ゲスト
(ka0000)
それ、うちで引き取りますから!
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2018/07/26 22:00
- 完成日
- 2018/08/01 00:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●冒険都市リゼリオ
ハンターオフィス本部。昼休み。
受付窓口職員がコーヒーで一服しながら、話をしている。
「そういえば、ユニゾン島に住むマゴイという英霊が、ハンターオフィス窓口開設を申し出てきたんだって?」
「あの島は確かー……私的自治領域ですよね?」
「うん。今のところどの国にも属していない」
「設置許可は出るの?」
「そりゃ、出るでしょうね。窓口開設は、基本申し出てくれば受けるというものですから。神霊樹の分樹が必要な支局開設と違って、ハンターオフィスに負担がかかるものではないし」
「しかしねえ……わざわざそれを開く必要性があるかなあ。ちょっと調べたんだけど、あそこは人口も少ないし、歪虚の影響もほとんどなさそうだし、政情も――というほどのものもなさそうだけど――落ち着いているし……わざわざ窓口を作っても、依頼がないってことになりゃしませんかね?」
「どうなんですかねえ……定期的な歪曲駆除依頼は出すつもりがあるそうですが……」
●バシリア刑務所
面会室。
猫頭囚人スペットは、魔術師協会職員タモンと話し込んでいる。
「なんや、あいつハンターオフィスの窓口作るんか」
「ええ。先々のことを考えると、そのほうが何かと便利であると思われたようで」
「通るんか、その話」
「通りました。我々もハンターオフィスに、その件よしなにと口添えいたしましたから――あ、そうだ。彼女からスペットさんに、伝言を頼まれているんですよ」
「なんやいな。言うてみ」
「『……ユニゾン島に建設する新型マテリアル炉の建設に、協力する意思はある?……あなたはもともとユニオンのエンジニア・ワーカーであり、アーキテクチャーにもある程度通じているので、協力してくれるなら、たいへん助かる……もしそうしてくれるなら……ユニオン法に沿い……外部労働者として契約を結びたい……』だそうです」
スペットはしばし黙った。頬杖をついて、密集した頬の毛を掻く。
「……俺は服役中やぞ?」
「これも社会奉仕活動の一環だとは思いませんか? 一度はユニゾン島へ視察にも行ったことですし――受けてみられては? これまでのことを鑑みるに、マゴイさんの提示する労働条件はすこぶる良心的なものと思われますが」
「なんや、タモンはんこの話やけに推すやないの」
「そりゃ、あなたのためになると思いますから。エネルギー問題が解消して市民生産機関が完全に動くようになれば、あなたのその顔を元に戻すためのセクションもまた、動かせるようになるわけでしょう?」
「まあ、そりゃまあ、せやけど。あいつ俺の顔ほんまに戻す気あるんかな。ちょいちょいそのこと忘れてるように思えてならんのやけど」
「そこはあなた自身が折に触れて言い続けませんと」
「言えいうたかて、あいつと会う機会なんか、そんなにあらへんし。あいつから訪ねても来いへんし。島が出来てからは特に」
「急がしい方ですからね。で、この話どうします?」
「そらまあ、受けてもええで。こっちの都合がついたときやけどな」
●ユニゾン島
オートマトンについて調査するために神霊樹ライブラリを使いたいが、さてどの時代どの場所にアクセスすれば一番いいのか。
その点をこれまで集めた資料をもとに、会議室で(1人)検討会議をしていていたマゴイは、コボルドワーカーたちから緊急連絡を受けた。ウォッチャーを通じて。
「まごーい、にんげんみなとにながれてきた」
「ひっぱりあげたけどいきしてなーい」
「どざえもーん」
「ぷっかぷかー」
『……あら、そう……では……そこでそのままちょっと待っていなさい……』
蘇生出来るならしてユニゾンの外に送り出し、出来ないならデータをとった後火葬にし土壌改良に活用しよう。そんなことを思いつつワーカーのところへ行ってみれば……。
『……これは……』
大量の海草がもつれまくった裸の、少年でも少女でもないもの――そうとしかしか言いようがない。なにしろ生殖器がついていないのだからして。
相当長い間水中を漂っていたらしいのに、膨張してないし腐敗してない。
『……人間ではなくオートマトン……』
思い切り眉間にしわを寄せた彼女は、ウォッチャーにスキャンさせた。
するとまだ稼動していない、つまりは抜け殻状態のオートマトンであることが分かった。
一安心した後、さてこれをどうしようという話になる。
オートマトンに関する新条項はまだ出来上がっていない。
であるからしてこの場合、今ある法をそのまま適用することになる。
『……とりあえず……広報しましょうか……』
かくしてハンターオフィスに依頼が申請された。
ハンターオフィス・ユニゾン窓口からの初依頼である。
内容は以下。
――――――――――――
ユニゾン島港湾に未稼働のオートマトンが流れてきた。
姿形は以下の通り(写真)。
心当たりの所有者がいるなら引き取りに来ること。
引取りの際には罰金を払うこと(漂着という形態から鑑みるに悪質投棄性は薄いと見られるから、法定最低限度額の20万Gでよろしい)。
この広報より一ヶ月以内に引取りの意思を示さなければ、当該オートマトンはユニオンで責任を持って分解処分する。
――――――――――――
これを受け取ったハンターオフィス本部は泡を食った。折角目覚めさせることが出来そうな状態にあるものを、責任持って分解処分されてはたまらない。
急遽ハンターたちを呼び集め、ユニゾン島へ未覚醒オートマトンの確保に向かわせた。
罰金についてはオフィスが負担するから、と。
魔術師協会にお願いし、ユニオンのやり方に詳しいスペットも同行させることにして。
ハンターオフィス本部。昼休み。
受付窓口職員がコーヒーで一服しながら、話をしている。
「そういえば、ユニゾン島に住むマゴイという英霊が、ハンターオフィス窓口開設を申し出てきたんだって?」
「あの島は確かー……私的自治領域ですよね?」
「うん。今のところどの国にも属していない」
「設置許可は出るの?」
「そりゃ、出るでしょうね。窓口開設は、基本申し出てくれば受けるというものですから。神霊樹の分樹が必要な支局開設と違って、ハンターオフィスに負担がかかるものではないし」
「しかしねえ……わざわざそれを開く必要性があるかなあ。ちょっと調べたんだけど、あそこは人口も少ないし、歪虚の影響もほとんどなさそうだし、政情も――というほどのものもなさそうだけど――落ち着いているし……わざわざ窓口を作っても、依頼がないってことになりゃしませんかね?」
「どうなんですかねえ……定期的な歪曲駆除依頼は出すつもりがあるそうですが……」
●バシリア刑務所
面会室。
猫頭囚人スペットは、魔術師協会職員タモンと話し込んでいる。
「なんや、あいつハンターオフィスの窓口作るんか」
「ええ。先々のことを考えると、そのほうが何かと便利であると思われたようで」
「通るんか、その話」
「通りました。我々もハンターオフィスに、その件よしなにと口添えいたしましたから――あ、そうだ。彼女からスペットさんに、伝言を頼まれているんですよ」
「なんやいな。言うてみ」
「『……ユニゾン島に建設する新型マテリアル炉の建設に、協力する意思はある?……あなたはもともとユニオンのエンジニア・ワーカーであり、アーキテクチャーにもある程度通じているので、協力してくれるなら、たいへん助かる……もしそうしてくれるなら……ユニオン法に沿い……外部労働者として契約を結びたい……』だそうです」
スペットはしばし黙った。頬杖をついて、密集した頬の毛を掻く。
「……俺は服役中やぞ?」
「これも社会奉仕活動の一環だとは思いませんか? 一度はユニゾン島へ視察にも行ったことですし――受けてみられては? これまでのことを鑑みるに、マゴイさんの提示する労働条件はすこぶる良心的なものと思われますが」
「なんや、タモンはんこの話やけに推すやないの」
「そりゃ、あなたのためになると思いますから。エネルギー問題が解消して市民生産機関が完全に動くようになれば、あなたのその顔を元に戻すためのセクションもまた、動かせるようになるわけでしょう?」
「まあ、そりゃまあ、せやけど。あいつ俺の顔ほんまに戻す気あるんかな。ちょいちょいそのこと忘れてるように思えてならんのやけど」
「そこはあなた自身が折に触れて言い続けませんと」
「言えいうたかて、あいつと会う機会なんか、そんなにあらへんし。あいつから訪ねても来いへんし。島が出来てからは特に」
「急がしい方ですからね。で、この話どうします?」
「そらまあ、受けてもええで。こっちの都合がついたときやけどな」
●ユニゾン島
オートマトンについて調査するために神霊樹ライブラリを使いたいが、さてどの時代どの場所にアクセスすれば一番いいのか。
その点をこれまで集めた資料をもとに、会議室で(1人)検討会議をしていていたマゴイは、コボルドワーカーたちから緊急連絡を受けた。ウォッチャーを通じて。
「まごーい、にんげんみなとにながれてきた」
「ひっぱりあげたけどいきしてなーい」
「どざえもーん」
「ぷっかぷかー」
『……あら、そう……では……そこでそのままちょっと待っていなさい……』
蘇生出来るならしてユニゾンの外に送り出し、出来ないならデータをとった後火葬にし土壌改良に活用しよう。そんなことを思いつつワーカーのところへ行ってみれば……。
『……これは……』
大量の海草がもつれまくった裸の、少年でも少女でもないもの――そうとしかしか言いようがない。なにしろ生殖器がついていないのだからして。
相当長い間水中を漂っていたらしいのに、膨張してないし腐敗してない。
『……人間ではなくオートマトン……』
思い切り眉間にしわを寄せた彼女は、ウォッチャーにスキャンさせた。
するとまだ稼動していない、つまりは抜け殻状態のオートマトンであることが分かった。
一安心した後、さてこれをどうしようという話になる。
オートマトンに関する新条項はまだ出来上がっていない。
であるからしてこの場合、今ある法をそのまま適用することになる。
『……とりあえず……広報しましょうか……』
かくしてハンターオフィスに依頼が申請された。
ハンターオフィス・ユニゾン窓口からの初依頼である。
内容は以下。
――――――――――――
ユニゾン島港湾に未稼働のオートマトンが流れてきた。
姿形は以下の通り(写真)。
心当たりの所有者がいるなら引き取りに来ること。
引取りの際には罰金を払うこと(漂着という形態から鑑みるに悪質投棄性は薄いと見られるから、法定最低限度額の20万Gでよろしい)。
この広報より一ヶ月以内に引取りの意思を示さなければ、当該オートマトンはユニオンで責任を持って分解処分する。
――――――――――――
これを受け取ったハンターオフィス本部は泡を食った。折角目覚めさせることが出来そうな状態にあるものを、責任持って分解処分されてはたまらない。
急遽ハンターたちを呼び集め、ユニゾン島へ未覚醒オートマトンの確保に向かわせた。
罰金についてはオフィスが負担するから、と。
魔術師協会にお願いし、ユニオンのやり方に詳しいスペットも同行させることにして。
リプレイ本文
●作戦会議
オートマトンを救うべく名乗りを上げたハンターは、ディーナ・フェルミ(ka5843) 、レイア・アローネ(ka4082)、ルベーノ・バルバライン(ka6752)、天竜寺 詩(ka0396)、そしてエルバッハ・リオン(ka2434)の5名であった。
出立の前に彼らは、今回の課題についてどう対処するか話し合う。
レイアはまず何よりも、マゴイのオートマトン嫌いについて問題視した。
「出来ればこの機会に改善出来ればいいのだが。意見を変えろと強制するようなやり方は本意ではない。……が、責任ある立場の者が嫌悪や偏見を引きずっているのは本人の為にもよろしくはないと思うのでな」
それについてルベーノが、即座に案を出してくる。
「法で制限されていたならば、μがオートマトンの起動を見た事はあるまい。あちらで起動させてオートマトンとのこの世界の関わりを直接見て経験を積ませてはどうか」
無理をすればマゴイは余計にオートマトンに対する感情をこじらせてしまう。
しかし生半可なやり方では固定観念を崩せそうもない。
プラスマイナスを天秤にかければプラスの方が大きいのではないのではないかと、レイアは判断を下した。
「まあ、悪くない案だな」
ディーナもリオンもルベーノの案に反対しなかった。
詩も基本反対ではない。が、気がかりな部分がある。
「オートマトンを島で起動させるなら――ハンターオフィスの許可が必要じゃないかなあ」
確かにそうだ。
というわけでルベーノは、オフィスに相談を持ちかける。
「オートマトンの回収も大事だが、μの意識を変えることもまた同様に大事だ。俺の最大の危惧は、今後も大量のオートマトンがユニゾンに流れ着くかもしれんということだ。エバーグリーンの一部が大量にクリムゾンウェストに滑落した結果でなければ、未起動オートマトンがユニゾン島に流れ着くわけがなかろう? 毎回罰金を払って回収するのはナンセンスだ」
オフィスからの回答は、以下だった。
「オートマトンはハンターズ・ソサエティでなければ再起動させられません。専用設備がそこにしかありませんので。ですので、あなたの提案を受けることは出来ません。もしどうしても再起動を見てもらいたいというなら、マゴイさんからこちらに来てもらうよう説得してもらうしか……」
●来たよユニゾン
ユニゾン島、港。
「お久しぶりです、マゴイさん」
『……お久しぶり……』
「ハンターオフィスからの依頼でオートマトンを引き取りにきたよ」
『……そう、ご苦労様……』
わふわふ吠え歓迎の意を示すコボルドたちはともかく、リオンと詩の挨拶に答えるマゴイは、微妙にぴりぴりしていた。
果たしてこちらの事情がちゃんと伝わっているのか危ぶんだリオンは、彼女に詳細を説明する。
「このオートマトンを投棄したのは、ハンターオフィスではありません。ですが、代理で引き取ることにしました。オートマトンの廃棄は見過ごせないということで――」
それを聞いたマゴイは、緊張感を緩めた。
『……あら……そうだったの……それはいいこと……そのように環境問題に関心の高い人が多いなら……私たちもだいぶ助かる……』
環境問題ではなく人道問題。
そんな思いを抱きつつハンターたちは、滞りなく書類作成、罰金支払いを行う。
『……これで手続きは完了したので……オートマトンの引き渡しを……』
マゴイは海沿いにある灰色の大きな格納庫へ、ハンターたちを案内した。
コボルドたちはルベーノ土産のドッグフードをぽりぽり食べながら、倉庫の奥に入っていく。そして、大きな箱を乗せたカートを押し、戻ってくる。
箱の中には裸のオートマトンが1体、緩衝材に埋もれ眠っていた。
ディーナは優しく赤い髪をなでる。
「思ってたよりずっと子供ですの」
詩はオートマトンの横顔を見つめる。この子が「目覚めてよかった」そう感じられるような世界であるといいのだけど――と思いながら。
(もしかして、お腹の中に赤ちゃんのいるお母さんってそんな気分なのかな?)
しばし亡き母の面影を偲んだ後、ルベーノに貰った鉢植えを浮かせ持つマゴイに言う。
「マゴイ、スペットにお仕事を頼んでるんでしょ?」
『ええ……』
「やっぱりお仕事をするにあたって大切なのはモチベーションだと思うんだよね。スペットはいつ元の頭に戻れるのかやきもきしてるんだよ。ここではっきりマゴイから確約を貰えればスペットもモチベーションMAXで仕事にあたれると思うんだ。そしたらマゴイも早く新型マテリアル炉を起動出来てお互いWINWINでしょ?――ほら、スペットもちゃんとお願いして!」
「いやもう頼むわホンマ。マテリアル炉が出来たら真っ先にその課題に取り組むて、明言してくれへんか?」
マゴイは宙を見て沈思黙考すること3分。
『……いいわよ……』
そこでルベーノが切り出す。
「μ、この世界のオートマトンとの関わりを見たいと言っただろう?」
『……ええ……』
「それなら彼を起動し直接話を聞くのはどうだ」
マゴイが目を見開く。
白い花の鉢植えを落としかけたが、すんでのところで宙に止める。
『おーとまとん を きどう?』
まずいかなと思いフォローするリオン。
「もちろん、ここで起動ということではないですよ? ハンターオフィス本部で、です」
しかし脇からディーナが、衝撃的発言を。
「無事なオートマトンの引き渡しありがとうなの。早速だけどユニゾンとマゴイさんにお願いがあるの。リアルブルーのステキ諺にこういうのがあるの。【1度あったら2度3度、1匹見かけたら300匹】……土左衛門が流れ着く海岸は潮流の関係で大体決まってるの、つまり今後もドッカンドッカン大量に未起動オートマトンが流れ着く可能性があると思うの」
マゴイの顔色が変わった。もともと白いのが更に白くなる。いわゆる顔面蒼白状態だ。
ルベーノの次の言葉によって、長い髪もざわつき始めた。
「この世界にオートマトンを作る技術はない。つまり、リザードマンの集落と同じく、ここに向かう海流の先にエバーグリーンのオートマトン関連施設が墜ちたということだ。これからも誤廃棄でなく主人のいない未起動オートマトンが大量に漂着する可能性がある」
『……大量の……オートマトン……それは駄目……オートマトンはとにかく駄目……』
分かりやすい拒否を前にディーナは熱弁を振るう。
「私達は未起動オートマトンを生まれ出る前段階、赤子にも等しく感じるの。私達がウテルスを壊しても私たちにとっては只の機材破損に過ぎないけど――」
心乱れているところにウテルスの単語を出したのはまずかった。マゴイの顔が険しく引きつる。
威嚇するようにディーナの周囲へ結界を張る。硬質なガラス板を思わせるものを何重にも。
彼女の声は震え気味だった。憤激と警戒と怯えによって。
『……ウテルスに何かするつもりなら……今すぐユニゾンから出て行ってもらう……』
リオンはなるべく柔らかい口調でとりなす。
「落ち着いてください、ディーナさんが今言ったのはものの譬えですよ。ウテルスを傷つけようなんて誰も思っていません」
ディーナも急いで、自分に害意がないことを伝える。
「譬えでも言葉が過ぎたならごめんなさいなの――でも、貴女が今感じていることを、私たちも感じるの。もしオートマトンが壊されたなら」
『……』
「今、クリムゾンウェストでオートマトンの人権は否定されていないの。精霊を内蔵した生物扱いで人と同等に扱われてるの。彼等には自発的な意思があり行動できると、同じ人類の仲間として歪虚と戦える人の括りに入るものとして慣習法レベルで認識されているの」
結界はその数を減らした。しかし全ては解けないままだ。
ルベーノがマゴイに、改めて話しかける。
「大量のオートマトンが流れ着くとあれば、ユニゾンの人手だけでは処理出来まい。外部からの助力も得なければならん。 この世界では未起動オートマトンの破壊は殺人に準ずる……失神している人間を殺すようなものだ。無差別大量殺人国家と見做されるのはユニゾンにとって不利益にしかならん。人道的措置としてオフィスが無償回収できるよう法整備できないか」
レイアもそこに割り込んだ。
「オートマトンに対する君のルールは守ろう。だがルールというのなら好悪を超えたところになければならないと思うのだがどうだろう? この地の管理者として「嫌いだから持ち帰れ」では示しがつくまい?」
『……嫌いだからじゃない……有害だから持ち帰るように言っているの……オートマトンは社会に悪影響を及ぼす……』
「確かにエバーグリーンではそうだったんだろう――だが、この世界ではどうか? お前も何か違うと思ってるから、調べようとしているのではないのか?」
マゴイは眉間にしわを寄せた。
『……これは重大案件なので緊急会議を招集する……』
そのまま、吸い込まれるように鉢植えと地面の中へ。
結界は消え、ハンターたちはその場に取り残される。
レイアはスペットに聞く。
「この場合どうしたらいいんだ?」
「待ちの一手しかあらへんなあ――とりあえずそのオートマトン、先に船に積んどったらどないや? 最低でも1時間は一人会議から戻ってきいへんぞ、あいつ」
●変化の兆し
2時間後に戻って来たマゴイは、髪を乱し目を赤くしていた。どうやら大激論を交わし合ったらしい。自分同士で。
『……今後起きるかも知れない事態に備え臨時特別オートマトン回収法を制定することを全会一致で可決したわ……人災ではなく天災と解釈し罰金は課さない……その代わりに早急な機体の引き取りを要求する……』
無償引き渡しルートの確保は出来た。一定の成果だ。
だがこれはマゴイのオートマトンに対する考えが和らいだからではない。『大量に未起動オートマトンが漂着するかもしれない』という衝撃的予測を前に緊急避難的措置をとっただけである。
ルベーノは、彼女に改めて言った。
「μ、話は戻るがオートマトンの起動に立ち会う気はないか? ハンターオフィス本部で行われるのだが……」
マゴイはかたくなに首を振る。
『……行かない……』
「オートマトンのことを知りたいのだろう?」
『……それはそうだけれども……エレメントである私が……オートマトン稼動現場に行くこと自体がたいへん……危険すぎるので行かない……』
リオンはスペットに聞いた。
「危険とはどういうことです?」
「多分、オートマトンの中に組み込まれることを警戒してるんやな」
ディーナは眉を八の字にし、反論する。
「そんなことは起きないの。オートマトンに入ってもいいと思う精霊だけがオートマトンに組み込まれるの」
「そらこっちでの話やろ。エバーグリーンでは、入っていたかろうがそうでなかろうが手当たり次第エレメントを捕まえて入れ込んでたさかいな」
ルベーノはひとしきり考え、マゴイが妥協出来そうな線を見いだした。
「……よし分かった。では現場に行かぬまま見学するのはどうだ。お前はさまざまなものに憑依し遠隔操作出来る。その技を使えば――」
話が長引きそうだと見た詩は、1人場を離れ、外部者宿泊所に行く。新しく市民になった人が、そこに勤めていると聞いたもので。
着いてみれば、この前来たときなかったものがあった。
花だ。港湾地区に植えてあるものと形はそっくりだが――白ではない。赤や青や緑や黄色といった別の色が交じったもの。それがあちらこちらに植わっている。
ちょうど新市民が宿泊所の玄関で掃き掃除をしているところだったので、声をかけ聞いてみる。
「ああ、花壇に使う花の不良品だよ。栽培してると、たまにああいう色変わりが出てしまうんだと。もともとは廃棄してたみたいなんだが、なんだか勿体ないからってことで、コボルドたちが植えだして」
「マゴイ、止めなかったの?」
「特にそういうことはなかったな。ここは市民以外の人間が使う場所だから、まあいいだろうということみたいだ」
「ふーん」
多様性を認めようという兆しだろうか。是非ともそうあってほしい所だが。
「ね、ここでの暮らしはどう? 困ったこととかない?」
「ないなあ。平穏無事だ。それが一番」
「そっか、よかった。ね、コボルドや、市民じゃないけど人魚達は良い子だから仲良くしてあげてね」
「ああ。コボルドも慣れてみれば気がいい奴らでな」
そこにリオンがやってきた。マゴイとの話し合いが終わったらしい。
詩が聞く。
「どうだった? マゴイ、オートマトンの起動見に行くって?」
「行くそうです。憑依状態でなら大丈夫だろうと結論づけられまして。それはそれとして新しいマテリアル炉、砂州の近くに作るみたいですね」
「へー、そうなんだ。見てきたの?」
「ええ。ちょっと島を巡るついでに。看板の先は結界で入れないようにしてありましたが――ところであれは、何でしょうか」
とリオンが指さしたのは、ガラス張りの扉の向こう。
広々したロビーの受付、依然と変わらずウォッチャーが控えているが、その近くに何かが座っている。
入って確かめてみれば、白いまるごとうさぎ――確か以前とあるハンターより、彼女に贈られたものだ。白い花輪を首にかけ『ユニゾンへようこそ』という小旗を持っている。
どうやらマスコットとして活用しているらしい。
●初めまして
後日。ハンターとマゴイの立ち会いのもと、オートマトンの再起動作業が行われた。
額に目玉模様が浮き出たハムスターが、魔法陣と連動した魔導機械の周囲を歩き回りながら、黒い箱に命じる。
『コレガコノ世界ノ起動装置……ウォッチャー……スキャン……』
ルベーノはそれをすくい上げ、肩の上に乗せる。
「始まるぞ、マゴイ」
魔法陣の中に寝ているオートマトン――彼(あるいは彼女)――はもう裸ではなく、服を着せてもらっていた。簡素なシャツと、短パン。
詩は発光する魔法陣に目を細める。
オートマトンの目が静かに開いた。髪と同じ赤い色。
今眠りから覚めたように伸びをし、周囲を見回し、にっこり微笑む。
「皆さん、初めまして」
ディーナも微笑んだ。
「初めまして。私はディーナですの。こちらは詩さん、エルバッハさん、レイアさん、ルベーノさん。それから……」
ルベーノのマント裏へ移動していたハムスターを捕まえ両手に包み、オートマトンに差し出す。
「こちらがマゴイさんですの」
「わあ、ちっさい」
オートマトンはハムスターに触ろうとした。が、触れなかった。ハムスターが自分の周囲に結界を張ったのだ。目を三角にして。
(偏見は一朝一夕には直らないか……)
とはいえ自ら接触を計ろうとしているあたり、進歩はしているのだろうとレイアは思う。
リオンが尋ねた。不思議そうに結界をつつくオートマトンに。
「あなたの名前は何ですか?」
「ワタシはね、えーと……うーんと……わかんないです」
オートマトンを救うべく名乗りを上げたハンターは、ディーナ・フェルミ(ka5843) 、レイア・アローネ(ka4082)、ルベーノ・バルバライン(ka6752)、天竜寺 詩(ka0396)、そしてエルバッハ・リオン(ka2434)の5名であった。
出立の前に彼らは、今回の課題についてどう対処するか話し合う。
レイアはまず何よりも、マゴイのオートマトン嫌いについて問題視した。
「出来ればこの機会に改善出来ればいいのだが。意見を変えろと強制するようなやり方は本意ではない。……が、責任ある立場の者が嫌悪や偏見を引きずっているのは本人の為にもよろしくはないと思うのでな」
それについてルベーノが、即座に案を出してくる。
「法で制限されていたならば、μがオートマトンの起動を見た事はあるまい。あちらで起動させてオートマトンとのこの世界の関わりを直接見て経験を積ませてはどうか」
無理をすればマゴイは余計にオートマトンに対する感情をこじらせてしまう。
しかし生半可なやり方では固定観念を崩せそうもない。
プラスマイナスを天秤にかければプラスの方が大きいのではないのではないかと、レイアは判断を下した。
「まあ、悪くない案だな」
ディーナもリオンもルベーノの案に反対しなかった。
詩も基本反対ではない。が、気がかりな部分がある。
「オートマトンを島で起動させるなら――ハンターオフィスの許可が必要じゃないかなあ」
確かにそうだ。
というわけでルベーノは、オフィスに相談を持ちかける。
「オートマトンの回収も大事だが、μの意識を変えることもまた同様に大事だ。俺の最大の危惧は、今後も大量のオートマトンがユニゾンに流れ着くかもしれんということだ。エバーグリーンの一部が大量にクリムゾンウェストに滑落した結果でなければ、未起動オートマトンがユニゾン島に流れ着くわけがなかろう? 毎回罰金を払って回収するのはナンセンスだ」
オフィスからの回答は、以下だった。
「オートマトンはハンターズ・ソサエティでなければ再起動させられません。専用設備がそこにしかありませんので。ですので、あなたの提案を受けることは出来ません。もしどうしても再起動を見てもらいたいというなら、マゴイさんからこちらに来てもらうよう説得してもらうしか……」
●来たよユニゾン
ユニゾン島、港。
「お久しぶりです、マゴイさん」
『……お久しぶり……』
「ハンターオフィスからの依頼でオートマトンを引き取りにきたよ」
『……そう、ご苦労様……』
わふわふ吠え歓迎の意を示すコボルドたちはともかく、リオンと詩の挨拶に答えるマゴイは、微妙にぴりぴりしていた。
果たしてこちらの事情がちゃんと伝わっているのか危ぶんだリオンは、彼女に詳細を説明する。
「このオートマトンを投棄したのは、ハンターオフィスではありません。ですが、代理で引き取ることにしました。オートマトンの廃棄は見過ごせないということで――」
それを聞いたマゴイは、緊張感を緩めた。
『……あら……そうだったの……それはいいこと……そのように環境問題に関心の高い人が多いなら……私たちもだいぶ助かる……』
環境問題ではなく人道問題。
そんな思いを抱きつつハンターたちは、滞りなく書類作成、罰金支払いを行う。
『……これで手続きは完了したので……オートマトンの引き渡しを……』
マゴイは海沿いにある灰色の大きな格納庫へ、ハンターたちを案内した。
コボルドたちはルベーノ土産のドッグフードをぽりぽり食べながら、倉庫の奥に入っていく。そして、大きな箱を乗せたカートを押し、戻ってくる。
箱の中には裸のオートマトンが1体、緩衝材に埋もれ眠っていた。
ディーナは優しく赤い髪をなでる。
「思ってたよりずっと子供ですの」
詩はオートマトンの横顔を見つめる。この子が「目覚めてよかった」そう感じられるような世界であるといいのだけど――と思いながら。
(もしかして、お腹の中に赤ちゃんのいるお母さんってそんな気分なのかな?)
しばし亡き母の面影を偲んだ後、ルベーノに貰った鉢植えを浮かせ持つマゴイに言う。
「マゴイ、スペットにお仕事を頼んでるんでしょ?」
『ええ……』
「やっぱりお仕事をするにあたって大切なのはモチベーションだと思うんだよね。スペットはいつ元の頭に戻れるのかやきもきしてるんだよ。ここではっきりマゴイから確約を貰えればスペットもモチベーションMAXで仕事にあたれると思うんだ。そしたらマゴイも早く新型マテリアル炉を起動出来てお互いWINWINでしょ?――ほら、スペットもちゃんとお願いして!」
「いやもう頼むわホンマ。マテリアル炉が出来たら真っ先にその課題に取り組むて、明言してくれへんか?」
マゴイは宙を見て沈思黙考すること3分。
『……いいわよ……』
そこでルベーノが切り出す。
「μ、この世界のオートマトンとの関わりを見たいと言っただろう?」
『……ええ……』
「それなら彼を起動し直接話を聞くのはどうだ」
マゴイが目を見開く。
白い花の鉢植えを落としかけたが、すんでのところで宙に止める。
『おーとまとん を きどう?』
まずいかなと思いフォローするリオン。
「もちろん、ここで起動ということではないですよ? ハンターオフィス本部で、です」
しかし脇からディーナが、衝撃的発言を。
「無事なオートマトンの引き渡しありがとうなの。早速だけどユニゾンとマゴイさんにお願いがあるの。リアルブルーのステキ諺にこういうのがあるの。【1度あったら2度3度、1匹見かけたら300匹】……土左衛門が流れ着く海岸は潮流の関係で大体決まってるの、つまり今後もドッカンドッカン大量に未起動オートマトンが流れ着く可能性があると思うの」
マゴイの顔色が変わった。もともと白いのが更に白くなる。いわゆる顔面蒼白状態だ。
ルベーノの次の言葉によって、長い髪もざわつき始めた。
「この世界にオートマトンを作る技術はない。つまり、リザードマンの集落と同じく、ここに向かう海流の先にエバーグリーンのオートマトン関連施設が墜ちたということだ。これからも誤廃棄でなく主人のいない未起動オートマトンが大量に漂着する可能性がある」
『……大量の……オートマトン……それは駄目……オートマトンはとにかく駄目……』
分かりやすい拒否を前にディーナは熱弁を振るう。
「私達は未起動オートマトンを生まれ出る前段階、赤子にも等しく感じるの。私達がウテルスを壊しても私たちにとっては只の機材破損に過ぎないけど――」
心乱れているところにウテルスの単語を出したのはまずかった。マゴイの顔が険しく引きつる。
威嚇するようにディーナの周囲へ結界を張る。硬質なガラス板を思わせるものを何重にも。
彼女の声は震え気味だった。憤激と警戒と怯えによって。
『……ウテルスに何かするつもりなら……今すぐユニゾンから出て行ってもらう……』
リオンはなるべく柔らかい口調でとりなす。
「落ち着いてください、ディーナさんが今言ったのはものの譬えですよ。ウテルスを傷つけようなんて誰も思っていません」
ディーナも急いで、自分に害意がないことを伝える。
「譬えでも言葉が過ぎたならごめんなさいなの――でも、貴女が今感じていることを、私たちも感じるの。もしオートマトンが壊されたなら」
『……』
「今、クリムゾンウェストでオートマトンの人権は否定されていないの。精霊を内蔵した生物扱いで人と同等に扱われてるの。彼等には自発的な意思があり行動できると、同じ人類の仲間として歪虚と戦える人の括りに入るものとして慣習法レベルで認識されているの」
結界はその数を減らした。しかし全ては解けないままだ。
ルベーノがマゴイに、改めて話しかける。
「大量のオートマトンが流れ着くとあれば、ユニゾンの人手だけでは処理出来まい。外部からの助力も得なければならん。 この世界では未起動オートマトンの破壊は殺人に準ずる……失神している人間を殺すようなものだ。無差別大量殺人国家と見做されるのはユニゾンにとって不利益にしかならん。人道的措置としてオフィスが無償回収できるよう法整備できないか」
レイアもそこに割り込んだ。
「オートマトンに対する君のルールは守ろう。だがルールというのなら好悪を超えたところになければならないと思うのだがどうだろう? この地の管理者として「嫌いだから持ち帰れ」では示しがつくまい?」
『……嫌いだからじゃない……有害だから持ち帰るように言っているの……オートマトンは社会に悪影響を及ぼす……』
「確かにエバーグリーンではそうだったんだろう――だが、この世界ではどうか? お前も何か違うと思ってるから、調べようとしているのではないのか?」
マゴイは眉間にしわを寄せた。
『……これは重大案件なので緊急会議を招集する……』
そのまま、吸い込まれるように鉢植えと地面の中へ。
結界は消え、ハンターたちはその場に取り残される。
レイアはスペットに聞く。
「この場合どうしたらいいんだ?」
「待ちの一手しかあらへんなあ――とりあえずそのオートマトン、先に船に積んどったらどないや? 最低でも1時間は一人会議から戻ってきいへんぞ、あいつ」
●変化の兆し
2時間後に戻って来たマゴイは、髪を乱し目を赤くしていた。どうやら大激論を交わし合ったらしい。自分同士で。
『……今後起きるかも知れない事態に備え臨時特別オートマトン回収法を制定することを全会一致で可決したわ……人災ではなく天災と解釈し罰金は課さない……その代わりに早急な機体の引き取りを要求する……』
無償引き渡しルートの確保は出来た。一定の成果だ。
だがこれはマゴイのオートマトンに対する考えが和らいだからではない。『大量に未起動オートマトンが漂着するかもしれない』という衝撃的予測を前に緊急避難的措置をとっただけである。
ルベーノは、彼女に改めて言った。
「μ、話は戻るがオートマトンの起動に立ち会う気はないか? ハンターオフィス本部で行われるのだが……」
マゴイはかたくなに首を振る。
『……行かない……』
「オートマトンのことを知りたいのだろう?」
『……それはそうだけれども……エレメントである私が……オートマトン稼動現場に行くこと自体がたいへん……危険すぎるので行かない……』
リオンはスペットに聞いた。
「危険とはどういうことです?」
「多分、オートマトンの中に組み込まれることを警戒してるんやな」
ディーナは眉を八の字にし、反論する。
「そんなことは起きないの。オートマトンに入ってもいいと思う精霊だけがオートマトンに組み込まれるの」
「そらこっちでの話やろ。エバーグリーンでは、入っていたかろうがそうでなかろうが手当たり次第エレメントを捕まえて入れ込んでたさかいな」
ルベーノはひとしきり考え、マゴイが妥協出来そうな線を見いだした。
「……よし分かった。では現場に行かぬまま見学するのはどうだ。お前はさまざまなものに憑依し遠隔操作出来る。その技を使えば――」
話が長引きそうだと見た詩は、1人場を離れ、外部者宿泊所に行く。新しく市民になった人が、そこに勤めていると聞いたもので。
着いてみれば、この前来たときなかったものがあった。
花だ。港湾地区に植えてあるものと形はそっくりだが――白ではない。赤や青や緑や黄色といった別の色が交じったもの。それがあちらこちらに植わっている。
ちょうど新市民が宿泊所の玄関で掃き掃除をしているところだったので、声をかけ聞いてみる。
「ああ、花壇に使う花の不良品だよ。栽培してると、たまにああいう色変わりが出てしまうんだと。もともとは廃棄してたみたいなんだが、なんだか勿体ないからってことで、コボルドたちが植えだして」
「マゴイ、止めなかったの?」
「特にそういうことはなかったな。ここは市民以外の人間が使う場所だから、まあいいだろうということみたいだ」
「ふーん」
多様性を認めようという兆しだろうか。是非ともそうあってほしい所だが。
「ね、ここでの暮らしはどう? 困ったこととかない?」
「ないなあ。平穏無事だ。それが一番」
「そっか、よかった。ね、コボルドや、市民じゃないけど人魚達は良い子だから仲良くしてあげてね」
「ああ。コボルドも慣れてみれば気がいい奴らでな」
そこにリオンがやってきた。マゴイとの話し合いが終わったらしい。
詩が聞く。
「どうだった? マゴイ、オートマトンの起動見に行くって?」
「行くそうです。憑依状態でなら大丈夫だろうと結論づけられまして。それはそれとして新しいマテリアル炉、砂州の近くに作るみたいですね」
「へー、そうなんだ。見てきたの?」
「ええ。ちょっと島を巡るついでに。看板の先は結界で入れないようにしてありましたが――ところであれは、何でしょうか」
とリオンが指さしたのは、ガラス張りの扉の向こう。
広々したロビーの受付、依然と変わらずウォッチャーが控えているが、その近くに何かが座っている。
入って確かめてみれば、白いまるごとうさぎ――確か以前とあるハンターより、彼女に贈られたものだ。白い花輪を首にかけ『ユニゾンへようこそ』という小旗を持っている。
どうやらマスコットとして活用しているらしい。
●初めまして
後日。ハンターとマゴイの立ち会いのもと、オートマトンの再起動作業が行われた。
額に目玉模様が浮き出たハムスターが、魔法陣と連動した魔導機械の周囲を歩き回りながら、黒い箱に命じる。
『コレガコノ世界ノ起動装置……ウォッチャー……スキャン……』
ルベーノはそれをすくい上げ、肩の上に乗せる。
「始まるぞ、マゴイ」
魔法陣の中に寝ているオートマトン――彼(あるいは彼女)――はもう裸ではなく、服を着せてもらっていた。簡素なシャツと、短パン。
詩は発光する魔法陣に目を細める。
オートマトンの目が静かに開いた。髪と同じ赤い色。
今眠りから覚めたように伸びをし、周囲を見回し、にっこり微笑む。
「皆さん、初めまして」
ディーナも微笑んだ。
「初めまして。私はディーナですの。こちらは詩さん、エルバッハさん、レイアさん、ルベーノさん。それから……」
ルベーノのマント裏へ移動していたハムスターを捕まえ両手に包み、オートマトンに差し出す。
「こちらがマゴイさんですの」
「わあ、ちっさい」
オートマトンはハムスターに触ろうとした。が、触れなかった。ハムスターが自分の周囲に結界を張ったのだ。目を三角にして。
(偏見は一朝一夕には直らないか……)
とはいえ自ら接触を計ろうとしているあたり、進歩はしているのだろうとレイアは思う。
リオンが尋ねた。不思議そうに結界をつつくオートマトンに。
「あなたの名前は何ですか?」
「ワタシはね、えーと……うーんと……わかんないです」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/25 22:32:32 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/07/26 06:53:40 |
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質問卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/07/23 19:06:30 |