ゲスト
(ka0000)
希望の証
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/24 07:30
- 完成日
- 2014/12/30 06:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
寒さが増して、青々としていた森が白く染まり始める。
その極寒の森に、子供達10名ほどが暮らす孤児院があった。
食料などは大人たちが集落から運び、子供たちが飢えることのないようにしている。
何故、離れた場所に孤児院があるのか――……
それは、雑魔から子供たちを守るという理由があった。
少し前、大人も子供も一緒に集落で暮らしていたが、雑魔に襲われ、数名の子供が犠牲になった。
その雑魔は要請したハンターに退治してもらえたが、亡くなった子供は生き返りはしない。
だからこそ、事前に調べて雑魔のいない森に小屋を建て、子供たちを住まわせた。
雑魔が来るのならば、森に入らずその手前にある集落に来るだろういう考えがあったから――……。
しかし、大人たちの考えを覆す雑魔が現れたという事を、まだ大人達は知らない。
大人でも住むのが難しいとされる極寒の森。
そこで身を寄せ合って生きる10名ほどの子供たちに、危険が及んでいるという事を……。
リプレイ本文
●雑魔退治のために……
「現れたのは熊型の雑魔ですか……この時期に熊、リアルブルーと違って自然の資源が豊富だと言うのに、冬眠から覚めてエサを求める……雑魔とは言え哀れですね、何はともあれ飢えた獣です。気を引き締めていきましょう」
月架 尊(ka0114)が拳を強く握り締めながら呟く。
「仕事を終えたばかりなのにねぇ……ま、こういう事にゃ慣れてるんだ、幸か不幸かね」
メル・アイザックス(ka0520)は苦笑する。
事の始まりは本来の仕事を終え、帰還する途中の事だった。偶然通りかかった集落の近くにある森に熊のような雑魔を発見して、このまま見て見ぬふりをするのも……という事から、ついでというわけではないが討伐して帰還しよう――……という話になったのだ。
森の中には子供達だけで住む家屋があり、それに対してハイネ・ブランシェ(ka1130)は妙な違和感を覚えていた。
(ここは孤児院? 近くに集落があるのに、なぜ……?)
ハイネは首を傾げながら、極寒の地に建つ家屋を見上げたのだった。
「ここからは別れて行動しましょう、私とメルさんは子供達が全員揃っているか、万が一雑魔がこちらに来た場合は私達で子供を守ります」
椿姫・T・ノーチェ(ka1225)が呟いた後、メルと共に子供達が暮らしている家の中へ入った。
「俺達は雑魔を相手にすればいいってわけか、それにしても熊……子供の頃に出会った事を思い出すな」
ヒースクリフ(ka1686)は苦笑しながら白い息を吐く。
「まだ、こっちに雑魔は来ていないみたいだな、良かった……とも言っていられないか」
葵(ka2143)は苦笑しながら呟く。
雑魔より先に子供達の住む場所に来られたのはいいが、どこからやってくるか分からない以上、あまりここを離れられなくなる。
この場所を離れられないということは、小屋の近くで戦闘をしなければならない――と、色々な場合を想定して戦わなければならないから。
「ここから引き離して戦えればいいんだが、それが出来なかったらちょっと厄介だよな」
葵はため息を吐く。
「けど、あたし達のやる事は1つ。雑魔を倒して子供を守ることだ。誰の命も散らせないよ」
ジオラ・L・スパーダ(ka2635)が拳を握り締めながら呟く。
「それに、どんな理由でここに孤児院があるのか分からないけど、近くに集落があるんだから、帰りにでも伝えなきゃいけないだろうね、本当なら子供の傍には常に大人がいるべきだと、あたしは思っているし、今回みたいな事もありえるからさ」
ジオラの言葉に他のハンター達も頷く。
「そうですね、今回は偶然私達が気づきましたけど……いつも、こうとは限りませんし……やっぱり、子供達だけを離して住まわせるのは良くないと思います」
柏木 千春(ka3061)が悲しそうに呟く。
「とにかく、子供達はメルさんと椿姫さんに任せて、私達は雑魔退治に専念しましょう」
柏木が呟き、ハンター達はそれぞれ動き始めたのだった――……。
●子供達だけで生活する場所
「あれぇ? おねーさん達、集落の人じゃないよね? 新しく住む人? 僕達のご飯を持って来てくれたの?」
小屋の中に入ったメルと椿姫を出迎えたのは、まだ10歳にもならない少年だった。
「あなた達、どうしてこんな場所に? 大人は? それにご飯を持って来てくれたって……あなた達、一体どういう状況でここに住んでいるの?」
椿姫が疑問に思った事を少年に問い掛ける。
「話を聞くのは任せるよ、私は先にバリケードを作っておくからさ」
ひらひらと手を振りながら、メルは椿姫とは違う場所に向かっていく。
「僕達、本当は森の近くにある集落で暮らしていたんだけど、雑魔が来るから危ないって子供は全員ここで暮らしてるんだよ、戦いの時、子供は邪魔になるからね」
まるで『邪魔になったのを見ている』かのような口ぶりに、椿姫は首を傾げる。
「……ちょっと前に、集落に雑魔が来たの、お友達が……その時、何人も死んじゃったの……」
椿姫の疑問に答えたのは、少年よりももっと幼い少女だった。
「つまり、ここは雑魔の危険から避けるために苦肉の策で作られた避難場所? でも、すぐ近くに雑魔がいるんです、ここも安全じゃないのよ……!」
椿姫の言葉に、子供達が一気に騒ぎ始める。
「落ち着いて! 私達はあなた達を守るためにここにいます、私と向こうのお姉ちゃんで絶対にあなた達を守ってみせますから。絶対に、あなた達を死なせたりしません!」
椿姫の言葉に子供達の動揺も少し落ち着く。
「自分で自分の身の守り方を覚えよう。今、バリケードを作っているから男の子は手伝ってくれる? 女の子は近くで戦闘になった場合のために隠れる場所を探しておくこと」
メルはバリケードを作る場所を探しながら、子供達に指示を出す。
「どうして男の子だけなの?」
かくり、と首を傾げながら別な少年がメルに言葉を投げかける。
「女の子は、男の子が守るものでしょ? 私達みたいに戦える女の子は別にしてだけどさ」
子供達が怖がらないように、メルはおどけたように呟く。
その時――……小屋のすぐ近くからドォンと地面が揺れるほどの衝撃がメルと椿姫、そして子供達を襲った。
●戦闘開始、小屋の外にて
「くっ、出来ればこの位置からは引き離したいのですが……」
月架は眉を顰めながら『ショートソード クラウンナイツ』を振り上げ、雑魔に攻撃を仕掛ける。
メルと椿姫が小屋の中に入ってから、しばらく経った後、熊型雑魔が6名のハンターの前に現れた。
ハンター達の想像以上に雑魔は気性が荒く、さっきから小屋の前から引き離そうと試みているが、雑魔はハンター達の思う通りには動いてくれない。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ! ……なんて、しても来てくれないですよねー……」
がっくりとうな垂れながら柏木が呟く。
「あっ!」
雑魔が近くにあった丸太を振り上げ、勢いよく投げつける。
それを見て、ジオラが大きな声で叫ぶが投げられた丸太を止める事は出来なかった。
丸太は窓ガラスをたたき割り、小屋の中へと入る。
「ここから引き離す事に時間を割くよりも、早期決着をつける方が良さそうです」
月架は呟きながら『スラッシュエッジ』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛けた。
「おまえの相手はそっちじゃないだろ? 弱い奴から狙ってんじゃないよ」
葵は不機嫌そうに低い声で呟き『ロングソード』を振り上げて『踏込』を使用しながら攻撃を行う。
「子供達を怖がらせるような真似、するんじゃないよ」
それでも小屋の方に行こうとする雑魔を足止めするべく『ウィップ』で雑魔の足を引っかける。
「森の入り口とか、結構自分がいるって痕跡を残していたよね。それだけ困窮してたって事なんだろうけど、子供を襲うのはいただけないよ、ここで倒させてもらう」
ハイネは『オートマチックピストル』で雑魔を狙い撃ちながら呟く。
葵が足を引っかけた事、そしてハイネの攻撃によって僅かに動きが鈍った所をヒースクリフが『アックスブレード ツヴァイシュトースツァーン』を振り上げ、攻撃を仕掛けた。
「これは永遠に届かぬ師匠の剣だ、シャイニングセイバー・イマージュ!」
ヒースクリフの攻撃は雑魔の腕を斬り落とし、森の中にけたたましい叫び声が響き渡った。
「人を傷つける事は平気でするのに、自分が傷ついたらさも被害者のような声を出す……そんな勝手な事がまかり通るわけがありません、悔い改めなさいっ!」
柏木は『ホーリーライト』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
熊型、しかも冬眠中という時期も影響しているのか気性は荒いけれどハンター達は雑魔の動きを先読みして、攻撃を避ける事の方が多くなってきた。
逆に雑魔はハンター達に翻弄され、どんどん雑魔の攻撃回数が少なくなってきている。
「きみが普通の動物だったら、ここまでする事はなかったんだけどね――……雑魔だから、放っておけばいずれ人に害を成すから、ここで倒すしかないんだよ」
月架は少し複雑そうな表情を見せながら、雑魔の鼻を叩き潰す。
匂いを嗅ぐための鼻を潰されれば、子供達に被害が行く事はないと考えたからだろう。
「こんな場所に子供だけで生活をさせるなんて、集落を守るためのエサと思われても仕方ない」
ハイネは怒りに表情を歪ませながら、低く呟く。
ここまで彼が激昂するのは、彼自身が過去にそういう扱いを受けていたせいだ。小屋に残された子供達が過去の自分と重なり、その怒りがハイネの戦う力になっていた。
「……今度は、俺が守っているんだな」
ヒースクリフは苦笑気味に呟く。彼は過去に亡き師匠と山で熊に遭遇するという経験をしていた、その頃のヒースクリフは戦える力を持たず、亡き師匠に助けられた。
今の状況が過去の自分と重なり、そして今度は自分が守る側にいるという事が、余計にヒースクリフに子供達を守ろうという気持ちを強めさせている。
「はぁっ……!」
葵は『ロングソード』を振り上げ『踏込』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
「こっちよ、そっちばかり見ていないでこっちも見なさい!」
ジオラは『ブロウビート』を使用しながら、雑魔に言葉を投げかける。
先ほどからジオラは前衛者の攻撃のタイミングに合わせて『ブロウビート』を使用して、陰ながら支援を行っていた。
「子供達が待っているのは、あんたみたいなバケモノじゃない、自分達を優しく抱きとめてくれる大人を待っているのよ」
ジオラは『黒漆太刀』で雑魔に強力な一撃を繰り出す。
彼女は攻撃の際に雑魔の足を斬り落とし、雑魔の機動力を削いだ。
「さようなら、次は人を傷つける以外のものに生まれ変われるといいですね」
柏木は哀れみを込めた視線を向けながら、躊躇うことなく『ホーリーライト』を放った。
●戦闘が終わり、そして……
「うわ、痛そう……大丈夫?」
葵は『マテリアルヒーリング』を使用しながら、メルの傷を癒していく。
「雑魔が丸太を小屋に投げた時、子供達を庇ったんですね……」
柏木は『ヒール』を使用して、椿姫の傷を癒しながら呟く。
そう、戦闘中に雑魔が丸太を小屋に向けて投げ、窓ガラスが割れた際にメルと椿姫は身を挺して子供達を庇い、背中や腕、足に傷を負っていた。
「いてて、動けないほどの傷じゃなかったし、一応ちゃんとバリケードは作ったんだけどね。あれからはそっちで雑魔を引きつけてくれていたから助かったよ」
メルが苦笑気味に呟く。
「それに、守ったのは私達だけじゃありませんよ。男の子達だって、一生懸命女の子を守っていたんですから」
怪我を負ったのはメルと椿姫の二人だけだったが、男の子達も女の子を守るようにギュッと抱きしめていた。
「とりあえず、子供達も連れて集落に向かいましょう。ここの子供達は、本来雑魔から避けるためにここに集められた子供達のようですから……」
椿姫が何故ここに子供達が集められているのかを簡単に説明する。
「理屈としては合ってるかもしれないけど、ちょっと不用心だなとは思うよ。小屋だって特に補強されていなかったし、本当にここに避難させているだけみたいだったからさ」
メルもため息を吐きながら呟き、ハンター達は子供達を連れて、一度集落に行く事を決めた。
※※※
「えっ、森に雑魔が……!?」
ハンター達の説明を受けて、集落の大人達は酷く驚いていた。
(あの表情を見ると、本気で子供達を守るためだったんですね)
ゆっくりと大人達の表情を見ていたハイネが心の中で呟く。
自分と同じような目に遭わせているんじゃないと知り、ハイネは少しだけ安堵のため息を吐く。
「今回は助かりましたけど、一度現れた場所に子供だけで住まわせるのは危険ですよ。キツい言い方になりますが、今回だって僕達がいなければどうなっていたか……想像出来るでしょう」
ハイネの言葉に、集落の大人達はバツが悪そうに表情を曇らせる。
「今の時代、どこなら安全という場所はないんです。どこにいても危険なら、せめて皆で力を合わせられるようにした方がいいかと……」
「それには、ボクも同じ意見ですね」
ハイネの言葉を聞いた後、月架が軽く手を挙げて呟く。
「子供達だけで雑魔に遭遇した場合、大人以上に危険なんです。まだ守られていて当然の年齢ばかり、自分でどうにかできるほど、まだ子供達は強くないんですから……」
「……そうですね、私達もそれなりに考えた結果だったのですけど、それが子供達を余計に危険な目に合わせることになった……それは変えようのない事実です、やはり一緒に暮らした方がいいのでしょうね、ちゃんと自分達の手で子供を守った方が……」
ハンター達の言葉を聞き、集落の大人達は自分達の考えが浅はかだったと酷く反省している。
「私から見れば、こっちの方ももっと補強した方がいいと思うけどね。ついでってわけでもないけど、どうすればいいかを教えておくよ」
メルは集落の屋根を見たり、入口や窓の補強について呟いた。
「皆で暮らすなら、防壁を作ったり、見張りを立てるなどすれば多少の防衛策にはなるかと。他にも簡単に扱える武器の練習をしておくとか……」
椿姫も簡単に出来る防衛策を教えると、集落の大人達は真剣に聞き入っていた。
「あなた達なら大丈夫です、子供を守りたいという思いが強いのですから」
にっこりと椿姫は微笑みながら、集落の大人達に言葉を投げかけた。
(師匠、俺は師匠のように出来ましたか……? あの日、力強く俺を助けてくれた師匠のように、今日の子供達にも思い出を……)
ヒースクリフはグッと拳を強く握り締めながら心の中で呟く。
「向こうの小屋、帰りに修理しておくよ。子供達は住まなくなるとは言え、物置とか、そういうのにはなるだろうからさ」
葵が笑いながら話しかけると「本当に何から何までありがとうございます……」と集落の大人達は申し訳なさそうに深く頭を下げてくる。
「子供の傍には、常に大人がいた方がいい。大人がいる、それだけで子供達は安心を得られるのだから」
ジオラがポツリと呟く。
現に集落に戻ってから、子供達の表情が和らでいる。
それをジオラは見逃さなかったのだろう。
「危ないからと隔離するのではなく、自立して生きていけるように見守るのが、大人の仕事なんじゃないかなって思うんです」
柏木の言葉に「そうですね、本当に、その通りです」と集落の大人が言葉を返してくる。
その後、ハンター達は簡単なレクチャーを行った後、集落を後にした。
帰り際、ハンター達は誰もが(手遅れにならなくて良かった)と安堵していたのだとか――。
END
「現れたのは熊型の雑魔ですか……この時期に熊、リアルブルーと違って自然の資源が豊富だと言うのに、冬眠から覚めてエサを求める……雑魔とは言え哀れですね、何はともあれ飢えた獣です。気を引き締めていきましょう」
月架 尊(ka0114)が拳を強く握り締めながら呟く。
「仕事を終えたばかりなのにねぇ……ま、こういう事にゃ慣れてるんだ、幸か不幸かね」
メル・アイザックス(ka0520)は苦笑する。
事の始まりは本来の仕事を終え、帰還する途中の事だった。偶然通りかかった集落の近くにある森に熊のような雑魔を発見して、このまま見て見ぬふりをするのも……という事から、ついでというわけではないが討伐して帰還しよう――……という話になったのだ。
森の中には子供達だけで住む家屋があり、それに対してハイネ・ブランシェ(ka1130)は妙な違和感を覚えていた。
(ここは孤児院? 近くに集落があるのに、なぜ……?)
ハイネは首を傾げながら、極寒の地に建つ家屋を見上げたのだった。
「ここからは別れて行動しましょう、私とメルさんは子供達が全員揃っているか、万が一雑魔がこちらに来た場合は私達で子供を守ります」
椿姫・T・ノーチェ(ka1225)が呟いた後、メルと共に子供達が暮らしている家の中へ入った。
「俺達は雑魔を相手にすればいいってわけか、それにしても熊……子供の頃に出会った事を思い出すな」
ヒースクリフ(ka1686)は苦笑しながら白い息を吐く。
「まだ、こっちに雑魔は来ていないみたいだな、良かった……とも言っていられないか」
葵(ka2143)は苦笑しながら呟く。
雑魔より先に子供達の住む場所に来られたのはいいが、どこからやってくるか分からない以上、あまりここを離れられなくなる。
この場所を離れられないということは、小屋の近くで戦闘をしなければならない――と、色々な場合を想定して戦わなければならないから。
「ここから引き離して戦えればいいんだが、それが出来なかったらちょっと厄介だよな」
葵はため息を吐く。
「けど、あたし達のやる事は1つ。雑魔を倒して子供を守ることだ。誰の命も散らせないよ」
ジオラ・L・スパーダ(ka2635)が拳を握り締めながら呟く。
「それに、どんな理由でここに孤児院があるのか分からないけど、近くに集落があるんだから、帰りにでも伝えなきゃいけないだろうね、本当なら子供の傍には常に大人がいるべきだと、あたしは思っているし、今回みたいな事もありえるからさ」
ジオラの言葉に他のハンター達も頷く。
「そうですね、今回は偶然私達が気づきましたけど……いつも、こうとは限りませんし……やっぱり、子供達だけを離して住まわせるのは良くないと思います」
柏木 千春(ka3061)が悲しそうに呟く。
「とにかく、子供達はメルさんと椿姫さんに任せて、私達は雑魔退治に専念しましょう」
柏木が呟き、ハンター達はそれぞれ動き始めたのだった――……。
●子供達だけで生活する場所
「あれぇ? おねーさん達、集落の人じゃないよね? 新しく住む人? 僕達のご飯を持って来てくれたの?」
小屋の中に入ったメルと椿姫を出迎えたのは、まだ10歳にもならない少年だった。
「あなた達、どうしてこんな場所に? 大人は? それにご飯を持って来てくれたって……あなた達、一体どういう状況でここに住んでいるの?」
椿姫が疑問に思った事を少年に問い掛ける。
「話を聞くのは任せるよ、私は先にバリケードを作っておくからさ」
ひらひらと手を振りながら、メルは椿姫とは違う場所に向かっていく。
「僕達、本当は森の近くにある集落で暮らしていたんだけど、雑魔が来るから危ないって子供は全員ここで暮らしてるんだよ、戦いの時、子供は邪魔になるからね」
まるで『邪魔になったのを見ている』かのような口ぶりに、椿姫は首を傾げる。
「……ちょっと前に、集落に雑魔が来たの、お友達が……その時、何人も死んじゃったの……」
椿姫の疑問に答えたのは、少年よりももっと幼い少女だった。
「つまり、ここは雑魔の危険から避けるために苦肉の策で作られた避難場所? でも、すぐ近くに雑魔がいるんです、ここも安全じゃないのよ……!」
椿姫の言葉に、子供達が一気に騒ぎ始める。
「落ち着いて! 私達はあなた達を守るためにここにいます、私と向こうのお姉ちゃんで絶対にあなた達を守ってみせますから。絶対に、あなた達を死なせたりしません!」
椿姫の言葉に子供達の動揺も少し落ち着く。
「自分で自分の身の守り方を覚えよう。今、バリケードを作っているから男の子は手伝ってくれる? 女の子は近くで戦闘になった場合のために隠れる場所を探しておくこと」
メルはバリケードを作る場所を探しながら、子供達に指示を出す。
「どうして男の子だけなの?」
かくり、と首を傾げながら別な少年がメルに言葉を投げかける。
「女の子は、男の子が守るものでしょ? 私達みたいに戦える女の子は別にしてだけどさ」
子供達が怖がらないように、メルはおどけたように呟く。
その時――……小屋のすぐ近くからドォンと地面が揺れるほどの衝撃がメルと椿姫、そして子供達を襲った。
●戦闘開始、小屋の外にて
「くっ、出来ればこの位置からは引き離したいのですが……」
月架は眉を顰めながら『ショートソード クラウンナイツ』を振り上げ、雑魔に攻撃を仕掛ける。
メルと椿姫が小屋の中に入ってから、しばらく経った後、熊型雑魔が6名のハンターの前に現れた。
ハンター達の想像以上に雑魔は気性が荒く、さっきから小屋の前から引き離そうと試みているが、雑魔はハンター達の思う通りには動いてくれない。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ! ……なんて、しても来てくれないですよねー……」
がっくりとうな垂れながら柏木が呟く。
「あっ!」
雑魔が近くにあった丸太を振り上げ、勢いよく投げつける。
それを見て、ジオラが大きな声で叫ぶが投げられた丸太を止める事は出来なかった。
丸太は窓ガラスをたたき割り、小屋の中へと入る。
「ここから引き離す事に時間を割くよりも、早期決着をつける方が良さそうです」
月架は呟きながら『スラッシュエッジ』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛けた。
「おまえの相手はそっちじゃないだろ? 弱い奴から狙ってんじゃないよ」
葵は不機嫌そうに低い声で呟き『ロングソード』を振り上げて『踏込』を使用しながら攻撃を行う。
「子供達を怖がらせるような真似、するんじゃないよ」
それでも小屋の方に行こうとする雑魔を足止めするべく『ウィップ』で雑魔の足を引っかける。
「森の入り口とか、結構自分がいるって痕跡を残していたよね。それだけ困窮してたって事なんだろうけど、子供を襲うのはいただけないよ、ここで倒させてもらう」
ハイネは『オートマチックピストル』で雑魔を狙い撃ちながら呟く。
葵が足を引っかけた事、そしてハイネの攻撃によって僅かに動きが鈍った所をヒースクリフが『アックスブレード ツヴァイシュトースツァーン』を振り上げ、攻撃を仕掛けた。
「これは永遠に届かぬ師匠の剣だ、シャイニングセイバー・イマージュ!」
ヒースクリフの攻撃は雑魔の腕を斬り落とし、森の中にけたたましい叫び声が響き渡った。
「人を傷つける事は平気でするのに、自分が傷ついたらさも被害者のような声を出す……そんな勝手な事がまかり通るわけがありません、悔い改めなさいっ!」
柏木は『ホーリーライト』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
熊型、しかも冬眠中という時期も影響しているのか気性は荒いけれどハンター達は雑魔の動きを先読みして、攻撃を避ける事の方が多くなってきた。
逆に雑魔はハンター達に翻弄され、どんどん雑魔の攻撃回数が少なくなってきている。
「きみが普通の動物だったら、ここまでする事はなかったんだけどね――……雑魔だから、放っておけばいずれ人に害を成すから、ここで倒すしかないんだよ」
月架は少し複雑そうな表情を見せながら、雑魔の鼻を叩き潰す。
匂いを嗅ぐための鼻を潰されれば、子供達に被害が行く事はないと考えたからだろう。
「こんな場所に子供だけで生活をさせるなんて、集落を守るためのエサと思われても仕方ない」
ハイネは怒りに表情を歪ませながら、低く呟く。
ここまで彼が激昂するのは、彼自身が過去にそういう扱いを受けていたせいだ。小屋に残された子供達が過去の自分と重なり、その怒りがハイネの戦う力になっていた。
「……今度は、俺が守っているんだな」
ヒースクリフは苦笑気味に呟く。彼は過去に亡き師匠と山で熊に遭遇するという経験をしていた、その頃のヒースクリフは戦える力を持たず、亡き師匠に助けられた。
今の状況が過去の自分と重なり、そして今度は自分が守る側にいるという事が、余計にヒースクリフに子供達を守ろうという気持ちを強めさせている。
「はぁっ……!」
葵は『ロングソード』を振り上げ『踏込』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
「こっちよ、そっちばかり見ていないでこっちも見なさい!」
ジオラは『ブロウビート』を使用しながら、雑魔に言葉を投げかける。
先ほどからジオラは前衛者の攻撃のタイミングに合わせて『ブロウビート』を使用して、陰ながら支援を行っていた。
「子供達が待っているのは、あんたみたいなバケモノじゃない、自分達を優しく抱きとめてくれる大人を待っているのよ」
ジオラは『黒漆太刀』で雑魔に強力な一撃を繰り出す。
彼女は攻撃の際に雑魔の足を斬り落とし、雑魔の機動力を削いだ。
「さようなら、次は人を傷つける以外のものに生まれ変われるといいですね」
柏木は哀れみを込めた視線を向けながら、躊躇うことなく『ホーリーライト』を放った。
●戦闘が終わり、そして……
「うわ、痛そう……大丈夫?」
葵は『マテリアルヒーリング』を使用しながら、メルの傷を癒していく。
「雑魔が丸太を小屋に投げた時、子供達を庇ったんですね……」
柏木は『ヒール』を使用して、椿姫の傷を癒しながら呟く。
そう、戦闘中に雑魔が丸太を小屋に向けて投げ、窓ガラスが割れた際にメルと椿姫は身を挺して子供達を庇い、背中や腕、足に傷を負っていた。
「いてて、動けないほどの傷じゃなかったし、一応ちゃんとバリケードは作ったんだけどね。あれからはそっちで雑魔を引きつけてくれていたから助かったよ」
メルが苦笑気味に呟く。
「それに、守ったのは私達だけじゃありませんよ。男の子達だって、一生懸命女の子を守っていたんですから」
怪我を負ったのはメルと椿姫の二人だけだったが、男の子達も女の子を守るようにギュッと抱きしめていた。
「とりあえず、子供達も連れて集落に向かいましょう。ここの子供達は、本来雑魔から避けるためにここに集められた子供達のようですから……」
椿姫が何故ここに子供達が集められているのかを簡単に説明する。
「理屈としては合ってるかもしれないけど、ちょっと不用心だなとは思うよ。小屋だって特に補強されていなかったし、本当にここに避難させているだけみたいだったからさ」
メルもため息を吐きながら呟き、ハンター達は子供達を連れて、一度集落に行く事を決めた。
※※※
「えっ、森に雑魔が……!?」
ハンター達の説明を受けて、集落の大人達は酷く驚いていた。
(あの表情を見ると、本気で子供達を守るためだったんですね)
ゆっくりと大人達の表情を見ていたハイネが心の中で呟く。
自分と同じような目に遭わせているんじゃないと知り、ハイネは少しだけ安堵のため息を吐く。
「今回は助かりましたけど、一度現れた場所に子供だけで住まわせるのは危険ですよ。キツい言い方になりますが、今回だって僕達がいなければどうなっていたか……想像出来るでしょう」
ハイネの言葉に、集落の大人達はバツが悪そうに表情を曇らせる。
「今の時代、どこなら安全という場所はないんです。どこにいても危険なら、せめて皆で力を合わせられるようにした方がいいかと……」
「それには、ボクも同じ意見ですね」
ハイネの言葉を聞いた後、月架が軽く手を挙げて呟く。
「子供達だけで雑魔に遭遇した場合、大人以上に危険なんです。まだ守られていて当然の年齢ばかり、自分でどうにかできるほど、まだ子供達は強くないんですから……」
「……そうですね、私達もそれなりに考えた結果だったのですけど、それが子供達を余計に危険な目に合わせることになった……それは変えようのない事実です、やはり一緒に暮らした方がいいのでしょうね、ちゃんと自分達の手で子供を守った方が……」
ハンター達の言葉を聞き、集落の大人達は自分達の考えが浅はかだったと酷く反省している。
「私から見れば、こっちの方ももっと補強した方がいいと思うけどね。ついでってわけでもないけど、どうすればいいかを教えておくよ」
メルは集落の屋根を見たり、入口や窓の補強について呟いた。
「皆で暮らすなら、防壁を作ったり、見張りを立てるなどすれば多少の防衛策にはなるかと。他にも簡単に扱える武器の練習をしておくとか……」
椿姫も簡単に出来る防衛策を教えると、集落の大人達は真剣に聞き入っていた。
「あなた達なら大丈夫です、子供を守りたいという思いが強いのですから」
にっこりと椿姫は微笑みながら、集落の大人達に言葉を投げかけた。
(師匠、俺は師匠のように出来ましたか……? あの日、力強く俺を助けてくれた師匠のように、今日の子供達にも思い出を……)
ヒースクリフはグッと拳を強く握り締めながら心の中で呟く。
「向こうの小屋、帰りに修理しておくよ。子供達は住まなくなるとは言え、物置とか、そういうのにはなるだろうからさ」
葵が笑いながら話しかけると「本当に何から何までありがとうございます……」と集落の大人達は申し訳なさそうに深く頭を下げてくる。
「子供の傍には、常に大人がいた方がいい。大人がいる、それだけで子供達は安心を得られるのだから」
ジオラがポツリと呟く。
現に集落に戻ってから、子供達の表情が和らでいる。
それをジオラは見逃さなかったのだろう。
「危ないからと隔離するのではなく、自立して生きていけるように見守るのが、大人の仕事なんじゃないかなって思うんです」
柏木の言葉に「そうですね、本当に、その通りです」と集落の大人が言葉を返してくる。
その後、ハンター達は簡単なレクチャーを行った後、集落を後にした。
帰り際、ハンター達は誰もが(手遅れにならなくて良かった)と安堵していたのだとか――。
END
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/19 21:00:08 |
|
![]() |
相談卓 ハイネ・ブランシェ(ka1130) 人間(リアルブルー)|14才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/12/24 09:22:12 |