ゲスト
(ka0000)
風雨淒淒
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/22 22:00
- 完成日
- 2014/12/29 06:35
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
風が吹きすさび、叩きつけるような雨もあった。
木々が揺らめく中、確かにそれは物陰から獲物を狙っていた。
※※※
今回、ギルドに現れた依頼は獣型の雑魔退治だった。
外見は狼のような物であり、まだ近隣集落の被害は出ていない。
森で狩りをしていた男性が偶然雑魔を発見し、被害が大きくなる前にハンター要請を行った。
単純な依頼には変わりないが、1つだけ問題があった。
それは、その森を含めた近隣がここ最近では珍しいほどの雨風に悩まされているということ。
地面は泥濘、風により木々は揺らぎ、戦闘をするハンター達にとっては最悪ともいえる視界の悪さ。
「森そのものの規模は小さく、迷うような事はないと思いますが……」
案内人も複雑そうな表情を見せながら、ハンター達に資料を見せている。
「天気のせいで薄暗さは増していますし、光源がなければおそらく厳しいかと思います」
「必要な物があれば、集落からの貸し出しは許可を得ています」
「集落にある物でしたら、森に行く前に立ち寄れば借りる事は出来るかと」
案内人の言葉を聞き、ハンター達はそれぞれ雑魔の待つ森へと出発をしたのだった――……。
リプレイ本文
●雑魔退治に集まったハンター達
「被害が出る前で良かった、狩人の判断に感謝しなきゃな」
龍崎・カズマ(ka0178)は小さな声で呟き、拳を強く握り締める。
ハンターが知るのは、大抵何かが犠牲になった後の事の方が多い。雑魔が暴れて住居が犠牲になった、もしくは誰か人の命が犠牲になった、そのような事が多い中で被害がまだ出ていない状態で連絡が来たのが龍崎は嬉しかったのだろう。
「でも、雨が酷いね……足場や視界、気をつけなきゃいけない事が多いかも……」
ミノア・エデン(ka1540)がため息を吐きながら呟く。
彼女は普段から野宿をする事が多く、雨の中獲物を探さなければならない時もある。
だからこそ、雨の中での狩猟が危険だという事を知っており、今回の仕事に対してもいつも以上に真剣になっているのかもしれない。
「村にある物は借りられるという説明だったな、馬具に取りつけられるようなランタンなどあるだろうか? 照明が多かったり、照明に手を使う必要がないほど出来る事も増えるだろうしな」
それと帰還後に暖を取る場所を借りられるとありがたいな、とクローディア(ka3392)が言葉を付け足す。
確かに今の時期は寒いし、雨風も強いから寒さも普段以上になるだろう。
「クローディア殿、前回の仕事ではお世話になりました」
クローディアの言葉を聞いた後、屋外(ka3530)が彼女に話しかける。
「前回の仕事でご一緒させて頂いた時に心残りが大き……片思い? いや、勘違い?」
首を傾げながら屋外が呟く。
「とにかく、クローディア殿、大変ご迷惑をお掛けしました、ありがとう」
「いや、気にする必要はないさ。とにかく今回も一緒に頑張ろう」
屋外の言葉に、クローディアは軽く頷きながら握手のために手を差し出した。
「……初めての依頼にはちょうどいいかなと思って参加したんだけど、どうなんだろうね」
ロジェ・オデュロー(ka3586)が苦笑混じりに呟く。
彼は集落から借り受けるものを纏めており、更に森の広さや地形も詳しく聞こうと考えていた。
「情報は多ければ多いほど、こちらに有利になるだろうし、念のためにロープを準備してきたけど、出来ればもっと借りておきたいね」
頷きながらロジェは必要な物を更に書き出していく。
「近隣に被害が出ていないのに対峙するというのは心が痛みますが、致し方ありませんね」
ジーク・ヴュラード(ka3589)が小さく呟く。
「被害が出てからでは遅いですし、急ぎましょう」
ジークの言葉に「そうだな」とカルス(ka3647)が言葉を返す。
「楽な仕事ってワケでもなさそうだしな。何か食いモン持ってくりゃ良かったな、頼むから仕事中には鳴るなよ、俺の腹」
カルスは自分のお腹を擦る。
「悪天候だと聞いたが、私にとっては良い天気に思えるがな、そう悪い気分でもないぞ」
ストゥール(ka3669)は少し楽しげに言葉を漏らした。
「不利な状況ではあるが、それは相手にとっても同じ事。そう悲観する事はあるまい」
「確かにストゥールさんの言う通りですね、雑魔も雨風に強いわけではないでしょうし」
ストゥールの言葉に、ジークが頷きながら答える。
「とりあえず、先に集落に行って必要な物を借りたりするんだよね? だったら急ごうよ」
ミノアが呟き、ハンター達は雑魔が闊歩する森へと向かい始めたのだった――……。
●捜索開始
集落に立ち寄り、それぞれが欲する物を借りた後、ハンター達は4つの班に分かれて行動する作戦を立てていた。
雑魔の場所が分からない以上、団体で行動するより東西南北にわかれて行動した方がいい、とハンター達は考えたのだろう。
東……ロジェ、ジーク。
西……龍崎、クローディア。
南……ミノア、屋外。
北……カルス、ストゥール。
「一応、集落の奴らには俺達が戻るまで外出は控えるように頼んできた。この雨風だし、好きで出掛ける奴はいないと信じたいが……」
龍崎が呟き、ハンター達はそれぞれ決めた場所から森への侵入を試みた。
※東班
「一応、集落の方でもロープを余分に借りてきたよ。本当は燃料も余分にあれば良かったのだけど、集落の人達も楽な生活じゃないみたいで無理にとは言えなかったよ」
ロジェは苦笑しながら、借りてきたロープをジークに見せる。
ジークとロジェは古い仲間らしく、お互いのクセなどもわかっているため連携を取りやすい。
「この悪天候の中ではランタンが目立ってしまいますね、まぁ、好戦的なようだしあまり問題にはならないでしょう」
ジークは持っているランタンを見ながら呟く。
「雨でほとんど消されているけど、足跡らしき物が残っているね、しかもまだ真新しい」
ロジェが足元を見ながら、ジークも足元をランタンで照らしながら見つめる。
すると、そこには消えかけているけど確かに獣の足跡のような痕跡が僅かに残されていた。
「他の班の皆さんに連絡をお願いしてもいいですか? その間の警戒は私がしっかりしますから」
「そうだね、他の班の皆も何かを見つけているかもしれないし……」
ジークの言葉に、ロジェは頷きながら『トランシーバー』を手にした。
※西班
「狩人達から話を聞いて、森の大まかな地図を作って来たんだが……こうも激しい雨風だと、地図通りに歩いているのかも分からなくなりそうだな」
龍崎がため息を吐きながら、自作した地図を見る。
その地図には雑魔の目撃場所、そこまでの道を書きこんであり、最初に雑魔が目撃された場所に近いのは龍崎とクローディアの西班だった。
「森そのものは大した広さはないみたいだ、4つの班に分かれて捜索すれば探すのは容易いな」
叩きつけるような雨の音を聞きながら、クローディアがポツリと呟く。
「雑魔と遭遇したら馬は逃がすべきだろうか、まだ犠牲者が出ていないのに馬の犠牲が出たら冗談にもならないだろうし」
「そうだな、戦闘時にも馬を守りながら戦うのは厳しいだろうからな」
クローディアの言葉に頷きながら、龍崎が言葉を返す。
その時、森の北側からカルスの声が僅かに聞こえてくる。
「龍崎殿、今のは……」
「あぁ、どうやら北側に雑魔がいるらしいな、急ごう」
ふたりは馬から降りて、カルスの声が聞こえた方へと向かって走り出した。
※南側
「集落で生肉を貰って来たけど、この雨風の中で雑魔に匂いが届くかな?」
ミノアは苦笑しながら、手に持っている生肉が入った袋を見つめて呟く。
「どうでしょうね……匂いが届くのを祈るのみですが……それにしても何故雑魔が発生したのか、雑魔は何を狙って森に潜んでいるんでしょうか」
屋外がため息混じりに呟く。
「さぁ、単にご飯を探しに来ただけなのかもしれないし、他に理由があるかもしれない。向こうがこっちの事を分からないように、こっちも分かんない事ばかりだからね~」
屋外の言葉にミノアが苦笑しながら答える。
「もしかしたらこの雨だって、雑魔が何らかの原因を担っているかもしれないし……まぁ、これは考えすぎの可能性が大きいけどね」
「確かに、普通では考えられないくらいの雨風ですからね、ですが気候を操る雑魔がいるとなれば、余計にこちらの立場が不利になりますね」
「可能性の1つだから、真剣に考えなくてもいいって。それより何か痕跡がある? 木に爪痕でもないかなって見てるんだけど、それらしいのがまったくないんだよね」
ミノアがため息を吐く。彼女は雑魔にも知能があるかもしれないと考え、最初から戦闘を仕掛けるつもりはないらしい。もちろん場合によっては、なのだけれど。
「……ミノア殿? 微かに声が聞こえました、あれは……カルス殿の声かと!」
屋外の言葉にふたりは互いに顔を見合わせ、カルス達のいる北側へと向かい始めた。
※北側
「風下から向かってくるのがよくある話ではあるが、このように吹き荒れていては大して当てにはならんかもしれんな」
ランタンを腰にぶらさげ、ストゥールが呟く。
「この悪天候が、相手にとっても不利になると思いたいがな……」
カルスは空から降ってくる雨を見上げる。
雨具などをしていても、顔に雨が叩きつけてきて、視界が悪いことこの上ない。
「……おい、これを見てくれ」
カルスはピタリと歩みを止め、ストゥールを呼ぶ。
「どうかしたのか?」
ストゥールが訝しげな表情を見せてカルスに近寄ると――……。
「……っ」
カルスが理由を言うまでもなく、ストゥールには彼の言いたい事が分かってしまった。
カルスの足元にあったのは、無残に食い散らかされた動物の姿。
恐らくはこの森に生息している動物なのだろうが、まるで今さっき食い散らかされたかのようにしてある。
地面に倒れている動物の姿を見て、カルスもストゥールも周りへの警戒を強めた。
「そこか……っ!」
ストゥールが『特殊強化鋼製ワイヤーウィップ』で攻撃を仕掛ける。
すると唸り声をあげながら、カルスとストゥールのふたりを見る狼型雑魔の姿があった――……。
「ちっ、バレちまったなら仕方ねぇ……声を出してみれば、他の奴らに聞こえるか……? 試してみる価値はあるかもな」
カルスは小さく舌打ちをしながら、雑魔を発見した、と大きな声で叫んだのだった。
●合流、戦闘開始!
カルスの声を聞いた者、連絡中に雑魔発見の情報を聞いた者、それぞれがカルスとストゥールのいる北側へとやって来ていた。
「この雨の中を逃げられたら適わんな」
龍崎は小さな声で呟き『特殊強化鋼製ワイヤーウィップ』で雑魔の足部分を狙い、ワイヤーを巻きつける事を狙う。
「引っ掛かりが出来れば走りづらいだろうからな、上手く絡めればこちらが有利になる」
だが視界の悪さから上手く狙う事が出来ない。
「戦闘か、この状況じゃ仕方ないよね……キミの肉、食べられるようなら晩御飯に持って帰らせてもらうね」
ミノアは『クレイモア』を構え、雑魔に言葉を投げかける。
もちろんその言葉の意味は雑魔に届いていないのだけれど、それでもミノアには関係なかった。
「これ以上、雨に打たれ続けるとさすがに風邪を引いてしまいそうだ、早々に終わらせさせてもらおう」
クローディアは『ヴァイブレードナイフ』を構え、スキルを使用しながら雑魔に攻撃を仕掛ける。
彼女の攻撃は雑魔に当たったのだが、攻撃直後、泥濘で足を滑らせてしまい、雑魔がクローディアに噛みつこうと鋭い牙を見せた。
「クローディア殿! 危ない!」
だけど、雑魔の牙がクローディアに届く寸前、屋外の攻撃が雑魔の動きを止めた。
そして、追撃として『部位狙い』を使用して攻撃を仕掛ける。
「これから『マジックアロー』を放つよ、5秒後に雑魔から離れて」
ロジェが前衛で戦うハンター達に言葉を投げかけ、きっちり5秒後に『集中』を使用した『マジックアロー』を繰り出した。
ロジェの攻撃で雑魔がよろめいた僅かな隙を突いて、ジークが『アックスブレード ツヴァイシュトースツァーン』を振り上げ、強力な一撃を繰り出す。
「雑魔さんよぅ、出来れば止まっててもらえると助かるぜ、お互いすぐ楽になれるだろ?」
カルスは『和弓 鳴弦』を構え、ひゅん、と風切音を響かせながら雑魔に矢を放つ。
「ふん……」
ストゥールは前衛に『攻性強化』を行い、自らに『防性強化』を使用する。
そして、いつでも追撃出来るように『魔導拳銃 ペンタグラム』を雑魔に向けて構えている。
「いくよ」
ストゥールは短く呟いた後『機導砲』で雑魔を攻撃する。
だが、その攻撃は外れてしまう――……が、これもストゥールの狙い通りだ。
「よし!」
ストゥールの攻撃を回避した雑魔の足を、龍崎のワイヤーウィップが絡め取り、雑魔は自由に動く事が出来なくなった。
「自分の安全を優先して時間を掛けるわけにはいかないからな」
龍崎は低く呟いた後、ワイヤーウィップを強く引いて、雑魔を引き寄せ『ヴァイブレードナイフ』を雑魔の身体に突きたてる。
「ちっ、雨のせいで狙いが外れた。本当は脳天に突き立てるはずだったんだけどな」
龍崎は舌打ちをした後、雑魔から離れる。
彼が離れた瞬間にロジェが『集中』と『マジックアロー』を、カルスが矢を放ち、雑魔の動きを止めた所で前衛者達の総攻撃で無事に雑魔を退治する事が出来たのだった――……。
●戦いの後
雑魔を退治した事を集落に告げに行くと、予め屋外が頼んでいた風呂の準備が出来ていると住人から言われる。
「こちらの我儘を聞いていただき、ありがとうございます。何か人手がいる仕事がありましたら、ぜひ自分が手伝いますので……!」
屋外は住人に何度も感謝の言葉を口にしながら、深く頭を下げている。
「確かに冷え切っているからな、好意に甘えさせてもらうとしようか」
「……雑魔の死体、とても食べられるものじゃなかったから、この借り受けた生肉貰っていいかなぁ、今日の晩御飯に……」
ミノアはお腹を擦りながら、苦笑して呟く。
「雨の中の露天風呂とかあればいいんだがな、いや、それじゃ身体を温める意味がないか。雨風の音を聞きながら風呂に入るというのも、なかなか悪くはないだろうな」
ストゥールは腕を組みながら、それを想像しているのかとても楽しそうな笑みを浮かべる。
「風呂に入らせてもらった後、早く帰りたいな……俺の腹がもちそうにないんだよ」
何度も『ぐぅ』と鳴るお腹を擦りながら、カルスが呟いた。
「勝って兜の緒を締めろとは言いますが、流石に仕事も終わったので少しくらい気を抜いても大丈夫でしょうか、初依頼だったので私も緊張続きでして……」
きっと兜の中では苦笑しているのだろう、そんな雰囲気が伺える声色でジークが話した。
「そうだ、お風呂のお礼ってわけでもないけど帰りに演奏をさせてもらおうかな。雨風の憂鬱さ、雑魔発生した事で気落ちした心を僕の演奏で癒されてくれると嬉しいんだけど」
ロジェが恭しく頭を下げながら呟く。
住人は『演奏』という言葉に興味を惹かれたらしく「ぜひ聞かせてください」と言っている人もいた。
「私は風呂から上がった時の飲み物でも準備しておこう、あれだけ慌ただしい依頼だったのだから気を抜く所では抜かねばな」
クローディアが呟き、それぞれハンターは冷えた身体を温めるために順番にお風呂へと向かい始めたのだった――……。
END
「被害が出る前で良かった、狩人の判断に感謝しなきゃな」
龍崎・カズマ(ka0178)は小さな声で呟き、拳を強く握り締める。
ハンターが知るのは、大抵何かが犠牲になった後の事の方が多い。雑魔が暴れて住居が犠牲になった、もしくは誰か人の命が犠牲になった、そのような事が多い中で被害がまだ出ていない状態で連絡が来たのが龍崎は嬉しかったのだろう。
「でも、雨が酷いね……足場や視界、気をつけなきゃいけない事が多いかも……」
ミノア・エデン(ka1540)がため息を吐きながら呟く。
彼女は普段から野宿をする事が多く、雨の中獲物を探さなければならない時もある。
だからこそ、雨の中での狩猟が危険だという事を知っており、今回の仕事に対してもいつも以上に真剣になっているのかもしれない。
「村にある物は借りられるという説明だったな、馬具に取りつけられるようなランタンなどあるだろうか? 照明が多かったり、照明に手を使う必要がないほど出来る事も増えるだろうしな」
それと帰還後に暖を取る場所を借りられるとありがたいな、とクローディア(ka3392)が言葉を付け足す。
確かに今の時期は寒いし、雨風も強いから寒さも普段以上になるだろう。
「クローディア殿、前回の仕事ではお世話になりました」
クローディアの言葉を聞いた後、屋外(ka3530)が彼女に話しかける。
「前回の仕事でご一緒させて頂いた時に心残りが大き……片思い? いや、勘違い?」
首を傾げながら屋外が呟く。
「とにかく、クローディア殿、大変ご迷惑をお掛けしました、ありがとう」
「いや、気にする必要はないさ。とにかく今回も一緒に頑張ろう」
屋外の言葉に、クローディアは軽く頷きながら握手のために手を差し出した。
「……初めての依頼にはちょうどいいかなと思って参加したんだけど、どうなんだろうね」
ロジェ・オデュロー(ka3586)が苦笑混じりに呟く。
彼は集落から借り受けるものを纏めており、更に森の広さや地形も詳しく聞こうと考えていた。
「情報は多ければ多いほど、こちらに有利になるだろうし、念のためにロープを準備してきたけど、出来ればもっと借りておきたいね」
頷きながらロジェは必要な物を更に書き出していく。
「近隣に被害が出ていないのに対峙するというのは心が痛みますが、致し方ありませんね」
ジーク・ヴュラード(ka3589)が小さく呟く。
「被害が出てからでは遅いですし、急ぎましょう」
ジークの言葉に「そうだな」とカルス(ka3647)が言葉を返す。
「楽な仕事ってワケでもなさそうだしな。何か食いモン持ってくりゃ良かったな、頼むから仕事中には鳴るなよ、俺の腹」
カルスは自分のお腹を擦る。
「悪天候だと聞いたが、私にとっては良い天気に思えるがな、そう悪い気分でもないぞ」
ストゥール(ka3669)は少し楽しげに言葉を漏らした。
「不利な状況ではあるが、それは相手にとっても同じ事。そう悲観する事はあるまい」
「確かにストゥールさんの言う通りですね、雑魔も雨風に強いわけではないでしょうし」
ストゥールの言葉に、ジークが頷きながら答える。
「とりあえず、先に集落に行って必要な物を借りたりするんだよね? だったら急ごうよ」
ミノアが呟き、ハンター達は雑魔が闊歩する森へと向かい始めたのだった――……。
●捜索開始
集落に立ち寄り、それぞれが欲する物を借りた後、ハンター達は4つの班に分かれて行動する作戦を立てていた。
雑魔の場所が分からない以上、団体で行動するより東西南北にわかれて行動した方がいい、とハンター達は考えたのだろう。
東……ロジェ、ジーク。
西……龍崎、クローディア。
南……ミノア、屋外。
北……カルス、ストゥール。
「一応、集落の奴らには俺達が戻るまで外出は控えるように頼んできた。この雨風だし、好きで出掛ける奴はいないと信じたいが……」
龍崎が呟き、ハンター達はそれぞれ決めた場所から森への侵入を試みた。
※東班
「一応、集落の方でもロープを余分に借りてきたよ。本当は燃料も余分にあれば良かったのだけど、集落の人達も楽な生活じゃないみたいで無理にとは言えなかったよ」
ロジェは苦笑しながら、借りてきたロープをジークに見せる。
ジークとロジェは古い仲間らしく、お互いのクセなどもわかっているため連携を取りやすい。
「この悪天候の中ではランタンが目立ってしまいますね、まぁ、好戦的なようだしあまり問題にはならないでしょう」
ジークは持っているランタンを見ながら呟く。
「雨でほとんど消されているけど、足跡らしき物が残っているね、しかもまだ真新しい」
ロジェが足元を見ながら、ジークも足元をランタンで照らしながら見つめる。
すると、そこには消えかけているけど確かに獣の足跡のような痕跡が僅かに残されていた。
「他の班の皆さんに連絡をお願いしてもいいですか? その間の警戒は私がしっかりしますから」
「そうだね、他の班の皆も何かを見つけているかもしれないし……」
ジークの言葉に、ロジェは頷きながら『トランシーバー』を手にした。
※西班
「狩人達から話を聞いて、森の大まかな地図を作って来たんだが……こうも激しい雨風だと、地図通りに歩いているのかも分からなくなりそうだな」
龍崎がため息を吐きながら、自作した地図を見る。
その地図には雑魔の目撃場所、そこまでの道を書きこんであり、最初に雑魔が目撃された場所に近いのは龍崎とクローディアの西班だった。
「森そのものは大した広さはないみたいだ、4つの班に分かれて捜索すれば探すのは容易いな」
叩きつけるような雨の音を聞きながら、クローディアがポツリと呟く。
「雑魔と遭遇したら馬は逃がすべきだろうか、まだ犠牲者が出ていないのに馬の犠牲が出たら冗談にもならないだろうし」
「そうだな、戦闘時にも馬を守りながら戦うのは厳しいだろうからな」
クローディアの言葉に頷きながら、龍崎が言葉を返す。
その時、森の北側からカルスの声が僅かに聞こえてくる。
「龍崎殿、今のは……」
「あぁ、どうやら北側に雑魔がいるらしいな、急ごう」
ふたりは馬から降りて、カルスの声が聞こえた方へと向かって走り出した。
※南側
「集落で生肉を貰って来たけど、この雨風の中で雑魔に匂いが届くかな?」
ミノアは苦笑しながら、手に持っている生肉が入った袋を見つめて呟く。
「どうでしょうね……匂いが届くのを祈るのみですが……それにしても何故雑魔が発生したのか、雑魔は何を狙って森に潜んでいるんでしょうか」
屋外がため息混じりに呟く。
「さぁ、単にご飯を探しに来ただけなのかもしれないし、他に理由があるかもしれない。向こうがこっちの事を分からないように、こっちも分かんない事ばかりだからね~」
屋外の言葉にミノアが苦笑しながら答える。
「もしかしたらこの雨だって、雑魔が何らかの原因を担っているかもしれないし……まぁ、これは考えすぎの可能性が大きいけどね」
「確かに、普通では考えられないくらいの雨風ですからね、ですが気候を操る雑魔がいるとなれば、余計にこちらの立場が不利になりますね」
「可能性の1つだから、真剣に考えなくてもいいって。それより何か痕跡がある? 木に爪痕でもないかなって見てるんだけど、それらしいのがまったくないんだよね」
ミノアがため息を吐く。彼女は雑魔にも知能があるかもしれないと考え、最初から戦闘を仕掛けるつもりはないらしい。もちろん場合によっては、なのだけれど。
「……ミノア殿? 微かに声が聞こえました、あれは……カルス殿の声かと!」
屋外の言葉にふたりは互いに顔を見合わせ、カルス達のいる北側へと向かい始めた。
※北側
「風下から向かってくるのがよくある話ではあるが、このように吹き荒れていては大して当てにはならんかもしれんな」
ランタンを腰にぶらさげ、ストゥールが呟く。
「この悪天候が、相手にとっても不利になると思いたいがな……」
カルスは空から降ってくる雨を見上げる。
雨具などをしていても、顔に雨が叩きつけてきて、視界が悪いことこの上ない。
「……おい、これを見てくれ」
カルスはピタリと歩みを止め、ストゥールを呼ぶ。
「どうかしたのか?」
ストゥールが訝しげな表情を見せてカルスに近寄ると――……。
「……っ」
カルスが理由を言うまでもなく、ストゥールには彼の言いたい事が分かってしまった。
カルスの足元にあったのは、無残に食い散らかされた動物の姿。
恐らくはこの森に生息している動物なのだろうが、まるで今さっき食い散らかされたかのようにしてある。
地面に倒れている動物の姿を見て、カルスもストゥールも周りへの警戒を強めた。
「そこか……っ!」
ストゥールが『特殊強化鋼製ワイヤーウィップ』で攻撃を仕掛ける。
すると唸り声をあげながら、カルスとストゥールのふたりを見る狼型雑魔の姿があった――……。
「ちっ、バレちまったなら仕方ねぇ……声を出してみれば、他の奴らに聞こえるか……? 試してみる価値はあるかもな」
カルスは小さく舌打ちをしながら、雑魔を発見した、と大きな声で叫んだのだった。
●合流、戦闘開始!
カルスの声を聞いた者、連絡中に雑魔発見の情報を聞いた者、それぞれがカルスとストゥールのいる北側へとやって来ていた。
「この雨の中を逃げられたら適わんな」
龍崎は小さな声で呟き『特殊強化鋼製ワイヤーウィップ』で雑魔の足部分を狙い、ワイヤーを巻きつける事を狙う。
「引っ掛かりが出来れば走りづらいだろうからな、上手く絡めればこちらが有利になる」
だが視界の悪さから上手く狙う事が出来ない。
「戦闘か、この状況じゃ仕方ないよね……キミの肉、食べられるようなら晩御飯に持って帰らせてもらうね」
ミノアは『クレイモア』を構え、雑魔に言葉を投げかける。
もちろんその言葉の意味は雑魔に届いていないのだけれど、それでもミノアには関係なかった。
「これ以上、雨に打たれ続けるとさすがに風邪を引いてしまいそうだ、早々に終わらせさせてもらおう」
クローディアは『ヴァイブレードナイフ』を構え、スキルを使用しながら雑魔に攻撃を仕掛ける。
彼女の攻撃は雑魔に当たったのだが、攻撃直後、泥濘で足を滑らせてしまい、雑魔がクローディアに噛みつこうと鋭い牙を見せた。
「クローディア殿! 危ない!」
だけど、雑魔の牙がクローディアに届く寸前、屋外の攻撃が雑魔の動きを止めた。
そして、追撃として『部位狙い』を使用して攻撃を仕掛ける。
「これから『マジックアロー』を放つよ、5秒後に雑魔から離れて」
ロジェが前衛で戦うハンター達に言葉を投げかけ、きっちり5秒後に『集中』を使用した『マジックアロー』を繰り出した。
ロジェの攻撃で雑魔がよろめいた僅かな隙を突いて、ジークが『アックスブレード ツヴァイシュトースツァーン』を振り上げ、強力な一撃を繰り出す。
「雑魔さんよぅ、出来れば止まっててもらえると助かるぜ、お互いすぐ楽になれるだろ?」
カルスは『和弓 鳴弦』を構え、ひゅん、と風切音を響かせながら雑魔に矢を放つ。
「ふん……」
ストゥールは前衛に『攻性強化』を行い、自らに『防性強化』を使用する。
そして、いつでも追撃出来るように『魔導拳銃 ペンタグラム』を雑魔に向けて構えている。
「いくよ」
ストゥールは短く呟いた後『機導砲』で雑魔を攻撃する。
だが、その攻撃は外れてしまう――……が、これもストゥールの狙い通りだ。
「よし!」
ストゥールの攻撃を回避した雑魔の足を、龍崎のワイヤーウィップが絡め取り、雑魔は自由に動く事が出来なくなった。
「自分の安全を優先して時間を掛けるわけにはいかないからな」
龍崎は低く呟いた後、ワイヤーウィップを強く引いて、雑魔を引き寄せ『ヴァイブレードナイフ』を雑魔の身体に突きたてる。
「ちっ、雨のせいで狙いが外れた。本当は脳天に突き立てるはずだったんだけどな」
龍崎は舌打ちをした後、雑魔から離れる。
彼が離れた瞬間にロジェが『集中』と『マジックアロー』を、カルスが矢を放ち、雑魔の動きを止めた所で前衛者達の総攻撃で無事に雑魔を退治する事が出来たのだった――……。
●戦いの後
雑魔を退治した事を集落に告げに行くと、予め屋外が頼んでいた風呂の準備が出来ていると住人から言われる。
「こちらの我儘を聞いていただき、ありがとうございます。何か人手がいる仕事がありましたら、ぜひ自分が手伝いますので……!」
屋外は住人に何度も感謝の言葉を口にしながら、深く頭を下げている。
「確かに冷え切っているからな、好意に甘えさせてもらうとしようか」
「……雑魔の死体、とても食べられるものじゃなかったから、この借り受けた生肉貰っていいかなぁ、今日の晩御飯に……」
ミノアはお腹を擦りながら、苦笑して呟く。
「雨の中の露天風呂とかあればいいんだがな、いや、それじゃ身体を温める意味がないか。雨風の音を聞きながら風呂に入るというのも、なかなか悪くはないだろうな」
ストゥールは腕を組みながら、それを想像しているのかとても楽しそうな笑みを浮かべる。
「風呂に入らせてもらった後、早く帰りたいな……俺の腹がもちそうにないんだよ」
何度も『ぐぅ』と鳴るお腹を擦りながら、カルスが呟いた。
「勝って兜の緒を締めろとは言いますが、流石に仕事も終わったので少しくらい気を抜いても大丈夫でしょうか、初依頼だったので私も緊張続きでして……」
きっと兜の中では苦笑しているのだろう、そんな雰囲気が伺える声色でジークが話した。
「そうだ、お風呂のお礼ってわけでもないけど帰りに演奏をさせてもらおうかな。雨風の憂鬱さ、雑魔発生した事で気落ちした心を僕の演奏で癒されてくれると嬉しいんだけど」
ロジェが恭しく頭を下げながら呟く。
住人は『演奏』という言葉に興味を惹かれたらしく「ぜひ聞かせてください」と言っている人もいた。
「私は風呂から上がった時の飲み物でも準備しておこう、あれだけ慌ただしい依頼だったのだから気を抜く所では抜かねばな」
クローディアが呟き、それぞれハンターは冷えた身体を温めるために順番にお風呂へと向かい始めたのだった――……。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 7人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/18 00:27:41 |
|
![]() |
相談卓 屋外(ka3530) 人間(リアルブルー)|25才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/12/22 20:55:34 |