナ・エントラータ」の「ニャンドリーム」では、掃除、棚卸し作業が進んでいることだろう。
とはいえ、この場のハンター達は猫の面倒を見つつ、それぞれ楽しい一時を過ごしていた。
ユグディラのヤエが猫を追いに向かったことで、サクラもまた他の猫をもふり始める。
「たまにはこういうところで、まったりするのもいいですよね……」
しばし、猫に囲まれて至福の一時を過ごしていたサクラだったが、他の仲間が巨大猫ミケとごろごろ転がっているのに気付いて。
「大きい猫さん、もふもふのしがいがありそうな……」
そこで、彼女は「ニャンドリーム」の依頼を思い出す。
「そういえば、運動させないとなのですよね……」
サクラの言葉をきっかけに、メンバー達はミケに運動させることにするのだが。
「運動したがる様子がないですね」
巨大猫の相手を引き継ぎ、じっと見つめていた錬介は野原を駆け出し始めた。
「これでも、結構体力ありますよ! そして、もふもふさせてください」
とはいえ、あまり錬介の動きに反応しているようにも見えない。
「……誰かがこう、大きな猫じゃらしの代わりになるとか……?」
しかしながら、下手にじゃれつかれても、危険な気すらするとサクラは告げる。実際、その巨大な身体で潰されてしまいそうだ。
「なら、こちらも全力でいきましょう」
ユウは人間猫じゃらしとして、巨大猫と追いかけっこをしようとする。
「私もやってみましょう」
サクラもまた身体にふさふさしたものを纏って、ミケの気を引こうとしていた。
すると、ミケは2人にゆっくり歩み寄り、猫パンチをし始めた。
徐々にサクラは走り始め、ユウは純白の龍角を頭に生やして覚醒し、全身をマテリアルのオーラで覆い、残像を纏って加速する。
そうして、右へ左へと細かく移動することで、ユウはミケの気を引く。
これには、ミケも猫としての本能を刺激されたのか徐々に動き出し、しまいには全身を躍動させるように動き出していた。
ユウはそれだけでは終わらず、周囲に他の猫がいないか十分に気をつけた上で、ランアウトを使って素早く動いて捕まらないようにする。
さらに、立体移動を生かし、ユウは正面からミケの巨体を飛び越えていく。
手を伸ばそうとしてくるミケを、彼女はギリギリまで弾きつけつつマルチステップで避けてみせた。
「さすがですね……」
このユウの動きには、サクラも舌を巻いてしまう。
そんなユウの動きもあって、ミケは楽しそうに草原を跳び回ったようだ。
その間、最初ミケの相手をしていた奏音やミオレスカはユウやサクラに相手を任せ、他の猫と接し始める。
「ジータと一緒に遊んでもらいましょう」
ミオレスカはユキウサギのジータにも猫の相手を頼む。
「猫たちの世話を一緒に手伝ってくださいね」
奏音もまたユキウサギのノトスに猫の世話を頼みつつ、自らも思いっきり猫と戯れる。
ただ、奏音はそれだけでなく、ある程度満足したら占術を使ってどうすれば猫が満足できるかなどを占っていた。
「猫の希望も様々なようですね」
思いっきり駆け回りたい猫や、飛び回る蝶を追いかけるなど、普段店ではある程度躾けられていることもあって、ハメを外したいといった猫が多かったようだ。
「とはいえ、群れから離れすぎるのは避けねばなりませんね」
奏音は御霊にも手伝ってもらい、神で出来た式神にも猫を見晴らせ、群れに戻るよう誘導していたようだ。
ミオレスカは最悪、ツナ缶や魚の干物で釣ろうとも考えていたが、仲間達が気を配っていたこともあってそれを使う状態にまではならなかったようだ。
テント付近では、Gacruxは持参した飲み水を猫達へと振る舞っていた。
その内外にいた猫達の相手を、鈴太郎はクマのぬいぐるみの形をしたサポートロボットの「くまごろー」に任せる。
テントのすぐ外で追い回されていたくまごろーは身振り手振りで必死に拒否アピールするも、鈴太郎には届かず。
「お! やる気満々だな♪ ンじゃ頼んだぜ!」
願いは叶わず、くまごろーはやや愕然としたようにも見えた。
鈴太郎自身は少女ライナと一緒に、仔猫の相手を始める。
「ほら、前に店で鬼ごっこして遊ンでたろ? 今日は思っきし走り回っても平気だからよ!」
「うん、ほら、おいで!」
親猫が許す範囲内で、鈴太郎はライナと一緒に仔猫と楽しく走り回る。その中には、ライナが大好きなラブリの姿もあったようだ。
「……そうだ。写真を撮りましょう。いい記念になります」
錬介はそれを見ていて、魔導スマートフォンを取り出す。
猫と戯れる鈴さんこと、鈴太郎の姿が大変素晴らしいと感じた彼は、思いっきりその姿を激写していたようだ。
まよいもまた、猫や仲間の姿を魔導カメラで撮影し続けていた。
この様子は新しいポートレートにできるのではないかと、微笑むまよいはさらに猫と遊ぶ仲間の楽しげな瞬間をシャッターで捉えていく。
「でも、せっかくだから私も写りたい!」
これまで撮っていた写真には、まよい自身は写っていない。
まよいは猫ともふもふしていた同じ覚醒者のファリーナに魔導カメラを託し、猫と触れ合う自分の姿を撮るよう頼む。
「それじゃ、よろしくね」
「はい、それでは、撮りますよ」
ファリーナの合図で、まよいは猫を抱きながら満面の笑みを浮かべていた。
錬介は猫がどこか行かないよう気をつけてはいたが、寛ぐ態勢はほとんど崩さない。
「ああ、幸せですね……」
可愛い猫達に、楽しそうな仲間達の姿。
今日は実に良い日だと、錬介は実感するのである。
●
野原ではのんびりとしていた一時が流れる。
巨大猫ミケと戯れていたユウは最終的には捕まったようで、一緒になってじゃれ合っていた様子。
やんちゃ猫を躾けていたエルバッハも折角の外出ということで、猫達に多少改善が見られたと判断して好きに遊ばせ始める。
窮屈だった環境からようやく解放されたやんちゃ猫だが、一息ついて野原を駆け回っていた。
そのやんちゃ猫を含め、開放的になって駆け回る猫が遠くへと離れそうになれば、Gacruxのドーベルマンが目を光らせる。
その上で、飼い主であるGacruxが守りの構えで脇に抱えて拾い上げ、群れの中心でリリースしていた。
猫達との鬼ごっこが続けば、さすがのGacruxもグロッキーになってしまって。
「さすがに、くたびれましたねえ……」
野原に倒れこんだGacruxを座布団代わりに3匹の猫が乗り、大きくアクビをしていた。
そんな仲間達へ、まよいはユグディラのトラオムにリュートを弾かせ、「森の午睡の前奏曲」を周囲へと響かせる。
優しい旋律は午睡を誘う。
疲れた猫達だけでなく、ハンター達も幾人か眠りへと落ちていた。
まよいもまた1匹の猫を抱え、もふもふしながらお昼寝を始める。
夢でもまた彼女はたくさんの猫に囲まれ、しばしの間楽しいもふもふタイムを堪能するのだった。
楽しい時間は瞬く間に過ぎてしまい、空は日が落ちて赤らんでくる。
名残惜しくも、ハンター達は猫達を集める。
エルバッハが見回しつつ、自身の魔導トラック『スチールブル』の荷台へと乗せていく。
その際、Gacruxは首輪を確認しつつ、猫の回収漏れがないことをしっかりと確認する。
その際、往路ではほとんど役立てなかったとあって、ユウがワイバーンのクウと一緒に運搬の手助けに当たっていたようだ。
「では、帰りも安全運転と行きましょう」
「そうですね。皆さん、少しだけ我慢を願います」
錬介に応じるエルバッハが荷台の仲間やハンター達へと呼びかけ、トラックを運転して港町を目指して走り始めたのだった。
港町「ガンナ・エントラータ」の裏通りへと集まるハンター達。
その日は、臨時休業だったが、倉庫を流用して営業を行っている猫カフェ「ニャンドリーム」前で、参加メンバーが集まってくるのを待つ。
銀髪のちびっ子騎士、サクラ・エルフリード(ka2598)はペットの猫2匹を連れ、頭の上にはユグディラのヤエを乗せている。
清楚な衣装を纏い気品漂わせる少女、夢路 まよい(ka1328)は店や倉庫から運び出される猫をすでにもふもふしていた。
スタッフがその多くを運搬していたが、ファリーナ・リッジウェイ (kz0182)も早めに訪れてその手伝いを行っている。
「猫ちゃん可愛い! でも、うちのトラオムも可愛いよ!」
まよいはこれ見よがしに、自身の連れたユグディラのトラオムをニャンドリームのスタッフらへと見せ付ける。
これから大仕事のスタッフ達も、トラオムの可愛さに頬を緩ませていた。
「100匹の猫の世話ともなると、大変ですね……」
『猫モテがっくん』なる称号も持つ黒髪の青年、Gacrux(ka2726)は次々に運び出されてくる猫に対し、迷子札、首輪などを確認していくが、その数にやや圧倒されてしまう。
それだけでも大変だというのに、さらに、店の隣には全長3mほどもある巨大猫ミケがいるのだ。
とある事件の煽りで巨大化してしまった猫を店で引き取り、名物としている。
このミケにも思いっきり羽根を伸ばしてもらえれば。それが「ニャンドリーム」スタッフ一同の願いだ。
「今日はミケと思いっきり遊んで、普段のストレスを解消させてあげたいな」
礼儀正しい立ち振る舞いをしたドラグーンのユウ(ka6891)も、同じ考えだ。
「こんにちは、ミケ。今日は宜しくね」
ユウがそうして挨拶を交わすと、ミケは一声「みゃおう」とやや低めの声で応じてくれた。
大通りまで魔導ドラックでやって来ていた、銀髪のエルフの少女、エルバッハ・リオン(ka2434)。
「今回はよろしくお願いします」
彼女は「ニャンドリーム」のオーナーであるエンリコやスタッフらと挨拶し、外出時の状況などを簡単に打ち合わせしていた。
「あと、やんちゃな猫達はどうしていますか?」
相変わらず、店にはスタッフも手を焼いている様子の猫が5匹ほどいる。
「ニャンドリーム」の立ち上げ時から、この猫達は有り余る元気で他の猫に悪戯したり、店から強引に出ようとしたりとやりたい放題な素振りが目立つとのこと。
それでも、年齢を重ねて少しは大人しくなったようだが……、相変わらずのやんちゃぶりにエルバッハは一つ嘆息して。
「自然の中で、厳しく躾けるとしましょうか」
エンリコの許可も出たことで、彼女はその猫達に目を光らせると、やんちゃ猫達に緊張が走っていた。
「猫カフェさん、繁盛しているようで、なによりです」
店の立ち上げから「ニャンドリーム」に携わってきている辺境出身のエルフ、ミオレスカ(ka3496) にとっても、店がうまく運営で来ているこの状況はとても喜ばしい。
「ラブリ達が楽しめるように、頑張らねーとな」
「うん!」
セーラー服姿のヤンキー娘、大伴 鈴太郎(ka6016)は店の人気猫、マンチカンのラブリを抱えて微笑む。
猫の世代も少し変わって新しい仔猫が生まれてはいても、ラブリの人気はまだまだ衰えない。
少し大きくなったスタッフ手伝いの少女、ライナと一緒に鈴太郎は猫の世話を今日一日楽しむことにする。
なお、ライナは店のスタッフではあるが、あくまでお手伝いということで、店内清掃及び棚卸し作業のスタッフからは外してもらっている。
「棚卸しですか、なるほど、猫さん達も羽を伸ばせるのですね」
店のスタッフから事情を聞き、改めて猫達の相手をとミオレスカは考える。
「ジータも一緒に行きましょう」
そんなミオレスカの呼びかけに茶色い毛並みのユキウサギ、ジータは目をぱちくりさせ、彼女の周りを二足歩行で元気に駆け回っていたようだった。
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店は臨時休業とはいえ、町中で猫を野放しにするわけにもいかない。
猫というのは可愛らしい生き物ではあるが、躾がなっていなければ所構わず用を足してしまうし、暴れ回れば町で日常を過ごす人々に悪影響を及ぼし、「ニャンドリーム」の評価を落とすことにも繋がってしまう。
この為、メンバー達は街の北にある平原へと猫達を運び、そこで思いっきり遊ばせることにする。
ユウは先んじて町の外へと向かい、そこで待機してもらっていたワイバーンのクウに声をかけた。
「クウ、今日は猫さん達の事宜しくね」
一声鳴き、クウも返事してみせる。
予め、街の人に猫の移動について伝達してあったユウだったが、さすがにワイバーンを町中まで乗り入れるのは難しいとの判断があったようだ。
この為、ユウは町の外から平原まで、輸送の補助を行うことにする。
猫の輸送に当たっては、エルバッハと鬼の青年、鳳城 錬介(ka6053) がそれぞれ魔導トラックを運転して運ぶ。
錬介の魔導トラック『猫正宗』の荷台に巨大猫ミケを載せていた。
なかなかミケが動かったこともあり、錬介は用意していたクレーンを生かすことにする。
フックの所を毛布2枚重ねてロープでぐるぐる巻きにして猫じゃらしのように使い、ミケの気を引こうと考えたのだ。
「音がうるさいかな?」
確かに、金属のすれる音が周囲に響くが、ミケは元々大人しい猫だということもあり、ちょいちょい猫パンチしながらも荷台まで歩いてきてくれていた。
また、荷台を増設することで、彼は仲間達や他の猫も合わせて輸送できるようにと気遣いを行ってくれていた。
同じく、エルバッハは、鋼色の魔導トラック『スチールブル』に半数ほどの猫と仲間を合わせて輸送することになる。
普段の依頼では戦闘を想定した換装も行っているが、エルバッハは街の人を気遣い、外観は通常の魔導トラックへと戻していた。
その上で、荷台に檻を据え付け、他の檻よりもやや活発に動く猫を優先して載せる。
なお、彼女が気にかけるやんちゃな猫達は全員個別の檻に乗せ、喧嘩をしないようにと分けて輸送していたようだ。
そうして、トラックに乗ったメンバーは街を出て行く。
錬介にとっては相棒であるトラック『猫正宗』の増設した荷台で、黒髪のエルフである夜桜 奏音(ka5754)はユキウサギのノトスや猫と共に徒に猫と戯れていた。
その後ろの荷台には、この上なく猫をもふもふと堪能していたファリーナの姿もあった。
「そういえば……」
猫っぽいユグディラと猫は、通じ合うものがあるのではないだろうか。
別の荷台に乗っていたまよいがトラオムに猫と触れ合わせてみると、互いに寄り添うようにじゃれ合っていた。
「うん、これなら大丈夫だね」
今日一日、まよいも、トラオムも、思いっきり遊ぶことができそうだ。
エルバッハのトラック『スチールブル』の荷台には、Gacruxがいる。
彼は猫達だけでなく、猫の飲み水、それに自転車を載せていた。
それでも、荷台には猫の方が多く。
「猫が……猫が……平原はまだですか」
その圧倒的な数にGacruxは埋もれてしまいそうになりながら、平原の到着を待つのである。
●
見渡す限りの平原。
南に視線を向ければ、遠くに「ガンナ・エントラータ」の街と海が広がっている。
初夏とあって、日の出ている時間も長い時期。
ここでしばらく、ハンター達は猫を下ろして半日ほど過ごす。
「よっし! ライナも手伝ってくれっか?」
「うん、ライナは何すればいいの?」
鈴太郎は声をかけたライナや友人の錬介と共に、持参したテントを立てていく。
「じゃ、ペグを打ってもらっていいか?」
「ペグって、何?」
テントが飛ばないよう固定するのがペグだが、それはさておき。
初夏ともなれば、日差しはそれなりに強くなる。
「日陰があれば、のんびりしたい猫達も喜びますね」
徐々に形になっていくテントに、錬介も頬を緩めていたようだ。
そんな仲間達の様子を、まよいは魔導カメラで撮影していく。
何を撮ろうかと考えつつ、彼女はユグディラのトラオムと共に仲間達の様子を見て回る。
その対象として一番最初に目に入るのは、やはり巨大猫ミケだ。
最初のうちは、巨大猫もいきなり開けた場所に運ばれて戸惑っていた様子。
「巨大猫さん、ジータよりも、私よりも大きいですね」
見上げる大きさの猫をミオレスカは仰ぎ、とりあえず慣れるまではごろごろしていようと、ユキウサギのジータと一緒にミケと接する。
「とりあえず、猫と戯れますか」
奏音もまた、一緒になってユキウサギのノトス共に大きなミケの背に乗ってみる。
「巨大猫……、このモフモフ感がいいですね」
包まれるようなもふもふとした毛並みは、実に心地よいと奏音は感じていた。
彼らは数匹の猫と一緒にミケと戯れながら、しばらくのんびりとしていたようだ。
奏音は時折、猫の上から平原を眺める。
というのは、どこかに猫が行ってしまわないかと注意を払っていたのだ。
ただ、猫の動きを注視しているメンバーがいないわけではない。
管理の為、分割しての猫の解放を提案していたGacrux。
彼もその辺りの話は上手く詰められぬ部分もあり、ほとんどの猫を野原に解放した状態となってしまう。
とはいえ、鈴太郎が立てたテントへと入っていく猫も少なくなかったし、Gacruxが連れていたドーベルマンが群れから離れそうになる猫を、誘導してくれる。
「さて、特別訓練の時間です」
また、エルバッハはやんちゃな猫5匹を躾けるべく、鋭い視線を向けた。
ハンター達が「ニャンドリーム」の手伝いなどをするたびに、エルバッハはこの猫達の行いを注視している。
おかげでエルバッハが来ると、この猫達も妙にビシッと緊張した態度をみせるようになって来ていた。
躾を行う間、エルバッハもまた他の猫達を気がけ、勝手にどこかにいかないようにと周囲を見回す。
そして、サクラは自身のペットの猫、ロシアンブルーとメインクーンに「ニャンドリーム」と猫と一緒に野原を駆け回らせていたのだが。
「ヤエ、たまには遊んでくるといいのですよ……」
自身の頭の上から離れようとしないユグディラのヤエへと、彼女は呼びかける。
誘いかけてくれそうなユグディラが不在なこともあり、ヤエは動こうとはせずに、周囲の猫の観察を続けていた。
とはいえ、迷子になりそうな猫を見つければ、そこはしっかりと猫まっしぐらに走っていき、変な方に行かないよう止めてくれていた。
猫と戯れる仲間達の姿を、まよいはシャッターへと収めていく。
猫達が迷子になるのではないかと懸念していたGacruxだったが、それも杞憂に済んだようだ。
●
日は徐々に傾き始める。
港町「ガンナ・エントラータ」の「ニャンドリーム」では、掃除、棚卸し作業が進んでいることだろう。
とはいえ、この場のハンター達は猫の面倒を見つつ、それぞれ楽しい一時を過ごしていた。
ユグディラのヤエが猫を追いに向かったことで、サクラもまた他の猫をもふり始める。
「たまにはこういうところで、まったりするのもいいですよね……」
しばし、猫に囲まれて至福の一時を過ごしていたサクラだったが、他の仲間が巨大猫ミケとごろごろ転がっているのに気付いて。
「大きい猫さん、もふもふのしがいがありそうな……」
そこで、彼女は「ニャンドリーム」の依頼を思い出す。
「そういえば、運動させないとなのですよね……」
サクラの言葉をきっかけに、メンバー達はミケに運動させることにするのだが。
「運動したがる様子がないですね」
巨大猫の相手を引き継ぎ、じっと見つめていた錬介は野原を駆け出し始めた。
「これでも、結構体力ありますよ! そして、もふもふさせてください」
とはいえ、あまり錬介の動きに反応しているようにも見えない。
「……誰かがこう、大きな猫じゃらしの代わりになるとか……?」
しかしながら、下手にじゃれつかれても、危険な気すらするとサクラは告げる。実際、その巨大な身体で潰されてしまいそうだ。
「なら、こちらも全力でいきましょう」
ユウは人間猫じゃらしとして、巨大猫と追いかけっこをしようとする。
「私もやってみましょう」
サクラもまた身体にふさふさしたものを纏って、ミケの気を引こうとしていた。
すると、ミケは2人にゆっくり歩み寄り、猫パンチをし始めた。
徐々にサクラは走り始め、ユウは純白の龍角を頭に生やして覚醒し、全身をマテリアルのオーラで覆い、残像を纏って加速する。
そうして、右へ左へと細かく移動することで、ユウはミケの気を引く。
これには、ミケも猫としての本能を刺激されたのか徐々に動き出し、しまいには全身を躍動させるように動き出していた。
ユウはそれだけでは終わらず、周囲に他の猫がいないか十分に気をつけた上で、ランアウトを使って素早く動いて捕まらないようにする。
さらに、立体移動を生かし、ユウは正面からミケの巨体を飛び越えていく。
手を伸ばそうとしてくるミケを、彼女はギリギリまで弾きつけつつマルチステップで避けてみせた。
「さすがですね……」
このユウの動きには、サクラも舌を巻いてしまう。
そんなユウの動きもあって、ミケは楽しそうに草原を跳び回ったようだ。
その間、最初ミケの相手をしていた奏音やミオレスカはユウやサクラに相手を任せ、他の猫と接し始める。
「ジータと一緒に遊んでもらいましょう」
ミオレスカはユキウサギのジータにも猫の相手を頼む。
「猫たちの世話を一緒に手伝ってくださいね」
奏音もまたユキウサギのノトスに猫の世話を頼みつつ、自らも思いっきり猫と戯れる。
ただ、奏音はそれだけでなく、ある程度満足したら占術を使ってどうすれば猫が満足できるかなどを占っていた。
「猫の希望も様々なようですね」
思いっきり駆け回りたい猫や、飛び回る蝶を追いかけるなど、普段店ではある程度躾けられていることもあって、ハメを外したいといった猫が多かったようだ。
「とはいえ、群れから離れすぎるのは避けねばなりませんね」
奏音は御霊にも手伝ってもらい、神で出来た式神にも猫を見晴らせ、群れに戻るよう誘導していたようだ。
ミオレスカは最悪、ツナ缶や魚の干物で釣ろうとも考えていたが、仲間達が気を配っていたこともあってそれを使う状態にまではならなかったようだ。
テント付近では、Gacruxは持参した飲み水を猫達へと振る舞っていた。
その内外にいた猫達の相手を、鈴太郎はクマのぬいぐるみの形をしたサポートロボットの「くまごろー」に任せる。
テントのすぐ外で追い回されていたくまごろーは身振り手振りで必死に拒否アピールするも、鈴太郎には届かず。
「お! やる気満々だな♪ ンじゃ頼んだぜ!」
願いは叶わず、くまごろーはやや愕然としたようにも見えた。
鈴太郎自身は少女ライナと一緒に、仔猫の相手を始める。
「ほら、前に店で鬼ごっこして遊ンでたろ? 今日は思っきし走り回っても平気だからよ!」
「うん、ほら、おいで!」
親猫が許す範囲内で、鈴太郎はライナと一緒に仔猫と楽しく走り回る。その中には、ライナが大好きなラブリの姿もあったようだ。
「……そうだ。写真を撮りましょう。いい記念になります」
錬介はそれを見ていて、魔導スマートフォンを取り出す。
猫と戯れる鈴さんこと、鈴太郎の姿が大変素晴らしいと感じた彼は、思いっきりその姿を激写していたようだ。
まよいもまた、猫や仲間の姿を魔導カメラで撮影し続けていた。
この様子は新しいポートレートにできるのではないかと、微笑むまよいはさらに猫と遊ぶ仲間の楽しげな瞬間をシャッターで捉えていく。
「でも、せっかくだから私も写りたい!」
これまで撮っていた写真には、まよい自身は写っていない。
まよいは猫ともふもふしていた同じ覚醒者のファリーナに魔導カメラを託し、猫と触れ合う自分の姿を撮るよう頼む。
「それじゃ、よろしくね」
「はい、それでは、撮りますよ」
ファリーナの合図で、まよいは猫を抱きながら満面の笑みを浮かべていた。
錬介は猫がどこか行かないよう気をつけてはいたが、寛ぐ態勢はほとんど崩さない。
「ああ、幸せですね……」
可愛い猫達に、楽しそうな仲間達の姿。
今日は実に良い日だと、錬介は実感するのである。
●
野原ではのんびりとしていた一時が流れる。
巨大猫ミケと戯れていたユウは最終的には捕まったようで、一緒になってじゃれ合っていた様子。
やんちゃ猫を躾けていたエルバッハも折角の外出ということで、猫達に多少改善が見られたと判断して好きに遊ばせ始める。
窮屈だった環境からようやく解放されたやんちゃ猫だが、一息ついて野原を駆け回っていた。
そのやんちゃ猫を含め、開放的になって駆け回る猫が遠くへと離れそうになれば、Gacruxのドーベルマンが目を光らせる。
その上で、飼い主であるGacruxが守りの構えで脇に抱えて拾い上げ、群れの中心でリリースしていた。
猫達との鬼ごっこが続けば、さすがのGacruxもグロッキーになってしまって。
「さすがに、くたびれましたねえ……」
野原に倒れこんだGacruxを座布団代わりに3匹の猫が乗り、大きくアクビをしていた。
そんな仲間達へ、まよいはユグディラのトラオムにリュートを弾かせ、「森の午睡の前奏曲」を周囲へと響かせる。
優しい旋律は午睡を誘う。
疲れた猫達だけでなく、ハンター達も幾人か眠りへと落ちていた。
まよいもまた1匹の猫を抱え、もふもふしながらお昼寝を始める。
夢でもまた彼女はたくさんの猫に囲まれ、しばしの間楽しいもふもふタイムを堪能するのだった。
楽しい時間は瞬く間に過ぎてしまい、空は日が落ちて赤らんでくる。
名残惜しくも、ハンター達は猫達を集める。
エルバッハが見回しつつ、自身の魔導トラック『スチールブル』の荷台へと乗せていく。
その際、Gacruxは首輪を確認しつつ、猫の回収漏れがないことをしっかりと確認する。
その際、往路ではほとんど役立てなかったとあって、ユウがワイバーンのクウと一緒に運搬の手助けに当たっていたようだ。
「では、帰りも安全運転と行きましょう」
「そうですね。皆さん、少しだけ我慢を願います」
錬介に応じるエルバッハが荷台の仲間やハンター達へと呼びかけ、トラックを運転して港町を目指して走り始めたのだった。
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ねこぐるい【相談卓】 Gacrux(ka2726) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/06/13 00:04:11 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/06/13 22:10:25 |
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質問卓 大伴 鈴太郎(ka6016) 人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2018/06/14 13:23:23 |