ゲスト
(ka0000)
遠き声聞く
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2018/07/22 12:00
- 完成日
- 2018/07/23 14:01
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●遺跡からの呼び声
「おぉん……おぉん……」
それは何かの鳴き声だろうか。それとも森の木のざわめきだろうか。なんとなく不吉な音がすると遺跡の近くの村では話題になっていた。
いわく、その遺跡は古代人の作った墓所であり祭壇である。夜ごと響く声は古代人の嘆きの声である。
いわく、その遺跡には野生動物が住み着いている。その野生動物が腹を減らし調査に訪れた人間を食らおうとしている。なぜ遺跡から出ないかというと遺跡に封印されているらしい。
いわく、それは新手の人に害を及ぼす植物のたてる音である。植物は成人男性でも一飲みにしてしまうらしい。
などなど、いろいろなうわさがハンターオフィスに舞い込み、調査団が派遣されることになったのだった。
調査団のまとめた資料を見ながらため息をつくのはルカ・シュバルツエンド。童顔だがそれなりに年がいっているとは本人談。
「どうも古代遺跡で、崩れた個所に風が通ってうめき声のようなものが聞こえているだけらしいね。危険はない。ないんだけど疑心暗鬼にかられた村人たちが納得してくれない。
お門違いだってことはわかってるんだけど埋蔵品の回収と遺跡の簡単な修理をお願いできないかな。古代文明のものだからね、解析すれば何か役に立つものが見つかるかもしれない。見つからない可能性ももちろんある。
で、修理なんだけど。できるだけ遺跡の雰囲気を壊さないように、問題のうめき声に聞こえる風穴を土と泥なんかでふさいで、乾かして。崩れそうになっている部分は木を伐採したものなんかで補強をお願いしたいんだ。
静かで平和な森だからね、命の危険はないはずだよ。ただ暑い中力仕事をしてもらうことになる。
調査団の報告を信じなかった村人に対して……うそをつくことになってしまうけれど化け物は自分たちが退治したからもう大丈夫、とか言ってくれると無謀な行動をする若者とかがいなくなるかなぁ。いなくなるといいなぁ。補強を頼むとはいえ森の中で迷ったり遺跡が崩れてけがをしたりすると大変だからね」
僕も同行するよ。力仕事はあまり得意じゃないけど、何か手伝ってほしいことがあれば声をかけてほしい。
一番難しいのは発掘作業でも修復作業でもなく疑心暗鬼に凝り固まった村人への安全になったという説得なのかもしれない。
そう考えているのかルカはどうにも生暖かい目をしてハンターたちに書類を配り始めたのだった。
「おぉん……おぉん……」
それは何かの鳴き声だろうか。それとも森の木のざわめきだろうか。なんとなく不吉な音がすると遺跡の近くの村では話題になっていた。
いわく、その遺跡は古代人の作った墓所であり祭壇である。夜ごと響く声は古代人の嘆きの声である。
いわく、その遺跡には野生動物が住み着いている。その野生動物が腹を減らし調査に訪れた人間を食らおうとしている。なぜ遺跡から出ないかというと遺跡に封印されているらしい。
いわく、それは新手の人に害を及ぼす植物のたてる音である。植物は成人男性でも一飲みにしてしまうらしい。
などなど、いろいろなうわさがハンターオフィスに舞い込み、調査団が派遣されることになったのだった。
調査団のまとめた資料を見ながらため息をつくのはルカ・シュバルツエンド。童顔だがそれなりに年がいっているとは本人談。
「どうも古代遺跡で、崩れた個所に風が通ってうめき声のようなものが聞こえているだけらしいね。危険はない。ないんだけど疑心暗鬼にかられた村人たちが納得してくれない。
お門違いだってことはわかってるんだけど埋蔵品の回収と遺跡の簡単な修理をお願いできないかな。古代文明のものだからね、解析すれば何か役に立つものが見つかるかもしれない。見つからない可能性ももちろんある。
で、修理なんだけど。できるだけ遺跡の雰囲気を壊さないように、問題のうめき声に聞こえる風穴を土と泥なんかでふさいで、乾かして。崩れそうになっている部分は木を伐採したものなんかで補強をお願いしたいんだ。
静かで平和な森だからね、命の危険はないはずだよ。ただ暑い中力仕事をしてもらうことになる。
調査団の報告を信じなかった村人に対して……うそをつくことになってしまうけれど化け物は自分たちが退治したからもう大丈夫、とか言ってくれると無謀な行動をする若者とかがいなくなるかなぁ。いなくなるといいなぁ。補強を頼むとはいえ森の中で迷ったり遺跡が崩れてけがをしたりすると大変だからね」
僕も同行するよ。力仕事はあまり得意じゃないけど、何か手伝ってほしいことがあれば声をかけてほしい。
一番難しいのは発掘作業でも修復作業でもなく疑心暗鬼に凝り固まった村人への安全になったという説得なのかもしれない。
そう考えているのかルカはどうにも生暖かい目をしてハンターたちに書類を配り始めたのだった。
リプレイ本文
●遺跡の修復、そして村人の説得。最大の敵は……暑さ、お前だ!
ハンターたちが遺跡の調査と修復に向かうと決めた日は快晴だった。雲一つないくらいの文句なしの快晴だった。したがってとてつもなく暑かった。
「日差しが強い、ですね……これは熱中症に気を付けなくてはいけません……。でも、泥が乾くのがはやいから、熱中症に気を付ければ、修復ははかどるでしょうか」
物事を前向きにとらえようとけなげな発言をしたのはミオレスカ(ka3496)で、確かに遺跡の外観を損ねないためには泥などの自然の物質を使うし泥は水と混ぜてこねたものを使わなくては役に立たないから乾燥させるという一点については役に立ちそうな日差しだった。
「招待のわからない恐ろしい声は、不安になりますね。調査団の報告では、ご納得いただけませんでしたか、ともかく、鳴りやまないと、解決になりそうもないですね。私たちが、なんとかしますので、安心してください」
一度ハンターたちだけで遺跡に向かった後遺跡に複数空いていた風穴を特定、どうも風穴を吹き抜ける風同士が反響し合って不気味な音を立てているということを把握し、ミオレスカは危険があれば自分たちが排除するから遺跡の修理が進む間に風音が減っていくのを自分たちの耳で確認してほしい、と同行を頼む。
「……本当に危険はないんだな?」
「絶対に、絶対に風の音だけなんだな? 人の命を脅かす魔物や、歪虚や、動物もいないんだな?」
この村人たち、ずいぶん臆病になっているようだ。
「未知への恐れというのは人の本能みたいなものだ。恐れるのも仕方のないところだな。それを安心させられるようにするのもハンターの仕事。私が安全を保障しよう。なに、これでも腕は立つ方だ。心配はいらない」
レイア・アローネ(ka4082)の力強いコメントによって力自慢の二人、ちなみにこの二人は次期村長候補らしく今は村長の補佐をしていて、村人からの信頼も厚いらしい。その二人が現場に同行することになった。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は年の関係で村にとどまることになった村長の手をガシッとつかんでぶんぶんと握手。
「疑心暗鬼をやっつけるのは正しく聖職者のお仕事なの。この度はお招きありがとうなの。ディーナ・フェルミというの。皆さんの安眠を取り戻しに来たの。不安な中、自分たちで解決しようとせずよくハンターを頼ってくれたの。ハンター冥利に尽きるの」
にこにこと穏やかな笑顔で、相手が相談してくれたことをほめる。こんなくだらないことで、と相手が羞恥心を抱くことを避け、相手の行動を行動することで信頼感や作業への理解、作業終了後の安心感を高めるためだ。
行動を信じてもらうことが最大の重要要素、でなければ調査団と同じように信じてもらえない結果に陥る、と考えているので遺跡の見取り図を見せて風穴を示し、反響し合っているようだからふさいでみること、夜間に特に鳴り響くということなので夜間は自分が泊まり込んで風穴の音のほかに獣が出たりしないかを確認するということで安全をアピールする。
「みんなからも説明があったけど遺跡の壁や天井が崩れて、そこから通る風でヒュルヒュル音が鳴るようになったことが分かったの。天然の口笛状態なの。ほうっておくとどんどん遺跡が崩れてあぶないし、みなさんも夜気になって眠れないと思うの。だからこれからあいてしまった穴をふさいで全体を補強するの。エクラ様のなにかけて、見に来てくれた人には困ったことは起きないと約束するし、そのために私たちハンターは全力でお二人を護るの」
ディーナが行くと決めたがまだ不安がっている二人の若者の背を押すように二人とも握手。邪気のない瞳でじっと見つめて決断させるとトリプルJ(ka6653)は主に保護者として子供たちに被害が出ないか心配しているメンツに向かって口を開いた。
「既に調査団が入って、そういう曰くがある遺跡じゃないのは確認済みだ。ただ確かに寝静まる夜に煩ぇのは腹が立つよな? 全体的に崩れやすくもあるらしいんで、そういう補強も兼ねて俺らが作業するわけだ。遺跡ってのは何にも残ってなくても、そこにあるだけで学術的価値ってのはあるからなあ。実際俺らにはゴミにしか見えねぇ昔の人間が使ってた布の破片とか皿の破片とかくらいしか出なかったらしいしな。ある意味子供の秘密基地にゃ完璧な場所だろうが、俺らも崩れた場所を補修するだけで崩れそうな場所全部を補修するわけじゃねぇ。無闇に子供が潜り込んで怪我しないように、村の大人には代表者で構わないんで是非見に来て貰いたいもんだ。そうすりゃ何もなくても子供が遊ぶにゃ不向きな場所だと分かって貰えるだろ?」
「はい……遺跡は子供たちが人目を忍んで遊びに行きたがる場所でもあって困っているんです。度胸試し、とでも言いましょうか。それで私たち親は気が気じゃなくて。調査団の方たちは後日改めてもっと大きな調査団を組むといっていましたので、保護文化財のようなものになって立ち入り禁止になってくれるとありがたいんですけれど」
興味や度胸試し、大人に何でもなかったよ、と報告するために遺跡に忍び込む子供が出て山狩りをするたびに大人たちはさぞ肝が冷えたことだろう。なにせ崩落しかねない遺跡なのだから。
「それにしtも遺跡の修繕なんてロマンじゃねぇか、なぁ? こういうのは学者先生がやるもんだろ。ちょっと興味があってこの依頼に来たんだよな、実は」
「まぁ、村人の説得、事前段階では悪くない手ごたえだしあとは熱中症で倒れて不安をあおらないことが大事だよね。あとはお弁当食べて食中毒とか。夏場はいろいろ怖いから」
埋蔵品などの調査と非力でもできることはあるだろう、と駆り出されたルカ・シュバルツエンド(kz0073)がハンカチで顔をぬぐう。
村人二人を連れて遺跡に向かう途中でのトリプルJとの会話だった。
「遺跡にロマンを感じるということは学術的に価値のないと思われるものを持ち帰ったりしたいのかな? あまり数は多く持って行かせることはできないけど一つ二つなら記念に持ち帰っても」
「ロマンは写真で十分さ」
「そうかい、無欲だね」
●修繕開始
「まずは、どこをふさがないといけないかを吟味して材料を調達、ですね。今日一日では完遂はできないと思うのでまずは風穴から、でしょうか」
風穴をふさぐための土と泥をこね、できるだけ遺跡を作る材質に似た色になるように配合を考えながらミオレスカが大雑把なスケジュールを考える。
トリプルJは力仕事は任せろ、と補強に使う木の伐採に向かっていた。
全員の共通認識としてはどうやら暑さが一番の大敵。すぐ届くところに飲料水を置き、汗の対策をしっかりと。
飲料水だけでは塩分不足で熱中症になるので塩分をとれるものも適宜小休止の時に取るように心がける。
ディーナは修復の最中にあれた遺跡をできるだけ丁寧に掃除していく。泥をこねるための水を調達したり、働きすぎて熱中症で倒れる人がいないかもヒーラーの彼女の仕事だ。
「んー! お天気がいいのは助かるけどちょっと暑すぎなの。これで人が倒れたらこの遺跡は呪われてる、なんてあらぬ噂が立ってしまうの」
「そのためにもみんなの健康チェックを頼んだよ。私たちも自分で注意はするがね。村人二人は不安でどうにかなりそうな顔をしているじゃないか。気を配ってやることだ」
ディーナが水を汲んできた後ぼやいた言葉にレイアが口の端だけで笑いながら返事をする。彼女は汗が目に入らないように、それと日よけ対策に頭に布を巻いていた。
ざっとみただけで複数の風穴があったがさらに細かく、丁寧に音の原因を探してふさいでいく。
大きめの風穴は木の枝で渡しを作って泥でふさぐときに泥が落ちてこないようにした。目の粗いざるのようなものだ。
今にも倒壊しそうな部分に関してはトリプルJの伐採してきた樹木で補強を。
風穴からなる音がふさがれるたびに減っていくのを聞いて確認に来た村人もどうやら本当に風の音だったらしいと納得したらしく手伝いをする顔色も落ち着いてきた。
昼頃、入念に傷んでいないかの確認を取って弁当で昼食をとる。
腹が減っては戦ができぬ、戦ではないが力仕事をすれば空腹を感じるのは生き物の摂理なので。
「どうだろうか。少しは安心できたか?いくつか実践したとおり、謎のうめき声のような音は風穴を通った風の反響音だ。夜はディーナと私で見回りと音漏れの確認がないかをしっかり行う。これですこしは安心してもらえると助かるのだが」
「安眠は大事なの。身近に危険が迫っているのに熟睡できる人はめったにいないし、村人さんならやっぱりそういう特殊技能は身に着けずに安眠してほしいの」
「ハンターの皆さんには迷惑をかけてしまったな……どうしても夜に聞こえるあのうめき声……いや、風の音が恐ろしくて。子供は夜泣きがひどくなるし親は育児ノイローゼになるし寝不足でイライラした連中同士のけんかも増えて、呪いか何かじゃないかって思うと心配でますます眠れなくなって」
「迷惑だなんてとんでもねぇよ。そちらさんはそちらさんで大変だったんだろ? 歪虚を倒すのがハンターの仕事だが村人の心の平穏を護るのだってハンターの仕事さ」
「しかし、不安な心から歪虚が発生することは、実際に起こり得るようです。手遅れになる前に、相談していただけて良かった。ここは古来からの祭壇もある遺跡のようですし、定期的に清掃、補修をして、いい状態で保てば、近隣の皆様を、守ってくれることでしょう。
粗雑に扱うと、悪いことは連鎖してしまうものなので、注意してくださいね」
「そうだな……かつて生きてきた人たちの遺した歴史だ……粗雑に扱いすぎたかもしれないな」
村人たちはミオレスカの言葉に深くうなずき、これからはもっと丁寧に遺跡を扱うと約束した。
日没までかかって風穴はすべて修復を完了、崩落しそうな個所は木材で支えた。あとは遺跡の調査団や修復班に任せていいだろう、と一同は切り上げることにする。
トリプルJは写真を撮りながらルカを呼んだ。壁画のようにうっすらと残る塗料のあとを見つけたのだ。
「この遺跡も極彩色に着色されてたりしたのかねぇ……」
「昔の塗料は長い年月を経ても残ると聞いていたけれど……やはり赤は残りやすいみたいだね。修復作業に追われてたから気づかなかったけど、もしかするともっとはっきり塗料が残ってる部分もあったかも」
「あとで様子を見に来てみるかなぁ。修復しました、あとは安全です、じゃ心細いやつはまだ心配だろうしな」
「それもいいかもしれないね。写真は撮れた?」
「おう、ばっちり」
ディーナとレイアは一晩ここで夜明かしして異常がないか、ふさぎ損ねた風穴から音が聞こえないかを確認するために残り、残りのメンバーは下山することになった。
応急処置程度ではあったが手入れをしてもらった遺跡は、きたときよりなんだか柔らかな雰囲気で、喜んでいるように見えたのだった。
これで村人同士のいさかいや育児ノイローゼによる子供への虐待、夜泣きも少しずつ落ち着いていって、落ち着いてしまえば呪いだったのではないかという不安も消えて。
ミオレスカが案じたような、不安から歪虚がわくおそれもなくなっていくだろう。
そしたら遺跡がその後の調査でどうなったか確認に来るのもいいかもしれないな、息抜きがてら村人たちの様子を見に来るのも。
そんな風にハンターたちは未来を思うのだった。
だが、とりあえず今は。
「お風呂に入って体を洗って清潔な服を着てマッサージを受けて休みたい……」
「同感、です」
「左右に同じ」
「俺も……」
「まったくだ……力仕事には慣れてるつもりだったが」
ハンターも村人も炎天下の下で働けば汗をかくわけで。泥をこねたから服も汚れているわけで。力仕事をしたから筋肉痛もあったりして。
ようするにまぁ、心地いい労働の疲れといいきるにはちょっと不快指数の高い疲れが残ったのだった。
ハンターたちが遺跡の調査と修復に向かうと決めた日は快晴だった。雲一つないくらいの文句なしの快晴だった。したがってとてつもなく暑かった。
「日差しが強い、ですね……これは熱中症に気を付けなくてはいけません……。でも、泥が乾くのがはやいから、熱中症に気を付ければ、修復ははかどるでしょうか」
物事を前向きにとらえようとけなげな発言をしたのはミオレスカ(ka3496)で、確かに遺跡の外観を損ねないためには泥などの自然の物質を使うし泥は水と混ぜてこねたものを使わなくては役に立たないから乾燥させるという一点については役に立ちそうな日差しだった。
「招待のわからない恐ろしい声は、不安になりますね。調査団の報告では、ご納得いただけませんでしたか、ともかく、鳴りやまないと、解決になりそうもないですね。私たちが、なんとかしますので、安心してください」
一度ハンターたちだけで遺跡に向かった後遺跡に複数空いていた風穴を特定、どうも風穴を吹き抜ける風同士が反響し合って不気味な音を立てているということを把握し、ミオレスカは危険があれば自分たちが排除するから遺跡の修理が進む間に風音が減っていくのを自分たちの耳で確認してほしい、と同行を頼む。
「……本当に危険はないんだな?」
「絶対に、絶対に風の音だけなんだな? 人の命を脅かす魔物や、歪虚や、動物もいないんだな?」
この村人たち、ずいぶん臆病になっているようだ。
「未知への恐れというのは人の本能みたいなものだ。恐れるのも仕方のないところだな。それを安心させられるようにするのもハンターの仕事。私が安全を保障しよう。なに、これでも腕は立つ方だ。心配はいらない」
レイア・アローネ(ka4082)の力強いコメントによって力自慢の二人、ちなみにこの二人は次期村長候補らしく今は村長の補佐をしていて、村人からの信頼も厚いらしい。その二人が現場に同行することになった。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は年の関係で村にとどまることになった村長の手をガシッとつかんでぶんぶんと握手。
「疑心暗鬼をやっつけるのは正しく聖職者のお仕事なの。この度はお招きありがとうなの。ディーナ・フェルミというの。皆さんの安眠を取り戻しに来たの。不安な中、自分たちで解決しようとせずよくハンターを頼ってくれたの。ハンター冥利に尽きるの」
にこにこと穏やかな笑顔で、相手が相談してくれたことをほめる。こんなくだらないことで、と相手が羞恥心を抱くことを避け、相手の行動を行動することで信頼感や作業への理解、作業終了後の安心感を高めるためだ。
行動を信じてもらうことが最大の重要要素、でなければ調査団と同じように信じてもらえない結果に陥る、と考えているので遺跡の見取り図を見せて風穴を示し、反響し合っているようだからふさいでみること、夜間に特に鳴り響くということなので夜間は自分が泊まり込んで風穴の音のほかに獣が出たりしないかを確認するということで安全をアピールする。
「みんなからも説明があったけど遺跡の壁や天井が崩れて、そこから通る風でヒュルヒュル音が鳴るようになったことが分かったの。天然の口笛状態なの。ほうっておくとどんどん遺跡が崩れてあぶないし、みなさんも夜気になって眠れないと思うの。だからこれからあいてしまった穴をふさいで全体を補強するの。エクラ様のなにかけて、見に来てくれた人には困ったことは起きないと約束するし、そのために私たちハンターは全力でお二人を護るの」
ディーナが行くと決めたがまだ不安がっている二人の若者の背を押すように二人とも握手。邪気のない瞳でじっと見つめて決断させるとトリプルJ(ka6653)は主に保護者として子供たちに被害が出ないか心配しているメンツに向かって口を開いた。
「既に調査団が入って、そういう曰くがある遺跡じゃないのは確認済みだ。ただ確かに寝静まる夜に煩ぇのは腹が立つよな? 全体的に崩れやすくもあるらしいんで、そういう補強も兼ねて俺らが作業するわけだ。遺跡ってのは何にも残ってなくても、そこにあるだけで学術的価値ってのはあるからなあ。実際俺らにはゴミにしか見えねぇ昔の人間が使ってた布の破片とか皿の破片とかくらいしか出なかったらしいしな。ある意味子供の秘密基地にゃ完璧な場所だろうが、俺らも崩れた場所を補修するだけで崩れそうな場所全部を補修するわけじゃねぇ。無闇に子供が潜り込んで怪我しないように、村の大人には代表者で構わないんで是非見に来て貰いたいもんだ。そうすりゃ何もなくても子供が遊ぶにゃ不向きな場所だと分かって貰えるだろ?」
「はい……遺跡は子供たちが人目を忍んで遊びに行きたがる場所でもあって困っているんです。度胸試し、とでも言いましょうか。それで私たち親は気が気じゃなくて。調査団の方たちは後日改めてもっと大きな調査団を組むといっていましたので、保護文化財のようなものになって立ち入り禁止になってくれるとありがたいんですけれど」
興味や度胸試し、大人に何でもなかったよ、と報告するために遺跡に忍び込む子供が出て山狩りをするたびに大人たちはさぞ肝が冷えたことだろう。なにせ崩落しかねない遺跡なのだから。
「それにしtも遺跡の修繕なんてロマンじゃねぇか、なぁ? こういうのは学者先生がやるもんだろ。ちょっと興味があってこの依頼に来たんだよな、実は」
「まぁ、村人の説得、事前段階では悪くない手ごたえだしあとは熱中症で倒れて不安をあおらないことが大事だよね。あとはお弁当食べて食中毒とか。夏場はいろいろ怖いから」
埋蔵品などの調査と非力でもできることはあるだろう、と駆り出されたルカ・シュバルツエンド(kz0073)がハンカチで顔をぬぐう。
村人二人を連れて遺跡に向かう途中でのトリプルJとの会話だった。
「遺跡にロマンを感じるということは学術的に価値のないと思われるものを持ち帰ったりしたいのかな? あまり数は多く持って行かせることはできないけど一つ二つなら記念に持ち帰っても」
「ロマンは写真で十分さ」
「そうかい、無欲だね」
●修繕開始
「まずは、どこをふさがないといけないかを吟味して材料を調達、ですね。今日一日では完遂はできないと思うのでまずは風穴から、でしょうか」
風穴をふさぐための土と泥をこね、できるだけ遺跡を作る材質に似た色になるように配合を考えながらミオレスカが大雑把なスケジュールを考える。
トリプルJは力仕事は任せろ、と補強に使う木の伐採に向かっていた。
全員の共通認識としてはどうやら暑さが一番の大敵。すぐ届くところに飲料水を置き、汗の対策をしっかりと。
飲料水だけでは塩分不足で熱中症になるので塩分をとれるものも適宜小休止の時に取るように心がける。
ディーナは修復の最中にあれた遺跡をできるだけ丁寧に掃除していく。泥をこねるための水を調達したり、働きすぎて熱中症で倒れる人がいないかもヒーラーの彼女の仕事だ。
「んー! お天気がいいのは助かるけどちょっと暑すぎなの。これで人が倒れたらこの遺跡は呪われてる、なんてあらぬ噂が立ってしまうの」
「そのためにもみんなの健康チェックを頼んだよ。私たちも自分で注意はするがね。村人二人は不安でどうにかなりそうな顔をしているじゃないか。気を配ってやることだ」
ディーナが水を汲んできた後ぼやいた言葉にレイアが口の端だけで笑いながら返事をする。彼女は汗が目に入らないように、それと日よけ対策に頭に布を巻いていた。
ざっとみただけで複数の風穴があったがさらに細かく、丁寧に音の原因を探してふさいでいく。
大きめの風穴は木の枝で渡しを作って泥でふさぐときに泥が落ちてこないようにした。目の粗いざるのようなものだ。
今にも倒壊しそうな部分に関してはトリプルJの伐採してきた樹木で補強を。
風穴からなる音がふさがれるたびに減っていくのを聞いて確認に来た村人もどうやら本当に風の音だったらしいと納得したらしく手伝いをする顔色も落ち着いてきた。
昼頃、入念に傷んでいないかの確認を取って弁当で昼食をとる。
腹が減っては戦ができぬ、戦ではないが力仕事をすれば空腹を感じるのは生き物の摂理なので。
「どうだろうか。少しは安心できたか?いくつか実践したとおり、謎のうめき声のような音は風穴を通った風の反響音だ。夜はディーナと私で見回りと音漏れの確認がないかをしっかり行う。これですこしは安心してもらえると助かるのだが」
「安眠は大事なの。身近に危険が迫っているのに熟睡できる人はめったにいないし、村人さんならやっぱりそういう特殊技能は身に着けずに安眠してほしいの」
「ハンターの皆さんには迷惑をかけてしまったな……どうしても夜に聞こえるあのうめき声……いや、風の音が恐ろしくて。子供は夜泣きがひどくなるし親は育児ノイローゼになるし寝不足でイライラした連中同士のけんかも増えて、呪いか何かじゃないかって思うと心配でますます眠れなくなって」
「迷惑だなんてとんでもねぇよ。そちらさんはそちらさんで大変だったんだろ? 歪虚を倒すのがハンターの仕事だが村人の心の平穏を護るのだってハンターの仕事さ」
「しかし、不安な心から歪虚が発生することは、実際に起こり得るようです。手遅れになる前に、相談していただけて良かった。ここは古来からの祭壇もある遺跡のようですし、定期的に清掃、補修をして、いい状態で保てば、近隣の皆様を、守ってくれることでしょう。
粗雑に扱うと、悪いことは連鎖してしまうものなので、注意してくださいね」
「そうだな……かつて生きてきた人たちの遺した歴史だ……粗雑に扱いすぎたかもしれないな」
村人たちはミオレスカの言葉に深くうなずき、これからはもっと丁寧に遺跡を扱うと約束した。
日没までかかって風穴はすべて修復を完了、崩落しそうな個所は木材で支えた。あとは遺跡の調査団や修復班に任せていいだろう、と一同は切り上げることにする。
トリプルJは写真を撮りながらルカを呼んだ。壁画のようにうっすらと残る塗料のあとを見つけたのだ。
「この遺跡も極彩色に着色されてたりしたのかねぇ……」
「昔の塗料は長い年月を経ても残ると聞いていたけれど……やはり赤は残りやすいみたいだね。修復作業に追われてたから気づかなかったけど、もしかするともっとはっきり塗料が残ってる部分もあったかも」
「あとで様子を見に来てみるかなぁ。修復しました、あとは安全です、じゃ心細いやつはまだ心配だろうしな」
「それもいいかもしれないね。写真は撮れた?」
「おう、ばっちり」
ディーナとレイアは一晩ここで夜明かしして異常がないか、ふさぎ損ねた風穴から音が聞こえないかを確認するために残り、残りのメンバーは下山することになった。
応急処置程度ではあったが手入れをしてもらった遺跡は、きたときよりなんだか柔らかな雰囲気で、喜んでいるように見えたのだった。
これで村人同士のいさかいや育児ノイローゼによる子供への虐待、夜泣きも少しずつ落ち着いていって、落ち着いてしまえば呪いだったのではないかという不安も消えて。
ミオレスカが案じたような、不安から歪虚がわくおそれもなくなっていくだろう。
そしたら遺跡がその後の調査でどうなったか確認に来るのもいいかもしれないな、息抜きがてら村人たちの様子を見に来るのも。
そんな風にハンターたちは未来を思うのだった。
だが、とりあえず今は。
「お風呂に入って体を洗って清潔な服を着てマッサージを受けて休みたい……」
「同感、です」
「左右に同じ」
「俺も……」
「まったくだ……力仕事には慣れてるつもりだったが」
ハンターも村人も炎天下の下で働けば汗をかくわけで。泥をこねたから服も汚れているわけで。力仕事をしたから筋肉痛もあったりして。
ようするにまぁ、心地いい労働の疲れといいきるにはちょっと不快指数の高い疲れが残ったのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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遺跡の問題解決 ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/07/22 10:49:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/22 09:31:14 |