ゲスト
(ka0000)
酒場の用心棒
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/06 09:00
- 完成日
- 2018/07/08 00:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●酒場は今日も大賑わい
ネオン煌くリアルブルーの夜とは違い、クリムゾンウエストの夜は多くの店が閉まるのが普通だ。
しかしそうでない店もある。
夕飯時や深夜帯がかき入れ時である酒場などが良い例だ。
この街の酒場もまた、例に漏れず営業をしていた。
客層は大人が多いが、家族連れの姿もちらほら見える。
街自体の治安が良いせいだろう。家族連れでも安心して来られる条件が揃っているのだ。
また、酒場側も子供向けのメニューや飲み物を用意して、客のニーズにきちんと答えていることも、理由としてあるかもしれない。
家族連れの他にも街の兵士から労働者、商人、中にはハンターまで来ることもあって、酒場は活気に溢れて賑わっている。
「はい、ビールお持ちしました!」
客の間をすり抜けて、エプロンをつけたウェイトレスの少女がビールを運んでいる。
「スパゲッティのお客様、ただいまお持ちいたします!」
ウェイトレスの少女が下がるのと入れ替わりに、ウェイターの少年が料理が盛られた皿を持ってホールに出ていく。
この酒場は、働く従業員が若いことでも有名だった。
酒場を切り盛りし料理を提供しているのは老夫婦だが、ホールで働くウェイターやウェイトレスは皆若年だ。成人していない者が多い。
彼ら彼女らは、多くが孤児である。
老夫婦は人が良く、行く当てが無い孤児を引き取ってはこうして従業員として面倒を見ているのだ。
そのため、老夫婦は従業員たちにとても慕われていた。
●迷惑な酔客
多くの利用客は善良な客だが、中には困った客も存在する。
また、普段は善良な客でも、酒が入ると迷惑な客に変貌する者もいる。
「おう、嬢ちゃん今日もいいケツしてんなぁ!」
「きゃっ、止めてください!」
赤ら顔の鉱山労働者らしき男が側を通り過ぎたウェイトレスの少女の尻を撫でる。
悲鳴を漏らしつつも、少女は仕事中なので流して料理の配膳を続ける。
繁盛しているのでやらなければならないことが多く、これくらいのことでいちいち騒いではいられないのだ。
いや、される側の身としては、流したくないのが本音ではあるのだが。
「お客様、迷惑行為はお止めください」
「まーまー坊主、固いこというなって!」
やんわりとウェイターの少年が酔客を咎めるものの、酔って気が大きくなっている酔客に堪えた様子はない。
少年の方も仕事が忙しいため、一度注意しただけで後は配膳や座席への案内といった業務にすぐ戻っていた。
●依頼を出そう
休憩時間になった少女は、控え室に引っ込むと鬱憤を晴らすかのように叫んだ。
「あーもう、サイアク! あのセクハラ親父め!」
先ほど尻を撫でられたウェイトレスの少女で、どうやら客の前だからと抑えていた不満が爆発したらしい。
それでもホールにまで響かない程度の声量に抑えているあたり、まだ理性が残っている。
「事前に止められなくてごめんよ」
「おやっさんのせいじゃないよ。こうして雇ってくれただけでも感謝してるんだよ、あたしたち」
調理場から顔を出した老コックが謝ってくるのを、少女は笑って流す。
「でも心配だよ。最近あんな客が増えてきた。酒が入っていると逆上する客も多くなるし、対策が必要かねぇ」
「一度、ビシっと言ってみるのはどう?」
「迷惑客の中にはハンターもいるしねぇ。酒が入ると気が大きくなっちまうのか、困ったもんだ」
「って、おやっさん調理に戻らないと不味くない?」
「おっとそうだった。それじゃあ戻るよ。休憩は多めに取っていいからね。ほとぼりが冷めた頃に戻っておいで」
老コックが戻り、一人になった少女は何かを思案するかのように俯き、何か閃いたかのように表情を輝かせる。
「そうだ! 目には目を、歯には歯をっていうじゃない! ハンターさんに用心棒として来てもらえばいいんだ!」
良い考えだ! とばかりに少女は再びホールへと飛び出していった。
●ハンターズソサエティ
次の日、少女は本来営業時間ではない昼の仕込みの時間を利用して、ある人物を酒場に招いていた。
「はあ。依頼を申し込みたい、ですか。構いませんが、それならこのような形を取らずとも、直接出向けばよろしいのではないでしょうか」
酒場に招かれ、昼食を振る舞われていたのは普段ハンターズソサエティで受付嬢として働いているうさんくさい笑顔が特徴的な女、ジェーン・ドゥであった。
今日もハンターズソサエティは通常営業中だが、ジェーンはオフの日である。なので今日ばかりは受付嬢と呼ぶのは不適切なのかもしれないが、いつも通りなのでやはりジェーンは受付嬢然としていた。
「そうなんですけど、迷惑客にはハンターもいるから、うちが依頼を出したって知られたら逆恨みされそうで。何とかなりませんか?」
「まあ、美味しいお昼を奢ってもらったことですし、上司に掛け合ってみましょう。酒場の治安を向上するためみたいな口実で、複数の酒場に同時に用心棒を派遣するような形で紛れさせてしまえば、依頼の出所を疑われることもないでしょうし」
「やった! そうだ、デザートもいかがですか? うちのデザート、美味しいって評判なんですよ!」
「ぜひいただきましょう」
いそいそとナプキンで口元を拭ったジェーンは、出されたデザートに舌鼓を打った。
ネオン煌くリアルブルーの夜とは違い、クリムゾンウエストの夜は多くの店が閉まるのが普通だ。
しかしそうでない店もある。
夕飯時や深夜帯がかき入れ時である酒場などが良い例だ。
この街の酒場もまた、例に漏れず営業をしていた。
客層は大人が多いが、家族連れの姿もちらほら見える。
街自体の治安が良いせいだろう。家族連れでも安心して来られる条件が揃っているのだ。
また、酒場側も子供向けのメニューや飲み物を用意して、客のニーズにきちんと答えていることも、理由としてあるかもしれない。
家族連れの他にも街の兵士から労働者、商人、中にはハンターまで来ることもあって、酒場は活気に溢れて賑わっている。
「はい、ビールお持ちしました!」
客の間をすり抜けて、エプロンをつけたウェイトレスの少女がビールを運んでいる。
「スパゲッティのお客様、ただいまお持ちいたします!」
ウェイトレスの少女が下がるのと入れ替わりに、ウェイターの少年が料理が盛られた皿を持ってホールに出ていく。
この酒場は、働く従業員が若いことでも有名だった。
酒場を切り盛りし料理を提供しているのは老夫婦だが、ホールで働くウェイターやウェイトレスは皆若年だ。成人していない者が多い。
彼ら彼女らは、多くが孤児である。
老夫婦は人が良く、行く当てが無い孤児を引き取ってはこうして従業員として面倒を見ているのだ。
そのため、老夫婦は従業員たちにとても慕われていた。
●迷惑な酔客
多くの利用客は善良な客だが、中には困った客も存在する。
また、普段は善良な客でも、酒が入ると迷惑な客に変貌する者もいる。
「おう、嬢ちゃん今日もいいケツしてんなぁ!」
「きゃっ、止めてください!」
赤ら顔の鉱山労働者らしき男が側を通り過ぎたウェイトレスの少女の尻を撫でる。
悲鳴を漏らしつつも、少女は仕事中なので流して料理の配膳を続ける。
繁盛しているのでやらなければならないことが多く、これくらいのことでいちいち騒いではいられないのだ。
いや、される側の身としては、流したくないのが本音ではあるのだが。
「お客様、迷惑行為はお止めください」
「まーまー坊主、固いこというなって!」
やんわりとウェイターの少年が酔客を咎めるものの、酔って気が大きくなっている酔客に堪えた様子はない。
少年の方も仕事が忙しいため、一度注意しただけで後は配膳や座席への案内といった業務にすぐ戻っていた。
●依頼を出そう
休憩時間になった少女は、控え室に引っ込むと鬱憤を晴らすかのように叫んだ。
「あーもう、サイアク! あのセクハラ親父め!」
先ほど尻を撫でられたウェイトレスの少女で、どうやら客の前だからと抑えていた不満が爆発したらしい。
それでもホールにまで響かない程度の声量に抑えているあたり、まだ理性が残っている。
「事前に止められなくてごめんよ」
「おやっさんのせいじゃないよ。こうして雇ってくれただけでも感謝してるんだよ、あたしたち」
調理場から顔を出した老コックが謝ってくるのを、少女は笑って流す。
「でも心配だよ。最近あんな客が増えてきた。酒が入っていると逆上する客も多くなるし、対策が必要かねぇ」
「一度、ビシっと言ってみるのはどう?」
「迷惑客の中にはハンターもいるしねぇ。酒が入ると気が大きくなっちまうのか、困ったもんだ」
「って、おやっさん調理に戻らないと不味くない?」
「おっとそうだった。それじゃあ戻るよ。休憩は多めに取っていいからね。ほとぼりが冷めた頃に戻っておいで」
老コックが戻り、一人になった少女は何かを思案するかのように俯き、何か閃いたかのように表情を輝かせる。
「そうだ! 目には目を、歯には歯をっていうじゃない! ハンターさんに用心棒として来てもらえばいいんだ!」
良い考えだ! とばかりに少女は再びホールへと飛び出していった。
●ハンターズソサエティ
次の日、少女は本来営業時間ではない昼の仕込みの時間を利用して、ある人物を酒場に招いていた。
「はあ。依頼を申し込みたい、ですか。構いませんが、それならこのような形を取らずとも、直接出向けばよろしいのではないでしょうか」
酒場に招かれ、昼食を振る舞われていたのは普段ハンターズソサエティで受付嬢として働いているうさんくさい笑顔が特徴的な女、ジェーン・ドゥであった。
今日もハンターズソサエティは通常営業中だが、ジェーンはオフの日である。なので今日ばかりは受付嬢と呼ぶのは不適切なのかもしれないが、いつも通りなのでやはりジェーンは受付嬢然としていた。
「そうなんですけど、迷惑客にはハンターもいるから、うちが依頼を出したって知られたら逆恨みされそうで。何とかなりませんか?」
「まあ、美味しいお昼を奢ってもらったことですし、上司に掛け合ってみましょう。酒場の治安を向上するためみたいな口実で、複数の酒場に同時に用心棒を派遣するような形で紛れさせてしまえば、依頼の出所を疑われることもないでしょうし」
「やった! そうだ、デザートもいかがですか? うちのデザート、美味しいって評判なんですよ!」
「ぜひいただきましょう」
いそいそとナプキンで口元を拭ったジェーンは、出されたデザートに舌鼓を打った。
リプレイ本文
●営業開始まで
ハンターたちは酒場の従業員たちを交えて情報共有のためのミーティングを行った。
共有した情報は、主に騒ぎを起こすと思われる客の特徴と、時間帯による客層の具体的な変化である。
看板娘がいうには、ディナータイムが過ぎるまでは酒場といっても酒も提供するレストランみたいな雰囲気で、本格的に酒場らしさが出てくるのはそれ以降らしい。
そうなると客層がガラッと変わり、そこからは毎日割としっちゃかめっちゃかでカオスな雰囲気になるという。
本来二つ用意されていたテーブル席は、客に扮するのが三人ということで一つになった。
代わりに、従業員に扮する者たちのために休憩席が本来の従業員のものとは別に五席設けられている。
ミーティングも無事終了し、開店までの時間をハンターたちは思い思いに過ごした。
『似合う? 似合う?』
酒を両手に、着ているウェイトレス衣装をひらりと舞わせ、チャーミングにウインクしつつ、エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が筆談で トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)に感想を求めた。
「お? ああ、似合うんじゃないか?」
答えながらも、トライフの意識はこれから味わえるであろうタダ飯タダ酒の方に意識が行っており、気がそぞろになっている。
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は看板娘に「酔ってセクハラしてくるお客さんに注意してね」と心配されている。
「酒が入ると気が緩むからの。仕方なし」
待機用のテーブル席についているジャック・エルギン(ka1522)はさっそく何の料理を頼もうか吟味している。
「悪意がある訳じゃねえんだろうが、俺たちハンターが呼ばれる事態になるとは悪ノリが過ぎたな。ま、美味い酒と可愛いウェイトレスのいる店のために働くか」
看板娘やエヴァが着ているのと同じウェイトレス服姿で、サクラ・エルフリード(ka2598)は一つ一つテーブルを拭きながらため息をついた。
「ただ酒をいっぱい飲める予定だったのに……どうしてこうなった、です……。お酒、たくさん飲まないようにと知り合いに釘を刺されまして……。何故でしょう……」
残業をしない主義のエラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は効率よく仕事をするための段取り確認を欠かさない。
「……ふむ。危険人物のチェックはこのくらいでいいでしょう。時間までまだ少しありますし、今のうちに注文するものを考えておきましょうか」
星野 ハナ(ka5852)は自前のエプロンドレス姿が妙に似合っていて、見せパンすら着用する極度なぶりっ子振りも、客商売としては悪いものではなく、そつなく接客をこなすことができるだろう。
「ゴールデンタイムの太客、違った家族客を逃がさないよう頑張りますぅ。リピーターどんと来いですぅ」
ガードマン兼用のメイド型オートマトンであるフィロ(ka6966)は姿勢よく目を瞑ってホールの隅に立ち、静かに行動をシミュレートしながら開店の時を待っている。
「混んで来れば崩れてしまいますが、それでもある程度座席コントロールをすることでご家族様や商人様の不快は解消できるのではないかと思います」
やがて開店時間になって、客が入ってきた。
さあ、依頼の始まりだ!
●営業開始から
持ち前の敏捷さの賜物だろうか。
客を出迎えにフィロがしずしずと、しかし速い足取りで向かい、それとほぼ同時にジャックがウェイトレスを呼ぶ。
やってきたのはハナだった。
「んじゃビールと何か肉を焼いたヤツ。ガッツリ食えるのが良いな!」
同じ依頼を受けたハンターであることなどなかったかのように、ジャックとハナの間で注文のやり取りが行われる。
何度も呼びつけるのも何なので、トライフとエラも同時に注文を行う。
注文したのはエラが先だった。
「では私は酒とつまみになりそうな軽食を、お任せでお願いします」
「俺も同じく酒とつまみを適当にくれ」
続いてクライフが注文すると、ハナは名前の通り華のある笑顔で復唱をして、厨房にオーダーを伝える。
出てきたハナはまた別のテーブルに呼ばれて笑顔で向かっていき、そこでも注文を取れたようで、再び厨房の入り口でコックの老夫婦に向けて声を張り上げた。
「二番テーブルさんにぃ、本日のお勧め三つ入りましたぁ」
その間にフィロもまた次々に客への応対を進めていき、今もやってきた家族客に穏やかな笑顔で接している。
「いらっしゃいませ、何人様でしょうか。四名様ですね? それではこちらの窓際のテーブル席へどうぞ」
両親らしき男女と子ども二人の親子連れを、フィロは先導して進む。
やがてジャック、トライフ、エラの三名の下へ注文した料理と飲み物が運ばれてくる。
ジャックとトライフは酒だが、エラは炭酸水だった。
エラは注文の内容に関わらず飲み物はそうするように、酒場側との打ち合わせで事前に決めていたのだ。
ちなみにジャックに出されたのは分厚い肉を焼いた肉料理で、本人の希望通りもはや酒のつまみではなく夕食の範疇に入りそうな勢いだ。セットでパンもついてきた。そういう決まりらしい。
トライフとエラにはそれぞれ酒と何種類かのつまみ。どのつまみも量としてはそれほどでもなく、ちょうど良い程度になっている。
サクラもまた親子連れを相手にしていた。
彼女の場合は、母親らしき女性と子ども三人だ。
母親と子ども二人はすんなりと注文が決まったのだが、残る一人が中々決まらない。
「ん、どうしましたか……? 何か食べたいものでもありますか……? メニュー外のものでも、シェフに確認を取ってOKが出れば作れると思いますよ」
事前に酒場側とは打ち合わせているので、これくらいのアドリブは許されている。
というかシェフである老夫婦自身がおおらかで、一応メニューはあるものの酒場にある材料で作れるものならば何でも作ってしまうのだ。
さらに家族連れ用のメニューまで取り揃えているのだから、この程度で怒られるわけがない。むしろよくやってくれたと褒められるだろう。
子どもは最終的にお子様ランチを注文した。メニューにある料理だが、ケチャップ味のチキンライスをカレー味に変えることになった。どうやらそれで悩んでいたようだ。
やがて次々に料理が出来上がり、看板娘や元からいる従業員たちを含め、ウェイトレスに扮したハンターたちが料理を客の下へ持っていく。
開店から時間が経ち、ディナータイムのピークになると客の出入りが激しくなる。
多くは親子連れと商人だが、その中に、労働者と兵士の姿が一人ずつあった。
しかも、混んでいて相席にせざるを得なかった。
最悪の組み合わせである。
エヴァが急いで注文を取りに向かう。
注文は労働者が「とりあえず生。大ジョッキで」で、兵士は「巡回中の休憩なのでアルコールでないものを」だった。
愛想笑いを浮かべながらエヴァは悟る。
(あ、これガチでやばいやつだ……。お酒を出すペースはゆっくりにしてもらおう。お冷やもこまめに継ぎ足して時間を稼がなきゃ)
労働者の悪酔いを少しでも防げるように祈りつつ厨房に注文を伝え、エヴァは同時に考えた対策も提案しておく。
その一部始終を見ていた看板娘がすれ違い様に親指を立ててグッドサインを出す。どうやら対応は間違っていなかったようだ。
別のテーブルに客を案内した後で、たまたま近くを歩いていたレーヴェが商人らしきグループに呼び止められていた。
どうやら注文らしい。
何やら拘りがあるのか、酒や味付けにうるさく、いちいち注文でこれは濃い味、あれは薄味が美味いんだと指定してくるのを、レーヴェはなるほどなるほど分かりますと適当に相槌を打ちながらオーダーシートに書き留めた。
復唱して間違いがないのを確認すると、さっさと厨房に注文を伝えるため離れていく。
(うむ。面倒な客は適当に話を合わせてスルーするに限る。特に今は兵士もおるし)
そんなこんなで、酒場のディナータイムはハンターたちの見事な対応で穏やかに過ぎていった。
●営業終了まで
ディナータイムを過ぎると、急激に親子連れの姿は少なくなった。
さすがに家族で夕飯を取る時刻としては遅いので当然だ。
入れ替わりに、仕事終わりの独身労働者が一杯引っ掛けに次々と酒場にやってくる。
彼らは手癖が悪く、さっそく看板娘が尻を撫でられて額に青筋を浮かべながら接客していた。
それでも笑顔を崩さないのはさすがのプロ根性である。
彼らは食べ方もよくいえば豪快で、悪くいえば汚く、酒は垂らすし料理は零す。
そしてお前の食い散らかしが俺の料理に入ったどうしてくれる! などと突然相手に難癖をつけ喧嘩を始めるのだ。その癖騒ぎを止めにやってきたウェイトレスには息を合わせてナチュラルにセクハラをする。
「申し訳ありませんが、ここは食事とお酒を楽しむ場所です。喧嘩なら外でやっていただけないでしょうか」
当然喧嘩を収めようとするフィロにも食指を伸ばし、襟首を捕まれ揃って外に放り出された。
放り出された労働者二人はそこでようやくフィロがハンターだと気付き、今度はお前が悪い! と外で喧嘩を始める。
この後の対応に困って振り向くフィロに、看板娘は苦笑して首を横に振る。放っておけということらしい。
ハンターがいることで大人しくなった者もいるが、そうでないものもやはり多く、そのうちの一人にジャックが酒瓶を持ったまま絡み出した。
「オウ、えらく景気良さそうじゃねえか。どうだ一杯。……ところでよ、最近この辺の酒場でウェイトレスを泣かす酷いエロ親父がうろついててな。風紀を乱すってんで俺たちハンターが見回ってるんだが……。おっさんも、そういう輩を見つけたら知らせてくれよな」
赤ら顔でヒックとしゃっくりを漏らしつつ、労働者のグラスに酒を注ぐジャックだが、その目は笑っていない。
「平和的に」釘を刺された労働者は、先ほどとは打って変わって行儀よくなり、若干青い顔でジャックに奢られた酒をあおった。
どうやらセクハラされるウェイトレスを一人少なくすることに成功したようだ。
もっとも、今夜はウェイトレスの皮を被ったハンターがいるため、どちらにせよ困ったことになるのは労働者の方だったろうが。
というか実際そうなっている。
ハナはそのぶりっ子な接客とそつのない働き方から労働者たちに大人気で、テーブルの間を歩くだけでもはやそれが礼儀であるかのように手が伸ばされている。
運んでいる料理を絶対に零さず、伸ばされた手はにこやかに微笑んだままお盆や肘・膝で受けるのだから、さすがという他なかった。
「あれぇ、どうなさいましたぁ? ……あんまりオイタすると畳むぞ、ワレェ?」
顔を近づけたハナに瞬間的にピンポイントで殺気放ちつつにこやかに凄まれれば、大抵の労働者はそれで大人しくなる。
中には「それがいい!」と続行してハナの式神に外に放り出される者もいたが。
酒場で式神が出るという珍事も多くの労働者にとっては酒の肴に過ぎず、もっとやれと囃し立てる始末。
「お客様、騒ぎは程々にしてくださいね……? こちらのお酒、美味しいですよ……。ささ、ぐいっと一杯いってください……。一杯と言わず沢山……」
自分にセクハラしてきた労働者を笑顔のまま表情を変えずに次々酔い潰しているサクラの前後は対照的で、サクラの背後の労働者たちは軒並み死屍累々となっていた。
全員セクハラ野郎で確定しているため、彼らは看板娘を始めとする従業員たちに酒代を支払わされ粛々と外へ叩き出されていった。
労働者に混じって見知らぬハンターも客としているが、同業者に気付いてただ単純に酒と食事に楽しむことにしたようで、知らぬ存ぜぬを貫いている者がほとんどだ。
一人「美人になら飲み潰されてもいい!」と血迷った見知らぬハンターが幸せそうな笑顔で気絶しているが、それだけである。
そしてエラはというと、傅かれた女王のように労働者に持ち上げられ。酒を勧められては飲むのを繰り返していた。
客層が変化し労働者が多くなるに従い飛び交い始めるナイフやフォークを次々手でキャッチして本格的な騒ぎになる前に収めてみせたのがいけなかったのか、それからあちこちから下心満載に酒を勧められるようになった。
こっそり魔法で酒を水に変えてから飲むことで対処していたものの、早くも魔法を撃ち切ってしまいそうである。
(そろそろ頃合か)
最初の方はいちいちホール中を歩き回って外に叩き出していたのだが、酒場内の雰囲気に猥雑さが増してきたことに気付き対応を変化させる必要があると感じたエラは、看板娘と連携し、席を変え彼らを纏めて隔離しておくことで対処した。
こうして他に被害が出ないようにしたうえで好きにやらせる。
やり過ぎた輩をやむを得ず外に叩き出す場合もうっかり殺してしまわないように、エラは優しく優しく襟首を掴んだり腕を捻り上げるだけに留めた。
「良い尻してるじゃ……いや、悪い。強く生きr……がぁぁぁぁぁっ!?」
『セクハラ、ダメ、絶対』
何やらトライフとエヴァが小芝居をしている。
身体を張って見せしめにセクハラするとこうなるよと表現しているのだが、見物する労働者たちを喜ばせる行為にしかなっていない。
しかし、トライフは柄の悪い労働者たちとも意気投合して飲み比べしたりして結果的に騒ぎを収めているし、エヴァも筆談で生かした絵心で性質の悪い要注意人物の人相を接客側に周知させている。
何だかんだで二人とも対応を問題なくこなしており、この二人はこのままでも上手くやるだろう。
トライフは荒事には参加できないが、それでも相手の懐に入るのが上手いので、平和的に終わらせることができている。
逆にトライフができない荒事をエヴァが受け持つことで、二人はバランスが取れていた。
何だかんだで息が合ってよくできたコンビである。
さすが腐れ縁の友人同士なだけある。
レーヴェは小さいなりが影響してか、労働者たちにマスコットキャラ的扱いを受けている。
酔い潰そうが外に叩き出そうが、何をしても喜ばれるので、ハンターや静かにしている一般客への対応に回っていた。
「騒がしくてすまんの。ほれ、これは私の詫びじゃし。遠慮するな、飲め」
先ほどから一人で黙々と酒を飲むハンターたちの間を回り、酒を酌み交わしている。
なるべく巻き込まないように配慮しているということを、態度で伝えているのだ。
明け方の閉店間際になると、デザートを注文して美味しそうに食べながら報告書を書いていたのはご愛嬌だ。
客もまばらになり、夜中のどんちゃん騒ぎは見る影もなくなり、残っていた客も次々に帰っていく。
そして、最後の一人が出て行き、この日の営業が終わった。
こうして致命的な問題も起きず、ハンターたちの仕事は無事終了したのである。
ハンターたちは酒場の従業員たちを交えて情報共有のためのミーティングを行った。
共有した情報は、主に騒ぎを起こすと思われる客の特徴と、時間帯による客層の具体的な変化である。
看板娘がいうには、ディナータイムが過ぎるまでは酒場といっても酒も提供するレストランみたいな雰囲気で、本格的に酒場らしさが出てくるのはそれ以降らしい。
そうなると客層がガラッと変わり、そこからは毎日割としっちゃかめっちゃかでカオスな雰囲気になるという。
本来二つ用意されていたテーブル席は、客に扮するのが三人ということで一つになった。
代わりに、従業員に扮する者たちのために休憩席が本来の従業員のものとは別に五席設けられている。
ミーティングも無事終了し、開店までの時間をハンターたちは思い思いに過ごした。
『似合う? 似合う?』
酒を両手に、着ているウェイトレス衣装をひらりと舞わせ、チャーミングにウインクしつつ、エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が筆談で トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)に感想を求めた。
「お? ああ、似合うんじゃないか?」
答えながらも、トライフの意識はこれから味わえるであろうタダ飯タダ酒の方に意識が行っており、気がそぞろになっている。
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は看板娘に「酔ってセクハラしてくるお客さんに注意してね」と心配されている。
「酒が入ると気が緩むからの。仕方なし」
待機用のテーブル席についているジャック・エルギン(ka1522)はさっそく何の料理を頼もうか吟味している。
「悪意がある訳じゃねえんだろうが、俺たちハンターが呼ばれる事態になるとは悪ノリが過ぎたな。ま、美味い酒と可愛いウェイトレスのいる店のために働くか」
看板娘やエヴァが着ているのと同じウェイトレス服姿で、サクラ・エルフリード(ka2598)は一つ一つテーブルを拭きながらため息をついた。
「ただ酒をいっぱい飲める予定だったのに……どうしてこうなった、です……。お酒、たくさん飲まないようにと知り合いに釘を刺されまして……。何故でしょう……」
残業をしない主義のエラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は効率よく仕事をするための段取り確認を欠かさない。
「……ふむ。危険人物のチェックはこのくらいでいいでしょう。時間までまだ少しありますし、今のうちに注文するものを考えておきましょうか」
星野 ハナ(ka5852)は自前のエプロンドレス姿が妙に似合っていて、見せパンすら着用する極度なぶりっ子振りも、客商売としては悪いものではなく、そつなく接客をこなすことができるだろう。
「ゴールデンタイムの太客、違った家族客を逃がさないよう頑張りますぅ。リピーターどんと来いですぅ」
ガードマン兼用のメイド型オートマトンであるフィロ(ka6966)は姿勢よく目を瞑ってホールの隅に立ち、静かに行動をシミュレートしながら開店の時を待っている。
「混んで来れば崩れてしまいますが、それでもある程度座席コントロールをすることでご家族様や商人様の不快は解消できるのではないかと思います」
やがて開店時間になって、客が入ってきた。
さあ、依頼の始まりだ!
●営業開始から
持ち前の敏捷さの賜物だろうか。
客を出迎えにフィロがしずしずと、しかし速い足取りで向かい、それとほぼ同時にジャックがウェイトレスを呼ぶ。
やってきたのはハナだった。
「んじゃビールと何か肉を焼いたヤツ。ガッツリ食えるのが良いな!」
同じ依頼を受けたハンターであることなどなかったかのように、ジャックとハナの間で注文のやり取りが行われる。
何度も呼びつけるのも何なので、トライフとエラも同時に注文を行う。
注文したのはエラが先だった。
「では私は酒とつまみになりそうな軽食を、お任せでお願いします」
「俺も同じく酒とつまみを適当にくれ」
続いてクライフが注文すると、ハナは名前の通り華のある笑顔で復唱をして、厨房にオーダーを伝える。
出てきたハナはまた別のテーブルに呼ばれて笑顔で向かっていき、そこでも注文を取れたようで、再び厨房の入り口でコックの老夫婦に向けて声を張り上げた。
「二番テーブルさんにぃ、本日のお勧め三つ入りましたぁ」
その間にフィロもまた次々に客への応対を進めていき、今もやってきた家族客に穏やかな笑顔で接している。
「いらっしゃいませ、何人様でしょうか。四名様ですね? それではこちらの窓際のテーブル席へどうぞ」
両親らしき男女と子ども二人の親子連れを、フィロは先導して進む。
やがてジャック、トライフ、エラの三名の下へ注文した料理と飲み物が運ばれてくる。
ジャックとトライフは酒だが、エラは炭酸水だった。
エラは注文の内容に関わらず飲み物はそうするように、酒場側との打ち合わせで事前に決めていたのだ。
ちなみにジャックに出されたのは分厚い肉を焼いた肉料理で、本人の希望通りもはや酒のつまみではなく夕食の範疇に入りそうな勢いだ。セットでパンもついてきた。そういう決まりらしい。
トライフとエラにはそれぞれ酒と何種類かのつまみ。どのつまみも量としてはそれほどでもなく、ちょうど良い程度になっている。
サクラもまた親子連れを相手にしていた。
彼女の場合は、母親らしき女性と子ども三人だ。
母親と子ども二人はすんなりと注文が決まったのだが、残る一人が中々決まらない。
「ん、どうしましたか……? 何か食べたいものでもありますか……? メニュー外のものでも、シェフに確認を取ってOKが出れば作れると思いますよ」
事前に酒場側とは打ち合わせているので、これくらいのアドリブは許されている。
というかシェフである老夫婦自身がおおらかで、一応メニューはあるものの酒場にある材料で作れるものならば何でも作ってしまうのだ。
さらに家族連れ用のメニューまで取り揃えているのだから、この程度で怒られるわけがない。むしろよくやってくれたと褒められるだろう。
子どもは最終的にお子様ランチを注文した。メニューにある料理だが、ケチャップ味のチキンライスをカレー味に変えることになった。どうやらそれで悩んでいたようだ。
やがて次々に料理が出来上がり、看板娘や元からいる従業員たちを含め、ウェイトレスに扮したハンターたちが料理を客の下へ持っていく。
開店から時間が経ち、ディナータイムのピークになると客の出入りが激しくなる。
多くは親子連れと商人だが、その中に、労働者と兵士の姿が一人ずつあった。
しかも、混んでいて相席にせざるを得なかった。
最悪の組み合わせである。
エヴァが急いで注文を取りに向かう。
注文は労働者が「とりあえず生。大ジョッキで」で、兵士は「巡回中の休憩なのでアルコールでないものを」だった。
愛想笑いを浮かべながらエヴァは悟る。
(あ、これガチでやばいやつだ……。お酒を出すペースはゆっくりにしてもらおう。お冷やもこまめに継ぎ足して時間を稼がなきゃ)
労働者の悪酔いを少しでも防げるように祈りつつ厨房に注文を伝え、エヴァは同時に考えた対策も提案しておく。
その一部始終を見ていた看板娘がすれ違い様に親指を立ててグッドサインを出す。どうやら対応は間違っていなかったようだ。
別のテーブルに客を案内した後で、たまたま近くを歩いていたレーヴェが商人らしきグループに呼び止められていた。
どうやら注文らしい。
何やら拘りがあるのか、酒や味付けにうるさく、いちいち注文でこれは濃い味、あれは薄味が美味いんだと指定してくるのを、レーヴェはなるほどなるほど分かりますと適当に相槌を打ちながらオーダーシートに書き留めた。
復唱して間違いがないのを確認すると、さっさと厨房に注文を伝えるため離れていく。
(うむ。面倒な客は適当に話を合わせてスルーするに限る。特に今は兵士もおるし)
そんなこんなで、酒場のディナータイムはハンターたちの見事な対応で穏やかに過ぎていった。
●営業終了まで
ディナータイムを過ぎると、急激に親子連れの姿は少なくなった。
さすがに家族で夕飯を取る時刻としては遅いので当然だ。
入れ替わりに、仕事終わりの独身労働者が一杯引っ掛けに次々と酒場にやってくる。
彼らは手癖が悪く、さっそく看板娘が尻を撫でられて額に青筋を浮かべながら接客していた。
それでも笑顔を崩さないのはさすがのプロ根性である。
彼らは食べ方もよくいえば豪快で、悪くいえば汚く、酒は垂らすし料理は零す。
そしてお前の食い散らかしが俺の料理に入ったどうしてくれる! などと突然相手に難癖をつけ喧嘩を始めるのだ。その癖騒ぎを止めにやってきたウェイトレスには息を合わせてナチュラルにセクハラをする。
「申し訳ありませんが、ここは食事とお酒を楽しむ場所です。喧嘩なら外でやっていただけないでしょうか」
当然喧嘩を収めようとするフィロにも食指を伸ばし、襟首を捕まれ揃って外に放り出された。
放り出された労働者二人はそこでようやくフィロがハンターだと気付き、今度はお前が悪い! と外で喧嘩を始める。
この後の対応に困って振り向くフィロに、看板娘は苦笑して首を横に振る。放っておけということらしい。
ハンターがいることで大人しくなった者もいるが、そうでないものもやはり多く、そのうちの一人にジャックが酒瓶を持ったまま絡み出した。
「オウ、えらく景気良さそうじゃねえか。どうだ一杯。……ところでよ、最近この辺の酒場でウェイトレスを泣かす酷いエロ親父がうろついててな。風紀を乱すってんで俺たちハンターが見回ってるんだが……。おっさんも、そういう輩を見つけたら知らせてくれよな」
赤ら顔でヒックとしゃっくりを漏らしつつ、労働者のグラスに酒を注ぐジャックだが、その目は笑っていない。
「平和的に」釘を刺された労働者は、先ほどとは打って変わって行儀よくなり、若干青い顔でジャックに奢られた酒をあおった。
どうやらセクハラされるウェイトレスを一人少なくすることに成功したようだ。
もっとも、今夜はウェイトレスの皮を被ったハンターがいるため、どちらにせよ困ったことになるのは労働者の方だったろうが。
というか実際そうなっている。
ハナはそのぶりっ子な接客とそつのない働き方から労働者たちに大人気で、テーブルの間を歩くだけでもはやそれが礼儀であるかのように手が伸ばされている。
運んでいる料理を絶対に零さず、伸ばされた手はにこやかに微笑んだままお盆や肘・膝で受けるのだから、さすがという他なかった。
「あれぇ、どうなさいましたぁ? ……あんまりオイタすると畳むぞ、ワレェ?」
顔を近づけたハナに瞬間的にピンポイントで殺気放ちつつにこやかに凄まれれば、大抵の労働者はそれで大人しくなる。
中には「それがいい!」と続行してハナの式神に外に放り出される者もいたが。
酒場で式神が出るという珍事も多くの労働者にとっては酒の肴に過ぎず、もっとやれと囃し立てる始末。
「お客様、騒ぎは程々にしてくださいね……? こちらのお酒、美味しいですよ……。ささ、ぐいっと一杯いってください……。一杯と言わず沢山……」
自分にセクハラしてきた労働者を笑顔のまま表情を変えずに次々酔い潰しているサクラの前後は対照的で、サクラの背後の労働者たちは軒並み死屍累々となっていた。
全員セクハラ野郎で確定しているため、彼らは看板娘を始めとする従業員たちに酒代を支払わされ粛々と外へ叩き出されていった。
労働者に混じって見知らぬハンターも客としているが、同業者に気付いてただ単純に酒と食事に楽しむことにしたようで、知らぬ存ぜぬを貫いている者がほとんどだ。
一人「美人になら飲み潰されてもいい!」と血迷った見知らぬハンターが幸せそうな笑顔で気絶しているが、それだけである。
そしてエラはというと、傅かれた女王のように労働者に持ち上げられ。酒を勧められては飲むのを繰り返していた。
客層が変化し労働者が多くなるに従い飛び交い始めるナイフやフォークを次々手でキャッチして本格的な騒ぎになる前に収めてみせたのがいけなかったのか、それからあちこちから下心満載に酒を勧められるようになった。
こっそり魔法で酒を水に変えてから飲むことで対処していたものの、早くも魔法を撃ち切ってしまいそうである。
(そろそろ頃合か)
最初の方はいちいちホール中を歩き回って外に叩き出していたのだが、酒場内の雰囲気に猥雑さが増してきたことに気付き対応を変化させる必要があると感じたエラは、看板娘と連携し、席を変え彼らを纏めて隔離しておくことで対処した。
こうして他に被害が出ないようにしたうえで好きにやらせる。
やり過ぎた輩をやむを得ず外に叩き出す場合もうっかり殺してしまわないように、エラは優しく優しく襟首を掴んだり腕を捻り上げるだけに留めた。
「良い尻してるじゃ……いや、悪い。強く生きr……がぁぁぁぁぁっ!?」
『セクハラ、ダメ、絶対』
何やらトライフとエヴァが小芝居をしている。
身体を張って見せしめにセクハラするとこうなるよと表現しているのだが、見物する労働者たちを喜ばせる行為にしかなっていない。
しかし、トライフは柄の悪い労働者たちとも意気投合して飲み比べしたりして結果的に騒ぎを収めているし、エヴァも筆談で生かした絵心で性質の悪い要注意人物の人相を接客側に周知させている。
何だかんだで二人とも対応を問題なくこなしており、この二人はこのままでも上手くやるだろう。
トライフは荒事には参加できないが、それでも相手の懐に入るのが上手いので、平和的に終わらせることができている。
逆にトライフができない荒事をエヴァが受け持つことで、二人はバランスが取れていた。
何だかんだで息が合ってよくできたコンビである。
さすが腐れ縁の友人同士なだけある。
レーヴェは小さいなりが影響してか、労働者たちにマスコットキャラ的扱いを受けている。
酔い潰そうが外に叩き出そうが、何をしても喜ばれるので、ハンターや静かにしている一般客への対応に回っていた。
「騒がしくてすまんの。ほれ、これは私の詫びじゃし。遠慮するな、飲め」
先ほどから一人で黙々と酒を飲むハンターたちの間を回り、酒を酌み交わしている。
なるべく巻き込まないように配慮しているということを、態度で伝えているのだ。
明け方の閉店間際になると、デザートを注文して美味しそうに食べながら報告書を書いていたのはご愛嬌だ。
客もまばらになり、夜中のどんちゃん騒ぎは見る影もなくなり、残っていた客も次々に帰っていく。
そして、最後の一人が出て行き、この日の営業が終わった。
こうして致命的な問題も起きず、ハンターたちの仕事は無事終了したのである。
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相談卓? エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142) 人間(リアルブルー)|30才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/07/06 07:44:07 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/06 07:42:23 |