ゲスト
(ka0000)
積荷の道
マスター:風亜智疾

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/23 19:00
- 完成日
- 2014/06/30 17:54
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
普段、荷を運ぶ馬車の車輪音が響くある道で、その事件は起こった。
「……なんだ? あれ」
馬車に乗った男は、車の前方を遮る様に立ち塞がる影達を確認して、眉をひそめた。
まだ日の昇りきる前で、影は近寄らなければその姿をはっきりと視認する事が出来ない。
だからこそ、男は速度を落として、近づいていったのだ。
そこに、いたのは。
「う……うわぁぁぁぁぁぁ!?」
小さくとも、無力な人間には凶悪な存在である。
ゴブリンの姿、だった。
咄嗟に手綱を引き、男は来た道を引き返す。
ひたすらに元の道を引き返し引き返し。追いかけてくるゴブリンを必死に引き離す。
流石のゴブリンも、追いつけなかったのだろう。
追跡は、大通りに出たところでなんとか終わった。
「まずい……これは不味いぞ……!?」
男は酷く乱雑に鳴る胸を必死に押さえつつ、己の雇い主である商人の下へと、戻るのだった。
■
「ゴブリン?」
「はい、我々の使う街道に、ゴブリンが出たんですよ!」
くるり。とある小さな商社で振り返ったのは、まだ年若い優しげな表情をした女性だった。
男の必死の説明に、首を傾げながら考え込む彼女こそ、この商社の代表だ。
日用品、主に、服飾系やアクセサリーを取り扱う小さな商社だが、それでも割りと人気のある商社である。
「困りましたね。あの道は、私達の大切な生命線ですから……。使えなくなるのは、死活問題ですねぇ」
のんびりとした口調だが、その視線は鋭い。
暫くの思案の後、女性はゆっくりと口を開いた。
「分かりました。では、こうしましょう。ハンターオフィスに、ゴブリン退治を依頼しましょう。能力のない私たちでは、どうにも出来ませんからね」
にっこり。名案を思いついた。と言った表情の女性に、男は一瞬ぞくり、と背筋を振るわせた。
(代表、怒っていらっしゃる……!)
そう、この代表は、怒っている時ほど、にっこりと微笑むのだ。
「それじゃあ、ハンターオフィスに行ってきますねぇ?」
「……イッテラッシャイマセ」
敵ながら、ゴブリンに思わず哀れみを感じてしまった男は、思わず天を仰ぐのだった。
「……なんだ? あれ」
馬車に乗った男は、車の前方を遮る様に立ち塞がる影達を確認して、眉をひそめた。
まだ日の昇りきる前で、影は近寄らなければその姿をはっきりと視認する事が出来ない。
だからこそ、男は速度を落として、近づいていったのだ。
そこに、いたのは。
「う……うわぁぁぁぁぁぁ!?」
小さくとも、無力な人間には凶悪な存在である。
ゴブリンの姿、だった。
咄嗟に手綱を引き、男は来た道を引き返す。
ひたすらに元の道を引き返し引き返し。追いかけてくるゴブリンを必死に引き離す。
流石のゴブリンも、追いつけなかったのだろう。
追跡は、大通りに出たところでなんとか終わった。
「まずい……これは不味いぞ……!?」
男は酷く乱雑に鳴る胸を必死に押さえつつ、己の雇い主である商人の下へと、戻るのだった。
■
「ゴブリン?」
「はい、我々の使う街道に、ゴブリンが出たんですよ!」
くるり。とある小さな商社で振り返ったのは、まだ年若い優しげな表情をした女性だった。
男の必死の説明に、首を傾げながら考え込む彼女こそ、この商社の代表だ。
日用品、主に、服飾系やアクセサリーを取り扱う小さな商社だが、それでも割りと人気のある商社である。
「困りましたね。あの道は、私達の大切な生命線ですから……。使えなくなるのは、死活問題ですねぇ」
のんびりとした口調だが、その視線は鋭い。
暫くの思案の後、女性はゆっくりと口を開いた。
「分かりました。では、こうしましょう。ハンターオフィスに、ゴブリン退治を依頼しましょう。能力のない私たちでは、どうにも出来ませんからね」
にっこり。名案を思いついた。と言った表情の女性に、男は一瞬ぞくり、と背筋を振るわせた。
(代表、怒っていらっしゃる……!)
そう、この代表は、怒っている時ほど、にっこりと微笑むのだ。
「それじゃあ、ハンターオフィスに行ってきますねぇ?」
「……イッテラッシャイマセ」
敵ながら、ゴブリンに思わず哀れみを感じてしまった男は、思わず天を仰ぐのだった。
リプレイ本文
■戦闘前の出逢い
それは、作戦開始前。
作戦ポイントへ、依頼人の準備した荷馬車に乗って移動している最中の話だ。
「人払いは済ませてあります。これで民間の皆様への被害は起こりませんので、安心して下さいね」
おっとり、にっこりと笑ったのは、今回の依頼人である女主、パメラ・カスティリオーネ。
「街の偉い人に、と思ったんだけど。まさか依頼人本人が手配するなんて、思ってなかったわね」
エリシャ・カンナヴィ(ka0140)の言葉に、微笑だけを返すパメラ。それを横目に、周太郎・S・ストレイン(ka0293)は咥え煙草のままで言葉を返す。
「……ったく。ゴブリン共が、とんだヤンチャをしやがるな」
「どんな感じなのかなぁー。可愛いかったらイイんだけど。早く会いたいなー、ゴブちゃん!」
楽しそうに笑っているのはリオン(ka1757)だ。そんな横で、若干面倒そうに目を細めているのはキール・スケルツォ(ka1798)。
他人と仲良しごっこするのは苦手なのか、まだ無言のままだ。
「一緒の依頼か。何があっても、守ってみせる」
「頼りにしている」
Limonium Fatum(ka0164)とユリアナ・スポルクシー(ka1024)は、参加者を横目にお互いの装備の確認をしている。
大切な者と一緒に戦える事に、気分が高揚しているのかもしれない。
そんな参加者を見つめつつ、パメラに声をかけた少女がひとり。
「お店の人も困ってしまうし、お買い物をしたい人達も困ってしまうよね。力になれるよう、頑張る」
イスフェリア(ka2088)の言葉に、パメラは微笑んで頷く。
「まぁ、うちが居るからには大船……いえ、豪華客船に乗った気で居てくれてもかまへんよ。ふふん」
ルネ・西大路(ka1875)が、胸を張って宣言した丁度その直後に。
「到着しました……」
荷馬車を御していた男が、馬車を止めた。
ここから少し先が、件のゴブリン出現ポイントらしい。
「それでは、どうぞよろしくお願い致しますね」
最後に「御武運を」と告げたパメラと男は、万が一の為があってはならないので、ここで引き返す。
全員が荷馬車から降りたことを確認して、荷馬車は走り去った。
大体の時刻ではあるが、終了後にまた迎えに来てくれるらしい。
「……帰りの手段は、考えなくてもよさそうだな」
キールは小さく呟いて、荷馬車を見送る。
「それじゃ、みんな。手筈通りに行きましょう」
エリシャの声に全員頷くと、それぞれの担当箇所へと移動を開始するのだった。
■釣りは4人で
男の情報通り、その場から少し歩いた先に、その5つの影はいた。
蠢くゴブリン達を正面に捉えて『4人』のハンターが其々の武器を手に構える。
「あれがゴブちゃん? えー。なんかブサイクじゃない? ヤだなァ」
軽い口調でそう言ったリオンの言葉が、聞こえたのか、それとも偶然か。
5体のゴブリンが、一斉に4人を捉えた。
「どうでもいいだろ。ブッ潰す相手の見場なんざ」
リオンと同じく前衛を務める周太郎が、ゆっくりと眼帯を外す。ふわりと、白金の光が舞う。
と、次の瞬間。
こちらへ寄って来ていたゴブリンまであと僅かという距離を確認して、周太郎が一気に間合いを詰め、メリケンサックを装備した拳を振り抜いた。
「オッラァッ!!」
鈍く光る拳が、ゴブリンの顔面目掛けて繰り出される。
「ギィ!!」と、拳を受けたゴブリンが鳴き声をあげる。しかし、その一撃を受けてもまだ立っているということは、それなりの頑丈さはあるのだろう。
反撃するように拳を振り上げるゴブリンの攻撃を避け、周太郎が距離を取る。
「さ! ゴブちゃんも一緒に楽しんでイこ!」
逆サイド、獅子の紋章の浮かび上がった手で、ギラリと輝くショートソードを振り上げたリオンが笑う。
5体のゴブリンが、一気に前衛へと接近するその中。
やや後方から、弾丸と魔法の矢が前衛の隙間をすり抜けるようにゴブリンへと着弾する。
「ユリアナ、右を」
「任せろ、リモニウム」
刻まれた刺青が青白く発光するリモニウムが放つ、ワンドからの魔法の矢。
右目を蒼の色彩に変えたユリアナが放つ、ジャグリングガンの弾丸。
二人が連携し、それぞれ別の個体を攻撃していく。
前衛がその間に一度距離を取り、後衛は更に下がる。
「こっちこっち♪ にっぶいなァー? おーにさんこちらっ。逃げちゃうヨ?」
ショートソードを閃かせながら、茶化すように言うリオンの挑発に乗せられて、ゴブリン達が手にした石を投げ、腕を振り回し、石を振り回し、どんどん前進してくる。
(まだ。まだだ。もっと。もう少し……!)
投石は避けるが、避けて民家に被害がいきそうなものに関してはその身を盾にして防いだ。
細い十字路を突っ切り、それでもまだ後退を続ける。
前衛は殴ったり斬ったりしては下がり、後衛もそれを援護するように攻撃しては下がっていく。
4人のハンターが、突出することのないまま、攻撃を加えつつ後退する。その理由は。
次の瞬間、明らかになった。
■潜伏と挟撃
「それじゃあ、行きましょうか。ご一緒いただけるかしらキールおじ様?」
「ふん……。どうやら、ストライダーってのは俺の性分に合ってるみてぇだわ」
ゴブリン達が十字路を越えた、その次の瞬間。
声と共に、横道から飛び出したのは隠密スキルによって気配を隠していたキールとエリシャの2名だ。
「真面目に、正面からお相手してやるのは面倒なんでな!」
一番近いゴブリンへ後部右側からと肉薄すると、ショートソードを振りかざしたキールはそのままスキルによって上昇した高威力の攻撃を、首目掛けて繰り出す。
紙一重。咄嗟に手にしていた石を盾代わりに振り向いたゴブリンへと次に肉薄したのはエリシャ。
「逃がさないわよ?」
キールとは逆サイドから迫ったエリシャは、がら空きの胴に向かって光るナイフを一閃させた。
「ギャッ……!!」
先ほどまでの、誘導班による攻撃も加味されているゴブリンが1体、どさりと音を立てて倒れる。
突然の奇襲に、反撃するという事すら考え付かなかったのだろう。
ゴブリン達はまだ、潜伏班に攻撃を返す事すらしてこない。
「嬢ちゃんもやるもんだな。こりゃ、負けてらんねぇか……」
「あら、私もおじ様に負けず劣らず、ずっと戦闘稼業ですもの」
切り裂いたナイフについた汚れを払って、見上げるエリシャと視線の先のキール。その間をすり抜けるように。
「散々じれったい思いさせられたわぁ。ほな、うちらの出番やね!」
同じく横道に隠れていたルネが、スキルによって上昇したその命中力でリボルバーで、直線上に立ったゴブリンの後部目掛け弾丸を放つ。
その直後、輝く光の弾が、ルネが狙った敵とは別の敵の後頭部へと直撃した。
「みなさん、大丈夫ですか……!?」
聖なる光で攻撃を与えたのは、ロッドを掲げたイスフェリア。
彼女の攻撃後、音を立てて倒れた2体目のゴブリンを確認して、ようやく残ったゴブリン達は悟った。
――自分達は、挟み撃ちされた。先のハンター達は自分達を誘導していたのだ、と。
ただ、悟ったところで、このゴブリン達に「じゃあどうしよう」という知力は持ち合わせていない。残念だが。
■積荷の道の解放を
誘導班が敵を所定の位置まで誘導し、脇道に隠れた潜伏班が後方から奇襲をかける。
それが、今回のハンターたちの作戦だった。
これは見事に効果を発揮する。
特に、潜行のスキルを所持していたキールとエリシャに関しては、敵の後部へ回り込むまで、その存在を隠すことが出来ていた。
ただし、動いてしまえば、このスキルは解除されてしまうのが難点であったが。
そこは、後方のルネとイスフェリアによって、上手くカバーされている。
ゴブリン達が潜伏班に気を取られているうちに、誘導班の前衛メンバーは自己回復を行い。傷ついた他メンバーには、イスフェリアが的確に治癒を施していく。
まだ、そこまで距離は開いていなかったため、イスフェリアの治癒が届く範囲のメンバーが多かったのが、メンバーにとっては幸いだった。
そして更に、挟み撃ちによってゴブリン達は、前後のハンターへの注意と行動しか取れなくなっていた。
つまり、周囲。民家への被害も考慮する必要がなくなったのだ。
あくまでも、敵が破壊する可能性が減った、というだけだが。
間に入る必要がなくなる、身を挺する必要がなくなるというのは、戦闘において非常に負担が軽くなる。
そして最後に、挟み撃ちを行う事で、敵の逃亡を阻止する事が出来た。
逃げる敵を追うのも一苦労だ。ましてや、逃亡した敵が、今度は民家や一般人を襲わないという保障はない。
2体倒れたゴブリン。残りは3体。
「では、続きと行くか」
「ユリアナは狙わせない。援護は任せてくれ」
更に後方に下がったユリアナが、今度は武器を射程の長い猟銃へとシフトし、地に腹ばいになった状態でゴブリンを狙い。その横で、援護するようにリモニウムが魔法の矢を放つ。
走る弾丸と魔法の矢が直撃したゴブリンがまた1体沈む。
知能が低いとはいえ、自身の仲間が倒されていくことに怒ったのだろう。
残された2体のうちの1体のゴブリンが、身近にあった石を抱えあげると、勢いよく投げ放った。
「おっ……と! あはは! イイねイイね! そうでなくっちゃイジメ甲斐がないジャン?」
投げられた石を見事なステップで回避したリオンが楽しげに笑いながら、投げた体勢で胴ががら空きになった敵をなぎ払う。
悲鳴を上げる事なく、ただただ倒れる音だけを響かせ、地に倒れ伏した4体目のゴブリン。
最後の1体を追い詰めるべく、エリシャが声を上げた。
「ルネ、援護射撃お願い! イスフェリアは3秒後にホーリーライト!」
「はいな。ほな、そろそろ仕上げといきましょか?」
「はいっ……!」
後方、ルネが声を上げ、命中を底上げした銃撃を加える。更にその後に続き、イスフェリアの光の攻撃。
直撃こそしなかったが、その2撃は確実に最後のゴブリンを追い詰めていく。
しかし、まだゴブリンは倒れない。最後の意地、とも呼べるものかもしれない。
ただ、光に目がくらんだのか、それとも偶然か。
体勢を崩したゴブリンへ、前衛達が駆け込む。
ナイフを一閃させたエリシャの攻撃を何とか避け、更にキールの斬撃すらギリギリ避けきったゴブリンだったが。
「ブッ潰れな!」
ウォーハンマーへと武器をシフトした周太郎が一気に正面まで駆け込み、スキルによって強化されたその攻撃力をもって、正しく『叩き潰す』ようにそれを振り下ろし。
断末魔は、響かなかった。
ただ、何かが潰れるような音だけが、道に響いた。
■後片付けと
「うぅ……こんなん触れへんわ。誰か、触りなれてる人はいてはります?」
「別に慣れちゃいねぇがな……。俺がする」
ルネが顔を歪めたのを確認して、キールが申し出る。
これで、少しでも生活費が稼げるのなら、なんだってする。という心算なのだろうか。
「あ……鉢植えが倒れてる……」
イスフェリアは、倒れた鉢植えを起こすと、零れた土を丁寧に戻していく。
他のメンバーも、民家への被害はなかったとはいえ、道に出ていた鉢植え等が倒れているのを確認して、それらを起こす作業を手伝った。
全ての片づけが終わった頃に、迎えの馬車がやって来た。
「お疲れ様でした。皆様のおかげで、これからも商いに集中出来ますね」
離れた場所で待機していたのか、依頼主のパメラが微笑みながら全員の無事を確認してほっと息を吐いた。
「お店のもの、今度見せてもらえたらいいな」
可愛いお洋服にアクセサリー。そういった商品を売っているのだという、パメラの店。
それらを身につけた子供達が、笑顔になれますように。
その思いから、思わず小さく声を漏らしたイスフェリアに、微笑んだままパメラは頷くのだった。
「えぇ、是非」
積荷の道に現れたゴブリン退治、ミッションクリア。
余談だが。
帰り道の荷馬車の中で、疲れからか、数名が眠ってしまった。
穏やかに響く幾つかの寝息を聞いて、依頼主の女主は思わず小さく噴き出したのだという。
戦闘後の、そんなひとコマも。ハンターが「民間人と変わらぬ、ただ少し力を持った存在」という、証なのかもしれない。
ガタガタゴトゴト、荷馬車は走る。
8人のハンター達が守った。積荷の道を。
それは、作戦開始前。
作戦ポイントへ、依頼人の準備した荷馬車に乗って移動している最中の話だ。
「人払いは済ませてあります。これで民間の皆様への被害は起こりませんので、安心して下さいね」
おっとり、にっこりと笑ったのは、今回の依頼人である女主、パメラ・カスティリオーネ。
「街の偉い人に、と思ったんだけど。まさか依頼人本人が手配するなんて、思ってなかったわね」
エリシャ・カンナヴィ(ka0140)の言葉に、微笑だけを返すパメラ。それを横目に、周太郎・S・ストレイン(ka0293)は咥え煙草のままで言葉を返す。
「……ったく。ゴブリン共が、とんだヤンチャをしやがるな」
「どんな感じなのかなぁー。可愛いかったらイイんだけど。早く会いたいなー、ゴブちゃん!」
楽しそうに笑っているのはリオン(ka1757)だ。そんな横で、若干面倒そうに目を細めているのはキール・スケルツォ(ka1798)。
他人と仲良しごっこするのは苦手なのか、まだ無言のままだ。
「一緒の依頼か。何があっても、守ってみせる」
「頼りにしている」
Limonium Fatum(ka0164)とユリアナ・スポルクシー(ka1024)は、参加者を横目にお互いの装備の確認をしている。
大切な者と一緒に戦える事に、気分が高揚しているのかもしれない。
そんな参加者を見つめつつ、パメラに声をかけた少女がひとり。
「お店の人も困ってしまうし、お買い物をしたい人達も困ってしまうよね。力になれるよう、頑張る」
イスフェリア(ka2088)の言葉に、パメラは微笑んで頷く。
「まぁ、うちが居るからには大船……いえ、豪華客船に乗った気で居てくれてもかまへんよ。ふふん」
ルネ・西大路(ka1875)が、胸を張って宣言した丁度その直後に。
「到着しました……」
荷馬車を御していた男が、馬車を止めた。
ここから少し先が、件のゴブリン出現ポイントらしい。
「それでは、どうぞよろしくお願い致しますね」
最後に「御武運を」と告げたパメラと男は、万が一の為があってはならないので、ここで引き返す。
全員が荷馬車から降りたことを確認して、荷馬車は走り去った。
大体の時刻ではあるが、終了後にまた迎えに来てくれるらしい。
「……帰りの手段は、考えなくてもよさそうだな」
キールは小さく呟いて、荷馬車を見送る。
「それじゃ、みんな。手筈通りに行きましょう」
エリシャの声に全員頷くと、それぞれの担当箇所へと移動を開始するのだった。
■釣りは4人で
男の情報通り、その場から少し歩いた先に、その5つの影はいた。
蠢くゴブリン達を正面に捉えて『4人』のハンターが其々の武器を手に構える。
「あれがゴブちゃん? えー。なんかブサイクじゃない? ヤだなァ」
軽い口調でそう言ったリオンの言葉が、聞こえたのか、それとも偶然か。
5体のゴブリンが、一斉に4人を捉えた。
「どうでもいいだろ。ブッ潰す相手の見場なんざ」
リオンと同じく前衛を務める周太郎が、ゆっくりと眼帯を外す。ふわりと、白金の光が舞う。
と、次の瞬間。
こちらへ寄って来ていたゴブリンまであと僅かという距離を確認して、周太郎が一気に間合いを詰め、メリケンサックを装備した拳を振り抜いた。
「オッラァッ!!」
鈍く光る拳が、ゴブリンの顔面目掛けて繰り出される。
「ギィ!!」と、拳を受けたゴブリンが鳴き声をあげる。しかし、その一撃を受けてもまだ立っているということは、それなりの頑丈さはあるのだろう。
反撃するように拳を振り上げるゴブリンの攻撃を避け、周太郎が距離を取る。
「さ! ゴブちゃんも一緒に楽しんでイこ!」
逆サイド、獅子の紋章の浮かび上がった手で、ギラリと輝くショートソードを振り上げたリオンが笑う。
5体のゴブリンが、一気に前衛へと接近するその中。
やや後方から、弾丸と魔法の矢が前衛の隙間をすり抜けるようにゴブリンへと着弾する。
「ユリアナ、右を」
「任せろ、リモニウム」
刻まれた刺青が青白く発光するリモニウムが放つ、ワンドからの魔法の矢。
右目を蒼の色彩に変えたユリアナが放つ、ジャグリングガンの弾丸。
二人が連携し、それぞれ別の個体を攻撃していく。
前衛がその間に一度距離を取り、後衛は更に下がる。
「こっちこっち♪ にっぶいなァー? おーにさんこちらっ。逃げちゃうヨ?」
ショートソードを閃かせながら、茶化すように言うリオンの挑発に乗せられて、ゴブリン達が手にした石を投げ、腕を振り回し、石を振り回し、どんどん前進してくる。
(まだ。まだだ。もっと。もう少し……!)
投石は避けるが、避けて民家に被害がいきそうなものに関してはその身を盾にして防いだ。
細い十字路を突っ切り、それでもまだ後退を続ける。
前衛は殴ったり斬ったりしては下がり、後衛もそれを援護するように攻撃しては下がっていく。
4人のハンターが、突出することのないまま、攻撃を加えつつ後退する。その理由は。
次の瞬間、明らかになった。
■潜伏と挟撃
「それじゃあ、行きましょうか。ご一緒いただけるかしらキールおじ様?」
「ふん……。どうやら、ストライダーってのは俺の性分に合ってるみてぇだわ」
ゴブリン達が十字路を越えた、その次の瞬間。
声と共に、横道から飛び出したのは隠密スキルによって気配を隠していたキールとエリシャの2名だ。
「真面目に、正面からお相手してやるのは面倒なんでな!」
一番近いゴブリンへ後部右側からと肉薄すると、ショートソードを振りかざしたキールはそのままスキルによって上昇した高威力の攻撃を、首目掛けて繰り出す。
紙一重。咄嗟に手にしていた石を盾代わりに振り向いたゴブリンへと次に肉薄したのはエリシャ。
「逃がさないわよ?」
キールとは逆サイドから迫ったエリシャは、がら空きの胴に向かって光るナイフを一閃させた。
「ギャッ……!!」
先ほどまでの、誘導班による攻撃も加味されているゴブリンが1体、どさりと音を立てて倒れる。
突然の奇襲に、反撃するという事すら考え付かなかったのだろう。
ゴブリン達はまだ、潜伏班に攻撃を返す事すらしてこない。
「嬢ちゃんもやるもんだな。こりゃ、負けてらんねぇか……」
「あら、私もおじ様に負けず劣らず、ずっと戦闘稼業ですもの」
切り裂いたナイフについた汚れを払って、見上げるエリシャと視線の先のキール。その間をすり抜けるように。
「散々じれったい思いさせられたわぁ。ほな、うちらの出番やね!」
同じく横道に隠れていたルネが、スキルによって上昇したその命中力でリボルバーで、直線上に立ったゴブリンの後部目掛け弾丸を放つ。
その直後、輝く光の弾が、ルネが狙った敵とは別の敵の後頭部へと直撃した。
「みなさん、大丈夫ですか……!?」
聖なる光で攻撃を与えたのは、ロッドを掲げたイスフェリア。
彼女の攻撃後、音を立てて倒れた2体目のゴブリンを確認して、ようやく残ったゴブリン達は悟った。
――自分達は、挟み撃ちされた。先のハンター達は自分達を誘導していたのだ、と。
ただ、悟ったところで、このゴブリン達に「じゃあどうしよう」という知力は持ち合わせていない。残念だが。
■積荷の道の解放を
誘導班が敵を所定の位置まで誘導し、脇道に隠れた潜伏班が後方から奇襲をかける。
それが、今回のハンターたちの作戦だった。
これは見事に効果を発揮する。
特に、潜行のスキルを所持していたキールとエリシャに関しては、敵の後部へ回り込むまで、その存在を隠すことが出来ていた。
ただし、動いてしまえば、このスキルは解除されてしまうのが難点であったが。
そこは、後方のルネとイスフェリアによって、上手くカバーされている。
ゴブリン達が潜伏班に気を取られているうちに、誘導班の前衛メンバーは自己回復を行い。傷ついた他メンバーには、イスフェリアが的確に治癒を施していく。
まだ、そこまで距離は開いていなかったため、イスフェリアの治癒が届く範囲のメンバーが多かったのが、メンバーにとっては幸いだった。
そして更に、挟み撃ちによってゴブリン達は、前後のハンターへの注意と行動しか取れなくなっていた。
つまり、周囲。民家への被害も考慮する必要がなくなったのだ。
あくまでも、敵が破壊する可能性が減った、というだけだが。
間に入る必要がなくなる、身を挺する必要がなくなるというのは、戦闘において非常に負担が軽くなる。
そして最後に、挟み撃ちを行う事で、敵の逃亡を阻止する事が出来た。
逃げる敵を追うのも一苦労だ。ましてや、逃亡した敵が、今度は民家や一般人を襲わないという保障はない。
2体倒れたゴブリン。残りは3体。
「では、続きと行くか」
「ユリアナは狙わせない。援護は任せてくれ」
更に後方に下がったユリアナが、今度は武器を射程の長い猟銃へとシフトし、地に腹ばいになった状態でゴブリンを狙い。その横で、援護するようにリモニウムが魔法の矢を放つ。
走る弾丸と魔法の矢が直撃したゴブリンがまた1体沈む。
知能が低いとはいえ、自身の仲間が倒されていくことに怒ったのだろう。
残された2体のうちの1体のゴブリンが、身近にあった石を抱えあげると、勢いよく投げ放った。
「おっ……と! あはは! イイねイイね! そうでなくっちゃイジメ甲斐がないジャン?」
投げられた石を見事なステップで回避したリオンが楽しげに笑いながら、投げた体勢で胴ががら空きになった敵をなぎ払う。
悲鳴を上げる事なく、ただただ倒れる音だけを響かせ、地に倒れ伏した4体目のゴブリン。
最後の1体を追い詰めるべく、エリシャが声を上げた。
「ルネ、援護射撃お願い! イスフェリアは3秒後にホーリーライト!」
「はいな。ほな、そろそろ仕上げといきましょか?」
「はいっ……!」
後方、ルネが声を上げ、命中を底上げした銃撃を加える。更にその後に続き、イスフェリアの光の攻撃。
直撃こそしなかったが、その2撃は確実に最後のゴブリンを追い詰めていく。
しかし、まだゴブリンは倒れない。最後の意地、とも呼べるものかもしれない。
ただ、光に目がくらんだのか、それとも偶然か。
体勢を崩したゴブリンへ、前衛達が駆け込む。
ナイフを一閃させたエリシャの攻撃を何とか避け、更にキールの斬撃すらギリギリ避けきったゴブリンだったが。
「ブッ潰れな!」
ウォーハンマーへと武器をシフトした周太郎が一気に正面まで駆け込み、スキルによって強化されたその攻撃力をもって、正しく『叩き潰す』ようにそれを振り下ろし。
断末魔は、響かなかった。
ただ、何かが潰れるような音だけが、道に響いた。
■後片付けと
「うぅ……こんなん触れへんわ。誰か、触りなれてる人はいてはります?」
「別に慣れちゃいねぇがな……。俺がする」
ルネが顔を歪めたのを確認して、キールが申し出る。
これで、少しでも生活費が稼げるのなら、なんだってする。という心算なのだろうか。
「あ……鉢植えが倒れてる……」
イスフェリアは、倒れた鉢植えを起こすと、零れた土を丁寧に戻していく。
他のメンバーも、民家への被害はなかったとはいえ、道に出ていた鉢植え等が倒れているのを確認して、それらを起こす作業を手伝った。
全ての片づけが終わった頃に、迎えの馬車がやって来た。
「お疲れ様でした。皆様のおかげで、これからも商いに集中出来ますね」
離れた場所で待機していたのか、依頼主のパメラが微笑みながら全員の無事を確認してほっと息を吐いた。
「お店のもの、今度見せてもらえたらいいな」
可愛いお洋服にアクセサリー。そういった商品を売っているのだという、パメラの店。
それらを身につけた子供達が、笑顔になれますように。
その思いから、思わず小さく声を漏らしたイスフェリアに、微笑んだままパメラは頷くのだった。
「えぇ、是非」
積荷の道に現れたゴブリン退治、ミッションクリア。
余談だが。
帰り道の荷馬車の中で、疲れからか、数名が眠ってしまった。
穏やかに響く幾つかの寝息を聞いて、依頼主の女主は思わず小さく噴き出したのだという。
戦闘後の、そんなひとコマも。ハンターが「民間人と変わらぬ、ただ少し力を持った存在」という、証なのかもしれない。
ガタガタゴトゴト、荷馬車は走る。
8人のハンター達が守った。積荷の道を。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/18 19:07:58 |
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相談卓 エリシャ・カンナヴィ(ka0140) エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/06/23 18:32:43 |